暗号の軍事における位置付けの変化
暗号を干渉するセクションは、軍事の最上位セクションにあります。
以下のような戦訓を学ばされる出来事が、21世紀の間に一通り起こったためです。
- どれほど強力な兵器を揃え、戦略を組み立てても、通信暗号を解読されてしまうとすべてが瓦解してしまう。
- 軍の内部で、自動化兵器の数的、戦力的な割合が増加したため、ハッキングの被害が大きくなりすぎる。
- 暗号を担当する戦略AIが、その管掌する範囲の広さのため、最上位の意志決定に参画する地位を与えないと非効率的である。
いかに軍事リソースを運用するかは、22世紀では高度な暗号によって処理された最重要の資源です。
それを守る暗号の管理責任をとり得るものは、国民の負託を受けた国家の行政府の首長のみです。この時代の人々に、少なくとも民主主義の国では軍の内部に、暗号をまかせることはできないと考えられています。
軍事におけるクラウド利用
暗号の作成セクションには、どの国でも最高水準のコンピュータが使われています。
このコンピュータには「人間に自分の使い方を教えてくれるため」のAIも入っています。
ただし、この暗号セクションのコンピュータはネットワークと物理的に繋がっていません。保安上の理由もあり、同時に人間のコンピュータに対する恐怖からでもあります。
日本の場合は以下のようになっています。
☆は、クラウドを頻繁に利用しているセクション
★は、クラウドを最小限度にしか利用できないセクション
戦略策定セクションとは、内閣や国防大臣ら国務大臣によって構成される、安全保障会議のことです。
日本軍の戦略を計画する統合参謀本部の議長は、専門機関の代表としてこの会議に参加します。ただ、安全保障会議の議長になることはできません。
この会議の議長は内閣総理大臣です。
戦略策定セクションのアクセスしているクラウドと、軍集団がアクセスしているクラウドは別のものです。これらは直接接続はされていません。
「シビリアンコントロールの壁」の上位とは、つまり軍事のみに留まらず外交のような政府機能と直接繋がっているということです。つまり、「政治」の領域のことです。戦略策定セクションは、軍ではなく、日本の政治のために設置されているデータクラウドを上位として繋がっています。
つまり、陸海空軍のような「軍隊」全体は、「シビリアンコントロールの壁」の下位にあるということになります。
これが軍から見るとどういう状況かというと、暗号作成セクションは、一般的な陸海空軍よりも上位にあって、軍隊の都合によって動かせないということです。
この「軍隊」のクラウドにも、上位と下位があり、下位からは上位の情報にアクセスできません。
つまり、軍隊が「上からの命令を下が(否応なく)受ける」という”トップ-ダウン型”のシステムであること自体は、22世紀になっても変わっていないということです。
これは、自動兵器が一般化して、「誰が引き金を引いたのか」という事実を管理する必要があったせいです。
クラウドでありながら、こうした階層分化が行われているのは、情報統制のためだけではありません。
これは、クラウド自体に攻撃をしかけられたとき、場合によっては、上位クラウドの決定で、下位クラウドを切り離すということでもあります。
最終更新:2014年07月19日 00:41