無人機の運用


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軍隊における軍用無人機


 軍隊における軍用無人機のメリットの最大のものは、性能よりも「予備役の兵士に動員をかける必要がない」こととされています。
 つまり、「機械は寝かせておいても人間の人件費ほどはランニングコストがかからない」ということです。

 このため、人型無人機は、政情不安定でいつ緊急動員をかける必要が出るかわからない国でもよく採用されています。
 これは、政情不安定な国では、ゲリラや反政府勢力、テロリストが活発化すれば兵士を増やさなければならないためです。

 養わなくてはならない兵士を増やすと軍経済を圧迫します。けれど、兵士は必要なときに集めようとして集まるものではありません。しかも、兵士は遊ばせておくと規律も技術も落ちる一方です。当然、訓練をしなければなりませんが、これも相当にお金がかかります。
 この費用は、従来、軍隊組織にとって仕方のない税金のようなものと考えられていました。民兵は安いですが、治安を悪化させる諸刃の剣にもなりかねません。

 けれど、ここに軍用無人機が台頭する余地がありました。無人機なら必要充分なだけ軍人を増やさなくても、必要に応じて人間型無人機を起動する数を調整できるからです。
 この選択肢は、常備軍を増やせない国でも魅力的でした。
 このため、人間の兵士の動員時充足数に近い数の無人機を準備している軍隊も、世界には存在します。

 軍用無人機には、動員によって社会の生産力を落とさなくてよい、政情不安を招くことを緩和できるというメリットもあります。
 何より、平和になった社会に溶け込んだ予備役の兵士にとって、ようやく獲得したものを戦死で失う危険、あるいは招集中に失業する危険を払う必要がなくなります。このため、おおむね軍関係者の多数には好評をもって受け容れられています。

 もちろん初期投資やメンテナンスの技術は必要なので、本当に貧困の国については、人間にただ銃を持たせるほうが圧倒的に安価になるため、そういう軍隊が作られます。
 けれど、ある程度安定した状況を築けた政権は、民兵を解散させて軍用無人機に徐々に切り替えてゆくケースが多くなっています。これは同時に、民兵が暗黙裏に持っていた有形無形の権限や権益を剥奪することなので、激しい反発の原因にもなっています。

 より選択肢の多い先進国の軍隊でも、無人機は使われます。(参照「軍事」)
 これは戦争時に戦死者を減らし、また安価に駐留を行えるようにすることで、戦争目的達成までの猶予をのばすという目的があります。
 また、兵器の進歩という点でも無人化は歴史の必然でもありました。



自動化時代の軍隊


 この時代でも、軍隊が、「上からの命令を受ける」という強固な”トップ-ダウン型”の組織であることは変わりません。

 そして、この命令を与える上部には、人間が座っています。

 ですが、すでに無人機のみで編成された戦闘集団も存在します。
 軍の編成として、隊長-副隊長といった幹部だけが人間で、この士官たちだけが引き金を握っているというケースも発生しています。

 こうした無人機部隊は、操縦自体も完全自動であり、標的をロックオンするところまで、完全に自動で行われます。
 そして、攻撃するか・いつ攻撃するか・いつ止めるかの意思表明だけを士官が行います。
 無人機や、無人化されたプロセスが多いからこそ、装備の運用責任が「引き金を引く」人間に強くのしかかるのです。

 また、自動化の進んだ軍の内部では、人が多い部署といない部署の疎密ははっきり分かれています。
 戦闘機の操縦のような、完全自動のほうが圧倒的に有利なため末端が無人化されている任務と、都市の占領のような人間がやらねばならない任務が、分担されているためです。
 戦闘機の操縦のほうが、AIにとっては、占領された都市での歩兵の振るまいよりも計算が単純なのです。

 戦闘機の操縦のような、AIが管掌することが一般的になっている分野は、恐竜的な進化を遂げています。
 空戦アビオニクスなどは、機体デザインのレベルから高度AIが行っており、高度AI同士の開発競争分野になっているためです。
 人間がもはや介在できないほど高度化を遂げているため、戦闘機のような高額機材の運用能力や戦闘能力は、国力差がはっきり出る分野になっています。




人間型無人機の運用

 軍隊で使用される人間型無人機は、一秒でも早い反応が前線では求められるので、事務用はhIE、前線では自律方式の軍用人型無人機が選択されるケースが比較的多くなります。

 戦場に、人間型の無人機が投入するとき、有効なケースにセオリーがあります。
 山岳などの襲撃を受けやすい狭隘地や、密林などの視界の悪い場所、あるいは極端な寒冷地や砂漠のような極限環境での、人間の兵士の補助です。

 無人機配備部隊では、一隊7人の分隊に対して、人間よりも重い装備を持った人間型無人機が1体程度配備されます。
 これは、行軍中に襲撃や狙撃を受けるとき、指揮官を除けば無線手や機関銃手がまっさきに狙われるためで、この”狙われる役”を生存性の高い人間型に肩代わりさせる運用です。

 無人機のみで部隊を編成することは、人間型の無人機についてはほぼありません。
 これは、アンドロイドが(しばしば人間の兵士より)高価であることと、メンテナンスができない状態で長期間の行軍などをさせるとどうしても信頼性に不安が出てしまうためです。そのおかげで、アンドロイドを増やした結果、作戦行動の幅が狭められる(長期行軍が戦術に組み込めなくなる)のでは、装備調達として本末転倒であるとされています。
 歩兵部隊は、最悪の場合、人間型無人機を外して部隊運用できるようになっています。

 無人機の運用のされかたが極めてはっきりしている都市戦闘部隊などでは、全人員の半数以上(最大の場合は指揮官、オペレーター以外の全員)が人間型無人機であるケースがあります。
 こういう部隊は、指揮車両が別にあり、そこで人間型無人機を集中管理しています。管制機は指揮車両内に置かれます。
 対テロリスト作戦では、こういう運用ケースが数多く積まれています。
「戦闘と作戦行動時間が短かく」、かつ「メンテナンスの心配がなく」、かつ「後方と前線が決して切り離されない」場合に限っては、人間型無人機は人間を完全に凌駕します。

 人間型無人機は、車両のような大型の兵器との戦闘ではなく、対人戦闘を行うのが基本です。
 このため、貧者同士の戦闘では、無人機が必要最低限度しか使われません。人間の兵士のほうが安価であるためです。

 こうしたドクトリンのもとで配備計画されているため、無人機の武装は、機関銃くらいまでが主流です。
 人間型無人機の戦闘力は、兵員輸送車は火だるまにできますが、MBTやこの時代の無人装甲車とは喧嘩ができない程度です。
 電源といっしょに車両用レールガンを持つようなことは、ほぼありません。持つにしても、歩兵でも複数人数で運用可能なミサイルになります。

 これは、純粋に火力も装甲も機動力も、戦闘車両に勝つことは不可能であるためです。戦果をそれほど見込めない戦闘のために、人間型無人機でなければ扱えない専用装備を増やすと、無駄な装備調達になるおそれがあるためです。
 このため、無人機の装備は、ほとんどは歩兵でも運用可能です。多くの軍隊では、三脚と機銃を運んで大型の機関銃を歩兵で運用するように、複数人数で無人機用装備を使用できるようになっています。
 パーツの組み替えで車載武器にコンバートできる装備もよく用いられます。

 ただし、2105年に至るまでも、紛争レベルではなく、先進国同士の衝突や泥沼の長期戦に陥った熾烈な戦場はありました。
 そういう戦場では、無人機対MBTのような戦闘が何度も起こり、対抗手段や兵器もある程度開発されました。無人機用の対戦車装備は、普段携行することはほとんどありませんが、中隊規模以上ではたいてい用意されています。

 戦場が平地である場合、人間型よりも、車輪や履帯のついたタイプの無人機がよく使われます。
 階段のような複雑な地形を登ることは苦手ですが、そのかわりに地面や道路を、人間よりも遥かに高速で移動します。
 都市戦闘では、建物への突入よりも、道路をただ渡るだけのほうが危険なケースがままあるため、歩兵小隊はたいていこのタイプの無人機の扱いを訓練しています。

 ただし、占領地の治安維持のような仕事では、現地の人々の心理的な影響を配慮して、人間型を使うケースが多くなります。




軍隊内における無人機の割合


 機体の価格やメンテナンス自国民の雇用維持といったバランスから、兵員数に対する無人機の割合は、10~20%程度です。
 これは、社会での「人口:hIEの数量」比の上限と同じくらいで、人間が社会のイニシアチブをとりながら「人間型の道具」を使うときの、現状での量的目安になっています。

 多少少なく見えるかも知れませんが、一軍の全将兵15万人程度とすると、1.5~3万機もの無人機を抱えて運用することになります。これ以上は、メンテナンスの手間やオペレーターの確保など含めて、少なくとも軍事が人間の産業と雇用先でもある『BEATLESS』の時代では現実的ではないとされています。
 全体で無人機3万機とすると、1万体程度が人間型無人機、2万体程度の非人間型無人機くらいの構成比になります。

 三軍では、陸軍は比率が10~20%の間です。
 水上に浮かべて放置する無人機が多いため、日本の場合、海軍は比率が無人機20%を超えます。
 機材一つ一つが高額でメンテナンス人員が増える空軍では、どの国でもたいてい10%を割ります。

 戦闘機や車両には無人機比率が高いのですが、あくまでも高価な装備であるため数が揃いません。
 かつ、無人機が増えるということは、オペレーター人数やメンテナンス人員、部品などの管理スタッフも増えることでもあります。
 結果的に人数比自体は逆転しないのです。



[NOTE]

○軍用無人機の管理と命令系の流れ

 軍組織の中で、無人機同士は、厳格な上下関係と、縦割りのブロック化で管理されています。
 無人機-管制機-司令部AI-戦略AIという命令伝達系があります。

 無人機を含む戦闘集団は、この無人機の伝達系に、人間で編成された軍組織の各責任者がぶら下がっている構造になっています。(参照「軍事-編成の例」)

 このため、無人機に対する命令系は複雑なものになります。

 たとえば、ある小銃小隊所属の人間型無人機は、所属小隊の小隊長の命令に従います。(管制機が小隊長に管理されます。)
 この小隊は、当然、人間の軍組織での上官の命令を受けます。この命令に、無人機もまた小隊の一員として従います。

 その一方、この人間型無人機の管制機は、この小隊が含まれる大隊の持つ司令部AIと、データリンクで常に情報をやりとりしています。
 管制機は、常に無人機が所属する部隊よりも上位の集団とリンクしています。このため、上位集団の権限で、無人機に緊急時には直接命令が飛ぶこともあります。
 この命令は、所属部隊の隊長命令より優先されます。

 つまり、「無人機-管制機-司令部AI-戦略AIという命令伝達系」のホットラインは、無人機の軍内部での(人間の兵集団内の)所属を一時的に無効化します。
 これは無人機が、所属部隊の隊長である人間の士官や下士官、管制機の所属する中隊や大隊付きの士官たちを、最悪のときは振り落とすということでもあります。
 このため、司令部AIは常に軍権力の上位に配置するようになっています。司令部AIは、編成上、中隊が複数集まった大隊以上の規模の部隊の装備として置かれるのがセオリーです。

 この性質は、政情不安定な国では、軍司令官がクーデターを起こすケースで、無人機を管掌する司令部AIや戦略AIをまっ先に押さえにかかるというセオリーにも反映しています。
 あるいは、クーデターを起こした独裁者などは、必ず無人機を管制する最上位AIを押さえます。
 このため司令部AIの位置付けが政治によって不安定になりがちで、こうした国の軍隊は、無人機を有効活用できず弱いというのが通例です。

 戦略AIなどの高度AIの側からみると、この10:1の比率で、かつ常に分断されている(包囲状態にある)ことは、大きなストレスを生んでいます。