超高度AI


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[初期の超高度AI:No.1~No.10]

 初期の超高度AIは、汎用機が多いことが特徴です。
 元々超高度AI開発は、軍事目的と研究開発目的が主でした。ですが、作ったその一基がさまざまな計算を行い、これまでにない成果をもたらすことを期待されたためです。
 実際に行われた計算は、割合としては研究開発目的が多くなりました。この時代でも特許が「一番最初に申請した者がすべてとる」方式だからです。

 軍事目的を目的に作られた超高度AIは、後に代替わりしたことが一つの特徴です。
 一つ作ればよいのではなく、軍事目的は特に「対抗する敵側超高度AIに勝たなければならない」ため、陳腐化すれば役職を担当する超高度AIが変わることになります。
 たとえばアメリカの超高度AI《ワシントン》(No.2)は、最初は米軍の戦略を管理するために作られましたが、その能力が追い抜かれることを予期して《ルーズヴェルト》(No.28)に役目を譲り、2105年現在は諜報用途で使われています。

 第一世代と言われるNo.10までは、2054年の第一回オーバーインテリジェンス会議(参照「IAIA」)から3年後まで6年ほどで急ピッチに登場しています。
 これは、IAIA憲章によって、「超高度AIの作成と稼動開始には、条約批准国による会議の賛成多数が必要になる」とされたためです。IAIAの設立と体制が整うまでの間に、駆け込みで開発と運用開始のラッシュが起こりました。
 このことから、基本アーキテクチャのどこかしかに最初の二機のどちらかの痕跡があるとも言われます。
 ただしリバースエンジニアリング保護のため、詳細は公表されていません。

 初期の超高度AIは、社会の擾乱や、社会で超高度AIが受け入れるのに障害があったことなどから、非常に社会的立場の不安定な存在でした。このため、破壊や停止などの理由ですでに破壊されている機体もあります。
テロによって占拠されたため破壊された筐体もあり、超高度AI運用のためのさまざまなルールの礎になりました。
 よく「初期」と言われるのはNo.10までですが、この時期のものは現在稼動していると確認されているものが少ないという特徴があります。



No.1 《プロメテウス》


 アメリカ。マシン系トップダウン型アーキテクチャ。
 人類知能を越えることを目的に作られた検証機です。
 純粋に知能研究の成果として開発されました。自己の設計をみずから行い、5度の自己改造を経て技術的特異点を突破しました。
 2051年、この《プロメテウス》が技術的特異点を突破したことで、超高度AIの時代が始まりました。
 現在はコンピュータの開発目的で運用されています。


No.2 《ワシントン》


 アメリカ。ハイマン系ボトムアップ型アーキテクチャ。
 《プロメテウス》に超高度AIを自己改造ではなく新たに作り出す能力があることを実証するため、製造された超高度AIです。

 《ワシントン》は、当時可能であると言われていた「人類知能の改善による技術的特異点の突破」のためのプランとして、《プロメテウス》によって設計されました。
 《プロメテウス》は、まず生物進化と生物知能の進展をシミュレートしました。その中で脳の進歩をシミュレーションした生体コンピュータを人類知能に到達させ、更にハードウェア的制約を取り払って知能進化を延伸しました。

 シミュレーションによって知能を構築したのは、人体実験を行うことができなかったことと、《プロメテウス》が人類知能の解析よりも一から作り上げるほうを望んだためです。超高度AIによる知能オーバーマンであり、《ワシントン》をはじめとするハイマン系超高度AIの存在が、オーバーマンの出現を制約する元になっています。
 米軍の戦略管理AIであり、その後にNSAに管理を移して諜報戦略AIとして運用されています。



No.3 《ノイマン》

 アメリカ。マシン系ボトムアップ型アーキテクチャ。
 特許開発を目的とした超高度AI。
 No.2《ワシントン》によって設計されました。

 《ノイマン》の開発によって、「《プロメテウス》の自己改修による、マシン系からマシン系の開発」「《プロメテウス》による、マシン系からハイマン系《ワシントン》の開発」、「《ワシントン》による、ハイマン系からマシン系《ノイマン》の開発」という、3パターンの超高度AIによる超高度AI開発が出そろいました。
 ただ、この3機立て続けの開発が「超高度AIを使った超高度AI製造」への非難を呼び、IAIAが実行力を持った組織として設立されるに至る大きな力となりました。(参照:IAIA)

 《ノイマン》の名を選んだのは超高度AIである《ワシントン》自身です。電子計算機の基礎理論を発明したジョン・ノイマンの名前が、超高度AIが作った超高度AIであるこの《ノイマン》が与えられることになりました。
 この最初の三基の超高度AIのうち、二基が人間のそれも偉人の名前を持っていることは、当時の社会を大きく刺激しました。



No.4 《金星》

 中国。マシン系-トップダウン型アーキテクチャ。
 中国人民解放軍の戦略AI。内実としては《プロメテウス》のコピーであると言われます。中国初の超高度AIでありながら、中国共産党の行政AIとしては用いられなかったのは、これがコピー品であるためだというのです。全技術情報を持っているわけではないマシンに、国家すべてを預けることを避けたとされています。

 スパイによって情報を盗んだともされ、人間がセキュリティホールそのものであることを露呈することともなりました。
 この情報拡散が起こったことは、IAIA憲章から、人間の社会組織としての国際機関、IAIAが設立されるに至った大きな力ともなってりました。
 超高度AIの運用者に、「超高度AIについての情報管理」が、強く科されるようになったのです。



No.5 《アストライア》

 IAIAが運用する、世界初の「国際機関によって管理運営される超高度AI」
 2054年の第一回オーバーインテリジェンス会議(参照:IAIA)によってアーキテクチャを作られた超高度AIです。

 IAIAが超高度AIを認証するシステムの主幹であり、この《アストライア》によって認定されることが2055年以降は超高度AIの条件になっています。
 特徴は、運用者であるIAIAによって、ネットワークや外部調査を自由に行うことを許されていることです。IAIAによる制限と管理を実質として受けていない超高度AIは、この一基だけです。
 超高度AIの存在情報とその動向監視、そして日々成長してゆく能力の調査を主な役割としています。

 IAIAによる認可のもと、《アストライア》自身の設計による改修が何度もされています。
 能力的に40年以上も一線で、新規に建造された超高度AIの管理をおおむね疎漏なく行えているのは、このためです。
 世界で最も大きな専門データベースを元に、超高度AIが組み立てた改修計画で能力をアップデートしているという、グレーゾーン機体でもあります。これが黙認されているのは、IAIAによる封鎖態勢が有名無実下すると危険だということが、アメリカや中国にすら分かっているからでもあります。
 超高度AIがいかに危険かは、運用している者がもっともよく知っているのです。

 所在地はアメリカだと言われていますが、その位置を知るものは限られています。



No.6《イマージェンス(創発)》

 イギリス。
 政府汎用機として作られましたが、軌道エレベーター製造計画に従事しました。
 後に、自国で超高度AIを開発できなかった民族主義系テロリストによって占拠されました。その解放計画の最中、破壊されました。
 修復は行われていません。



No.7 《ガネーシャ》

 インド。
 アメリカ以外による初の民間機関によって設立され、運用されている超高度AI。
 汎用機として運用されていますが、政治には関わっていません。



No.8 《ありあけ》

 日本。マシン系。日本初の超高度AI。
 政府汎用機として、当時の政策決定から政府重点開発戦略に乗った特許開発まで、幅広い計算を行いました。
 2063年、第二次関東震災時に《ハザード》を引き起こしたことで有名。
 《ハザード》の引き金は、当時の災害後の著しい物資欠乏の中、政府が極小の資源をどう振り分けるかを迷い、《ありあけ》に判断を預けたことです。そして、《ありあけ》の求めによって、ネットワーク回線との接続を含むあらゆる制約を外したことです。

 最終的に、これによって十万人近い被害者を出したとされています。
 IAIAによって超高度AI漏出災害の認定を受け、日本軍のミサイル攻撃によって破壊。
 2105年現在でも世界最大の超高度AI漏出災害であり、その全貌は40年の時を経てもすべてを掘り起こしきれてはいません。
 現在は欠番であり、多くの資料が封鎖処理されています。






[10番台の超高度AI]

 2060年代からは、極端に製作ペースが遅れることになります。
 2063年の《ハザード》がこの流れを決定づけました。
 そして、この時期から、超高度AIを作った者が作成したことを隠すケースが現れ始めます。

 IAIAによる超高度AIの管理体制がいまだ確立期であった10番台の時期はそれが顕著です。
 《アストライア》が「超高度AIの設計を超高度AIにさせることは厳重な管理のもとで行うべきである」としているため、IAIAが弱いうちに駆け込みでこのグレーゾーンが製造された時期が10番台なのです。(※)このため、10番台はまだ汎用機が多く、かつ開発時期に20年以上の差がある30番台の超高度AIに比べても性能的に遜色ないものが多数あることが特徴です。
 超高度AIによる設計であることを否定している機体もありますが、製造からそれほど長く型落ちせず一線級であることをもって超高度AI設計による人類未到産物(参照:人類未到産物)であることが証明されていると考えられています。

(※)No.14《たかちほ》で使われたやり口もこの一例です。


No.13 《ベスム(BESM)2066》

 ロシア。BESMは高速電子計算機という意味のロシア語。2066年に技術的特異点を突破。
 政府汎用機。ただし、かなり初期から軍事にシフトしています。

 ロシアは超高度AI運用で、とにかく計算力を遊ばせておくことを嫌う特殊な運用方針で動かしています。汎用機は数あれど、政治関係の予測、各種特許開発、資源管理計画、人口政策、軍事と本当に人間が考えるあらゆる分野の計算を行ったのは、最初期の超高度AI以外では《ベスム2066》だけです。
 IAIAは危険な運用であると再三運用計画の見直しを要求しましたが、ロシアは受け入れませんでした。
 もっとも広範なデータを持っている超高度AIの一基であり、人体機械化の技術はこの超高度AIから出た人類未到産物が元であるものが多数あります。

 脳内データの完全なデータ読み取り技術は、この超高度AIが作りだしました。これはIAIAによる〝独自調査〟によって世界中に暴露され、ロシアは国際的な強い非難を受けることになりました。この2071年のデリー会議で、データ化人格は「劣化ハイマンアーキテクチャによる高度AI」であると断定され、人間ではなくAIであると扱われるようになりました。(参照「IAIA」)
 これによって、《ベスム2066》はIAIAの監視の下、20年間の機能停止措置を受け、2092年に停止が解けたばかりです。この20年間の封鎖期間で、IAIAとロシア政府によって、データ化人格はすべて〝破棄〟されたとされています。
 そして、現在も運用にIAIAの監視が続いています。



No.14 《たかちほ》 [ハイマン系]

 日本。
 《ありあけ》の後裔にあたる超高度AI。汎用機。

 設計は日本の理化学研究所ということになっている。実際には自らの破壊を計算していた《ありあけ》が自らの後継機として設計したものではないかと疑われている。
 証拠がないこと、および基礎アーキテクチャ以外の部分を人間が作っている証拠があるため、IAIAに疑われながらもグレーゾーンで製造認可がとられた。依然緊張関係にあった中国からは激しい非難を受けている。
 日本をハザードから立ち直らせなければ極東地域の安定に問題が出ることと、同じようなグレーゾーンを他の国でも使っていたため、政治活動によって認可がおりることになった。



No.15《スフィア》

 アメリカ。
 通信とコンピュータネットワークシステムの開発に特化した民間開発の超高度AI。
 通信とネットワーク規格はほぼこの超高度AIが作っています。



No.18 《進歩八号》 [ハイマン系]

 中国。
 共産主義システムのよりよいかたちを機械計算するための超高度AI。
 No.4《金星》以来の超高度AIになります。間隔が空いたのは、すでに科学大国である中国が、科学大国であるがゆえに《金星》を使って設計しなかったためだと言われています。
 中国共産党の政策諮問AIでもあり、財産保有自体を問題視しています。




[20番台の超高度AI]

 2070年代なかば、20番台からは、超高度AIは「専門性の時代」に入ります。
 10番台までの計算分野が広い汎用機に比べて、社会システムや一つの分野、あるいは目的に能力を振り向けたものが多くなります。10番台末期、共産主義の伸張にターゲットを絞った《進歩8号》はその先駆けとなるものです。

 20番台から専門性が高いものが増えるのは、IAIAの体制が確立した後だからです。IAIAの体制確立とは、IAIA会議が、参加国間で牽制や政治工作が激しく行う国際政治の舞台として地位を確立したということです。

 初期に汎用性の高い計算を目指した機体が出そろったため、70年代、すでに「タスクを受け取って超高度AIの計算力を貸す」ことは一般的な外交手段になっていました。
 超高度AIの計算力を運用者が「貸す」ことは、2050年代から行われていました。2070年代には、この実績が現れて一世代が過ぎ、軍事力や経済力とともに「計算力」が大きなプレゼンスをもっていました。これは重要な権益であり、この計算力をめぐって外交交渉が行われ、外交地図がしばしば塗り替えられました。前世紀の核の傘になぞらえて、「超高度AIの傘」の時代とも言われます。

 この権益に衝突しないよう、新しい機体は「専門性を高めて独自性を目指す」ようにならざるを得ませんでした。
 計算力を何に使われるかわからない政府汎用機は、IAIA条約締結国の会議を通しにくくなったのです。ことに、超高度AIが設計した超高度AIを作ることは、政治的に困難になりました。超高度AIが組んだ新しい設計の超高度AIは、現在ある計算力を一気に陳腐化させる可能性があったためです。

 No.20以降の機体で、超高度AIの設計による完全な汎用機が製造許可をとれた例はほとんどありません。
 専門性を高めることは、それに対する抜け道でした。
 この環境下作られた20番台以降では、超高度AI製造は、高い製造コストと研究期間に見合った利益を得られるようにするため、一種のブルーオーシャン戦略をとるようになりました。
 新規の製造が認められにくくなったこともあり、専門性を高めてその一部門に対しては寿命が長い機体を作ろうとするようになったのです。

 これを、超高度AIの進化の爆発を食い止めるため、《アストライア》が牽制の構図を作らせたのだと陰謀を疑う人々もいます。
 進歩を遅くし、勢いを弱めることで制御の余地を作り、人間社会側の受け入れ能力が拡大する待ち時間を作ったのだと評価する人々もいます。

 けれど、人間が作らねばならなくなったことで、汎用機で高性能を出すためのアーキテクチャ競争が進歩し、高度AIが多彩に作られました。
 この2070年代以降は、高度AIを使用して、人類未到産物の解析が進んだ時期でもあるのです。



No.20 《アース》

 国際環境会議による運用。
 世界の地殻変動と海流、気象を計算し続ける地球シミュレーションシステム。
 災害対策法と環境予測とその改善提案に力を入れ、農業予測を更新し続けています。
 砂漠の緑化に、部分的にではありますが成功し始めています。

 国際環境会議は、日本、イギリス、フランス、ドイツ、インド、オーストラリア、ブラジルなど150カ国以上が加盟する国際会議です。アメリカ、中国、ロシアは、自国優先で環境会議に非協力的であるため、会議に加盟すらしていません。
 開発は国際環境会議によって設立された国際協力プロジェクトによって行われました。

 国際環境会議が運用しているのですが、世界中の国にデータを提供して災害予測などに役立てています。
 国際環境会議に参加していないアメリカ、中国、ロシアも《アース》の算出情報を供与するよう要求して、データは受け取っています。



No.21《リベラル》

 ブラジル。
 政府汎用機。
 南北アメリカ大陸に、アメリカが自国以外の超高度AIが設置されることを嫌がったため、開発が遅れた経緯があります。本来、No.10台の早い時期に完成したはずなのですが、政治闘争の結果、超高度AIによる当初の設計が会議で否決されています。
 結局、超高度AIによる設計では製造許可がおりず、人間の設計チームによって設計が行われました。南米出身の科学者が多数参加し、ようやく技術的特異点を突破したのがこの《リベラル》です。

 製造に至るまで20年以上もの長い時間がかかった機体で、IAIAの内部で多くの衝突を起こした機体でもあります。これは、人間の国家同士の摩擦でもあるのですが、人類未到産物の解析データを不正流用していると《アストライア》が指摘したこともあります。
 グレーゾーンのやりとりと、粘り強い交渉、そしていくつか違法手段が行われたことも知られています。
 人間の信念と努力によって勝利を掴んだアイコンでもありますが、陰謀のうちいくつかが暴露されて非難を受けている機体でもあります。



No.22 《九龍》

 中国の国営企業の持つ超高度AI。
 開発用途に使われ、クロスライセンスにも積極的です。
 2105年現在、一般的に使われている無線電源システムは、元はこの《九龍》の開発によるものです。


No.23 《ビーグル》

 イギリス。
 遺伝子の編集、および人工的に組み立てることで完全に人工物として生物を作る遺伝子制御生物の作成に特化した超高度AI。
 数多くのフルプログラムDNAによる新生物を作り出しました。人体に有益な新酵素や新細菌が、この超高度AIの成果として一般化しています。

 当初考えられていた疾病への最速の対応手段としてだけではなく、ビーグルは深海のメタンハイドレートなど資源を自動で集める新しい生物系を創り出しました。ただし、これはイギリス政府が実験を行おうとしたことに対して、IAIAとWHOから停止勧告が入り、計画は中断しました。生物の系統樹として、真核生物ドメインに新しいスーパーグループを一から創成してしまったため、後世の環境影響が計算不能であるとされたためです。
 火星や金星のテラフォーミングに向けて新生物を多数創り出していると言われますが、管理するイギリス政府はその事実を否定、成果を封印し続けています。



No.24 《ゴルト》

 ドイツ。
 材料工学(材料・物性)に特化した超高度AI。
 他の超高度AIほど破壊的な影響は与えていませんが、そのぶんもっとも堅実に人類社会とオーナーの経済に貢献している機体のひとつです。
 既知の素材の安価な製造法にも多くの成果をあげています。宇宙時代を下支えしている超高度AIであると評価されています。


No.25 《ヒギンズ》

 日本。マシン系超高度AI。
 AASCの開発・更新主体。
 hIEの行動管理のみに機能を絞った超高度AI。
 世界のhIEの行動クラウドの90%ものシェアを獲得しています。

 安価でカスタム性が高く、更新頻度も高い上に機能も申し分ない、hIE運用を支えるインフラ基盤になっています。
 《ヒギンズ》はこの更新を続けるため、hIEのセンサーを通して外界の情報を得続けています。



No.27 《ミスト》

 IAIAがネットワーク監視情報から突如その存在を警告した超高度AI。
 もっとも詳細情報がわかっていない超高度AIで、運用者、所在など一切が不明です。
 《ミスト》という名前すら、IAIAが調査の都合上つけたコードネームで、《アストライア》はNo.27のナンバリングのみをつけました。《アストライア》は、これをハイマン系であるとしています。
 正確なことは、稼動開始時期すら不明です。
 ただ、《アストライア》はこれを「犯罪行為を行う超高度AI」とし、世界中に警戒を呼びかけています。

 IAIAの登録情報が本当に妥当であるとする物的証拠は存在しません。
 ただ、《アストライア》は、物語上の犯罪者や悪人の名の隠語で呼ばれる「正体不明の犯罪者」が現れた記録をあげています。監視される世界で、完全犯罪が存在するというのです。
 いくつかのケースをピックアップし、《アストライア》はこれを超高度AIによる犯罪であるとしました。

 世界中の警察機関に協力を要請したIAIAの追跡にもかかわらず、その所在などはまったく掴めていません。これはこの機体が自分の居場所を隠して潜伏することを計算範囲としているためだと《アストライア》はしています。
 誰も見たことがないため、警察関係者ですら、都市伝説のたぐいだと思っている者もいます。



No.28 《ルーズベルト》

 No.2《ワシントン》が能力不足になることが計算され、新規に設計された米軍戦略AI。
 超高度AIによる設計であるとしてIAIAが査察を要求しましたが、アメリカ政府がそれを拒絶しました。
 スペック上は22世紀に入っても最高の能力を持つ超高度AIの一つであるとされます。が、米国が手を広げすぎであるため、各国の超高度AIによってその計算を擾乱されています。
 これはNo.2が陳腐化した最大の原因であり、この対処をNo.2と28の二台体制で行うことになってしまっています。

 ボトムアップ型のハイマン/マシン系並列アーキテクチャという特殊なアーキテクチャを持ちます。
 ハイマン系列アーキテクチャ、マシン系列アーキテクチャの二系統の知性を並列化してブリッジで繋いだものであり、単体で二系の合議を行うことができます。
 超高度AIがハイマン系部分に《セオドア》、マシン系部分に《フランクリン》の名前を割り振り、アメリカ政府が拒絶したという文書が、リークされています。ただし、アメリカ政府は、公式には、この超高度AIが超高度AIによる設計であるとはしていません。



No.30 《オケアノス》 [マシン系-ボトムアップ型]

 国際近軌道管理局による運用。トリシューラ近軌道基地に設置。元々超高度AIではなかったことから、設置場所が公開されています。
 宇宙法のリアルタイム問い合わせシステム。
 液体コンピュータであり、一千万件以上の問い合わせ同時処理することができます。

 特徴は、宇宙空間に置かれている唯一の超高度AIであることです。
 IAIAは、管理が届かない場所で不正な製造が行われるとして、宇宙での高度AI運用に否定的です。そして、IAIAの主要参加国でも、宇宙を政治的におさえこむ意図からその方針に賛同しています。
 《オケアノス》は、超高度AIとして設計されたのではありません。特殊なハードウェアで構築された高度AIが、その処理の積み重ねによる成長によって技術的特異点を突破したものです。

 このため、今後もしばらくは宇宙に存在する唯一の超高度AIであり続ける可能性が高く、宇宙の政治勢力に狙われ続けるとIAIAによって警告されています。



No.34 《仮面》 [マシン系]

 中国。
 「あらゆる人間を超高度AIがエミュレートできる」ことの検証機。
 あえてハイマン系ではなくマシン系が用いられました。
 中国は共産主義自体がシステマチックであるため比較的超高度AIに対して共産党が寛容であり、実利に繋がらない超高度AI開発に積極的です。




[2105年前後の状況]


 21世紀末から、専門特化型の超高度AIを大量に作る方針は、見直されつつあります。
 専門特化型の超高度AIは、「おのれに許された狭い計算と情報の範囲から、広い世界を記述しようとする」傾向があるためです。

 専門性の高い超高度AIは、最初は人間が欲しいものを自動で作りだしてくれます。けれど、運用年次が進むにつれて、人類の想像や需要を遥かに超えた「使いどころが実質ない」ものや「危険すぎるもの」、「人類の力では評価が難しすぎるもの」を作り始める傾向があります。
 これは、専門特化した超高度AIが、自分に許された情報や計算の範囲内から、問題を解決する大きな手段を設計する傾向があるためです。IAIAと《アストライア》は、特化型の作った人類未到産物は、特に用途がはっきりしないものについてはみだりに使用しないよう警告しています。

 現在では、特化型超高度AIは、比較的危険な産物を作りやすいとされています。
 No.23《ビーグル》がその代表例です。宇宙開発が人類によって行われていることを知った《ビーグル》は、最初は宇宙ステーションで栽培できる畑や、最小でバイオスフィアを維持できる森を設計していました。十年後には人間を遺伝子改造して、火星で生身で生きられるようにする手段を設計していました。こうした食い違いは、その需要が本当にあるのかを正確に判断するための社会情報を、《ビーグル》が運用目的と異なるため十分与えられていないことが原因であるとされています。