夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

千鳥チコ&アーチャー

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匿名ユーザー

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「居んだろ、おとぎ話に。ふわふわで、きらきらで、世界が皆味方してくれるような、そんなお姫様」

  居酒屋の一角。
  テーブルを挟んで女性が二人。
  ショートボブのババアが、グラスを傾けながら見目麗しい女性に語りかける。

「私もアレだったんだよ。小さい頃はさ、王子様が居て、幸せな未来があって」
「でも、女ってイヤなもんでさ。歳食ってババアになる内に、変わるんだ。お姫様から、その昔大嫌いだった、しわくちゃしゃがれのヨボヨボ魔女に」

  麗しい方の女性は、ただ粛々と枡に注がれた酒を呷る。
  相槌を打たず、目も伏せているが聞き流しているわけではない。
  ただ、耳を傾け、心を聴いている。
  女性の弓がババアのために引かれるのを良しとするか否かを見極めるために。
  即ち、ババアが美女のマスター足りえるかどうかを見定めるために。

「子どもの頃、魔女見る度に思ってた。『こいつらはなんでこんなひどいことするんだろう』って。
 でも、二十歳超えて、三十路越えて、四十に差し掛かろうってなれば……ぼんやりわかってくる」

  ババアは続ける。

「魔女は輝かしい未来がないんだ。老い先短いし、あとは劣化してくだけだから。
 だから、『現在(いま)』に縋って、醜くても足掻き続ける。幸せな『現在』をぶち壊されないために」

「『現在』を守るためなら、なんだってする。お姫様に毒盛ったり、子どもを焼いて食ったり、なんでもだ」

  一息置いて、また続ける。  

「そうなった、私も」

  いや、私の場合は過去かと付け加え、一気にグラスを呷る。
  今日三杯目のブランデーのロックが飲み干された。

  ババアはグラスを置き、深くため息をつく。
  その息には女性らしさや艶っぽさは欠片もなく、ただ、時間が彼女に残した澱だけが積み重なったような。そんな溜息だった。

  傍にあったデキャンタからグラスに氷をひとつ補充するとブランデーの瓶を傾る。
  グラスの八割が琥珀色に染まる。
  溶け始めた氷とブランデーの間に出来たセピア色に、過去の自分を眺めながらババアは言葉を続けた。

「私の人生、どん底のどん底だった」

「好きな男にフラれ、そっから急転直下、真っ逆さま」

「アイツの残した将棋を指しながら、どん底で生きて、どん底で死んで、その上更にこんなところに呼び出されて」

  どん底。
  この表現に誰も文句は言わないだろう。
  一人の男のせいで彼女の人生はどん底のどん底だった。
  その男と出会わなければ、ババアだってそれなりの恋をして、それなりの失恋をして、それなりの相手を見つけて、それなりの結婚をして、それなりに長生きして死んだだろう。
  だが、出会ってしまった。
  世界を変えるほどの恋をしてしまった。
  分不相応な愛でその身を焼きつくし、鬼天使は空を飛べなくなってしまった。
  輝かしい幼少期に人生の絶頂を迎え、あとは四十まで急転直下の真っ逆さまにどん底の底まで落ち続けた。
  一人の男のせいで人生は狂いに狂い、これっぽっちの幸せも掴めずに生涯の幕を閉じた。

「でも、それでも」

「やり直しは願わない。何百回、何千回、何万回やり直したって私は谷生(アイツ)に惚れるだろうし、谷生は振り向かないだろうからね」

  その目には、確固たる意志が宿っている。
  あの男を愛した自分に間違いはない。
  あの男が愛さなかった自分に間違いはない。
  そう心の底から信じているような瞳だ。

  あの男を愛さなかったようにしてほしい、なんて願いは届けない。
  だって、幼い彼女の身を焼きつくした恋心は、たしかに彼女の世界の中心だったから。
  あの男に愛された自分にしてほしい、なんて願いは届けない。
  だって、将棋以外を愛するアイツなんて、そんなもの、ガワだけが同じ偽物だから。

  ふ、と自身のあまりに乙女チックな『決心』を鼻で笑い、グラスを持ち上げながら口を開く。

「アンタさ、こんな話聞いたことある? 風が吹けば、桶屋が儲かるって話。なんか色々あって儲かるってやつ」

「いえ、存じませんわね」

「つまり、世界ってのはつながってるってことなんだよ。
 今アンタが死ねば私が死ぬように、世界ってのはどんだけ離れてても繋がってるのさ」

  詳しく説明するのは骨が折れるので、触りだけ説明して本題に入る。

「例えば、風が吹いただけで、桶屋が儲かるとして」
「例えば、中国の蝶々の羽ばたきが、カリブでハリケーンを起こすとして」

「誰かの人生がやり直されたら、どれだけの影響が出る」

  世界は綿密に絡み合っている。
  今日の石ころが、明日の株価を大暴落させる。
  昨日のふとした無駄遣いが、未来の自分の無限の資産を築く。
  何かのきっかけで何かが崩れ、新しい何かが生まれる。
  世界はそんないくつものつながりでできている。
  だとすれば。

「誰かの人生が、終わったはずの私の人生を、どれだけぶち壊す」

  変わる。変わる。変わってしまう。当然、変わってしまう。変えられてしまう。
  ババアが折角吐き出した『やり直さない』という意志が、誰かのせいで捩じ曲げられてしまう。

「ふざけんな」

  一言。

「もっかい言うぞ、『ふざけんな、この野郎』だ」

  更に一言。  

「振り向かれずに捨てられて、アイツのせいで惨めに死んだとしても」

「谷生との数年間が私の全てだ。全てなんだよ」

  彼女にとって谷生との数年間は、『全て』だ。
  彼女がコップだとするなら、その九割は血よりも濃い『谷生』で埋まっている。
  それが、消える。誰かの勝手で消える。空っぽになってしまう。
  折角やり直さないと誓ってまで守ろうとしたものが消される。そんなの許せるわけがない。

「あの数年間を消されるくらいなら、死んだほうがマシだ」

  だからババアは。
  ふわふわな『お姫様』として未来に夢を見るのではなく、醜い『魔女』になって『お姫様』たちを虐げることを誓った。

  ま、もう死んでんだけどさ、と付け加えて一口酒を飲み、更に続ける。

「私の願いは一つ」

「『アンタら全員の願いなんか知ったこっちゃない』
 『ただ、アンタらのやり直しのせいで、私の人生が狂うってんなら』」

  グラスをテーブルに叩きつけ、宣戦布告をする。
  相手は、聖杯でも参加者の誰かでもなく『やり直しの聖杯戦争』それ自体。

「やらせるかよ」

「私の人生壊させるかよ」

  あの数年を、誰かの勝手で消させたりしない。
  幸せな思い出を、誰かの幸せのために消されてなるものか。

「いいか、覚えとけ。私の願いは一つだ」

「『やり直しの聖杯戦争なんて望んだヤツら全員のやり直しの願いを全部押しのけて、くだらない願いを願ってやる』」

  『やり直させない願い』。
  それは明確な、『やり直しの聖杯戦争』とそこに望みを抱いて来た参加者へのアンチテーゼ。
  しかし、誰も彼女を咎めることは出来ない。
  それこそが、彼女のやり直し『への』願いなのだから。

  全てを聴き終わった美女は、す、と深く息を吸うと、ずっと見え隠れしていた『それ』にまつわる彼女の感情の発露をこう評した。

「恋する乙女のパワーは無敵ですわね」

  ババアと美女。
  生まれた年代も、生きてきた世界も違う。
  共通するのは性別だけ。でも、性別が同じならば、通じるものがあるのだ。

「そんな可愛いもんじゃないさ」

  ババアはにやりと口の端を持ち上げて、顔に皺を一層深く刻む。

「私のはしわくちゃで、おいぼれで、よぼよぼで」

「それでも醜く、前を向いて未来を夢見る若者に一撃食らわせようとする、『ババアの意地』さ」

  美女が口を抑えて笑う。
  ころころと、まるで鈴を転がすような声で笑う。
  ババアとはあまりに違いすぎるその見た目に、もう一度軽く笑って。
  今度は目の前の美女に、その心を問うた。

「アンタの方は、あるの? 願い」

「……そうですわね。実は私(わたくし)も願いなんてありませんの。やりたいことはあらかたやって来ましたし」

  美女はその昔、天下を統一し泰平した。
  可愛い妹分と共に全国を行脚し、何不自由なく生きた。
  満たされ、惜しまれ、死んだ。ババアとは真逆の最期を迎えた。

「ただ、今の貴女の言葉で、決めましたわ」

  ただ、それでも。ババアの感情の大きさが理解できる。ババアの本気が納得できる。
  美女がグラスに添えていたババアの右手に自身の左手を重ねた。

「力を貸させてください。綺麗な過去を守りましょう。
 やり直しがどうとかより、そっちの方が面白そうですし!」

  握られた手を眺めながら、いよいよ酔いが回ってきたババアが冗談を飛ばす。

「……言っとくけど、そっちのケはないからね」

「あらあら残念。ですが、貴女も私の守備範囲からは遠すぎますわ。もう三十歳ほど若くなれません?」

  ババアが初めて愉快げに、声を上げて笑う。  
  つられて美女がころころ笑う。
  二人で少々笑ったあと、今度は美女の方から切り出した。

「それで、もし優勝したら何を願うんです? 下手な願いじゃ意味が無いんでしょう?
 過去も未来も変わらないような願い、あります?」

「じゃあ、そうだね……この平和な日々が続くことでも祈っとくか。無難にさ」

  ババアは飲みかけの酒の入ったグラスを突き出す。
  それは、無骨ながらもババアが生まれるはるか昔……美女の最盛期たる時代から続いていた風習の一つ。

「ふふ、その願い、いい感じですわ!」

  彼女のサーヴァントも枡を手に取り、差し出す。

  齢40を数えるババア、千鳥チコ。
  天下泰平を成し遂げたアーチャー、今川ヨシモト。

  共に願いは、『世界平和』。

  一人のババアの我儘。
  他者の願いを踏みにじり、それでも過去に縋り付き。
  魔女のごとき分厚い上っ面を隠すための偽の願い。
  ただ、今はその願いに―――

「願わくば、天下に永く平和のあらんことを」

「そして、私の人生が、どん底のままであるように」

            ―――乾杯。


【クラス】
アーチャー

【真名】
今川ヨシモト@戦国乙女

【パラメーター】
筋力D(A) 耐久D 敏捷C 魔力B 幸運A 宝具C

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:E
そもそもが戦国武将であるため、魔術的な防御に関する逸話が少ない。
そのため対魔力は最低ランクである。

単独行動:B
戦国武将として、単騎で敵陣に乗り込みつづけて遂には天下泰平を成し遂げた武将。
マスターからの魔力供給を断っても48時間の現界が可能である。

【保有スキル】
海道一の弓取り:A
日本でも指折りの弓の名手としての逸話から来たスキル。
視力補正の『千里眼』と命中補正の『正射必中』、射程距離補正の『弓神の加護』の効果がそれぞれ同ランクで得られる。
更に彼女に使いこなせない弓はなく、他人の宝具であろうと弓ならばその真価を引き出して扱うことが可能。
そして弓を武器として扱う場合、筋力にプラス補正が付く。

陣地制圧:A
天下統一を成し遂げた武将に与えられるスキル。
他者の陣地に踏み込んでその場にいる人物を打倒した場合、その陣地をそっくりそのまま自身のものにすることが出来る。
キャスターならばまさに陣地を、霊脈上に陣地を張っている人物からはその霊脈の主導権を奪える。

可愛いもの好き:A
可愛いものに目がない。
可愛いものを攻撃する時筋力にマイナス補正が付く。
これは性格から来るスキルであるため外すことは不可能である。

ファッションショー:A+++
ファッションショーをいたしますわ!
他の女の子や自分の服装を自由自在に変更することが出来る。
選べる服装は制服・スッチー・ナース・水着・女教師などなど様々。
ただし行動に制限の付く装飾品(手錠・足枷など)を付けることは出来ない。あくまでコスプレ鑑賞用。
つまりこのスキルは可愛い女の子にコスプレさせてカワイイヤッターする以外特に効果はない。

【宝具】
『烈風真空破』
ランク:E 種別:対人 レンジ:10-99 最大捕捉:5
物凄く気合を込めた矢を放つ。
その破壊力は甚大。一時的にアーチャーの筋力をAランクまで向上させる。
魔力消費がかなり低く、マスター不在の状態でも最大三発まで撃てる。

『烈風翠嵐葵時雨』
ランク:C 種別:対城 レンジ:1~99 最大捕捉:999
空に魔法陣を描き、その魔法陣に魔力のこもった弓矢を放つことで魔法陣中の魔力を解放。
魔力が無数の弓矢となり天上から降り注いでくる。
その範囲は広大、その威力は強大、敵本拠地の砦を一撃で壊滅させるほど。『烈風真空破』と同じく一撃がAランク相当の破壊力となる
ただし、本来は発動に魔術師(徳川イエヤス)の補助が必要であるため、この聖杯戦争でも制限なしでの単独発動は不可能である。
単独で発動する場合は令呪一画による魔力ブーストが必要。
キャスター・魔術師もしくはそれに類する人物が協力した場合、相応の魔力消費が必要。

『榛名』
ランク:B 種別:― レンジ:― 最大捕捉:―
卑弥呼が時読の眼の力を込めた、それを手にすれば天下の覇権を得られると言われている勾玉。
勝負の節目にその真価を発揮する。その効果は『未来予測』。
魔力を消費して数十秒先までの未来を正確に察知し、その察知した未来に関して過去の段階から干渉できる。

【weapon】
弓矢。つよい。
短刀。よわい。

【人物背景】
パチンコ戦国乙女シリーズのキャラクター。お気楽極楽破天荒お嬢様。
特にこれといった設定はない。絵とセリフを聞けばだいたい分かる。詳しくはwikiのセリフ欄で。
担当曲『トキメキ一途』が流れ出すと打っている人間が直視できなくなる。
出典はパチンコ戦国乙女2の天下泰平後。
ちなみに誤解されがちだが戦国乙女・戦国乙女2・戦国乙女3・パチスロ戦国乙女と戦国乙女~桃色パラドックス~は別世界である。
把握のために戦国乙女~桃色パラドックス~を見たりはしないように気をつけよう。




【マスター】
千鳥チコ@ハチワンダイバー

【マスターとしての願い】
私の人生の全てを消させない。

【能力・技能】
鬼モードと呼ばれる超集中能力。
人が死に瀕した時、通常の数十倍・数百倍の集中力を発揮して逃げ道を探る。
それを意図的に引き起こすことによって局面を読み、まるで未来予知のような読みの深さで敵の戦術を読み解く。
ただし、これを使うには魔力が必要。しかもアーチャー現界よりも高い魔力が必要となる。
発動する時間に応じてゴリゴリ魔力を消費していき、終いには魔力枯渇で死んでしまう。

【人物背景】
世界中の将棋指しから愛されたが、世界一愛した人の愛は得られなかったババア。

【方針】
やり直しなんか願うつもりはさらさらない。
でも、誰かが何かをやり直して、その結果谷生との時間がなくなるというのならば話は別。
優勝して、その後聖杯に『世界平和』かなんか、そのへんのテキトーな願いを込める。

アーチャーの燃費の良さを利用して宝具によるヒットアンドアウェイ戦法を用いる。
アーチャーは中~遠距離での戦いで一番実力を発揮できる。近づかれたら即逃走くらいの勢いでいいだろう。
マスターであるチッチは戦闘に覚えがないので近づかれたら何が何でも逃げる。ただしババアの体力で長時間の逃走は不可能。
数人が集まって乱戦してるようなら令呪一画使用して烈風翠嵐葵時雨ぶっ放す。
躊躇はない。ババアは未来を夢見ない。



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アーチャー(今川ヨシモト)

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