勇者よ――  ◆TAEv0TJMEI


光ある限り闇はあり。
しかし闇ある限り光もまたある。
ありとあらゆる世界のありとあらゆる時間で、闇が膨れ上がりし時、光もまた輝いた。

世界を根絶やしにしようとした魔王が。
“光の神”として人類を欺いた魔王が。
狭間の世界に君臨する魔王が。
神になり変わっていた魔王が。
暗黒の神が。
力に溺れた魔王が。
大邪神が。
遥か彼方より飛来した機甲の魔王が……。

その尽くが勇者により打ち倒された。

正義と悪は、光と闇は、秩序と混沌は表裏一体。
だからこそまた今回も。
太陽をこの手にせんとし蘇ったかの大魔王もまた勇者の手で討たれる――はず、だった。

彼の者を追い詰め、致命の傷を与えたのは勇者ではなかった。
いや、この言い方では誤謬があろうか。
アイルランドの光の御子クー・フーリンは紛れもなく勇気ある者である。
アイルランドの大英雄たる彼は大魔王と相討つに値するだけの力も勇気も持ち合わせていた。
その上、クー・フーリンは“太陽”を司る“神”を“父”に持ち、“人間”の“母”を持つ“混血”の英雄だ。
宝具の相性を除いても、大魔王バーンを討つ者としてこれ以上皮肉が利き、説得力のある人物はそうはいまい。
故にその結末自体は、あるべくして起こったこととさえ言えよう。

だが。
今まさに大魔王が最後の姿を顕現させた【B-4】エリアとの境から【B-3】エリアへと疾走し、【B-1】エリアへと向かう蒼穹の勇者こそは。
魔王の裏にいた大魔王をも討伐した始まりの勇者だけは。
数少ないクー・フーリン以上に、大魔王バーンを討ってしかるべき者だったのだ。


なのに勇者ロトは大魔王を討たなかったばかりか、彼の前に姿を現そうともしなかった。
何故か。よもや勇者は大魔王の存在に気づいていないとでもいうのか。
異界と化したマンションの中での戦いなら致し方なかったかもしれない。
しかし既にバーンパレスは崩壊し、大魔王は現へとその姿を晒している。
巨大な怪物と成り果てたその姿や存在感は無視しろという方が無理がある。
加えて、ロトは少し前の衝突事故の反省もあり、僅かながら走る速度を緩め、周囲への注意を怠らないようにもしていた。
放送にて警告されていた【B-4】近辺ともなれば尚更だ。
幾分距離があろうとも、人一倍魔物との戦闘経験が豊富なロトが大魔王の気配を察せられないとも考えにくい。
自らが持つ勇者スキルの存在も加味すれば、ロトがこの大一番に巻き込まれていないほうがおかしいとさえ言えよう。
いや、そもそも。
距離やスキルといった理屈や条件を抜きにしても、ロトは勇者なのだ。
彼らが戦う地の理を破り、仮初めの命とはいえ数多の罪なき人間たちを配下の魔物と挿げ替えた大魔王の悪逆非道を、勇者伝説の始祖が見逃すなどと。
馬鹿な、そんなことはあり得ない。
あり得ては、ならない。

ならないのに――事実としてロトは鬼眼王の出現を察したように、一度足を止めるも、再びまた走りだした。
大魔王に向かって、ではなく、彼から距離を離すように走りだした。
今優先すべきはマスターの治療だからか。
傷を負ったままのマスターを背負い、或いは置いて、激戦の渦中に身を投じるわけにはいかないからか。
なるほど、それもまた勇者らしくはある。
勇者とは単に魔を討つだけの存在ではない。
人々を護り、助け、救い、人類の希望と見なされたからこそ、伝説として語り継がれることとなったのだ。

けれど。
だけれど。
本当に、それだけなのだろうか。
自らに路を示してくれた人を、自らと同じ願いを抱き共に歩んでくれる仲間を救いたい一心で、断腸の思いを抱いて大魔王に背を向けたのだろうか。


『ゆうしゃよ よくぞわしをたおした。しかし ひかりあるかぎり やみもまたある。
 わしにはみえるのだ。ふたたびやみから なにものかがあらわれよう。
 だがそのときは おまえはとしおいて いきてはいまい。わはははは……』

“勇者”である自分が、“大魔王”を倒してしまう。
光と闇、人と魔、勇者と魔王――永劫に続くその輪廻の始まりを、再びこの地にでも刻んでしまうことをこそ、ロトは、恐れているのではないか。
“勇者と魔王”の物語を終結させようとしている自分が、再び“勇者と魔王”の物語を紡いでしまう。
人間は救われないのだと、いつまでも戦い続けなければいけないのだと言わんばかりのその繰り返しを、他ならぬ自分の手でなしてしまうのを忌避してるのではないか。
なんとも滑稽で矛盾した話だが、誰しもが認める“勇者”であるロトが、“恐れている”のではないか。
“大魔王”を“倒してしまう”その現実を……。

黙したままロトは胸の内を語らない。
フルフェイスの兜で覆われた顔からはその表情は窺い知れない。
パスで繋がっており少なからず感情を共有できる聖白蓮も気を失っている今、ロトが何を想い何を感じているのか、真に察せられるものはいない。

ただ、戦場を後にしようとしているその姿は。
今も救いを求める者や、勇敢に戦う者たちを置き去りにしようとしているその背中は。

ひどく小さく思えてならなかった。

勇者とは勇気ある者。
そして真の勇気とは打算なきもの。

光明こそ得れど、一度枯れ果てた勇者の心に、未だ真の勇気は陰りなくあるのだろうか……。


【C-4とB-3の境/一日目 夕方】

【聖白蓮@東方Project】
[状態]全身打撲、気絶中、疲労(中)
[令呪]残り三画
[装備]魔人経巻、独鈷
[道具]聖書
[所持金] 富豪並(ただし本人の生活は質素)
[思考・状況]
基本行動方針:人も妖怪も平等に生きられる世界の実現。
0.気絶中……
[備考]
※設定された役割は『命蓮寺の住職』。
※セイバー(オルステッド)、アーチャー(アーカード)のパラメーターを確認済み。
※言峰陣営と同盟を結びました。内容は今の所、休戦協定と情報の共有のみです。
※一日目・未明に発生した事件を把握しました。
※ジナコがマスター、アーカードはそのサーヴァントであると判断しています。
※吉良に目をつけられましたが、気づいていません。

【セイバー(ロト)@DRAGON QUESTⅢ ~そして伝説へ~】
[状態]健康
[装備]王者の剣(ソード・オブ・ロト)
[道具]寺院内で物色した品(エッチな本他)
[思考・状況]
基本行動方針:永劫に続く“勇者と魔王”の物語を終結させる。
0.>B-4の戦いに巻き込まれぬようしつつ、白蓮を治療できる場所、命蓮寺に移動する……っ。
1.>白蓮の指示に従う。戦う時は>ガンガンいこうぜ。
2.>「勇者であり魔王である者」のセイバー(オルステッド)に強い興味。
3.>言峰綺礼には若干の警戒。
4.>ジナコ(カッツェ)は対話可能な相手ではないと警戒。
5.>アーチャー(アーカード)とはいずれ再戦を行う。
[備考]
※命蓮寺内の棚や壺をつい物色してなんらかの品を入手しています。
 怪しい場所を見ると衝動的に手が出てしまうようだ。
※全ての勇者の始祖としての出自から、オルステッドの正体をほぼ把握しました。
※アーカードの名を知りました。
※吉良を目視しましたが、NPCと思っています。
吉良に目をつけられましたが、気づいていません。
※鬼眼王に気づいているのは間違いないようです。



BACK NEXT
119:会談場の決意者 投下順 121:selector infected N.A.R.A.K.U
119:会談場の決意者 時系列順 121:selector infected N.A.R.A.K.U

BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT
104:殺人考察(前兆) 聖白蓮&アーチャー(勇者ロト :[[]]