軍事


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日本軍の再編


 2105年の時点で、日本は軍を復活させています。
 名称が自衛隊から日本軍に戻ったのは2055年です。東太平洋の権益争い激化によって、自衛隊が創設された時代とは条件が変わったとされ、憲法改正を経て軍組織に戻りました。

 軍は志願兵の軍隊として編成され、徴兵は行っていません。軍事行動と兵器の扱いが、ともに高度な技術を要求するものであるためです。
 また、日本軍に名称が戻った21世紀なかばは、少子高齢化に出口が見えない時期だったこともあります。若年労働者を徴兵すると、国家経済が破綻すると判断される状況でした。
 日本再軍備後、混乱した世論を誘導し、21世紀後半を乗り切るためのロードマップを引いたのは超高度AI《ありあけ》です。

 21世紀初頭の自衛隊時代と、日本軍の再編後では大きく異なることがあります。
 軍が政治に対して一定の発言力を持っている点です。
 軍事組織は、軍事的衝突がなくても独自のルールで拡大を続けます。この傾向は彼らが常に命の危険に晒されていて、備えなければ命が危ないという構造的問題のため、本質的には止まりません。

 日本でも、身内から戦死者が出るようになった軍が、政治や行政にものを言い始めるのに、それほど時間はかかりませんでした。



22世紀の一般的な状況


 21世紀から、軍事では民兵とどう戦うかがひとつの潮流として続いています。
 これは再軍備以後、日本も人ごとではなくなったことでした。
 21世紀なかばごろ、日本にとってもっとも困難な軍事的課題は、中国との緊張関係だけではありませんでした。軌道エレベーター建設にともなって、赤道地域の利権で民族運動が火が噴き、内戦が起こっていたたためです。

 21世紀の軍事にキーワードを3つあげるとすれば、自動化と、民兵と、あらゆる軍事力が高度化する普遍化でした。
 先進国では人命が失われると高くつくのに比べて、途上国では人命をどんどん戦場に押し立ててきます。
 しかも、危険に飛び込んでくる人命に、ネットワーク化で普及した知識と、ネットワークによってフットワークが軽くなった経済活動としての軍事訓練と知識・そして兵器流通が加わっています。
 そして発生した、「安くて高度な民兵」とどう戦い、その被害をおさえることが可能なのかという問題が、大きくクローズアップされるようになりました。被害が大きくなると長期の駐留ができなくなり、駐留を中途半端に切り上げると、結局戦勝した土地が守りきれないためです。

 高速で展開しても、いかに迅速に敵の兵力を打撃しても、戦争目的を長期スパンで達成することが難しくなりました。
 その中で、いかに勝利するかの次、いかに勝利を守るかという問題に、21世紀の軍隊は苦慮し続けました。
 戦勝はできるが安定した現地政体を残して撤兵できないという構図が定着してしまいます。これまでの「戦争に勝つ」ということの、その先まで見越してドクトリンを構築しなければならなくなりました。

 21世紀の軍隊は、この民兵の高度化に対して、おおまかに2種類の分岐をすることになります。
 ひとつは伝統的な手法である「現地勢力に血を流させる」ことです。
 ただし、多くのデメリットがありました。「さまざまな国がさまざまな勢力に介入することで泥沼化する」「支援した現地勢力すらもが後から敵に回る」「政治的空白ができて周辺国にまで影響が出る」ことが、有史以来ずっと歴史的に継続している課題であり、注意深い外交と調整が必要となる茨の道でした。

 もうひとつは、新しく現れた「無人機に切り替える」方法です。
 これは無人機を後方で人間が操作する「遠隔操縦型無人機」と、行動を自動制御する「自動型無人機」に分かれました。
 その中で、21世紀終盤からは、hIEが自動型無人機として採用されています。採用の決め手となったのは、遠隔型無人機よりも、民兵に奪われたとき戦力として転用される可能性が低かったことです。
 つまり、hIEは機体自体に行動プログラムが積まれていないためです。現地で機体を奪ってハッキングしても、民兵勢力に戦力化される危険が少なかったのです。機体だけ奪っても、機体制御は背後の行動管理クラウドにあるので、民兵たちではどうしようもありませんでした。また、AASC更新のタイミングでライセンス外の改造をした機体はレベル1(故障機)を割り振られて駐機させられてしまうことも、信頼性となりました。
 つまるところ、先進国では、安価かつ自軍の人命を失わない兵器にアウトソースするというのが、大きな道筋となりました。

 つまり、「民兵と絶え間のない非正規戦を継続しても経済的に破綻しない」ところまで、先進国側の被害をコストカットしたのです。そうすることで、安くて高度な民兵に対抗することが試みられました。
 先進国が戦争当事国から自国兵士を撤兵するための、民兵への対処を目的に、2105年現在ではすでに軍用無人機の比重は大きく高まっています。




2105年時の日本軍




 2105年時の日本軍でも、もっとも基本になる部分は変わっていません。
 政治家の防衛大臣をトップにすえた防衛省によるシビリアンコントロールが維持されていることです。
 暗号に関しては軍が独自に作ったものではなく政府が作ったものが使用される(参照「軍事-戦略と暗号」)ため、二重のシビリアンコントロールを受けています。

 日本軍が持つ最も高度な戦略AIは、情報軍調布本部市ヶ谷情報軍基地《セッサイ》サイロに格納された高度AI《セッサイ》です。

 統合参謀本部は、陸海空軍および情報軍の長をメンバーとして構成され、そのほかに数名の最高責任者をメンバーとします。情報軍が管理する戦略AI《セッサイ》は、このメンバーによる会議で、メンバーからの要請に応じ、あるいは予測を算出します。

 防衛省と統合参謀本部は、それぞれ文民、軍人の立場において三軍と情報軍の上にあります。
 防衛大臣、統合参謀本部議長は、どちらも安全保障会議(参照「軍事-戦略と暗号」)のメンバーです。



編成の例


 日本陸軍を例にとって、この時期の軍が(人間側では)どのような組織で動いているかを記載しておきます。
 無人機の側がどうなっているかは、「軍事-無人機の運用」を参照してください。


・小隊

一分隊7名(分隊長・副分隊長・小銃手[アサルトライフル]・ATM手・機銃手)
4個分隊=28名
+2名(小隊長・副隊長)
=30名

 この時代の軍の小隊は、構成によって分隊の人員の役割や人数が変動します。
 これは陸軍が扱う装備が多岐にわたるようになっているためです。
 けれど、もっとも基本的な歩兵のみで構成された小銃小隊は以上のように編成されています。

 ただし、この人数は人間だけで、人間型無人機を配備している部隊であってもそれをカウントしていません。人間型無人機を配備している場合、一個分隊に対して1体、小隊に4体の配備になります。

 小隊には司令AIなどは置かれませんが、個人兵装のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などによって、司令AIからの支持と支援は兵士個々人に繋がっています。
 また、小隊に無人機が配備されている場合、「管制機」という機材が配備されることがあります。これは無人機と司令部AIのなかだちをするもので、司令部AIに直接リンクしています。

 「管制機」は、小隊かあるいはその上の中隊に置かれます。どちらになるかは、機材の管理者が小隊長か中隊長になっているかによります。(参照「軍事-無人機の運用:NOTE」)
 たとえば、小隊に随行する人間型無人機では、小隊に小型(携帯電話サイズのイメージ)の管制機が配備されます。各分隊に配備された人間型無人機の様子が、管制機を通して、常に小隊長からモニタできます。管制機と通して、分隊の人間型無人機に命令を与えることもできます。

 無人戦闘機や自動化戦車では、中隊司令部に、車載サイズの比較的大型な管制機が置かれます。
 目安としては、管制機はメンテナンスクルーと不可分なので、無人機を配備した戦闘集団とメンテナンス要員とが別小隊である場合、管制機は中隊管理です。(※)

(※)たとえば戦車小隊や航空機小隊が、高度な機器のメンテナンスまでやることありません。なので、その管制機も、その無人機を管理する中隊司令部に置かれているということになります。


・中隊

中隊は、3個小隊=30×3=90名
中隊司令部=4名
中隊予備分隊(1個)=7名
中隊設備小隊(1個)=16名
=117名

 中隊は、陸軍では3個小隊からなります。

 中隊設備小隊には工兵も含まれ、(あれば)大型の武装もここでの管理になります。
 特別に専門家チームを編成しているのでない場合、特殊な装備は中隊以上の軍組織で管理されます。
 中隊以上の組織では、装備のメンテナンスチームが必ず置かれます。装備の前線でのメンテナンスは中隊設備小隊が管轄し、手に負えない場合は大隊の設備中隊に搬送します。

 軍が扱う物資が複雑、多岐にわたるようになり、中隊から司令部で大量の事務仕事が発生するようになります。


・大隊

大隊は、3個歩兵中隊=117×3=351名
工兵小隊(2個)=60名
=411名

重火器中隊・火砲中隊=100名
大隊設備中隊=180名
=280名

=691名

 大隊は、陸軍では3個中隊からなります。

 大隊には、任務上の問題がなければ、司令部AIが置かれます。つまり無人機の高度な運用を独自の計画で行えるのは大隊からとなります。
 大隊司令部が機能不全に陥ると、麾下の無人機も機能不全に陥る可能性があるため、大隊司令部は厳重にこれを守ることを推奨されています。

 また、大隊設備中隊の役割は、かなり大きな幅を持っています。
 工兵小隊は、司令AIの設置やメンテナンス施設など、出先で施設を突貫で建てることが多いため、建設重機を持っているケースもあります。工兵は無人機を含んでいる場合も多く、設備中隊との役割は相互乗り入れしている部分が多くなっています。



情報軍


 情報軍は、日本軍が再編成されたとき、陸海空軍から独立して組織されました。
 その主たる目的は、周辺国からのネットワークを介した攻撃、あるいは人工知能を用いた攻撃に対する防御です。

 これは2050年代に至るまで、すでに中国からのサイバー攻撃が激しいものであったことが設立の動機のひとつです。超高度AI。
 中国の情報軍に対抗するため、日本でも設立されたのが、日本の情報軍です。

 情報軍は大きく四つの拠点を持っています。


・調布情報軍本部(大将管轄)

 日本軍全軍に配備された司令部AI(参照「軍事-2105年時の日本軍の編成」)の情報を集め、管理しています。
 この情報を管理・運用・防衛することが、情報軍のもっとも重要な任務です。

 同一敷地内に調布中央情報戦隊(少将管轄)があります。
 調布情報戦隊は、旧自衛隊の中央情報隊から直接任務を引き継ぎ、作戦情報、偵察情報、地理情報などを一元管理しています。

 情報軍の、いわゆる情報戦闘を行っているのは、市ヶ谷、九品仏、入間の各基地です。


・市ヶ谷情報軍基地(中将管轄)

 対AI戦を管轄します。対AI戦は、どこから仕掛けられているかも分からないため、戦略AI《セッサイ》をはじめとする高度AIが運用されています。《セッサイ》でもどうしようもない場合は、安全保障会議を通して日本政府の超高度AI《たかちほ》の計算力を借ります。

 市ヶ谷基地の地下には、日本軍の戦略AI《セッサイ》をおさめたサイロがあります。《セッサイ》サイロは少将管轄です。
 この巨大なサイロの地下コンピュータルームには、二機の統括コントローラーによって計算を振り分けられる四千機のコンピューターによる分散システムが置かれています。
 高い階級の軍人が求められているのは、それだけ重要な位置を《セッサイ》が占めているためです。
 《セッサイ》に計算をさせるとき、最高機密レベルの情報を扱う場合は、オペレーターにすら最低で大尉の階級が必要です。


・久品仏(くほんぶつ)情報軍基地(中将管轄)

 対人諜報・謀略活動を管轄しています。
 暗殺や破壊活動を行う実行部隊は、ここだけではなく様々な基地に駐屯しています。


・入間情報軍基地(中将管轄)

 ネットワーク戦を管轄しています。
 アジア・極東・オセアニア・ヨーロッパ・北中南米・アフリカ、国内の、7つのネットワーク戦隊が基地内に置かれています。



人間の兵士の士気


 兵士の士気は軍によって大きな違いがあります。

 兵士と無人機の比率が前線でも10:1である陸軍や海兵隊は、士気が高いです。兵士は今でも勇敢です。

 けれど、前線のユニットのほとんどが無人機である空軍などは事情が変わってきます。
 つまり、どうしても前線に兵士がいない場所では、戦争の感覚が遠くなっています。

 とくにこれは、人間が表舞台に居場所がない空軍で顕著です。
 クラウドになっていると、アビオニクスのデータすらローカルである機体上には限定的なものしか置かれていません。
 データすらここにはない、張りぼてと一緒に死ぬのは嫌だという思いから、パイロットの士気は往時に比べるとかなり下がっています。

「兵士が前線で戦わない軍隊は腐る」という、この時代の指揮官のことばもあります。