夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

音無結弦&アサシン

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 思えば、俺はここに来る理由なんてものはないんじゃないか、と考えていた。
 俺は最期には報われた人生を送ることができて、何の間違いか迷い込んでしまったあの世界でも報われた人生の気持ちを知ることができた。
 そこには何の未練もなく、皆と笑いあいながら消えることができたはずだ。新しい人生を歩むはずだった。
 だが、それでも。俺は最後の最後で初めて後悔というものを覚えて。
 そして俺は―――

◇ ◇ ◇

 視界に映る光景は実像を伴って眼球に飛び込んでくる。だがそれは実体を持ちながらもどこか空虚さに満ちており、もしかするとこれは夢なのではないかとさえ思えるほどに現実感が欠けていた。
 その理由が何なのか、鬼気迫る勢いで階段を駆け下りる少年は知っている。
 偽りの世界、聖杯戦争。漫然と授業を受けていた最中に突如として流れ込んできた記憶の奔流に喘ぎながら、少年はかつての記憶と新たな知識を獲得していた。
 ならば突如として教室を飛び出し、必死の形相で駆けるのは何故か。戦争というものに巻き込まれたが故の恐怖か、来る戦いに向けての高揚か。はたまた錯乱した故の狂気か。
 いずれでもない。彼にあるのは後悔と渇望のみ。

「ハァッ……ハァッ……間違いない、あそこに……!」

 息を切らせ少年が向かうのは、学校の敷地内にある中庭だ。
 緑が茂り、授業中である現在は誰もいないはずの場所。常であるなら到底立ち入る理由もない場所。そこに自分のサーヴァントがいるのだと何故か強い確信を持って断言できる。
 そして、そこに。
 そこに、その少女は立っていた。

 凛、と澄んだ透明な詩声。
 薫る緑を風に乗せて、臙脂色の服と長い黒髪をたなびかせ、その少女は歌っていた。
 綺麗な少女だった。元の場所でも整った顔立ちの少女に囲まれていた少年でさえ、一瞬我を忘れて見惚れるほどに、その光景は現実と乖離した美しさを持っていた。
 そこには少女の声以外、全ての音が存在しなかった。比喩でもなんでもなく無音の空間に少女の詩声だけが響いている。近くの校庭では今まさに体育の授業が行われているというのに、掛け声のひとつも聞こえてはこない。
 現実感を持たない偽りの世界の中にあってなお現実感のない風景。それは異界の美しさだった。

 古風な響きで綴られた詩は、しかし少年が中庭に入った瞬間に途切れてしまった。見れば、少女はこちらの存在に気付きじっと見つめている。
 少年ははっ、と我にかえり、こちらに視線を向ける少女へと向き直る。
 少女は、ひどく驚いているようだった。

「私が……視えるの?」
「……ああ、見えるよ」

 無音の空間に小さな声が響く。詩声と同じく、少女の声はとても綺麗なものだった。

 もしもこの場に他の誰かがいたならば、このやり取りを不審に思うだろう。
 それは会話の意図が分からないとか文脈がどうこうとか、そういう次元の話ではない。"誰もいないところに向かって独り言をする"など、到底常人のすることではないということだ。

「……だめ」

 しばしの沈黙。少女は悲しげな目をすると、少年にそう呟いた。

「私と関わっては……だめ……見なかったことにして。今ならまだ間に合うから、その手の印を捨てて」

 少女は笑う。それはとても儚げで、とても幼い少女がしていい類のものではなかった。
 あまりにも哀しい、生きる喜びなど遥か彼方に忘れ去ったような微笑み。それは酷く疲れた、消え入りそうな老人のものだ。
 だが、少女のせめてもの懇願に、少年が応じることはできない。

「いや、それだけは聞けない」
「え……?」

 きっぱりと、少年は少女の願いを切り捨てる。
 胸に抱く願いを叶えるために、それはどうしたって聞けない話だった。

「頼む。俺と一緒に来て欲しい」
「だめ……」

 少女が一歩、足を引く。それは明確な拒絶だった。

「だめ……そんなのだめ……それだとあなたは帰れなくなってしまう……堕ちて、しまう……」

 目を閉じ、かぶりを振る少女。

「私は……あなたの力にはなれない……」

 少女の肩を、少年の手が掴む。びくり、と少女の体が震えた。

「それでも―――俺は■■が欲しいんだ」

 瞬間、世界に音が戻った。
 少女の体から力が抜け落ちた瞬間、それまでは耳が痛くなるほどに無音だった中庭に、風や校庭の掛け声と言った雑音が一気に飛び込んできた。
 異質なものへと成り代わっていた世界が、今まさに正常に戻ったかのように。まるで夢から醒めるように。

「……ごめんなさい」

 ふと、泣きそうな声が聞こえた。
 それは眼前の少女から発せられたものだ。その言葉の意味するところは拒絶ではなく、謝罪。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 ひたすらに繰り返す少女を見つめながら、少年は何の言葉も返すことはなかった。
 今更止まることなんてできない。だって俺はこんなにも―――奏のことが好きだから。
 わかっている。これはとても醜いことだ。かつての仲間への冒涜であり、かつての想いへの陵辱であり、何よりも奏自身を穢すことだと誰よりも分っている。
 でも、それでも。
 それでも俺は、奏と一緒に生きていたいんだ。


【クラス】
アサシン

【真名】
あやめ@missing

【属性】
秩序・中庸

【ステータス】
筋力E-- 耐久E-- 敏捷E-- 魔力EX 幸運E 宝具A

【クラススキル】
気配遮断:EX
アサシンのマスターもしくは隠蔽無効化スキルを保有したサーヴァント以外の人物は、決してアサシンの存在を認識できない。
ただし、アサシンを認識できる者からの『紹介』を受けた場合のみ、他者はアサシンの存在を認識できる。また、一度でも認識された場合は以降その人物に対して気配遮断スキルは一切機能しない。
気配遮断というよりは認識阻害に近い。

【保有スキル】
高速詠唱:E
魔術の詠唱を高速化するスキル。
アサシンの場合は詩の技術としてこのスキルが発現している。

童話知識:C
童話や民謡に関する造詣が深い。

神性:E
山の神の眷属であり隠し神と呼称されているが、元は人である上に一般に人が想像する神とは乖離した異質な存在であるため最低のランクとなっている。

【宝具】
『常世の詩』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
隠し神としての力。アサシンが詩を歌っている間に限定して、任意の人物に自身のものと同等の気配遮断スキルを付与する。
ただしこの宝具の対象となれるのはアサシンを認識している者のみである。

『神隠しの物語』
ランク:A 種別:侵食宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000
隠し神としての力。アサシンを認識した者を異界へと呑みこむ。異界に呑みこまれた者は肉体と精神が変容し消滅するが、稀に『できそこない』となって存在を保ったままの状態になる者もいる。
常時発動型の宝具であり、アサシンの意思で止めることは不可能。アサシンのマスターですら例外なくこの宝具の対象となる。
アサシンを認識してから異界に呑みこまれるまでには一定の猶予時間があり、アサシンと触れ合った時間が長いほど猶予時間は短くなる。
この宝具から逃れる術は二つ。一つ目は猶予時間内にアサシンを消滅させること。二つ目はアサシンをできるだけ多くの他者に紹介すること。アサシンと紹介者への認識と記憶が楔となることで紹介者の存在は現実世界に繋ぎとめられることになる。
ただしアサシンを紹介された者も例外なく時間と共に異界に呑みこまれるので、紹介者は定期的に新たにアサシンを誰かに紹介し続けなければならない。紹介される側の人物はNPCでも構わない。
また、アサシンが消滅する際に周囲一帯を一時的に異界に塗り替え、範囲内に存在する全てのマスターとサーヴァントに肉体・精神の変容判定を発生させる。NPCは問答無用で消滅する。

【weapon】
なし

【人物背景】
かつて山の神への慰撫として生贄に捧げられた少女。首を括られ土に埋められたが、その体が異界へと流れ着いたが故に隠し神と成り果てた。
外見や性格は生前のままだがこの世ならざる異質な存在であることに変わりは無い。彼女の意思とは無関係に彼女と触れ合ったものを異界へと飲み込んでいくため、永遠の孤独を宿命付けられている。
性格はいたって善良であり、非常に気弱で人見知り。中々に可愛い。可愛い。

【サーヴァントとしての願い】
人になりたい。

【マスター】
音無結弦@Angel Beats!

【マスターとしての願い】
もう一度奏に会いたい

【weapon】
なし

【能力・技能】
銃の取り扱いはかなり上手い。不死性は失われている。

【人物背景】
記憶のないままいつの間にか死後の世界にいて、半ば強制的にSSS(死んだ世界戦線)に入隊させられた少年。SSSには安全確保と記憶を取り戻すために入隊しており当初は消極的だったが、ある時を境に積極的に関わっていくことになる。
元々は両親がおらず病弱な妹を抱える苦学生であった。妹の病死をきっかけに医療の道を志すも電車事故で崩落したトンネル内に閉じ込められ乗客たちと一致団結するも救助隊が来る直前に死亡した。
記憶を取り戻した後は生前の後悔や未練を綺麗さっぱり無くすことで死後の世界から卒業することを目指し活動するも、最後にほんの少しの迷いが生じてしまう。

【方針】
聖杯狙い



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参戦 音無結弦 000:黄金のホーリーグレイル-what a beautiful phantasm-
アサシン(あやめ)

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