工藤俊作&バーサーカー ◆CKro7V0jEc




 攘夷戦争時代──。
 その戦場には、「白夜叉」と呼ばれた、伝説の闘士がいた。

 まさしく鬼のように強かったその男は、敵にも味方にも恐れられていたと言われている。
 実際に戦争に参加していた期間はごく僅かでありながら、戦後も伝説として語り継がれたのは、その強さだけではなく、その外見の所為でもあった。

 着衣が、真っ白なのである。

 白に身を包む事に拘りがあるのか、戦場で白の召し物を羽織っており、またその頭部が全て銀髪であった。これが生まれた頃から銀髪であったのか、それとも染めたものなのか、若くして脱色してしまったのかはわからない。
 敵軍からは当然目立っていたし、特に、夜戦においては恰好の的であったはずだ。これが雪原での戦いならばまだしも、雪原で戦う機会などない。
 更に言えば、斬れば斬るほどにその白は赤黒く汚れていくので、毎度戦いの度に白を纏い続ける理由は誰にも謎であっただろう。

 どうしてそこまでその色に拘るのかもわからなかったが、考えてみれば、彼には、拘りなどなかったのかもしれない。
 ただ彼のずぼらな性格が、適当に選んだ服が偶然白だけだったのかもしれないし、白を派手な色彩と捉えていなかったのかもしれない。

 明くる日も明くる日も、その男は、癖のついた銀髪を血で濡らしながら、戦場で敵を斬り殺し続けていた。
 天人の敵兵の血を被りながらも、男は仲間と共に屍の上を駆けるのである。
 時折、斃れているのが自軍の屍であった事もあったが、それもまた踏まねばならぬ時はあった。
 それでも、刀が折れるまで──いや、仮に折れたとしても、命ある限り、白夜叉は魂で敵を倒し続けるつもりであった。
 それが彼の、「その時」の生き様であった。
 ある恩師を助ける為に。

 切腹か、足掻くかという窮地を味わった事もある。
 仲間か、師かのいずれかの命を選択せねばならなかった事もある。
 戦場は彼に幾つもの選択を提示してくる。普通の人生以上に重い選択をいくつも問いかけ続ける。
 彼は常に自分が正しいと思った方を迷わずに選び続けた。

 その結果、男は戦いの終わりとともに、どこかへと姿を消すという道を選んだのである……。
 それがやはり、その男が「伝説」になった最大の理由であった。
 その後の足取りを知る者がなくなり、話には尾鰭が付いて回っていく。

 名を、坂田銀時。
 この名はほとんど知られていない。
 ここからの事実もまた、ほとんど知る者はいない。

 後の世、銀時は、かぶき町で新しい仲間とともに万屋として生きていたと言われる。
 その頃の彼は、ただのぐうたらな貧乏人だ。
 血なまぐさい剣は木刀に持ち替え、敵が恐れたあの狂気の瞳は死んだ魚の目になっていた。

 しかし、剣術の腕と経験、そしてその魂は尚も、彼の中に残され続けていた。

 戦争を終え、万屋として過ごしているはずの男は、その後もまた何度となく戦いに巻き込まれる事になる。
 それは、週刊少年ジャンプで『銀魂』を呼んだ事のある人間ならば知っている話だろう。
 かつての戦争の面影や、どうしようもない人の情に触れながら──。



 その日も──。
 彼は、あろう事か、この話の読者こそが読むべき週刊少年ジャンプを読んでいた。
 銀時はジャンプの愛読者なのである。白夜叉がジャンプを購読していた事を知る者は後の世には少ない。
 尚、その時、銀時がどんな場所にいたのかは定かではない。
 少なくとも、ジャンプをだらけて読めるくつろいだ空間であり、殺伐とした状況ではない事は確かである。

 特別な出来事は、その瞬間まではなかった。
 しかし、その日、特別な瞬間がその時、その日に来たのは事実だった。

 光、である。


 彼はその時、あまりに唐突に自分の真上に差しこんだ眩い光に、別段驚く事はなかった。
 ジャンプを読んでいたからだろうか。
 ジャンプを読んでいる真っ最中の人間にとって、頭上から唐突にさしてくる光は大した事象ではない。
 あるいは、その光自体が、どこか温かく心地よい光を発し、自然と銀時はそれを受け入れる事ができていたのかもしれない。
 今となってはどちらなのかわからない。

『俺を、呼んでいるのか……』

 太陽でも月でもなく、電灯でも小火でもない。
 それは、視える物でありながら、聞こえる物でもあったような気がする。
 誰かが呼んでいる声のようにも感じられた。

『どうして……今更俺を呼ぶのかねぇ……』

 これが、いつの時かはわからない。
 坂田銀時が生きている時か、死んだ後の話なのか。若々しい時なのか、老いた後なのか。
 少なくとも、白夜叉として戦った過去のある男を欲しているのは確かである。
 その他の情報として、最低限に得られるのは「彼がジャンプを読んでいた事」だけであった。

 それは、歴戦の勇士・「英霊」と認められたから起こった事である。
 戦場中に、敵味方問わず知られ、後の世でも何度も事件を解決してきた男である。
 認められる条件は出揃っていた。

『聖杯……戦争……か……』

 その光が自分をどこに導くのか、彼はその時に悟った。
 そう、これは自分を、ここではないどこかへ導こうとしているのだ──。
 導き手からは感情が見て取れない。
 ただ、自分が導かれる場所に、果たしてどんなものが待ち受けているのかは、わかっている。

 白く、黄色く、暖かく、どこか冷徹な光が銀時をまた新しい戦争へと。
 自分の身体が、全盛期の己の姿へと変わっていく感覚。
 しかし、戦いと仲間とがくれた経験だけは、脳裏に留めながら。

 聖杯戦争──。
 英雄たちの霊を集わせ、魔術師と英霊たちが手を組み、聖杯を狙う戦争に──。




◆  ◆  ◆  ◆  ◆








「──────問おう……お前がこの俺のマスターか」




 ……新宿、歌舞伎町。
 天人たちが現れなかった、彼らとは別の世界のその場で、坂田銀時は、英霊として再臨する事になった。
 もはや、その町には銀時が愛したかぶき町の面影はない。
 しかし、あそこと似て、やはりここも悪徳の栄える新宿歌舞伎町であるという事も、既によく知っていた。

 サーヴァントは召喚されたその瞬間から、その時代の常識を得る事ができる。
 そのシステムにより、銀時は聖杯戦争の存在を前から知っていたかのように感じる事ができたし、自分のクラスや宝具も何もかも頭に入っている。
 正確に全てを把握しているわけではないが、少なくとも、「サーヴァント」として振る舞う事は難なく可能である。

「……」

 英霊・坂田銀時は己が『バーサーカー』のクラスである。──よりにもよって。
 幾つもあるクラスの中で、唯一その人格を捧げなければならないクラスである。
 誰にとっても癪なクラスであろう。しかし、サーヴァントとして召喚された以上はやむを得ない事でもあった。

 マスターの顔を伺う。
 このマスターが、はたして、銀時を『道具』として扱う覚悟のできる人間であったら、実に不味い。
 銀時にとって、面白くない展開になる事は間違いないであろう。

(こいつは……)

 マスターの特徴を順に挙げて見よう。

 少なくとも顔立ちはアジア人のそれだ。おそらくは日本人。
 歌舞伎町らしい黒服だが中身は赤いシャツでどこかコミカルでおかしみがある。
 大きなサングラス。
 アフロヘアーに近い天然パーマは気が合いそうである。
 頭には中折れ帽子を乗っけている。
 銀時でさえ少し見上げるほどの長身。
 頬はこけていてやせ形。
 傍らに置いているのは愛車のベスパ。
 一言で言えば、ダンディズムの化身だ。


 ……あれっ、これテレビで見た事ある。



(優作じゃねェかァァァァァァァァァッッ!!!)



 どう見てもそれは、日本の名優・松田優作なのである。
 よくいる出来の悪いコスプレでは再現しきれない圧倒的なオーラがそこにはあった。
 そのオーラは、最早、ここに銀時を導いたあの光よりも遥かに鋭く大きい。銀時でさえも目を奪われる。
 成人男性である銀時が見下ろされる痩身は、およそ他に再現できる物はいない。
 誰がやってもこれ以上にならなかったあの恰好が、この世で最も似合う人物なのである。

 松田優作、というより、その『探偵物語』における主人公・工藤俊作であった。
 俊作は、もはや優作の代名詞ともいえるあの奇抜な服装の私立探偵である。
 まさか、聖杯戦争の自分のマスターが優作だとは銀時も思わなかっただろう。

(レジェンドじゃねえか! 何が『問おう、お前がマスターか』だよ! 俺がそんな事言える相手じゃねェじゃん!!
 まるっきり俺の元ネタじゃねえかっ!! 折角だからカッコつけようと思ったら、相手が優作とか予想外だよ!!)


 銀時は言い直す事を決める。
 先ほどより少し声を高く、喉より上で声を出すような感じで。
 今からでも間に合うはずだ。
 当の工藤は全く無言であるが、もしかすれば機嫌を損ねるところまでは行っていないかもしれない。
 ここは、もう少しゴマを擦って……。

「あ、あの……すみません。あなたが私のマスターですか。わたくし、坂田銀時と申しまして……ええ……バーサーカーをやっております」

「何、急にへりくだってんだよ」

「えっ、いや、すみません。……あの、良ければサインもらえないかなーと思うんですけど」

 どこから出したのか、ペンと色紙を用意して言う銀時であった。
 サーヴァントからサインを依頼されても、全く動じる事なく、快くそれを受け取る優作、もとい工藤。

「松田優作と工藤俊作、どっちがいいの」

「あっ、じゃあどっちもで」

 いつ練習したのか、さらさらと書き終えた後で俊作がようやく本題に入った。

「で、聖杯戦争でしょコレ。バーサーカー使ってなんか敵倒して願い叶えるんでしょ」

「そうですね。いや、でも、マジで俺優作さんのファンなんで。ええ、できればこのままもっと話したいなぁって……狂化とかはナシに──」

「優作って言うなよ。そろそろシリアスモードに切り替えないとまたスタッフ一同、大の大人がそろいもそろって局のお偉いさん相手に頭下げに行く事になっちまうだろ」



(────やっぱりこいつ本物だァァァァァァッ!!!!)



 すらすらと出てくる長文のアドリブ。普通なら舌を噛んでもおかしくないほど長い台詞がすらすらと頭に回ってくる。
 まさに、銀時が知っている松田優作の『探偵物語』(テレビドラマのやつ)そのままである。

「あ。でも、マジで、狂化とかだけはやめてもらえます? ■■■■■しか喋れなくなったらそれもう銀さんキャラ死んじゃうんで。
 一応主人公なんで。主人公が■■■■■しか喋れなくなったらいくら連載が十年好調でも五週で打ち切りになりかねないんで。もうシリアス一辺倒で原作終わる直前くらいまで進んでるからホントに」

「下ネタ言いまくってると思えば変わらねえよ。ホラ、■■■!! ■■■!! ■■■!!」

「それ狂化じゃなくて、編集のささやかな配慮じゃねェかっ!! どっちにしろ■■■でページが埋まったら漫画としてやっていけねえよ! 今の原作それどころじゃないし!!」

 銀時が言うのも今更であるような気がするが、キャラクター人気が認められて長期連載されていた以上、銀時が狂化したらあらゆる問題が起こりかねない。
 俊作のペースには銀時も狂わされているようだ。

「……まあ、あれだな、ここで会ったのも何かの縁だと思ってさ。とりあえず、ホラ、そこにトルコ(※トルコ風呂。ソープの事)があるし、すっきりしてからこれからの事を考えようじゃないの」

「だから、こっちは少年誌なんだからそういうの駄目だって! ねえ、ちょっとォッ!?」






【クラス】
バーサーカー

【真名】
白夜叉(坂田銀時)@銀魂

【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷C 魔力E 幸運A 宝具B

【属性】
混沌・中立

【クラススキル】
狂化:B
 理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。また、現界のための魔力を大量に消費するようになる。

【保有スキル】
戦闘続行:A
 名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
 往生際の悪さで立ち回る事ができる。
無窮の武練:A+
 ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
 心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
糖尿病:C
 若いうちはなりたくない病気の一つ。
騎乗:G
 原チャリに乗る事ができるレベルの騎乗スキル。

【宝具】
『銀魂』
ランク:B 種別:対人 レンジ:∞ 最大補足:∞
 バーサーカーが持つ侍の魂。たとえ狂化しても失われず、折れない魂の根っこ。
 仲間や人情を愛する心であり、決して失われずに自分の大切な何かを守り続ける。

『妖刀星砕』
ランク:D 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:1~5
 攘夷戦争より後の時代にバーサーカーが仕様していた剣。
 洞爺湖の仙人によって託された刀だと言われ、戦艦や巨大ロボットを前にしても、時として両断する凄まじい強度の木刀である。
 あらゆる化け物じみた強敵もこの刀一本で戦っており、一説によれば辺境の星にある金剛樹で作られたとされる。

【Wepon】
 白夜叉としての衣装(木刀ではない普通の刀含む)

【人物背景】
 攘夷戦争で活躍した伝説の闘士。
 詳しくはwikipedia「坂田銀時」の項目へ。

【願い】
 不明。





【マスター】
工藤俊作@探偵物語

【マスターとしての願い】
 不明。

【能力・技能】
 探偵としての調査能力。ハードボイルド。
 体力あり。知力微妙。愛車ベスパに乗って事件を解決する。
 拳銃を撃つ事ができるのは、やはりサンフランシスコで刑事をやっていた過去からか。でも外国人相手に適当な英語を話す場面も……。
 施錠されているドアを易々と外し、手錠をかけられても素手で外すことが出来る。
 コーヒーメーカーでコーヒーを淹れている様子が見られるが、オープニングでは不味くて吹きだしている。

【人物背景】
 名優・松田優作が演じた日本を代表するハードボイルド探偵である。
 東京都千代田区平河町に工藤探偵事務所を構える私立探偵。ユーモアと自由を愛する男。元サンフランシスコ刑事。
 「コーヒーに砂糖とミルクは入れない主義」、「午前中と日曜日は仕事をしない主義」、「職業蔑視はしない主義」、「手相は見ない主義」、「相手にかかわらず約束は守る主義」「家庭のトラブルは扱わない」など多くの主義を持つ。
 次々とアドリブで設定が増やされていくものの、だいたいwikipediaに書いてあるのでwikipedia参照。
 普段はコミカルで情けない探偵であるが、時折カッコよく決める。
 最終回、急にシリアスな話をはじめ、彼の仲間が次々と殺され、その復讐を果たした後、彼を逆恨みしたレジ店員にナイフで刺される。
 生きているのか、死んでいるのか……。最後に街を歩く彼の姿が映されるが、傘をよく見ると場面によって色が変わっており、ラストシーンの解釈は見た人間によって異なる。
 毎回トルコ(ソープランドの事)に行ってトルコ嬢と事件に関して話したり、なんやかんやで警察に疑われて捕まったりするのがお約束。
 次回予告では、ほとんど話の内容に関係ない予告をダラダラ話す。メタ発言も珍しくない。

【方針】
 トルコ(ソープ)に行く。

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最終更新:2015年01月25日 07:09