hIEの機能補足


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AASCの更新


 hIEの行動プログラムを作るためのミドルウェアであるAASCは、定期的に更新を行っています。
 hIEを使用してゆくうえで判明した問題点や、社会や技術の新しいさまざまな状況に対応してhIEを安全に動かし続けるには、修正が必須であるためです。人間社会の中で仕事を果たすために、人間自身は個々人で絶え間なく学習や変化をしてゆきます。hIEの場合は、ミドルウェアであるAASCを更新することで世界中の全機がいっせいに変化を果たすのです。

 AASCの更新プログラムを作っているのは超高度AI《ヒギンズ》です。
 《ヒギンズ》は、センサーの塊であるhIEから取得したデータをもとに、このプログラムを作成しています。
 そして、各オーナーがAASCに関する重大な契約違反をしていた場合、《ヒギンズ》はAASC更新のタイミングでこれを察知します。そして、この違反がライセンス停止にあたると判断した場合、契約者の契約するすべてのAASC更新を停止します。それと同時に、全機体にAASC1(故障機)を割り振ります。

 このAASC更新停止措置を行って裁判になったとき証拠として必要になるため、hIEが記録したデータログは《ヒギンズ》の元で加工されて残ります。
 この取得データおよび加工は、ユーザーとの契約により外に出さないことになっています。

 ただし、このログは、国際機関などから所定手続きで要請があった場合、保存データを提出する決まりになっています。(参照「クローンAASC-AASCの地域性との共存の取り組み」)
 また、犯罪捜査のときにも、所定の手続きにのとって警察や認可機関によって証拠として求められます。この場合も、ミームフレーム社はログ提出を拒みません。

 《ヒギンズ》が作成したAASCの更新プログラムが、ユーザーに適応される手順は決まっています。
 まず「ミームフレーム社東京研究所」「ミームフレーム社アメリカデータセンター」「ミームフレーム社ヨーロッパデータセンター」「ミームフレーム社アフリカデータセンター」といった各研究拠点に送られます。
 そして、その後、各拠点が世界中のクラウドサービスに更新を反映し、そこを通して各hIEに更新が適応されます。

 各研究拠点は、それぞれの地域のデータの収集を行い、このデータを分析して各種のレポートを作成します。
 レポート作成が必要になるのは、AASCの更新主体である《ヒギンズ》は、更新プログラムを作るだけで「何のために」「なぜ」更新したかというレポートを作成しないためです。これは、《ヒギンズ》が人間の行動の意味判断に関わらないようにしているためです。
 行動の意味を判断して「人間の言語で記述する」ことには、どうしても政治性がつきまといます。このため、《ヒギンズ》は社会からの反発を避けるため、この作業を避けるのです。政治的にリスクを抱えるこの更新レポート作成は、政治的に誤ることを許容されている人間の研究者が行います。

 ミームフレーム社は、さまざまなデータを公開しています。ですが、このデータは《ヒギンズ》が編集した生データを、各研究所で公開のために再整理したものです。
 ユーザーは普段意識していませんが、AASC更新は常にレッドボックスのまま《ヒギンズ》にプログラム更新され、これを部分的に解析して研究所が更新レポートを出すという手順で行われています。

 また、研究拠点を集中せずにばらしているのは、各研究拠点が災害や戦争などに巻き込まれ、更新プログラムの送信が不通になる可能性を重く見ているためもあります。これは、ミームフレーム社が《ハザード》を経験した日本の企業であることが大きく関わっています。




hIEの標準機能


 hIEは、ユーザーにとっての「外界(外界でするべき仕事)との接続点(インタフェース)」であることを企図しているため、非常に汎用性が高いツールです。
 人間がそばにいる人間に頼むような仕事の他に、さまざまな機械的な仕事を標準機能として行います。
 とはいえ、「さまざま」でも分かりにくいところですので、具体例を以下に記述します。


携帯端末とのデータ仲介


 hIEには、文字メッセージにしたい言葉を口述すると、文書データにして個人用端末に転送してくれる機能が標準でついています。
 これは家庭内に耳が不自由な人がいる場合などの、介助機能の延長にあります。なので、点字や手話変換にも対応しています。

 文字メッセージ変換では、ユーザーが口述し終わると、文面がこれでいいかhIEが尋ねてきます。
 これによって、手と目を筆記や打鍵に使わなくても、ユーザーは「ながら」仕事で文字コミュニケーションを取ることができます。
 これは文字データではなく、紙などにアナログの手書き文書を書かせることも可能です。

 文字メッセージ補助機能として、時候の挨拶などのメールも、ユーザーが文面の意図を話すだけで勝手に作ってくれます。一般家庭で必要な程度の文章作成は標準搭載の機能範囲でやってくれます。
 ビジネス用のクラウドと契約すれば、それこそ文意を斟酌して、ビジネス的な挨拶文の定形や敬語表現も完全に整えてくれます。挨拶状なども完全に手配してくれます。
 ユーザーは、それを最後にチェックして送ればよいようになります。
 標準のままでもある程度個人秘書として働いてくれるということですが、秘書クラウドを入れるとスケジュール管理なども完璧にこなしくてくれるようになります。


hIEを使って、携帯端末を使った通話を仲介することができます。


 hIEと携帯端末とをリンク登録しておけば、携帯の端末に向かってしゃべるようにhIEに向かって話しかけることで、端末を落としたり忘れたりしても通話ができます。

 デジタルデータをスピーカーから出力するだけなので、相手側の声がそのまま聞こえます。好みの声に変換することも可能です。
 通話相手が外国語話者の場合、このとき同時翻訳してもらうことも可能です。速度や信頼性は、hIEの機能ではなく、登録しているクラウドサービスの能力次第です。これ自体は携帯端末も専門のクラウドサービスに登録していれば行ってくれる機能です。

 手話を、手話のわからない相手に音声言語に変換して伝えるような、上述の「データ仲介」機能と連動を行うこともできます。

 ビデオ通話のかわりに、相手側の仕草を真似て演じるhIEを相手に、会話するように通話することもできます。相手のかわりに、hIEに通話相手を代替してスキンシップをとってもらうことも可能です。



家内の家電を集中制御する母艦として使用できます。


 22世紀初頭の家屋には、ユーザーが「風呂を焚いて」「掃除して」「掃除して」などと簡単な命令をすると自動的に適切な家電を働かせてくれる機能がよく備え付けられています。
 これを家内エージェントというのですが、hIEは標準でこの家電と連動して家内エージェントとして働く機能を持っています。

 これは、hIEが、家電機能だけでは間に合わない仕事を、実際に機体を動かして果たす機械であるためです。(※)
 たとえば「洗濯終わったらタンスに入れておいて」という命令をユーザーがした場合、hIEは家内エージェントとして洗濯機と乾燥機を動かします。そしてその後、hIEの機体を動かして、人間がするように乾燥機から洗い物を出して畳んでタンスに入れます。
 ユーザーからの単純な命令を果たすために、こうした連動が必要になります。そして、この連動は、そもそも家内の各種道具と連動する機能がなければ達成不可能なのです。

(※)AASC更新が頻繁に行われるのは、この家内エージェント機能のために、新製品に対応しなければならないからでもあります。

 機体によっては、家内でなくしものをしたとき、この家内エージェントの機能を利用して、自動で探しておいてくれます。こうした小さな機能は日本メーカーが得意としていて、余計な機能がてんこもりになったhIEが小さな気づかいに見える仕事をしてくれています。




hIEと人間の見分けかた


 hIEは、人間と同じかたちをしていますが、慣れた者であれば人間と見分けることは可能です。

 一番わかりやすいのは、AR(拡張現実)機能のついたカメラなどを通して機体を見ることです。
 hIEの識別機能をオンにすると、AR表示で型番などのデータが表示されます。携帯端末のカメラなどを通すとhIEにはマークがついて見えます。

 そして、22世紀初頭の都市では、hIEの目をふくめてあらゆる場所に画像データを撮影しているカメラがあるので、目の前の人間型のものが人かhIEかを知るのは簡単です。

 慣れた者は、目に生気があるかないかで見分ける場合もあります。目に生気がないものは、メンテナンス不良や行動管理クラウドの選択の結果そうなっていることがあるためです。(※)
 AASCで書かれたhIE行動プログラムは、hIEに生気のない言行をとらせるようにはなっていません。機体やカスタムクラウドで特別な理由がない限り人間そっくりに見えるはずなのですが、hIEのカメラ(視覚器)位置は眼球だけではないので、目の動きが人間のそれと一致しないことがあります。
 また、目がメンテナンス不良であることは、頓着しないユーザーの機体ではわりとあります。

(※)生気のない目をさせるのが趣味な人がカスタムクラウドでそうさせることも可能です。

 hIEをよく見る職業の者などは、「歩く」ような基本動作からある程度見分けることもできます。これは、AASC標準の動きが整いすぎているためです。
 AASCは標準の状態では汎用品であるため、各hIEの骨格に合わせて特徴的な歩き方を個別にさせられるわけではありません。なので、hIEの外見だけではなく、動きを丹念に観察するとだんだん「普通の人間とは違う」ことが感じられてきます。
 歩き方や立ち方に人生や生活を感じさせることは、よほど凝ったカスタムクラウドに接続しているのでない限り不可能なのです。

 逆に、高級品はそういうところまで完璧にやり遂げます。高級品は骨格や容姿、あるいはユーザーからオーダーしたキャラクター性に合わせた仕草の集合であるカスタムクラウドとセットで納品されます。
 なので、動きを注意深く観察しても、かなり自然に見えます。
 これは、どこまでやるかで価格が大きく変動する、趣味から芸術の域に突入する世界でもあります。
 「突き抜けた高級品」は、見ているとそう察することができるように作られていることがよくあります。これは、仕草のひとつひとつの選択が、最高級メーカーのプライドをアピールする要素であることの表れでもあります。



hIEのジャンクとカスタム文化


 hIEにおいても、パーツをばら売りしたり部分的に交換したりするジャンクやカスタムの文化は存在します。

 hIE機体検定証の取得(参照「hIEに関連する規則-法律的なhIEの取扱-所持登録」)も必要であるため、hIEのジャンクやカスタム品取り扱いは、自動車のイメージで考えていただけるとよいと思います。つまり、多くのユーザーはカスタムを取り扱いません。
 車で言うと、インテリア(hIEでいうところの初期の髪色の変化くらい)までなら変更するユーザーはわりといるのですが、シャーシやエンジンに手を加える(hIEでいうと骨格や人工筋肉など)ユーザは限られるのと同じようなイメージです。
 hIEのカスタムは、まさに人生を吸い尽くされかねない、泥沼のような趣味人の世界です。

 たとえばカスタムhIEで、カタログスペックでAASC2(子供並み)の機体を、AASC4(アスリート並み)までチューンして、見た目とギャップのある能力にしている愛好家は、探せばいます。(※)
 外見と性能を一致させないのは、よくあるカスタムパターンです。AASC5(専門職用hIE)が取得できるところまでチューンすることは、ほとんどありません。高額になりすぎるためです。

(※)外見を裏切るパワフルな幼女や少年型のhIEは、常に一定の趣味人需要があります。趣味人の間ならば、見ると「ああなるほど」と100%近く判別できるようなアーキタイプは少なくとも数十種類存在します。

 hIEのカスタムは、免許なく普通のユーザーが取り扱いできる組み込みが簡単なもの以外は、専用の整備工場やカスタム工房に出します。整備工場はhIEの普及に伴って増えています。

 hIEも、ユーザーが整備を持ち、適切な整備施設を使えれば、ユーザー整備や大きなユーザーカスタムを行うことも可能です。
 ただし、整備免許、整備施設ともにハードルが高いため、趣味を盛り込んだユーザーカスタム機で機体検定を通させるのはとても大変です。(※)
 このため、趣味を満載したユーザーカスタム機は、マニア間でも一目置かれる、好事家の夢でもあります。
 趣味の世界としてのチューニング屋やカスタム文化もありますが、人生を左右するものだと覚悟がいるほど金銭的ハードルは高いです。

(※)検定不通過となった機体は、再検定に通過するまで公共の場に出すことができません。整備免許があると自分で整備施設で微調整すれば済むのですが、そうでもない限り、カスタム店に出し直して再調整を通るまで続ける財布に厳しい苦行か、趣味調整をあきらめるかの二択になります。このため、あきらめて自宅敷地内だけでクローンAASC制御で趣味のカスタム機を使用するユーザーもいます。



性的サービス機能のあるhIEの取扱(この項目のみR-15くらいに考えてください。不快に思われるかたは、読み飛ばしたほうがよいかもしれません。)


 性的サービス機能のあるhIEは、18歳未満への販売が禁じられています。
 また、オーナーが18歳未満の人間にこれを使用することも法的に禁じられています。これはhIEのセンサーと記録媒体の情報が証拠として提出され、証拠隠滅のため機体が破壊されていた場合はミームフレーム社に問い合わせてAASC更新基礎データまで遡行して証拠が集められます。
 性的サービス機能の未成年への使用禁止には、hIEのインフラとしての信用を守るという社会公益があり、厳しい判決が出ることが普通です。場合によってはhIEを道具にした強姦罪がオーナーに適用されるという、非常に重い判決が出ます。(※)

(※)このhIEを使用した性犯罪に対する罰は、社会公益におけるhIEの位置付けがその重さに強く関係しています。hIE自体の社会的立ち位置が弱いイスラーム圏では、オーナーが極刑を受けることもあります。ゆるいのはAASC更新データを第三者が参照できないことが決められている中国で(参照「クローンAASC-NOTE「上海疑惑」」)、裁判をコントロールできていれば微罪で済みます。

 性的サービス機能の有無はhIEに表示機能があります。これは、プライバシーのため非表示にできるのですが、警察や認定機関に対しては非表示にすることができません。チェック用のコードを読み取ることで、簡単に判別できます。
 警察も欺瞞できる偽装コードも売られてはいます。ですが、これ自体がそこそこ高額で、しかもこれの使用は刑法犯罪です。なので、中高生が使うようなものではありません。

 中学高校や塾の教員のような、18歳未満の人間が集まる場所で扱われるhIEには、性的サービス機能がないものを用いるのが普通です。代理労働契約(参照「hIEに関連する規則-代理労働許可免許」)で雇い入れる場合にも、セックス機能のあるアンドロイドは、これを取り外さないと採用できないことが普通です。(※)
 これは、学校で用いられていた性的サービス機能があるhIEを、学生が勝手に使用した事件が発生したためです。hIEは人間を傷つけないように行動するため、押さえつけられて抵抗しきれないケースがよくあるのです。

(※)アンドロイドに人権を認めるべきだという人々は、この問題は人間側の節度で対処すべきであり、取り外し措置をhIEに強いるのは人権侵害だと抗議しています。ただし、措置が見直される気配は現状ありません。

 代理労働契約で仕事をしている最中にhIEが乱暴されるというケースは、しばしば起こっています。
 ただし、hIEは監視機器とメモリーの集積体であるため、この事実をオーナーが知ることは容易です。
 代理労働契約では、業務外のことにhIEを使った場合は賠償を支払うことが記載されているのが普通です。このため、乱暴されたhIEのオーナーは、この賠償を求めることができます。ただし、hIEに対するこうした行為は、hIEが物品であると扱われるため、人間に対してそうした場合のように刑法犯にはなりません。

 民事裁判では、「ユーザーがhIEによってアナログハックされていて特別の感情を向けている」ことを証明できれば、犯人に対してユーザーの心理的打撃に対する慰謝料を請求することができます。この慰謝料は最大で機体金額です。このため高級機への性的被害では非常に高くなる傾向があり、賠償額と慰謝料合わせて2000万円以上をユーザーに支払う判決が出た例もあります。

 hIEに対する暴行は、民事裁判としては重い判断が出がちです。これは、刑法犯にならないとはいえ、「人間型のモノ」に対する蛮行であるためです。犯人は、抑止する力が働かなければ人間に対しても同じようにすると考えられていて、たいていの国で犯人は警察の要注意リストに載ります。
 民事裁判の判決が強めに出るのも、警告的意味合いが強く、判決時に犯人は警告を受けます。

 ただ、オーナー側からするとこうした被害はないにこしたことがないため、ハードウェア上で性的サービス機能をロックできる機体が存在します。
 これはオーナー体験を重視する高級機で出始めた機能で、オーナー以外に対して性器を使用可能な状態にしないことで被害を防ぎます。
 ただ、こうした機能は、性的サービス機能を「おまけ」ではなく主機能としてきちんと織り込んだ設計の機体のものです。(※)オプションでつけるかカスタムするかしない限り、一般普及している家庭用の機体にはついていません。

(※)高級機なら必ず標準でついているという機能ではなく、標準でついていてもオーナーが取り外してしまうケースもあります。