年表

※年表は以後も追加してゆきます。
 これは伏せている部分もありますが、BEATLESSでは物語に関係していない部分はあまり詳細に設定を作らないようにしているため、概略しかまだないものもあるためです。
 現代から『BEATLESS』の舞台となる2105年まで、90年の歩みを大まかにですが設定してるため、年代は20年あるいは10年スパンで区切って記述しています。年表をざっと見るには不適切な記法ですが、ご了承ください。

 なお、ファンタジーでぼかすことが多い現代史からの延長を、曖昧にすると百年後が訳が分からなくなるので作ってあります。アナログハック・オープンリソースは、政治的意図を一切込めていない(長谷個人としては)娯楽作品のための世界観設定ですので、お気に障りましたらご容赦ください。作品にそぐわない場合無視してください。


2010年代~2020年代


 21世紀は、百年間を通して、中国の拡大とその影響が巨大な問題であり続けた時代でした。
 それが「問題」であり続けたのは、中国がもっとも多くの闘争を必要とした国家だったということです。
 つまり、中国の政治体制は共産主義であり続け、共産主義の政体を守るために、ありとあらゆることを行ったのです。

 2020年代までは比較的動きが穏やかであり続けますが、それはアメリカがスーパーパワーとして世界に強い影響を及ぼしていたからでした。
 パックス・アメリカーナは2020年代まで徐々に衰退し、人民元の為替相場制突入によって終了したと言われます。ドルが唯一の基軸通貨(キーカレンシー)であった時代が終わり、ここから先は、アメリカと中国という二つの超大国の相克の時代に入ります。



2011年 中東革命開始

 中東のパワーバランスの大転換が、いわゆる「アラブの春」をきっかけに始まります。地域を変えて断続的に2030年代まで激動の時機が継続しました。
 それは、利権の再配置であり、中東での現在の国境線と民族、そして社会のありようを問う強烈なうねりでした。(参照『世界の状況-革命のネットワーク戦術』)


2025年 冷凍睡眠の技術が創り出される。

 ただし、理論的に解凍可能であるというだけで、蘇生が本当に可能であるかは解凍してみなければわかりませんでした。この最初期の冷凍睡眠は技術的に不完全で、2050年段階でも、この時期の冷凍睡眠者の蘇生率は10%ほどだったほどです。確実に解凍できるようになったのは、2080年代以降を待たなければなりませんでした。


2029年 中国の人民元、為替相場制移行。

 中国のGDPがアメリカのそれにほぼ並んだことを発表。同年、中国が人民元を為替相場制に移行することを発表。ドル基軸通貨体制の終焉。




2030年~40年代


 2030年代~40年代にかけてはアフリカが政治と経済で大きな位置を占めるようになる時代でした。

 北アフリカの軍備と体制が増強されたことにより、北アフリカ諸国が中央アフリカ以内へ影響力を強め始めます。このころからアフリカ大陸内で、北部から中央部への搾取と被搾取の関係が強まります。
 これによってアフリカ民族運動の盛り上がりから、社会運動が激化します。
 北アフリカ諸国が中央アフリカにオフショアすることも増えました。これによってアフリカ全土で工業化が一般化し、アフリカの人口爆発が開始しました。

 つまり、ものを言い政治的・経済的影響力を駆使するアフリカという、世界に初めての状況が現出する時代でした。
 それは、搾取構造のツケを支払う時期が来たということでもあります。

 2030年代以降は、中国がアメリカに対して安全な海洋を獲得しようと圧迫を強めた時代でもありました。基軸通貨としての人民元に翻弄されたアジアに、中国は政治運動家を多く送り込みました。中国の政治的意思を代弁するスタッフを、ありとあらゆる国に公的にあるいは非公式に派遣し、運動を行いました。
 このスタッフにはいわゆるスパイを含みます。

 アジアは重要だが外部であるアメリカに対して、国家の生存に関わる問題である中国は、まさにこの問題に全力を投入しました。
 つまり、危機の時代だったということです。


2032年 朝鮮危機(~2033)。

 北朝鮮の体制危機により、朝鮮人民陸軍が三十八度線を突破。米軍の支援を受けた韓国による実質的な北朝鮮併合。史上二度目の核兵器保有国家の崩壊による、東太平洋大戦勃発の最初の危機。
 中国による朝鮮半島北部侵攻。軍事衝突。(第二次朝鮮戦争)旧北朝鮮地域の南北分割により、北朝鮮は中国の衛星国として存続することになりました。


2033年 ソウル会議。

 朝鮮危機の戦争裁判と、朝鮮半島の非核化が中心議題となりました。人民元を基軸通貨として持つようになった中国が、北京にもっとも近い外国である韓国と北朝鮮をどう扱うかが注目されました。そしてそれは、アメリカでのロビイ活動と韓国国内政治の中国の影響力、二つの力を受け続ける韓国にとって更に厳しい時代のはじまりでもありました。
 韓国は北朝鮮の核兵器を継承することを選択しました。それは北京に届く核兵器を所持するということであり、韓国は非常に難しい政治的舵取りを要求されることになりました。


2040年 世界初の汎用家事ロボット《ナディア》登場。



2043年 中国人民軍、台湾上陸。

 同年、台湾蜂起。米軍の支援を受けた台湾軍による台湾島奪還。同年、ベトナム軍が中越国境を北進。東太平洋大戦勃発の二度目の危機。


2045年 中国、ロシア、軍事同盟(中露同盟)締結。

 東太平洋の軌道エレベーター建設を見越した、ロシアの南方政策開始。同年より頻繁にロシア艦が日本の離島をうかがう動きを見せるようになる。



2050年代(熱狂の50年代)


 『BEATLESS』世界の時代では、50年代というと1950年代ではなく2050年代を指します。
 世界滅亡の緊張感を孕んだ空気を呼吸した世代で、独自の文化が花開きました。
 この50年代の状況が、21世紀末から22世紀初頭にも大きく影響しています。つまり、この2050年代が、後の秩序を決定づけた時代なのです。

 2050年代には二つのことが始動しました。

超高度AIによる知財爆発期開始。

 超高度AIが世界に大きな影響力を持つに従って、その新造を認可するIAIA議会と、審査機関としてのIAIAが大きな政治的位置を占めるようになります。

軌道エレベーターの建造計画が本格始動。

 これにより、軌道エレベーターの建造が予定される赤道地域に資本の投下が始まります。
 軌道エレベーターと宇宙への投資は22世紀になっても、規模を拡大して続いています。


 軌道エレベーターの建造開始は、東太平洋を権益争いの最前線に叩き込みました。
 元々、朝鮮危機と中国人民軍の台湾上陸で熱していた状況が、戦争理由が育ったことによって炎上したのです。
 軌道エレベーターが現実にはインフラ整備工事以外の利益をまったく生んでいないにもかかわらず、建設予定地だったインドネシアのカリマンタン島と周辺地域の奪い合いが始まりました。

 これは中国と、人件費が高くなった中国から生産拠点が移ることで勃興した東南アジアの権益争いであり、海洋にいまだ大きな影響力を持つ日本との再均衡の争いでした。
 そして、20世紀からの超大国アメリカの東太平洋での影響力維持の試みであり、シベリア開発によって東太平洋側の人口が増えたロシアの権益確保の闘争でもあります。

 この東太平洋タワーの建設にあたって、オセアニア地域のイスラム過激派や社会制度不備が大きな国際問題としてクローズアップされました。
 そして、さまざまな政治的意図をはらんだ資本流入の大規模化とともに、政情が不安定化します。
 軌道エレベーターシャフトの建造用地と周辺地域は、元の一千倍以上に土地価格が上昇しました。また、インフラ価格も著しく上がり、施設賃貸料も、周辺地域に比して跳ね上がりました。これが次の資源になり、資源をめぐる新しい戦争が始まったのです。

 東太平洋、アフリカ、南米の軌道エレベーター建設は大きな火種となりましたが、もっとも人類世界を滅亡の危機に近づけたのは東太平洋タワーなのです。

 日本は、シーレーンと軌道エレベーターをまとめて中国に制圧される事態を防ぐため、海軍力の増強を本格開始します。2030年代~40年代にかけての、アメリカの戦線縮小を埋める大きな力を担ったのは日本でした。そして、これは、中国との緊張関係を決定的に強めることになりました。
 アメリカは中国との直接戦争を可能な限り避けようとしました。

 2063年に日本で起こった《ハザード》に、22世紀になっても根強く陰謀説が語られる理由も、この東太平洋権益の激しい権益争いです。

 アフリカでは、2本のタワーの建設案がありました。アフリカ大陸の西側ソマリアと、東側のガボンです。ソマリア建設案はアラブ地域に近いことから、アラブ諸国の金銭的援助が受けられました。ただし、これは「アラブとアフリカのタワー」であってアラブ世界に主導権をとられることに大きな反発がアフリカ諸国で起こりました。

 「アラブとアフリカのタワー」か「アフリカのタワー」かという選択は、2030年代の北アフリカ諸国による中央アフリカへの搾取の歴史の記憶が新しかったため、大きな火種になりました。
 インド洋に面していることからソマリアに決定しましたが、その後に本当のアフリカ・タワーを造ろうという運動が起こることになりました。

 2050年代、世界に初めて生まれた超高度AIは大きなインパクトと可能性を見せつけます。No.10まで世界中で建造された最初期の超高度AIは、この厳しい時代に大きな輝きをいくつも生み出したのです。



2051年 米国にて、最初のシンギュラリティ突破。

 その後、日本、中国などで相次いで突破を確認。
 シンギュラリティ突破して早々、高度AIによって各種の発見や特許出願が相次ぐ。

同年、東太平洋カリマンタン島にて、軌道エレベーターの建造計画開始。


同年、ジャーヴィス島近海にメガフロートを建設してアメリカが軌道エレベーターの建造計画開始。



2054年 第一回、超高度AIによる統合システム会議(オーバーインテリジェンス会議)。

 開催地は非公開。当時アメリカに存在したマシン系・ハイマン系の2系統の超高度AIの3基を接続して、会議が行われました。この会議によって、IAIAの設立が提唱され、その憲章が作られる。《アストライア》の設計が固められました。(参照『IAIA-第一回オーバーインテリジェンス会議』)


2055年 日本再軍備。自衛隊を日本軍に再編。


同年、IAIA設立。《アストライア》の製造、運用開始。



2057年 最初のhIE《マリー》登場。



2058年 インドネシア戦争。(~2059年)

 当時、温暖化によって島が水没し、もともと居住していた場所を失った人々がインドネシアに移民(温暖化移民)していました。2050年代の中国は、この語族の入り交じるオセアニアの諸島に働きかけ、共産主義国家を建国させようとしていました。
 インドネシアは軌道エレベーターの赤道利権を予想して湧き立ち、資本が大規模投下されました。しかも、軌道エレベーターがこの段階では利益などまったく出していませんでした。インドネシア政府にまだ地力がない状態で、自前の軍事力や産業の体力も貧弱でした。
 このため、既存の権力ではリソースを管理しきれない状態になっていました。汚職が蔓延し、貧富の格差が拡大し、その不満を弱い立場であるニューカマーである移民にぶつける状況ができていました。その政情不安定になっていたところを、中国が煽ったのです。
 その分離独立運動に中国が介入したことで、小さな火種は当事者達がまったく想定していなかったほど巨大なものとなりました。中国、北朝鮮、韓国、日本、ベトナム、タイ、マレーシア、フィリピン、インド、パキスタン、オーストラリア、アメリカが参戦し、大半の予想を裏切ってロシアは中立を宣言しました。21世紀を通して最大の海戦が行われたのはこのインドネシア戦争です。
 世界大戦に発展する直前まで世界は一度至ったのです。
 戦争は分離派の敗北によって終結しました。カリマンタン島の軌道エレベーター周辺を国際共同統治とするよう主張した中国の訴えは退けられ、インドネシア領のまま軌道エレベーターは建設されました。


2060年 日本ではhIEの一般使用がはじまる。


同年、軌道エレベーターの建造開始。




2060年代~2070年代


 2060年代~2070年代は、超高度AIの時代でした。
 人間には解決できなかった問題を、超高度AIに補助あるいは解決してもらったのです。
 この60年代~70年代が、超高度AIがもはや人類にとって不可欠のものであることを、実体験をもって世界中の人々が知った時代になりました。

 ただし、2060年代からは、超高度AIの製作ペースが遅れることになります。(参照『超高度AI』)
 その能力を世界中が思い知ることになり、現在ある格差からの逆転をかけて凄まじい開発競争やスパイ戦争が起こることになりました。
 それはIAIAが大きな影響力を持つようになる過程でもありました。

 60年代から70年代にかけては、インドネシア戦争のような複数国家が参戦する大規模戦闘は行われませんでした。
 これは、人間による政治がそれを食い止めたという部分もあります。けれどそれ以上に、超高度AIによる政策補助や経済補助の影響がありました。

 超高度AI保有国は追い詰められるほど超高度AIに頼る傾向があり、超高度AIにはそれを解決するだけの能力がありました。そしてこれは、国の世論を戦争に向けて駆り立てる圧力を確実に下げたのです。
 同時に、超高度AIを限定的にしか使っていなくとも、そのリソース管理と兵站管理の能力を見るだけで、「超高度AIを駆使した全面戦争」が、核戦争以上の地獄を現出しかねないことは明らかだったのです。

 超高度AIが受け入れられ、社会の中で大きなリソースを自動化することになったのは、危機の時代があってのことです。
 特に人口爆発を起こしたアフリカは、自動化なしでは人口を支えられませんでした。


2063年 東京で"ハザード"発生。(参照『ハザード』)

 東京湾を震源地とする巨大地震によって東京が機能停止し、そこから社会を維持回復するため日本政府が超高度AI《ありあけ》を制限から解放しました。
 それは世界史上最初のインフラへの超高度AIの無制限接続事例であり、最大の超高度AI漏出事件でした。
 日本は経済的な壊滅をまぬがれました。"ハザード"の埋蔵金と言われる金脈が発生していたためです。
 すでに南洋の政情不安の時代が一触即発の状態であり、中国の海洋進出を抑制する大きな力であった日本が機能停止したことは、世界大戦への第一歩であると考えられていました。
 中国の為替相場制移行に並ぶ、時代のスタートを切った歴史的事件であると考えられています。


2067年 たかちほ疑惑

 ハザードによって、2067年頃まで日本の東太平洋における影響力は著しく下がっていました。そして、これによって中国の海洋権益の拡大を止めることが至難になり、軌道エレベーター建設地域への軍艦の侵入が日常的に行われるようになりました。第二次インドネシア戦争が勃発するのは時間の問題であると言われていました。
 そうした緊張を世界中で感じられるようになっていた2067年、日本の新造超高度AI《たかちほ》の建造認可が下ります。これは、日本の研究機関による設計とされるもので、完璧に設計図と資材が揃っており、超高度AIとしてはスピード建造されます。
 中国はこれを《ありあけ》の遺した設計による、超高度AIによる超高度AI開発事例だとし、認可の取り消しと再調査を求めました。これは認められず、中国はIAIAを激しく非難しました。この後、IAIAと中国は約二十年にわたって暗闘を戦うことになりました。


2068年 hIEの外見標識が廃止される。

 アメリカと日本で法律がかわり、hIEの顔が、製品ごとのおそろいではなく登録制になる。

同年、《たかちほ》完成。運営を開始。

 同年より日本での《ハザード》からの復興が本格開始する。超高度AIによる復興計画の策定および実行が行われることになります。


2071年 リスボン会議。人間型ロボットにおける自律能力向上の危険が指摘される。(参照:『hIEとクラウド-リスボン会議』)


同年、デリー会議により、オーバーマンがAIであるとみなされるようになります。(参照:『IAIA-《アストライア》によるオーバーマン審判』)



2074年 スマートセルが完全に人間の手で再現される。

 これによって《人類未到産物》でなくなった自動給電システムが一気に普及することになります。スマートセル以前と以後では、おもにバッテリー重量の関係でhIEの重量は大きく変わっています。




2080年代~


 2080年代~2090年代は、安定の時代です。

 超高度AIによって、あるいは人類がその産物と向き合うことで獲得された富を、人類が享受する時代に入ったということです。エネルギーリッチの時代は、この時代以降になってからです。
 パックス・アメリカーナの次に来たのは、次なる人類国家ではなく、超高度AIによる平穏であったのだとも言えます。

 そして、2080年代以降は宇宙の時代でもあります。宇宙コロニーの建造は、軌道エレベーターの運行業務開始以前に始まっていましたが、移民が本格的にスタートしたのはこの時期です。
 火星や木星への到達はすでに始まっていましたが、採算に乗って宇宙開発が加速したのは軌道エレベーターの運行開始後です。

 22世紀初頭には、もう移民二世が早い場所では参政権を得ています。
 すでに人類の新しい試練は、今度は宇宙と地球の間で始まっています。



2083年 完全クラウド制御の《Humanize-W》登場


同年、ミームフレーム社、《ヒギンズ》のシンギュラリティ突破。



2084年 《ヒギンズ》による最初のAASC誕生。

 爆発的にシェアを拡大してゆき、2090年段階で、民生用hIEのミドルウェアのシェアの約90%を獲得。90年までにスタンダードとしての地位を完全に不動にします。


2089年 軌道ステーションの完成およびチェックの終了。軌道エレベーターの商業運用開始

 この軌道エレベーターと宇宙港は同時に建造されました。宇宙施設の大規模な建造開始の時代は、軌道エレベーター以後のことになります。
 もっとも大きな投資対象は宇宙開発であり宇宙施設になってゆきます。
 世界の変動のホットスポットは急速に宇宙へと移ってゆくのです。


2099年 『天動のシンギュラリティ』



2101年 超高度A.I《ヒギンズ》に、ミームフレーム社がデータ退避用の特殊hIEの開発を発注。

 《レイシア級hIE》5体の開発が決定する。同年、一号機が完成。以後、2105年までに5体が開発される。


2104年 『Hollow Vision』



2105年 ミームフレーム社東京研究所爆発事故。『BEATLESS』本編開始。

最終更新:2014年08月21日 00:04