第7章:能力値の使い方

6つの能力値は、あらゆるキャラクターの肉体的、精神的特徴をおおまかに描き出すことができる。
 【筋力】 肉体的な力の尺度
 【敏捷力】 素早さの尺度
 【耐久力】 耐える能力の尺度
 【知力】 論理的能力と記憶力の尺度
 【判断力】 知覚と洞察力の尺度
 【魅力】 人格的な力の尺度

 キャラクターは筋骨隆々で洞察力に富んでいるだろうか? 才気にあふれて魅力的だろうか? 機敏で丈夫だろうか? 能力値はこうした性質、すなわちそのクリーチャーの長所と短所を定義する。
 三種の主な判定である「能力値チェック」「セーヴィング・スロー」「攻撃ロール」は、6種の能力値に依存している。本書の「はじめに」において、これらの判定の基本となるルールを説明した。すなわちd20をロールし、6つの能力値のうちどれか1つから得られる能力値修正を加え、合計を目標値と比べるというルールだ。
 本章では能力値チェックとセーヴィング・スローの使用法に焦点を当てて説明する。これらはゲームにおいてクリーチャーのとる様々な基本的行動をカバーする。攻撃ロールについてのルールは第9章で説明する。

能力値の基本値と修正値 Ability Scores and Modifiers

 クリーチャーの各能力値には、その能力の大きさを示す能力基本値(score)がある。この基本値は先天的能力の尺度であるだけでなく、その能力値に関連付けられた活動に対する訓練や熟達の度合いも表わしている。
 平均的な能力基本値は人間(ヒューマン)で10~11だが、冒険者やモンスターの多くは大半の能力値において平均より頭一つ抜けた存在である。能力基本値18は、人が通常到達し得る最高の値である。冒険者の能力基本値は最大で20、モンスターや神性を有する存在は最大で30に達することもあり得る。
 各能力値には、能力基本値から算出される修正値も設定されており、これは-5(能力基本値1の場合)から+10(能力基本値30の場合)の値を取る。「表:能力基本値と修正値」に、能力基本値の取り得る1~30の値に対応する能力修正値を記載している。

表:能力基本値と修正値 Ability Scores and Modifiers
基本値 修正値
1 -5
2-3 -4
4-5 -3
6-7 -2
8-9 -1
10-11 +0
12-13 +1
14-15 +2
16-17 +3
18-19 +4
20-21 +5
22-23 +6
24-25 +7
26-27 +8
28-29 +9
30 +10

 表を参照せずに修正値を求めるには、能力基本値から10を引き、差を2で割る(端数切捨て)。
 能力修正値は、ほとんどすべての攻撃ロール、能力値チェック、セーヴィング・スローに影響を与えるので、ゲーム中はもとになる能力基本値よりも頻繁に使われる。

優位と劣位 Advantage and Disadvantage

 時として、特殊能力や呪文の効果によって、君が能力値チェックや、セーヴィング・スロー、攻撃ロールに「優位」あるいは「劣位」を得ると書かれていることがある。その場合、君は1個余計にd20をロールする。優位を得ているなら、2つのd20のうち高い方の出目を採用し、劣位を得ているなら低い方の出目を採用する。たとえば、君が劣位を得ている判定で17と5を振った場合は、5の出目を採用する。劣位の代わりに優位を得ているのなら、17の出目を採用する。
 複数の条件が判定に影響し、それぞれが優位や劣位をもたらす場合でも、追加のd20は1個より多くはならない。たとえば優位を与えるような有利な条件が二つ重なったとしても、君が振る追加のダイスは1個だけだ。
 もしも複数の条件によって優位と劣位の両方がもたらされるなら、君はそのどちらも得ていないものとして扱い、振るd20は1個だけとなる。これは複数の条件が劣位を与え、優位を与える条件は1つだけという場合でも適用されるし、逆もまた然りだ。こうした状況では、君は優位も劣位も得ることはない。
 ゲーム中に優位や劣位に加えて、たとえばハーフリングの特徴「幸運」のような他のルールによってd20を振り直す場合は、d20のうち一つだけを振り直すことができる。どれを振り直すかは君が選ぶ。たとえば、あるハーフリングが能力値判定に優位を得ており、1と13を振った場合、このハーフリングは幸運の特徴を使って1の出目を振り直すことができる。
 通常、優位や劣位が得られるのは特殊能力、アクション、呪文などの使用による。インスピレーション(第4章参照)もまた、キャラクターのpersonality、ideal、or bondに関連した判定において、優位を与える。DMも、状況がダイスロールに良い影響や悪い影響を与えると判断すれば、優位や劣位を与えることにしてよい。

習熟ボーナス Proficiency Bonus

 キャラクターは、レベルによって決まる「習熟ボーナス」を持つ(第1章にて詳述)。モンスターにも習熟ボーナスはあり、データ・ブロックに含まれている。能力値チェック、セーヴィング・スロー、攻撃ロールについてのルールでも習熟ボーナスを使うことがある。
 習熟ボーナスを、ダイスロールやそのほかの数字に加える際、複数回加えてはならない。たとえば、二つの異なるルールで「【判断力】セーヴに習熟ボーナスを加える」と書かれていた場合であっても、セーヴには1回だけボーナスを加えること。
 時には、出目に加える前に習熟ボーナスを何倍かしたり、数字で割ったりする(たとえば2倍にしたり半分にしたりする)場合がある。たとえばローグのExpertise feature は幾つかの能力値チェックにおいて習熟ボーナスを2倍する。もしある条件が君の習熟ボーナスを一つの判定に対して複数回適用するよう示唆していたとしても、加えるのは一度だけだし、掛けたり割ったりするのも1回だけだ。
 同様に、通常君の習熟ボーナスが適用されない能力値チェックの際には、習熟ボーナスを何倍かできるfeature や効果があったとしても、習熟ボーナスを足すことはできない。0は何倍しても0であるから、そのチェックにおいて君の習熟ボーナスは0である。つまり、〈歴史〉技能に習熟が無いのであれば、【知力】〈歴史〉チェックにおいて習熟ボーナスを2倍にする feature があっても何の役にも立たない。
 一般に、攻撃ロールとセーヴィング・スローへの習熟ボーナスが倍加されることはない。もし feature や効果によってそうなる場合は、上記のルールに従う。

能力値チェック Ability Checks

 能力値チェックは、キャラクターもしくはモンスターが何らかの困難を克服する試みに際して、その生来の能力と訓練をテストするものである。DMはキャラクターもしくはモンスターが失敗の可能性のある(攻撃以外の)行動を試みたときに、能力値チェックを要求する。結果が不確かな時に、ダイスで結果を決めるのだ。
 すべての能力値チェックでは、DMは6つの能力値のうちどれが今試みるタスク(行動)と関係があるのかを決め、さらにそのタスクの難しさを表すDC(Difficulty Class /難易度)を決定する。タスクが難しければ、それだけDCも高くなる。「表:典型的な難易度」にもっとも一般的なDCが示されている。

表:典型的な難易度 Typical Difficulty Classes
タスクの難しさ 難易度
非常に簡単 5
簡単 10
中程度 15
難しい 20
とても難しい 25
不可能に近い 30

 能力値チェックを行うには、d20を振って関係のある能力値の修正値を加える。他のd20判定と同様に、ボーナスやペナルティを適用してDCと比べる。合計がDC以上であれば、能力値チェックは成功である。クリーチャーは克服しようとしていた困難を克服する。さもなければ、チェックは失敗である。失敗したキャラクターもしくはモンスターが目的に対して少しも前進しなかったのか、前進はしたものの何らかの不利益を被ったのかは、DMの決定次第となる。


対抗判定 Contests

 時として、片方のキャラクターもしくはモンスターの試みが、もう片方の試みに真っ向から反する場合がある。たとえば床の上に落ちた魔法の指輪を引っ掴むというような、両者が同じことを試みて、どちらか一人だけが成功できるような場合である。または、モンスターが押し開けようとしている扉を冒険者が閉じようとしている場合のような、いずれか片方が目的を達するのをもう片方が妨害するような場合もそうである。こうした状況では、その結果は対抗判定と呼ばれる特殊な能力値チェックで決定する。
 対抗判定を行う両者は、試みる行動に適した能力値で能力値チェックを行う。このチェックには適切なボーナスとペナルティを全て適用するが、結果をDCと比較するのではなく、両者のチェック結果を比較する。チェックの結果が高かった側の参加者が、対抗判定に勝利し、行動に成功するか、相手の成功を妨害したことになる。引き分け(達成値が同じ)なら、状況は対抗判定の前と変わらない。そのため、引き分けでも実質的にはどちらか勝利する場合もあるだろう。つまり、床の指輪を掴むような対抗判定では、引き分けならどちらも指輪をつかむことができない。扉を開けようとするモンスターと閉じておこうとする冒険者との対抗判定で達成値が同じなら、ドアは閉まったままになる。

技能 Skills

 1種の能力値が表す〝能力”は広い範囲を表しており、「技能」はこうした能力のうち訓練で伸ばせる部分である。つまり、技能はいずれかの能力値がカバーする能力のうち特定の分野を表現しており、個人が技能に習熟しているということは、その分野に対する集中的な訓練を意味している(キャラクターが最初に習熟している技能はキャラクター作成時に決まる。モンスターが習熟している技能はデータ・ブロックに記載されている)。
 たとえば、キャラクターがアクロバティックな離れ業を試みる時も、手の平に物を隠そうとするときも、隠れたままでいようとする時も、いずれも【敏捷力】チェックでそれを表現する。これら【敏捷力】の個々の側面はそれぞれ特定の技能に関連付けられている。〈軽業〉〈手先の早業〉〈隠密〉である。〈隠密〉に習熟しているキャラクターは、【敏捷力】判定のうち、忍び歩いたり隠れたりに関係する判定が特に上手い。
 各能力値に関連する技能は下記の一覧に記載されている(【耐久力】に関連する技能はない)。本章にて後述する各能力値の解説には、その能力値に関連する技能の使用法の例が載っている。

【筋力】
 〈運動〉 Athletics
【敏捷力】
 〈軽業〉 Acrobatics
 〈手先の早業〉 Sleight of Hand
 〈隠密〉 Stealth
【知力】
 〈神秘学〉 Arcana
 〈歴史〉 History
 〈調査〉 Investigation
 〈自然〉 Nature
 〈宗教〉 Religion
【判断力】
 〈動物使い〉 Animal Handling
 〈看破〉 Insight
 〈医術〉 Medicine
 〈知覚〉 Perception
 〈生存〉 Survival
【魅力】
 〈虚偽〉 Deception
 〈威圧〉 Intimidation
 〈演芸〉 Performance
 〈説得〉 Persuasion

 時として、DMは技能を指定して能力値チェックを要求する。たとえば、「【判断力】〈知覚〉チェックをしてくれ」といった具合に。別のケースでは、プレイヤーがDMに対して、技能に対する習熟をチェックに適用できるかを尋ねることもあるだろう。いずれの場合も、技能への習熟が意味するのは、その技能が使えるチェックに対して自分の習熟ボーナスを適用できるということだ。その技能に習熟していない場合は、通常の能力値チェックを行う。
 たとえば、キャラクターが危険な崖をよじ登ろうと試みる場合、DMは【筋力】〈運動〉チェックを要求してよい。キャラクターが〈運動〉に習熟していれば、キャラクターの習熟ボーナスを筋力チェックに加える。キャラクターに習熟がないのであれば、単に【筋力】チェックを行う。


ヴァリアント・ルール:異なる能力値で技能を使う Variant: Skills with Different Abilities

 通常、キャラクターが持つ技能への習熟は、特定の能力値を使った能力値チェックにのみ適用される。〈軽業〉への習熟は通常なら【筋力】チェックに適用される。しかしながら、状況によっては、異なる種類の能力値チェックに習熟を適用することも理屈に合う場合がある。そんな時は、DMが通常とは異なる組み合わせの能力値と技能でチェックを要求する可能性もあるし、プレイヤーからDMに異なる組み合わせのチェックが可能か尋ねてもよい。たとえば、君が沖合いの島から本土まで泳がなければならないとしよう。君のスタミナが足りるかを判定するため、DMは【持久力】チェックを求めるところだ。DMはこのケースでは君の〈運動〉技能への習熟を適用してもよいことにして、【持久力】〈運動〉チェックを要求するかもしれない。君は〈運動〉に習熟しているので、【耐久力】チェックに習熟ボーナスを加えて、通常の【筋力】〈運動〉チェックと同様にチェックを行う。同様に、ドワーフのファイターがむきだしの力を見せ付けて敵を威圧するなら、通常〈威圧〉は【魅力】で使う技能ではあるものの、この場合はDMが【筋力】〈威圧〉チェックを求めるかもしれない。

受動チェック Passive Checks

 受動チェックは、ダイスロールを行わない特殊な能力値チェックだ。この種のチェックは繰り返し行うタスクの平均的なできばえを表すのに使ったり(たとえば何度も隠し扉を探す場合)、キャラクターが上手くやれたかどうかをダイスを振らずに秘かに決定したい時(たとえば隠れたモンスターに気付いたかどうかの判定)にDMが使ったりする。
 ここでは受動チェックで使用する値の計算方法を説明する。
 「10+チェックに適用される修正全て」に加えて、もし優位があれば5を加え、劣位があれば5を引く。この受動チェックの値はゲーム上ではスコアと呼ぶ。
 たとえば、ある1レベルキャラクターの【判断力】が15で〈知覚〉に習熟していた場合、その【判】〈知覚〉受動チェックのスコアは14である。
 【敏捷力】セクションで後述の隠れ身に関するルールは受動チェックのルールを使用する。第8章の探検に関するルールも同様である。

協力する Working Together

 時として、複数人のキャラクターが協力してタスクを試みることもある。その試みを主導するキャラクター(あるいは能力値修正の最も高いキャラクター)は、他のキャラクターによる助力を反映するため、優位を得て能力値チェックを行う。戦闘中にこれを行うには、ヘルプ・アクションを必要とする(第9章参照)。

能力値を使う Using Each Ability

 キャラクターやモンスターがゲーム中で試みるどんなタスクも、6つの能力値のうちひとつがカバーする。このセクションでは各能力値のさらに詳しい説明と、ゲーム内での使用法を説明する。


【筋力】 Strength

 【筋力】は肉体的な力、運動訓練の度合い、キャラクターが発揮する物理的な力の大きさを示す。
【筋力】チェック
 【筋】チェックは何かを持ち上げ、引っ張り、押し、打ち砕くといった行動や、隙間を押し通るなど、周囲に肉体的な力を及ぼすあらゆる行動を扱う。〈運動〉技能は特定分野の【筋】チェックに対する素養を反映する。

 〈運動〉【筋力】〈運動〉判定は、よじ登る、ジャンプする、泳ぐ、等に伴う困難な状況をカバーする。例としては以下のようなものがある。
 ・急な崖や滑りやすい崖を登る、崩れやすい壁面をよじ登る、叩き落とそうとする者に対抗して表面にしがみつく
 ・非常に長い距離を跳び越える、ジャンプの中間点で曲芸をこなす
 ・不安定な水流、嵐の波浪、海藻に覆われた水域などで泳ぎ続ける、あるいは浮いたままでいるために努力する
 その他の【筋力】チェック
 以下のようなタスクを試みるなら、DMは【筋】チェックを要求するかもしれない。
 ・嵌まりこんだ扉、施錠された扉、つっかい棒の入った扉を開ける
 ・戒めを引きちぎって自由になる
 ・小さすぎるトンネルを抜ける
 ・荷馬車に引きずられながら、それに這い上がる
 ・彫像をひっくり返す
 ・転がる丸石を止める

攻撃ロールとダメージ Attack Rolls and Damage
 メイス、バトルアックス、ジャベリンといった近接武器で攻撃を行う際は、攻撃ロールとダメージロールに【筋】修正値を加える。白兵戦においては近接武器を使用して近接攻撃を行う。近接武器の一部は投げて遠隔攻撃を行うこともできる。

持ち上げる、運ぶ Lifting and Carrying
 【筋力】基本値によって、持ち運べる重量が決まる。以下の用語は、キャラクターがどれだけ持ち上げて運べるのかを定義する。
可搬重量(Carrying Capacity) 可搬重量は、【筋力】基本値の15倍である。これは君が運搬できる重量(単位はポンド)を示す。この数字は、普通ならキャラクターがいちいち心配しなくてよい程度には大きい。
 押し・引き・持ち上げ重量(Push, Drag, or Lift) 君は可搬重量の2倍(【筋力】基本値の30倍)までの重量を押し、引き、持ち上げることができる。可搬重量以上の重量を捺したり引いたりする場合、移動速度は5フィートに落ちる。
サイズと重量(Size and Strength) 大きいクリーチャーほど大重量を運べるし、非常に小さいクリーチャーなら運べる重量は小さくなる。中型より1段階サイズが大きくなるごとに、可搬重量と押し・引き・持ち上げ重量を2倍する。超小型のクリーチャーではこれを半分にする。

ヴァリアント・ルール 行動阻害 Variant: Encumbrance
 持ち上げと運搬に関するルールは極めてシンプルだ。装備重量によるキャラクターの行動阻害に関する詳細なルールを望むプレイヤーの為に、以下にルールを記載する。このルールを使用するときは「表:鎧」の【筋力】の列を無視すること。
 【筋力】基本値の5倍を超える重量を運ぶ時、キャラクターは荷重状態(encumbered)となり、移動速度が10フィート低下する。
 【筋力】基本値の10倍を超えて可搬重量以下の重量を運ぶ時には、荷重状態の代わりに重荷重状態(heavily encumbered)となり、移動速度が20フィート低下し、【筋力】【敏捷力】【耐久力】を使用する能力値チェック、攻撃ロール、セーヴィング・スローに劣位を被る。


【敏捷力】 Dexterity

 【敏捷力】は、素早さ、反射神経、バランス感覚を示す。
【敏捷力】チェック
 【敏】チェックは正確に、速く、静かに動く試みや、足場の悪い場所で転倒を避ける試みを扱う。〈軽業〉〈手先の早業〉〈隠密〉技能は特定分野の【敏】チェックに対する素養を反映する。

 〈軽業〉【敏捷力】〈軽業〉チェックは、用心のいる状況で転倒を避ける(氷の薄板の上を走り抜ける)、綱渡りの綱の上でバランスを取る、揺れる船の甲板で立ち続けるといった試みをカバーする。そのほかにも、飛び込んだり転がったり、宙返りやとんぼ返りなどのアクロバティックな離れ業をやり遂げたかどうかを判定するために、DMは【敏捷力】〈軽業〉チェックを求めるかもしれない。

 〈手先の早業〉他人の体に何か物を潜ませたり、自分が身に着けているものを隠すなどの、手品や手先のトリックを行う時は、【敏捷力】 〈手先の早業〉チェックを行う。他にも、他人の財布をスリ取れたか、他人のポケットの中身を抜き取れたか、といった判定のためにDMは【敏捷力】〈手先の早業〉チェックを求めるかもしれない。

 〈隠密〉敵から隠れる、衛兵をやり過ごす、気付かれずに姿を消す、見られず聞かれず誰かを付け回す、などを試みる際には、【敏捷力】〈手先の早業〉チェックを行う。

 その他の【敏捷力】チェック
 以下のようなタスクを行うために、DMは【敏捷力】チェックを要求するかもしれない。
 ・急な下り坂で、大量の荷を積んだ馬車をコントロールする
 ・チャリオットを操って急なターンをする
 ・錠前破り
 ・罠の無力化
 ・囚人をしっかり縛り上げる
 ・戒めをすり抜ける
 ・弦楽器を演奏する
 ・小さい、あるいは精巧な物を作る

攻撃ロールとダメージ Attack Rolls and Damage
 スリングやロングボウなどの遠隔武器で攻撃を行う際は、攻撃ロールとダメージロールに【敏】修正値を加える。また、ダガーやレイピアといった、「技巧的」の特性を持つ遠隔武器で攻撃を行う場合、攻撃ロールとダメージロールに【敏】修正値を加えてもよい。

アーマー・クラス Armor Class
 着用している鎧によって、【敏】修正の一部もしくは全部をアーマー・クラスに加えることができる(第5章参照)。

イニシアチブ Initiative
 各戦闘の開始時には、【敏】チェックによってイニシアチブ・ロールを行う。イニシアチブはクリーチャーが戦闘中に手番(ターン)を得る順番を決定する(第9章参照)。


隠れ身 Hiding
 隠れようとするときには【敏捷力】〈隠密〉判定を行う。見つかるか隠れるのをやめるまでの間、このチェックの達成値が、君の存在の痕跡を能動的に探すクリーチャーの【判断力】〈知覚〉判定との対抗判定に使われる。
 君を見ることができるクリーチャーから隠れることはできないし、(警告の叫びをあげる、花瓶をひっくり返すなどして)物音を立てれば位置を暴露してしまう。透明なクリーチャーは見られることが無いので、常に隠れようと試みることができる。しかしながら、通過した痕跡は残るし、音を立ててはならない点は変わらない。
 戦闘中は、ほとんどのクリーチャーが全方位を警戒して危険の兆候を探っているので、隠れた状態から姿を現してクリーチャーに近づけば、相手から見えてしまうのが普通だ。しかし、特定の状況下では、何かに気を取られたクリーチャーには隠れたまま近づくことが可能で、見られる前に攻撃を行えば優位を得る、とDMが裁定する可能性もある。
 受動知覚(Passive Perception)隠れていても、特に捜索を行っているわけではないクリーチャーが君に気付く可能性はある。DMは【敏】〈隠密〉チェックの結果とクリーチャーの受動〈知覚〉スコア(10+クリーチャーの【判】修正値にそのほかのボーナス、ペナルティを適用。この際もし優位があれば+5、劣位があれば-5を加える)を比べる。
 たとえば、1レベルキャラクター(習熟ボーナス+2)が【判断力】15(修正値+2)と〈知覚〉への習熟を持っている場合、その受動知覚は14である。
 何が見えるのか?隠されたクリーチャーや物品が見つかるかどうかを決める主な要素は、その区域内がどの程度よく見えるのかという事だ。ルール上は軽度の隠蔽もしくは重度の隠蔽という処理になるが、これは第8章で説明されている。



【耐久力】 Constitution

 【耐久力】は健康、スタミナ、生命力を示す。
【耐久力】チェック
 【耐久力】チェックは、あまり一般的ではない。また、【耐久力】に関連付けられた技能も存在しない。なぜならこの能力値が表す「耐える力」は、キャラクターやモンスターの側の積極的な努力というよりも、概してむしろ受動的なものだからである。しかしながら、通常の限界を超えた力を発揮する試みを扱うために【耐久力】チェックを行うことはある。
 DMは以下のようなタスクを行う時に【耐久力】チェックを求めるかもしれない。
 ・息を止める
 ・休憩なしに何時間も行軍や労働を行う
 ・眠らずにいる
 ・水や食料なしに生き延びる
 ・ジョッキ一杯のエールを一息に飲み干す

ヒット・ポイント Hit Points
 【耐久力】修正は、ヒット・ポイントを増やす。主には、ヒット・ポイントのためのヒット・ダイス1個ごとに、【耐久力】修正を適用する。
 【耐久力】修正が変化したら、ヒット・ポイントの最大値も、1レベルから変化後の修正値だったかのように変化する。たとえば、4レベルになった際に【:耐久力】基本値を伸ばして修正値が+1から+2に増えたとすると、ヒット・ポイントは1レベルから【耐】修正値が+2出会ったかのように修正される。そのため、1~3レベルで得たヒット・ポイントに3ポイントを加え、さらに新しい修正値を使って4レベルのヒット・ポイント増加を決める。別の例として、7レベルで何らかの効果によって【耐久力】基本値が下がり、その結果として【耐】修正値が1下がったとすると、ヒット・ポイントの最大値は7点下がる


【知力】 Intelligence

 【知力は】精神の鋭敏さ、記憶の正確さ、論理的思考力を示す。
【知力】チェック
 【知力】チェックは論理、教育、記憶、演繹的推理を使う時に役立つ。〈神秘学〉〈歴史〉〈調査〉〈自然〉〈宗教〉技能は特定分野の【知】チェックに対する素養を反映する。
 〈神秘学〉【知】〈神秘学〉チェックは、呪文、マジックアイテム、秘術的シンボル、魔法的伝統、存在の諸次元界(多次元宇宙)、それら次元の住人についての知識を思い出す能力を表す。
 〈歴史〉【知】〈歴史〉チェックは、歴史的出来事、伝説に残る人々、古代の諸王国、過去の争い、最近の戦争、失われた文明についての知識を思い出す能力を表す。
 〈調査〉手がかりを求めてあたりを探し回り、手がかりから推論を行う時、【知】〈調査〉チェックを行う。隠された物品のありかを推測する、傷跡を見てどんな武器によるものか見分ける、トンネルの崩壊を引き起こす最も脆弱な個所を判断する、といった場合がそれにあたるだろう。隠された知識の断片を求めて古代の巻物を精読する場合も【知】〈調査〉が要求されるだろう。
 〈自然〉【知】〈自然〉チェックは地形、植物、動物、天候、様々な自然の周期に関する知識を思い出す能力を表す。
 〈宗教〉【知】〈宗教〉チェックは諸々の神格、祈りと儀式、宗教組織、聖印、秘密のカルトの行動についての知識を思い出す能力を表す。

 その他の【知】チェックDMは以下のようなタスクを行おうとするときに、【知】チェックを要求するかもしれない。
 ・言葉を使わずにクリーチャーと意思疎通する
 ・貴重なアイテムの価値を鑑定する
 ・市の衛兵の前を通過するための変装に協力する
 ・文書を偽造する
 ・制作や取引についての知識を思い出す
 ・(チェス、ポーカー、バックギャモンのような)運より腕前が重要なゲームに勝つ

呪文発動能力値 Spellcasting Ability
 ウィザードは【知力】を呪文発動能力値として使い、発動する呪文のセーヴィング・スローのDCを決める際にも使用する。


【判断力】 Wisdom

 【判断力】は周囲の世界への順応と、知覚力、直観力を表す。
【判断力】チェック
 【判断力】チェックはボディランゲージの解読、他人の感情の理解、周囲の出来事に気付く能力、傷付いた人を手当てする能力を表す。〈動物使い〉〈看破〉〈医術〉〈知覚〉〈生存〉技能は特定分野の【判】チェックに対する素養を反映する。

 〈動物使い〉家畜をおとなしくさせる、乗騎を驚かせないようにする、動物の意図を読む、といったことができるかどうかが問題になった場合、DMは【判断力】〈動物使い〉チェックを行うよう求めるかもしれない。また、危険の大きな行動を取る際に乗騎をコントロールする際にも【判断力】〈動物使い〉チェックを行う。

 〈看破〉【判断力】〈看破〉チェックは、嘘を見つけたり、誰かの次の行動を予測したりする際に、他のクリーチャーの真意を読み取れたかどうかを判定する。これには、ボディランゲージ、話し方の癖、いつもの癖の変化などの小さな手がかりを総合する能力も含まれる。

 〈医術〉【判断力】〈医術〉チェックによって、瀕死の仲間の容態安定化や、病気の診断を試みることができる。

 〈知覚〉【判断力】〈知覚〉チェックによって、見つける、聞き取る、あるいは他の方法で何かがあることを知ることができる。周囲についての総合的な注意力と感覚の鋭さを示す。たとえば、閉じたドア越しに会話を聞き取ろうとする、開いた窓の下で盗み聞きする、森の中を静かに移動するモンスターの物音を聞きつける、などを試みることができる。あるいは、隠されていたり見落としやすい物、つまり路上で待ち伏せするために伏せているオークども、小路の陰に隠れている暴漢たち、閉じた秘密の扉の下から漏れるそうろくの灯などを見つける試みにも使える。

 〈生存〉足跡を追跡する、野生の鳥獣を狩る、凍てついた荒野でグループを先導する、近くにオウルベアが住んでいる痕跡を見つけて識別する、天候を予測する、流砂やそのほかの自然の脅威を避ける、といった際に、DMは【判断力】(生存)チェックを求めるだろう。

 その他の【判断力】チェックDMは以下のようなタスクを行おうとするときに、【判】チェックを要求するかもしれない。
 ・次の行動について第六感を働かせる
 ・死体もしくは生きているように見えるクリーチャーがアンデッドかどうかを知る

呪文発動能力値 Spellcasting Ability
 クレリックは【判断力】を呪文発動能力値として使い、発動する呪文のセーヴィング・スローのDCを決める際にも使用する。


隠されたものを探し出す Finding a Hidden Object
 秘密の扉や罠といった、隠されたものを探す時には、DMは普通【判】〈知覚〉チェックを要求する。こうしたチェックは、成功しなければ見落としてしまうだろう隠されたディティールやその他の情報、手がかりを発見するために使用する。
 ほとんどの場合、成功する可能性をDMが判断するために、プレイヤーはキャラクターがどこを探すのかを説明する必要がある。たとえば、タンスの一番上の抽斗に入っている一揃いのたたんだ衣類の下に、1本の鍵が隠されているとする。もしプレイヤーがDMに、部屋の中を歩き回って家具や壁に手がかりを探すと伝えたなら、【判断力】〈知覚〉チェックの結果に関わらず、鍵を見つける可能性はない。成功の可能性があるのは、引出しを開ける、もしくはタンスを探すとはっきり伝えた場合だけだ。



【魅力】 Charisma

 【魅力】は効果的に他者と関わる能力を示す。自信、雄弁さ、人を引惹き付ける個性や従わせる個性といった要素も含んでいる。

【魅力】チェック
 【魅力】チェックは、他者に影響を与えたり楽しませたりしたい時、強い印象を与えたり説得力のある嘘をつきたい時、難しい社会的状況を切り抜けたい時などに発生する。〈虚偽〉〈威圧〉〈演芸〉〈説得〉技能は特定分野の【魅】チェックに対する素養を反映する。

 〈虚偽〉【魅力】〈虚偽〉チェックは、言葉や行動を通じてそれらしく真実を隠せたかどうかを判定する。この「虚偽」には、曖昧な言い回しで相手の誤解を誘うことも、全くの嘘を言うこともが含まれる。典型的な状況は、衛兵を言いくるめる、商人をぺてんにかける、賭博で金を稼ぐ、変装して別人に成り済ます、ありもしない保証をして他者の疑いを解く、あからさまなウソを吐くあいだ真面目な顔をしおおせる、などが含まれる。

 〈威圧〉あからさまな脅威、敵意のある行動、肉体的暴力を通じて誰かに影響を与えることを試みる時、DMは【魅力】〈威圧〉判定を要求するかもしれない。たとえば囚人から情報を引き出す、路上の暴漢たちに対立から手を引かせる、嘲笑する高官に対して割れたボトルの端を使ってもう一度考え直してもらう、といったケースだ。

 〈演芸〉【魅力】〈演芸〉チェックは音楽、ダンス、演技、物語、そのほか何らかのエンターテイメントによって、観衆をどの程度楽しませることができたかを判定する。

 〈説得〉君が誰か(個人もしくはグループ)に対して、機転、社交儀礼、性格の良さなどで影響を与えようと試みる際に、DMは【魅力】〈説得〉判定を要求するかもしれない。〈説得〉が使える典型的な状況は、誠意をもって行動し、友好をはぐくもうとしている時、誠心誠意をもって頼みごとをする時、適切な礼儀作法にのっとって見せた時などである。他社の説得の例としては、パーティーが王に会えるよう侍従を説得する、相争う部族間の和平を話し合う、町に住む人々を群集として動かす、といったことが含まれる。

 その他の【魅力】チェックDMは以下のようなタスクを行おうとするときに、【魅】チェックを要求するかもしれない。
 ・ニュース、うわさ、ゴシップを探している時、話を聞くべき最適な人物を見つける
 ・会話のきっかけとなる話題を判断して、群衆になじむ

呪文発動能力値 Spellcasting Ability
 バード、パラディン、ソーサラー、ウォーロックは【魅力】を呪文発動能力値として使い、発動する呪文のセーヴィング・スローのDCを決める際にも使用する。


セーヴィング・スロー Saving Throws

 セーヴィング・スロー(セーヴとも呼ぶ)は呪文や罠、病気など、その種の脅威に対する抵抗の試みである。セーヴィング・スローは通常、自分から行うと決める物ではなく、キャラクターやモンスターが危害を受ける危険のある時に強いられて行うものである。
 セーヴィング・スローを行うには、d20をロールして適切な能力修正値を加える。たとえば、【敏】セーヴには【敏捷力】修正値を使用する。セーヴィング・スローは、DMの判断によっては状況によるボーナスやペナルティを受け、また優位や劣位も受ける。
 各クラスは少なくとも2種のゼーヴに対する習熟を得る。たとえばウィザードなら【知】セーヴに習熟している。技能への習熟と同様に、セーヴへの習熟があれば、特定の能力値を使用して行なうセーヴに習熟ボーナスを加えることができる。一部のモンスターも同様にセーヴへの習熟を持つ。
 セーヴのDCは、セーヴの原因になった効果によって決まる。たとえば、セーヴができる呪文に対するセーヴのDCは、術者の呪文発動能力値と習熟ボーナスによって決まる。
 セーヴが成功・失敗した際の結果についても、セーヴを行わせた効果に説明されている。通常、セーヴに成功したクリーチャーはある効果からまったく危害を受けないか、受ける危害の度合いが減少する。

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最終更新:2015年01月08日 03:30