た行


■ターミナル・ユニット

都市のマスターサーバーに寄生している敵性ユニット。マスターサーバーの電子捜査に対抗するため、犠脳体技術を用いて人間の脳を相互共有ターミナル化したもの。サードアイ及び脱走した特甲猟兵はこのターミナル・ユニットを転送システムとすることにより、マスターサーバーを解さず転送兵器を使用可能にしている。

■〈太公望(タイコンワン)〉

中国人民解放軍が開発した最新鋭ステルス戦闘機。その機体はアメリカが<トロイの木馬>作戦でスーダン国内に墜落させた米軍最新戦闘機を中国が自国技術で再現したもので、フライト解析プログラムを補うため儀脳体技術が応用されている。<太公望>とは戦闘機のコードネームであると同時に、儀脳化された六人の子供たちの小脳とAIによる統合人格の名前でもある。戦犯法廷の最後の証人であり閉廷後に解体されたはずであったが、テスタメントシュピーゲル1では極秘裏にターミナル・ユニットとして利用されていたことが判明する。

■第二作戦部隊

〈特憲(コブラ)〉と共に内務大臣直轄の部隊として独立した特殊部隊。憲兵隊ベースの〈特憲〉と違い、こちらはオーストリア軍特殊部隊がベースとなっている模様。隊員の装備はほぼ〈特憲〉と同じだが、最新のアームスーツを導入するなど独自の兵科を所有している。(※初出はオイレンシュピーゲル壱だがその時点ではBVT直轄の部隊と言及されていた)

■〈待望の会〉

〈アンタレス事件〉に関わった七つのテログループのひとつ。日本人難民から分離した超過激派組織で、世界中の過激派に連体を呼びかけている。原子炉の運搬過程で陽動のため市内各地で爆弾テロを起こし、被爆した構成員たちは次々と自決。主犯格のヨーコ・イマムラも逮捕後に死亡したため組織は壊滅した。

■煙草は三十五歳から

作中におけるオーストリアの法律では、成人年齢は三十五歳と定められており、煙草の服用が認められるのは成人してからである。『吸うな危険』。煙草は大人になってから吸いましょう。

■〈タフタ〉

〈アンタレス事件〉に関わった七つのテログループのひとつ。国際法で禁じられた違法な科学技術を売り物にする犯罪組織。プリンチップ社製の巨大トレーラーを所有し、世界各地を放浪している集団。幅広い年齢層の女性のみで構成され、ロマ(ジプシー)を自称している。アンタレス事件では人工衛星を落下させる方法を考案し、核兵器の製造技術提供や儀脳体摘出手術を行うなどその高度な技術で暗躍した。

■〈蟲(チオン)〉

正式名称:第31機械工兵営団。中国軍の非公式部隊。黒孩子のみで構成され、蛇腹型の刃のような義肢〈擁刃肢(ヨーレンツー)〉を駆使する。空港占拠事件において亡命した戦闘機の破壊、パイロットの暗殺のために表れた。蛭雪を大隊長とし、その配下として蟻骨(イークー)・蛾風(オーフェン)・蚤影(ツァンイン)ら3人の小隊長が存在している。

■ツェンタウアー

BVT及び〈特殊憲兵部隊〉の使用する軍用機体。四本の脚部と二本の腕を持つ、いわゆる他脚戦車。名前はケンタウロスのドイツ語読み。別名〝コット・ロール(フンコロガシ)〟。

■停電デー

聖週間の聖水曜日にミリオポリスで催されるイベント。もとはオーストラリアのシドニーで始まった市民運動で、地球温暖化の危機と防止を訴える節電イベント。ミリオポリスでは60分間特定区域の電力が停止され真っ暗になる。特に第二区、第二十二区、第二十六区は地区全域が暗闇に包まれる。

■〈テューポーンの黒い舌〉

プリンチップ社が開発したスパイプログラム。解析不能な言語を発し、発見不能と評される高度な暗号プログラムである(マスターサーバーのみ対抗できる)。七年前の〈クーデター事件〉で猛威を振るい、2016年の各テロ事件でも使用されBVTのシステムに寄生していた。テスタメントシュピーゲルでは電子犯罪者サードアイもこのプログラムを使用し、特甲児童たちを情報汚染の脅威にさらしている。

■テロ戦争

21世紀初頭から少しずつ広まっていった、世界中が平和でありながら戦時状況下にあるという状況。テロを世界的な戦争とみなしたとき、戦争をしていない国家は存在しないことになった。テロ戦争が産み出す経済効果の影響で世界的に未成年兵士が増加する一方となり、2016年現在の未成年兵の総数は全世界で140万人にのぼる。

■転送塔

転送兵器の転送システムを司る構造体。超伝導体とメリアー体からなる増換筒によって構成され、この転送塔に登録された兵器の構成情報が<転送>されることによって数百キロ先でも転送兵器が出現する。転送塔へのアクセス権を持つのはマスターサーバーとそれに脳機能を接続できる接続官(コーラス)のみである。

■透過防壁

特甲児童が使用する一種の光学迷彩。周囲の空間に展開される皮膜が光を透過することで肉眼及び電子索敵からも発見されない透明人間化する。しかし、光を百パーセント透過してしまうと使用者の視力も無になるため、その場合は別の索敵手段に頼る必要がある。

■特甲(トッコー)

〈特殊転送式強襲機甲義肢〉の通称。凶悪化するテロ犯罪に対抗するため開発された転送兵器であり、メリアー体によって構成される。マスターサーバーからの〈転送〉によって開封された情報に従い、手足のメリアー体が造換されることで特甲構造が出現する。転送兵器なので破損しても〈再転送〉により何度でも修復可能。転送兵器と特甲児童は製造管理顧問トマス・バロウ、設計開発顧問ルートヴィヒ・数馬・メンデル、発案研究顧問テオ・カラス、心理開発顧問フィッシャー・フォン・ポラックら、5人の技術者によって開発された。

■特甲児童(トッコーじどう)

〈特甲〉を与えられ、治安維持にあたる機械化児童の総称。
機械化児童のなかでも優秀な者たちが軍及び治安組織からスカウトされ、特甲児童となる。
特甲児童の体と機甲は複数のマスターサーバーによる合同設計とされる。戦闘時には脳内チップによって痛覚を無(オフ)にすることができ、また過酷な戦闘に適応するため人格改変プログラムが適用された(しかしその後問題が発覚したため現在は使用されていないとされる)。男子の特甲児童はそのほとんどが軍属となり海外に派遣され、国内の治安組織には女子の特甲児童が所属することとなった。現在オーストリア国内には30余名の特甲児童がいるらしい。

■特甲レベル3(トッコー・ニヴォードライ)

戦時状況下並に脅威が増大した場合に許可される〈特甲〉の高度兵装。戦争用の装備であり、絶大な戦闘能力を持つ。レベル3は地上戦術型のレベル1、空中機動型のレベル2を発展させた技術が用いられ、兵器開発局の発案課が軍の特甲レベル3を、設計課が治安組織の特甲レベル3を設計したらしい。またレベル3はあくまでも試作プランであり、完成形である特甲レベル4へ到達するための足掛かりに過ぎない。

■特甲猟兵(トッコーりょうへい)

軍に属する男子特甲児童のうち、特甲レベル3を基本装備とする数名が〝特甲猟兵〟として登録されている。〝猟兵(ヤークトコマンドー)〟とはオーストリア軍における特殊部隊員の称号である。絶大な戦況影響力を持つ特甲猟兵は最高機密扱いであり、レベル3を使用する事からより強力な人格改変プログラムが適用され、単独での派遣が基本とされている。それでも特甲猟兵は戦地で次々と異常をきたし、脱走を招く結果となった。

■ドナウ川

ミリオポリス市内を南北に横断する大河。ヨーロッパの複数国を流れる国際河川である。ミリオポリス(旧ウィーン)では度々増水による水害が起こったため、その対策として19世紀に〝ドナウ運河〟が作られた。現在も度重なる治水工事により川幅は増大され続けている。第二十二区には現在の主流が造成されてた際に旧流が三日月湖の形で残されたアルテドナウ(旧ドナウ川)が形成されている。さらに第二十一区から第二十二区にかけての区間は河川が二重に流れており、東側の流れはノイエドナウ(新ドナウ川=水量調整用に造成された放水路)と呼ばれている。また近年では遊覧船による観光業のほか、川岸を造成した人工海水浴場が作られ人気を博している。

■ドライクローネン社

ミリオポリス第二十二区に本社を構える大手警備会社。軍隊経験者が多数所属し、充実した装備と誠実な勤務態度で好評を得ていたが、実は〈白き盾(ヴァイスシルト)〉の下部組織である極右グループ〈純粋兵士(ラインゾルダート)〉の巣窟と化していた。

■〈トリアイナ〉

〈戦犯法廷事件〉後にMSSが導入した新兵科。名前はギリシャ神話の海神ポセンドンが持つという三叉の槍に由来する。マスターユニット車両と呼ばれている。戦闘における電子戦強化のために導入され、情報汚染源への電子攻撃によって現場の特甲児童をサポートする。〈アイギス〉が電子の盾なら、こちらは電子の槍。

■〈トロイの木馬〉

コントロール可能な兵器をテロリストに与え、その追跡と操作を目的とした秘密作戦及び使用される兵器に使われる暗号名。主にアメリカの主導によって行われる。名前の由来はギリシャ神話に登場するトロイア戦争で英雄オデュッセウスが攻略に用いた巨大な木馬から。

な行


■内的導引性ビジョン

特甲児童の脳内チップが作り出す幻覚の一種。特甲児童たちを正しい方向へと導くビジョンであり、状況の好転や様々なヒントをもたらす一方、幻覚に飲み込まれることによる危険性も示唆されている。過去の記憶や深層心理を表す色、または文字や数字となって現れる。

■内的隔離性ビジョン

特甲児童の脳内チップが作り出す幻覚の一種。外的心傷(トラウマ)が恒常化したもので、心に映し出された精神的ショックや負の記憶によるビジョン。脳内チップが心の不具合を修正しようとして作り出した幻であり、その正体を判明させることによって消去できるのだという。隔離性ビジョンを発生させた特甲児童は悪夢をみている時に近い心理状態となり、揺籃状態による暴走を引き起こすトリガーとなる。

■ナルシスト数

自然数のうち各桁の数を桁数だけ乗算した和が、元の数に等しい素数。ナルキッソスタイプの脳内チップにはこのナルシシスト数を法としたセキュリティが使われている。

■ナルキッソス・シリーズ

米国の開発した脳内チップのプロトタイプ。頭蓋骨の骨数(29)をそのまま用いたことから二十九式とも呼ばれる。CIA時代にサードアイが被験者となりこのタイプの脳内チップを移植している。

■〈ニーベルング〉 NEW!

三台のグライアイのうち〈恐ろしい(デイノー)〉号に搭載されている犠脳ユニット。その正体は鳳の弟たちを含む、かつて〈インフィニティ〉教団に囚われていた信者の子供たちの脳を繋ぎ合わせた初期型のユニットであった。名前の由来はワグナーの舞台劇『ニーベルングの指環』から。

■二十五番街

ミリオポリス第二十五区の東部に存在するスラム街。黒人系の労働者移民たちの住居が密集し、ぞんざいな管理から街が荒廃しスラム化してしまった。が、市政は都市内にスラムは存在しないと公言し事実上放置されている。

■二五二五署

二十五番街ゆいいつの警察署。オーストリアの全警察組織がBVTの下部組織として再編された際も独立自治を歩んだただ一つの警察署であり、BVTや市政も不干渉の姿勢をとっている。職員は差別的な暴力警官ばかりであり、その実態は白人至上主義集団〈ローデシア〉の巣窟である。

■ヌースドルフ・ホーフ

ミリオポリス第十九区の白人向け集合住宅地。二十一世紀初頭に国際路線の成功による移民者の増加によって市政が見直され、市民の生活向上を名目に建造された市営団地だったが、低予算による手抜き工事や住民の勝手な増改築によってスラム化寸前の環境になった。その実態は〈ローデシア〉団員のアジトと化している。

■〈眠りながら目覚める者〉

ポラック博士が〈魂〉理論のレポートで提唱していた概念。脳内チップの機能を司る素数のひとつであり、61が〈眠りながら目覚める者〉の座である。脳内チップにおいて〈身代わり〉を司る数位でもあり、またマスターサーバーに脳を接続する接続官たちを指す。

■脳内チップ

特甲児童の脳に移植されているインプラントチップ。脳内チップの機能によって特甲児童は機械化義肢や特甲など本来人体に存在しない構造体や、電子的に感覚を〝接続〟することが可能となった。さらに理論上はあらゆる構造体を人体の一部として受け入れることが可能とされる。脳内チップを移植している人間は特甲児童だけでなく、機械化手術を受けた人間や軍の被験者となった人間などにも移植されている模様。また脳内チップ技術を用いることで脳死者を覚醒できる可能性についても研究がなされていた。

■〈脳の中の小人〉

カナダの脳外科医ペンフィールドが提唱した、大脳皮質の運動野・感覚野と人体部位との対応関係。これを図にするとあたかも脳内に人体の各機能を司るホムンクルス(小人)がいるように見えることから〝ペンフィールドのホムンクルス〟〝脳の中の小人〟〝運動野のホムンクルス〟の名で呼ばれるようになった。これによると人体の各機能は脳内の23の運動野と29の感覚野によって制御されているとされる。(一般的な説では運動野は22だが、シュピーゲルシリーズでは23と説明されている)

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最終更新:2017年01月27日 00:09