薬物的増強


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薬物的増強


 薬物的増強は、この時代では医療用途で一般的になっています。
 人間拡張の基盤が、医療技術あることを、もっとも強く反映しています。

 もっとも単純な薬物的増強は、内分泌系をアウトソースしてしまうものです。内分泌腺によって身体に引き起こされる反応を、おさえたり任意に引き起こしたりすることができます。
 血圧を上げてはならない患者が、血圧変動したときに自動で薬物を血中投与するスタビライザーが、その最も原始的なかたちです。
 特殊部隊などでは、兵士に自動的にアドレナリン投与するようなケースもあります。

 こうした血中物質のコントロールは、22世紀では一般的なものになっています。血中物質を常時監視して自動投与する技術が一般化したためです。

 この技術の一般化の例は、生活習慣の制御です。
 たとえばダイエットも、血糖値の継続的なコントロールによって、食欲を止めてしまうことが可能になっています。
 飛行機などで地表を飛び回るビジネスマンは、時差で生活習慣を崩さないよう、投与することでいつでも眠れる薬剤も存在します。

 四十代くらいから、継続投与用のリング(スタビライザー)を手首に巻いたユーザーが増え始めます。リングは薬剤を充填する必要があるため、リストバンドくらいの幅があります。
 リングから片腕で最大十種類、両腕で二十種類程度の薬剤投与が可能です。ただし、他種類で使用すると一種あたりの充填量が下がるので、十種類充填している患者は一種類の患者の十倍の頻度で充填する必要があります。
 心臓疾患用の薬剤や、ぜんそく用の薬剤など、症状が出たときに緊急投与する必要があるものの場合は、頻発すると短期間で充填切れすることもあります。

 性的快楽や快楽物質を強制分泌させることも技術的には可能ですが、これは医療機関による診察と処方が必要で、無許可流通は取締対象になっています。



血中マイクロマシン


 血中にマイクロマシンを流すことも、薬物的増強とみなされます。これは、埋め込み機器と違って、尿や汗のようなかたちでマシンが体外に排出されるためです。

 血中マイクロマシンは、強制的に止血したり、身体臓器の動きを外部から制御したりといった医療行為に用いられています。
 これは、人体を機械として扱うことを可能にする技術で、難手術では全身麻酔のかわりによく用いられています。(※)臓器のショック症状を無理やり止めたり、動きが弱まっている臓器を無理やり動かして手術の必要な行程まで持たせたりすることができるためです。
 大事故で緊急手術が必要なケースはで、輸血の血液と同時に投与してしまいます。

(※)全身義体への換装手術もこれに含まれます。

 血中マイクロマシンは医療用途以外での使用は厳しく禁じられています。悪用しようとすればいくらでもできる技術であるためです。
 血中マイクロマシンを使った誘拐・監禁事件など、さまざまな悪用事例が世界中で起こっています。

 血中マイクロマシンは、また、身体中のガン細胞を殺すような用途にも用いられます。
 標識マーカーを打ち込み、これのついたものを破壊するマシンを投与することで、治療困難な病気を治療するものです。こうした微細手術は歴史が長く、人類未到産物としてではなく人類が長い研究のすえに達成した成果です。

 血中マイクロマシンによって、身体改造を行う微細手術も一時は行われたことがあります。
 外科的手術を行わず、血中マイクロマシンに、体内で埋め込み機器を自動組み立てさせるのです。
 これは人類未到産物ですが、悪用すれば人類を、短期間で人類以外の生物に変容させることができる技術であるとして、現在は封印指定されています。
 血中マイクロマシンは「人体を本人の意思によらず体外から操作する技術」であるというその本質を、人々に思い知らせることになりました。