夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

禍津血染花

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未だ、赤々と燃える冬木の空。
橙色で、七回という使用期限付きのインスタントの空。
幻のような雲はやがて霧散し、何も残らないだろう。
坂道を駆け上がると、煌々と照らされる新都が向こう側に見えた。
それを見て、何故かは知らないけれど。長谷川千雨はひどく叫びだしたい気分だった。
もう後戻りはできない。千雨は、改めてその言葉の意味を噛み締めた。
この唾は自分の力で勝ち取った勝利の美酒だ。ぐっと飲み込み、掌をじっと見つめる。
残り一つになった令呪。奇跡への切符に、後戻りという行き先は存在しない。

取り戻そうとして、失うなんて、馬鹿げた話。

そして、取り戻したいと同じく願った少年はもういない。
他ならぬ自分の足で、戻れるはずだった最後のラインを踏み越えてしまった。
殺したのはパンタローネ。だが、引き金を引いたのは自分だ。
総ては泡沫、あの輝かしい日々も、自堕落に孤独を貫く日々も永遠に返ってこない。
長谷川千雨の臨んだ明日は手の届かぬ場所へと掻き消えた。
だから、やり直す。
手が届かぬなら、届くように調節したらいい。
歪めることができない因果なら、無理矢理に元通りにする奇跡で凌駕したらいい。

何をしても、どれだけ失っても、長谷川千雨は奇跡を諦めない。

やるしかない。否、やらなくちゃいけない。
その為には外道になると決めた。
死んだ彼らが望まずとも、自分が望んでいる。
こう在りたいと焦がれる日常を、強く。

「四の五の言ってられる程、余裕はねぇ。それはわかるな、ランサー」
「それぐらい、わかっているさ」

手段を選んで、勝てるならそれでいい。
だが、自分達はそうではない。
どうにか崖っぷちで踏みとどまり、運良く生きながらえているだけだ。
それぐらい、自分達は細い糸のような道をうまく渡り歩いてきた。

「はっ、上出来だ。今の私達は正直言って、いいカモだ。
 お前はボロボロの死に体、私は令呪一個でブーストはできねぇし、魔力を補給するのがやっとな肉人形。
 勝率? んなもんはどこにもねぇ。このまま黙ってたら間違いなく、負けちまう」

今からやることは人の道では到底許されることのない外道な行為である。
クラスメイトやネギが見たら即座に止めるであろうこともよく承知だ。

「だから、少しでも勝率を上げなくちゃいけないし、お前の負傷も治していつでも戦えるようにしねーと、次がねぇ。
 のんきに自然回復だの抜かしてられる余裕は捨てなくちゃな」
「…………つまり、君は――」

それでも、奇跡をこの掌へと引き寄せる為ならば。

「ああ。魂喰いでもして、魔力補給だ。人を喰え、ランサー」

無辜の人間を犠牲にすることですら、迷わない。












その家族は幸せだったと言えるだろう。
経済的にも、精神的にも。何の不自由もなく、仲睦まじく日々を過ごしていた。
母親に、父親。少女が一人に少年が二人。
騒がしくもどこか温かみのある毎日。ずっとこんな日常が続いていく。いつかは離れる時が来るだろうが、今はまだその時は遠い。
そう、信じてきた。
けれど、最近はその日々にも陰りが見え始めた。
最近、少女の様子がおかしいのだ。学校へと行かず、部屋へと引きこもる。
様子を見ても、曖昧な態度でごまかし、無理に笑顔を作って煙に巻かれてしまう。
どうしたらいい。
家族の誰もが少女を心配し、思案する。
少女が抱えている悩みすらわからない以上、やれることなんてほとんどなかった。
だが、黙って見ているだけなんてできない。
どうにかして、少女には立ち直って、元の明るい姿へと戻って欲しい。
なので、少女には内緒で、仕事終わり、学校の帰宅時、少女を除く家族はこっそりと集まって、彼女の好きなフライドチキンを買って帰ることにした。
ケーキやポテトといったものも添えて、家族皆で軽いパーティーでも開いて。

【未央】が喜んでくれるといいな、と笑い合いながら。

太陽が落ちそうな帰り道。
彼らは、どうやって盛り上げようかと侃々諤々と喋っている。
そして、その声には陰りなんてなく、彼らの真摯な思いがこもっていた。
けれど。彼らは何も気づかぬ者。生贄ですらないただの舞台装置。
日常の裏側に潜んでいる悪意に気が付かぬまま。
この世界が偽りであること、少女が本当の家族ではないことを知らぬまま。

――白髪の化物が彼らを狙っていることを知らぬまま。

一瞬だった。何の訓練も受けていない一般人など、白髪の彼からすると赤子のようなものだ。
這い出る触手による刺突は彼らの生命を寸分の狂いなく刈り取った。
無残にも潰れてしまったケーキに、血と混ざり合ったぐちゃぐちゃのフライドチキン。
そんな残骸に目をくれず、白髪の彼は無表情で新鮮な彼らの肉を食い散らかした。
これで、もう戻れない。
正真正銘、越えてはいけないと考えていた境界線を踏み越えてしまった。
偽りの人間であろうが、これもまた立派な人殺しだ。
本物ではないとしても、彼らはこの世界で確かに生きていた。
聖杯戦争とは関係がない日常で、幸せを享受していた。
そんな彼らを、自らの目的の為に犠牲にした。
これは何の言い訳もできない、外道の行いだ。
報いを受ける覚悟はある。されど、黙って受けるつもりなどない。
思い描く理想の結末が手に入るまでは、彼らの覚悟はもう止まることはないだろう。

「食い終わったなら、行くぞ」
「…………っ」

今日この日、聖杯戦争は、一つの家族を奪った。
一つの主従は、目的の為に何かを犠牲にする覚悟を手に入れた。
誰も望んでいないとわかっていながらも、彼らは奇跡への欲求を抑えきれない。
禁忌と呼ばれるモノであっても、大切な人達が還ってくる可能性が僅かでもあるならば。
迷えない、否――迷わない。



【C-4/一日目 夜】

【長谷川千雨@魔法先生ネギま!】
[状態]魔力消費(中)、覚悟、右腕上腕部に抉傷。
[令呪]残り一画
[装備]なし
[道具]ネギの杖(血まみれ)
[金銭状況]それなり
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に生き残り聖杯を手に入れる。
1.もう迷わない。何も振り返らない。
[備考]
この街に来た初日以外ずっと学校を欠席しています。欠席の連絡はしています。
C-5の爆発についてある程度の情報を入手しました。「仮装して救助活動を行った存在」をサーヴァントかそれに類する存在であると認識しています。
他にも得た情報があるかもしれません。そこらへんの詳細は後続の書き手に任せます。
ランサー(金木研)を使役しています。

【ランサー(金木研)@東京喰種】
[状態]全身にダメージ(回復中)、疲労(大)、魔力消費(大)、『喰種』
[装備]高等部の制服
[道具]なし。
[思考・状況]
基本行動方針:誰が相手でも。どんなこと(食人)をしてでも。聖杯を手に入れる。
1.もう迷わない。何も振り返らない。
[備考]
長谷川千雨とマスター契約を交わしました。




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ランサー(金木研)

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