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戦争考察 ◆F3/75Tw8mw



(……嫌……嘘……)


潜り込んだ布団の中。
震えの止まらぬ手で頭を押さえながら、ジナコは脳内に反響するルーラーの『声』を必死に消そうとしていた。
全ての参加者へと齎される、管理者からの放送。
それは有益な情報に他ならず、事実その内容から次の行動方針を打ち立てた主従も大勢いる。

しかし……ジナコにとってそれは、決して有益では非ず。
もはや極限状態にあるその精神に更なる傷をつける、残酷な追い討ちにしかならなかった。


(27組……それだけの相手が……アタシを、殺しに……!)


この聖杯戦争には、28組……自身を除き27組の主従が参加していると言う。
即ち……それだけの数が、自身の脱落を願っている。
命を奪おうと、殺そうとして行動しているという事実だ。
他にもルーラーから齎された情報はあるのだが、それらは彼女に全く伝わっていない。
話を聞く余裕すら生じさせない程の深い絶望感に、その心を占められたが為に。


(……どうして……怖いよ……なんで……)


真綿で首を絞められているかのような息苦しさ。
石塔を背負わされているかのような重圧。
氷水をぶっかけられたかのような悪寒。
その他、言葉では表現しきれない程のあらゆる苦痛に、ジナコはただ嘆き苦しむしかなかった。


どうして、自分がこんな目にあわなければならないのか。


どうすれば、こんな目から逃れられるのか。


どうしたら、この生き地獄から開放されるのか。



どれだけ考えても、どれだけ口に出そうとも。
その答えを返してくれる者は、誰も側にいない。
答えは、自分自身で出すしかないのだから。



◆◇◆



「…………」


ジナコ=カリギリが絶望の中で苦しみ嘆いていた、丁度同時刻。
彼女の側から離れたサーヴァントは、目的地であるB-5に足を踏み入れていた。
気配を遮断していたから当然ではあるものの、ここまでの道のりには何ら問題は無かった。
然して何者かと接触する事もなく、こうして予定通りに動けている。


(……ここまで、監視と判断できるモノは見受けられなかった。
しかし、篭城を得意とするキャスターでそれはありえない……)


だが、そんな好都合な状況ですらゴルゴ13は疑ってかかっていた。
ここまでの道すがら、彼は己が周囲へと常に最大限の警戒を払い移動をし続けていた。
B-4で違反を犯したサーヴァントがキャスターである可能性が高い以上、ある一つの危険性が浮上してきた。
それは、相手が何かしらの監視を設置しているというものだ。
陣地防衛が得手であるキャスターにとって、接近してくる敵の探知は極めて重要な戦術的要素になる。
それがあるかないかだけでも、戦闘の難易度は大きく変わる……防衛戦においては尚更だ。
また、仮に違反者がキャスターでなかったとしても、ルーラーからの通達で拠点を暴露された事に変わりはない。
自陣を放棄するという選択を取らない限り、やはり何かしら周囲への警戒対策はあって然るべきだろう。

しかし、それはここまでで全く見受けられなかった。


(考えられる可能性は、大きく分けて三つ……)


そこからゴルゴ13は、ありえるであろう三つのケースを想定した。
まず一つ目は、実は監視などまるで設置されていないという場合だが……これは、絶対とまでは言いきれないが九割九分ありえない。
放送前ならまだ兎も角、拠点の暴露をされた現時点でなお周囲の警戒を怠るなど、篭城する上では致命的すぎる失態だ。
よって、このケースは除外。

そうなると次にありえるのが、監視はしっかり設置されているものの、幸運にもここまでの道のりにはそれが無かったという場合だ。
そして、これは意外にも可能性が低くはなかったりする。
何せゴルゴ13自身がいたB-10からこのB-4にかけては、多少なりとも距離がある。
如何に陣地防衛の為とはいえ、そこまで離れた位置にまで監視の目を置くというのは考えにくいのだ。


(だが……このエリアは別だ)


しかし、それもあくまでB-6付近までの話。
隣接するこのB-5にまで来れば、寧ろ監視は積極的に置くべきだ。
B-4に侵入されてから捕捉するのとその一歩手前で捕捉するのとでは、迎撃難易度が違う。
ならばこのエリアに、監視は確実にいる……ゴルゴ13は、幸運な事にそれに見つからずに侵入を果たせたか。

或いは、第三のケース……ゴルゴ自身が最も厄介だと考えている展開。


(……俺には把握が出来ない程、完璧に隠蔽された監視がこのエリアにはいる……そう見るべきか)


ゴルゴ13を以てしても、その存在を悟られぬ程の監視の目を敵サーヴァントが用意している場合だ。
もしこれがありえるとしたら、かなり厄介になる。
今でこそ気配を完全に遮断しているからいいものの、もし万が一にでもそれを解かざるをえない状況に追い込まれたならば、以降の隠密活動には大きな支障が出る。
出来る限り、その展開だけは避ける必要がある。



……そして事実だが、実際に大魔王バーンはこの隣接するB-5は勿論、街全体の広い範囲にも監視役として悪魔の目玉を放っている。
勿論、安易に他者には発見できない様にその存在は極力隠しており、ここまででそれを発見できたのはその情報を見知っていたアサシンぐらいだ。
ゴルゴ13は運悪くも、それを発見することが出来なかった。
これは彼の力量が劣っているからではなく、単に設置された場所が彼の把握できる範囲外だという事が大きい。
もっとも、悪魔の目玉―――大魔王バーンもまた、ゴルゴ13を察知する事は出来ていない。
その理由はやはり、気配遮断スキルを持つアサシンが相手であるからだ。
何かしらのスキルを持つサーヴァントならいざ知らず、単なる使い魔程度ではアサシンを、それも周囲に最大の警戒を払うゴルゴ13を監視する事は不可能だったのだ。


「…………」


一先ず、今は当初の予定通り様子見に徹するべきだ。
そう判断すると同時に、ゴルゴ13は壁に背を預けその千里眼でエリア全体を見渡し始める。
彼が監視の場に選んだのは、このB-5において比較的見渡しが良く、且ついざという時にも逃げ道を確保しやすい高所。
非常用の簡易ラダーが設置されており、それを用いて地上へと降りる事が可能である賃貸マンションの屋上。

そう……ウェイバー・ベルベットおよび真玉橋孝一の住居があるマンションの屋上なのだ。
勿論ゴルゴ13がそれを知って選んだ筈もなく、これは完全な偶然である。
たまたまB-4を視るに当たって適した場所が、よりにもよってこの二人が住むマンションであったに過ぎないのだ。


(……異常は見受けられない。
何事も無い、日常的な様子か……)


スコープ越しに見えるB-4の風景は、至って平凡なものであった。
特に誰かしらが争いを行っている様子は見られず、ただただ日常的な光景が広がっている。
何事も起きている様には見えない、平和そのものな暮らしの営みだ。
異常と言えるものは、何も無い。


(……異常だな)


故に……これは異常だ。



◆◇◆



『これは異常だ』


時を同じくして、錯刃大学・春川研究室。
B-4に送り込んだNPCからの報告を受け、HALはゴルゴ13と同じくそれを異常と看做していた。
然したる問題も起きず、そこに住まう人々は平凡な日常を過ごしている。

これを異常と見ないで、どうする。


『うむ……"るぅらぁ"から警告される程の違反があって、その様な日常などあり得る筈が無い』
『そうだ。
 ルーラーは聖杯戦争の進行に差し障りがあるとして、このB-4に潜む主従を違反と看做した。
 それにも関わらず、B-4エリアの様子は平凡そのもの……矛盾している』


そう……ルーラーの言葉に嘘がなければ、このB-4では聖杯戦争の進行を大きく妨げる程の事態が起きている筈なのだ。
そうなれば、当然街ではそれ相応の騒ぎが起こり、警察やマスコミが動いて然るべきである。
だというのに、街に住む者達は何事もないかの様に生活をしている。
ネットの情報も隈なく集めてみたが、やはり騒ぎという騒ぎは全く見当たっていない。
これはどう考えたって、おかしい事態なのだ。


『ルーラーはわざわざB-4とエリアを名指しして警告を実施した。
これは、その場から違反者がそうそう動かないと踏んだからだろう……
ならばこのエリアに潜むサーヴァントは、陣地防衛を得手とするキャスターの可能性が高い。
そして犯した違反は、恐らく大量の魂食いだろう』


ここでHALは、ゴルゴ13と同じく情報から敵サーヴァントがキャスターであると推測する。
そして犯した違反の内容は、魂食いである可能性が極めて高い。
倉庫群で起きた様な建築物の破壊という線も無くはないだろうが、もしそんな大規模な破壊活動があれば
ルーラーからの警告以前に街の中で大きな噂になっている。
しかし今現在、少なくともこのエリアにはその様な争いの後は見られない。
ならばありえるのは、キャスターというクラス特性から考えれば魂食いだ。
より強固な陣地作成の為、魔力に変えるべくNPCを大量に消滅させて糧とした……
実際そう考えると、綺麗に筋が通る。


『念の為に確認をしておきたいが、一度は倒壊させた建築物を再度何かしらの宝具で建築し直したという線は?』
『それは無いと断言できる。
仮にその様な宝具やスキルがあったにしても、一度は街並にダメージが与えられるという前提が結局ある。
多少のキズなら兎も角、ルーラーが違反と看做す程の規模だ。
幾らなんでもそんな事が起きれば、周囲のものたちが気づくはずだ』


もっとも……魂食いの場合にも、一つだけだが矛盾点がある。
大多数のNPCを魂食いしたにも関わらず、やはりこのB-4では人々は普通に生活をしているのだ。

まるで、"消えたNPCなど何処にもいなかった"かのように。


『だが、キャスターのサーヴァントだとすると……一つ、考えられる可能性がある。
 幻影幻覚の類では、セイバーを筆頭とする対魔力持ちに見破られる恐れがある……ならば』
『魂食いされた住民達は、"きゃすたぁ"の手駒と入れ替わり生活をしているという事か』


元々この違反を行ったサーヴァントも、ルーラーからルール違反の警告を受ける事は重々承知していた筈。
ならば同時に、その隠蔽手段も用意するのは当然のことと言える。
それを踏まえて、ここまでの情報から二人が出した結論が……魂食いされたNPCは、既に他の何者かと入れ替わっているという可能性だ。
そうすると、この何事もない平和で異常な風景にも納得がいく。
敵サーヴァントは己のスキル或いは宝具を用い、消えたNPCのコピーを用意しているとみて間違いない。
それもただ姿形を真似ているだけの、ちょっと突けばボロが出る様なものではない。
思考も、技能も、その何もかもが同一なのだ。

そこに住まうNPC―――もしかすれば、聖杯戦争の参加者ですら含まれるかもしれない―――の誰もが疑問に思わぬほどに本物と寸分違わぬコピーを、このサーヴァントは作る事が出来るのだ。

1ビットたりとも違わない一人の人間を作りだせる可能性を、この敵は持ち合わせている。



「…………」



本物と違わぬ、完璧な存在の構築。
自身が何度繰り返しても辿り着けなかった、何よりも欲するもの。
電人HALにとっては、まさに求めた望みそのものと言える力だ。

それを持ち……行使する者が、この聖杯戦争に存在しているというのか。



◆◇◆



(NPCの大多数を、本物と寸分違わぬ偽者に摩り替えているならば……
このB-4にいるNPCそのものが、敵の手足ということか)


異常さを形作るモノの正体に辿り着くと共に、ゴルゴ13はその警戒心をより一層高めた。
傍目にはNPCと見分けがまるでつかず、敵の手駒であるかどうかが容易に判別できない相手……それが大多数で一つのエリアにいる。
そうなれば、街中で単にすれ違っただけの相手が監視であるかもしれず、刺客でもあるもしれないという恐れが出てくる。
かと言って先んじて仕掛ける事もできない……それで本当に無関係なNPCを攻撃してしまったならば、罰されるのは己なのだ。
陣地防衛の策としては、実に巧妙な手だ。


(……NPCとはいえ他者の命を奪う事に抵抗を持たぬ非情さ、ルーラーをも恐れず動く大胆さ。
加えて、頭も切れる……)


ここまで得られた情報から、ゴルゴ13は大まかにではあるが敵がどの様な相手であるかを推測していた。
まず第一に、この主従は魂食いに何の抵抗も覚えていない。
目的を果たす為ならば他者の命を容赦なく奪う事のできる非情さ・冷酷さをがなければ、出来ぬことだ。
加えて、ルーラーからの警告恐れていない。
違反を犯せば当然だが、ペナルティを課せられ不利を被るリスクがある……それは説明するまでもなく分かっている筈だ。
そしてこの敵は、迷う事無く行動を起こしている……ルーラーなど恐れるに足らずと言わんばかりに。
ストレートに言葉にするなら、ルーラーに喧嘩を売っているのだ。

ここまでなら、ただの猪突猛進な愚者・狂人の類とも考えられたのだが……このB-4の様子からして、その線は消えた。
敵は頭の切れる、実に狡猾な相手だ。
それでいてルーラーを敵に回すとなれば、結論は一つしかない。


(この違反者は、己の力に強い自信を持っている……それだけの能力がある敵か)


B-4に潜む敵は、自身ならばルーラーですらも葬れると自負している。
己が力と知恵の両方……持ちうる全てに絶対の自信を持つ、恐ろしく強大な存在だという事だ。



◇◆◇



『……"ますたぁ"よ、如何したか?』
『……ああ、すまないなアサシン。
 少々、考えていた……』


弦之介からの呼びかけを受け、HALは思考の波に沈んでいた意識を浮上させた。
不意に沈黙した己に対し、不思議に思うところがあったのだろう。
実際……今の自分は、もし直接相対していれば相当怪訝に思われる表情をしているに違いない。
それだけ、受けた衝撃は大きいものだった。
この戦いに集うのが異常な者達ばかりというのは、先の襲撃で重々承知していたが……
その上でなお、この発見は驚愕せざるを得ないものだ。


(……だが……絶対にそうだとはまだ、断言ができない。
もしかすれば、何か穴があるかもしれない……見極める必要があるか)


もっとも、まだ完全にそうだと決まったわけではない。
事はあくまでNPCの報告から推測しただけに過ぎず、直接その目にした訳ではないのだから。
もしかすると、完璧に思われるコピーには何か致命的な欠点だってあるかもしれない。
事実の確認ができるまでは、下手な考えを持つのは危険だ。
それでも、人として……期待を一切抱かずにはいられないのは、仕方がないことなのだろうが。

兎に角、今は思考を切り替えるべきだ。
やるべき事、考えるべき事がある以上、中途半端に思案を止めるわけにはいかない。


『……この主従についてだが、どこか行動に私に近いものを感じる。
アサシン、お前も検討がついているんだろう?』
『……"るぅらぁ"の殺害を目論んでいるやもしれぬ、か』
『ああ、この敵はルーラーをまるで恐れていない。
それはつまり、打倒できる自信があるという事だ』

ここまでの様子から、二人もまたゴルゴ13と同様の結論にたどり着く。
この敵は倒すべき標的を参加者に限定せず、ルーラーまでもその中に含んでいる。
そして、それが可能であるという確固たる自信を持って行動している……と。
しかも、アサシンを用いた暗殺などではなく、真正面から受けてたつ上での話だ。
そうでなくば、こんな堂々とルーラーを挑発する様な違反行為は出来やしない。


『問題は、このサーヴァントがキャスターのクラスである可能性が高いという事だ。
三騎士やバーサーカーなら兎も角、キャスターが真正面から戦いを挑むというのは考え難いが……』
『余程陣地に自信があるのか、或いは……』
『キャスターのクラスでありながら、まともな戦闘で三騎士にも匹敵する程の破格の英霊かだ』


B-4の違反者に関して、只者ではないだろうという予想自体はしていた。
しかし、まさかここまでの大物が潜んでいるとは流石に予想しきれないでいた。
元より手出しをするつもりは、今の時点ではないのだが……相手をするならば、生半可ではダメだ。
ただですら、キャスターの英霊が作る工房は厄介なものが多い。
それ相応に準備を整え、万全を期して挑まぬ限り勝ち目はないだろう。


『B-4に潜む違反者に関しては、しばらく静観を決めた方がいいだろう。
何をするにしても、まだこいつ相手には情報が不足している。
精々今の時点でわかることは、厄介な敵であるという点と……
大まかな、拠点の位置ぐらいだ』



◇◆◇



(敵サーヴァントが拠点に定めているであろう場所には、検討がつく)


B-4全体を隈なく見渡し、同時にその地形を頭に叩き込む。
そうしていく内に、ゴルゴ13は敵の主従が潜んでいるであろう場所に目星を付けることができた。
魔術師が陣地作成を行う場合、必要となるのは空間の広さだ。
どれだけ強く優れた力があろうとも、例えば四畳半の一室を陣地にして戦えと言われれば流石にどうしようもない。
敵を迎え撃て、確かな罠を設置できるだけのスペースが何より必要となる。
加えてこの主従は、あまりにも大規模な魂食いを短期間に実施している。
つまりそれは、魂食いの対象となるNPCが一度に極力同じ場所へと集ったという証拠だ。

これらの事を踏まえると、このB-4で敵が潜む拠点として考えられる最有力候補は……このエリアに大きくそびえ立つ、高層マンションだ。
マンション中のNPCを全て魂食いしたならばルーラーからの警告にも頷けるし、マンション全体を工房に変えることもまた可能だ。
今後、監視を強めるに当たりこのマンションは特に注視する必要がある。
ここに、放送を聞きつけた他のサーヴァントが集結する可能性は極めて高いのだから。


何かこの近辺で、大きな騒ぎ―――例えば先の、ジナコ=カリギリを名乗る何者かの暴走―――でも起こり、そちらに注意が向かない限りは。


「…………」


この時ゴルゴ13の脳裏に過ぎったのは、先程レンズ越しに見たあの光景。
依頼人の姿に化けた何者かが、破壊の限りを尽くしていた犯罪現場だ。

他者に完全に成りすます能力。
NPCを寸分違わぬ偽者を生み出し、入れ替える能力。

特徴は完全に一致している。
では、このサーヴァントこそがジナコ=カリギリの姿を乗っ取り騒ぐ張本人なのだろうか?


(……違うな)

否。
依頼人の話を聞く限り、あのサーヴァントは依頼人の姿を奪う為だけに直接接触を果たしている。
篭城を選ぶ狡猾なサーヴァントが、態々居城を出て離れたエリアにまで向かい、その様なマネをするとは思えない。
更にあの偽者のジナコ=カリギリは、犯罪を楽しむ愉快犯の類だ。
先程の人物分析とも、大きくかけ離れている……この二者は別人だ。
ジナコ=カリギリを陥れたサーヴァントは、このB-4に潜む者と近い能力を持つ別の存在に違いない。
もしも同一の人物であったならば、今後の対処が多少は楽になったかもしれないのだが……


(だが……愉快犯の類ならば、この騒ぎに便乗する可能性もまたある)


しかし。
同一人物の線こそ消えたものの、依頼人に化けたサーヴァントとこのB-4に集う他者の問題は同時に対処出来る可能性がまだある。
あのジナコ=カリギリの皮を被った何者かは、明らかな愉快犯だ。
ならば、今後大きな戦いが予想されるであろうこのB-4に足を運ぼうとする事は大いにありうる。
そしてもし他の参加者とあのジナコ=カリギリが接触を果たしたならば、そこから有益な情報を得られるかもしれない。

もっとも、そう都合よく自分に、そして依頼人にとって事態が動くとは限らないのだが……


『……ヤクザ……聞こえる……?』


そう考えていた最中だった。
いきなり、念話を通じて依頼人の声が伝わってきたのだ。


『どうした……?』


対するゴルゴ13はそのまま冷静にエリア全体の監視は続けつつ、集中力をとぎらせることもなく。
しかし、依頼人からの報告には真摯に耳を傾けた。
こうして連絡を寄越してきた以上は、依頼人に何かがあったか。
或いは、依頼人が何かを決めたかに他ならないからだ。



そして、案の定……ジナコ=カリギリは、大きな決定を自己に伝えてきたのだった。



『……アタシ……逃げる。
やだ……このまま、殺されるなんて……怖い……!!』


【B-5/賃貸マンション屋上/一日目 夕方】


【ゴルゴ13@ゴルゴ13】
[状態]健康
[装備]通常装備一式、単眼鏡(アニメ版装備)、葉巻(現地調達)
[道具]携帯電話
[思考・状況]
基本行動方針:正体を隠しながら『もう一人のジナコ=カリギリ』の情報を集め、殺す。最優先。
          今のところはNPCの協力者とジナコ本人の『もう一人のジナコ=カリギリ』の情報収集の結果を待つ。
1.B-4地区の状況を、B-5地区から探る。
2.『白髪の男』(ジョンス・リー)とそのサーヴァント、そして『れんげという少女』の情報を探す。
3.依頼人(ジナコ=カリギリ)の要請があれば再び会いに行くが、過度な接触は避ける。
4.可能であれば依頼人(ジナコ=カリギリ)の新たな隠れ家を探し、そこに彼女を連れて行く。


[備考]
※一日目・未明の出来事で騒ぎになったことは大体知ってます。
※町全体の地理を大体把握しています。
※ジナコの資金を使い、NPCの情報屋を数名雇っています。
※C-5の森林公園で、何者かによる異常な性行為があった事を把握しました。
 それを房中術・ハニートラップを得意とする者の仕業ではないかと推測しています。
※B-10での『もう一人のジナコ=カリギリ(ベルク・カッツェ)』の起こした事件を把握しました。
※ジナコの気絶を把握しました。
 それ以前までの『ジナコ利用説』ではなく、ジナコの外見を手に入れるために気絶させたと考えています。
 そのため、『もう一人のジナコ=カリギリ』は別人の姿を手に入れるためにその人物と接触する必要があると推察しています。
※ジナコから『もう一人のジナコ=カリギリ』の殺害依頼を受けました。
  ジナコの強い意志に従って宝具『13の男』が発動します。が、情報が足りないので発動できても最大の半分ほどの効果しか出ません。
※『もう一人のジナコ=カリギリ』は様々な条件によって『他者への変装』『サーヴァントへのダメージ判定なし』がなされているものであると推測しています。
  スキルで無効化する類であるなら攻略には『13の男』発動が不可欠である、姿を隠しているならば本体を見つける必要があるとも考えています。
※ジョンス・リーと宮内れんげの身辺調査をNPC(探偵)に依頼しました。
  二日目十四時に一度NPCと会い、情報を受け取ります。そのとき得られる情報量は不明です。最悪目撃証言だけの場合もあります。
※ジョンス・リー組を『警戒対象』と判断しました。『もう一人のジナコ=カリギリ』についても何か知っているものと判断し、捜索します。
  ジナコの意思不足・情報不足のため襲撃しても宝具『13の男』は発動しません。
※宮内れんげを『ジョンス・リー組との交渉材料となりえる存在』であると判断しました。ジョンス・リー組同様捜索します。
  ジナコの意思不足・情報不足のため襲撃しても宝具『13の男』は発動しません。また、マスターであるとは『まだ』思っていません。
※B-5地区に潜伏し、『キャスターと思わしきサーヴァント』それを求めてやってきた参加者の情報把握を行います。
  敵の能力を完全に把握して『絶対に殺せる』と確信が持てない場合は誰にも手を出さず、接触も避けます。
※伝承に縛られた『英霊』という性質上、なんらかの条件が揃えば『銃が撃てない状態』が何度でも再現されると考察しています。
  そのためにも自身の正体と存在を秘匿し、『その状態』をやりすごせるように動きます。
※B-4地区に潜む『キャスターと思わしきサーヴァント』は、高層マンションに工房を設置していると推測しています。
  また、ルーラーですらも恐れていない程の実力者と判断しています。
※B-4のNPCは、その大半が違反を犯したサーヴァントの手駒に変わっているのではないかと推測しています。
 その為、迂闊な手出しは絶対にしてはならないと考えています。
※『もう一人のジナコ=カリギリ』とB-4に潜む『キャスターと思わしきサーヴァント』は別人と考えています。
  しかし、もう一人のジナコは時間が経てばこのままB-4に現れるだろうとも判断しました。



◇◆◇



(アタシ……どうしたらいいの……?)

時を遡ること、数分前。
憔悴しきった状態で、ジナコは微動だにせず布団へと横たわっていた。
もはや周りにいる全てが、自身の命を狙う敵にしか思えない。
死の恐怖が常にまとわり付くその感覚に、体を動かすだけの体力すらも奪われつつあった。


(……このまま、殺されるなんて嫌だよ……)


光の篭らぬ眼のまま、布団の横に置かれた衣類と装飾品の山へと視線を向ける。
容姿を変えて怪しまれぬようにと己がサーヴァントが託してくれたものの数々だが……これをつけたところで、どうしろと言うのか。
確かに身に着ければ、しばらくの間は敵の目を欺けるだろう。
無事、家を出て逃げることだってできるだろう……だが、逃げたところで何処へいけばいいのか?
頼れるものなど、誰ひとりとして何一つとしてないのだ。
この家を捨てても、自分を受け入れてくれる場所などどこにもない。

だから、例えどれだけ怖くても……ここから動くことができない。
動きたくても動くことなどできない……しかし、動かなければ殺される。
そんな強い負の連鎖に、ジナコは完全に囚われていた。



―――ガタガタッ。


「ひっ……!?」


静寂の家の中、突如として聞こえてきた窓を揺らす音。
聞くと共にジナコは咄嗟に布団から飛び起き、そのまま部屋の隅にまで慌てて走った。
まさか、そんな、馬鹿な。
そう言わんばかりの表情で、顔全体を涙と鼻水で酷く歪め、恐怖のこもった視線で部屋の窓へと視線を移す。
自身を狙う誰かが、もうこの場にたどり着いた……


「……か、風……?」


というわけではなく、単に風が窓を大きく揺らしただけであった。
ジナコは心から安堵の溜息を漏らすとともに、両膝から地面に崩れ落ちた。
こんな些細なことですらも、もはや彼女には自身を狙う絶対の恐怖にしか感じ取れなくなっていたのだ。


「……やだ。
 やだ……こんなところで終わりたくない……!」


震える手で、ゴルゴ13から託された衣類を強く握り締める。
そうだ、このままでは殺される。
もしも今のが本当に誰かの襲撃だったなら、どうなっていた事か。
やはり逃げるしかない、外に出るしかない。
そうでなきゃ……いつ死んでしまうか、わからないのだ。
怖くても、やるしかないのだ。


(でも……それから、どうしよう……)


しかし、それからどうすればいいのかが、まるで思いつかない。
頼れる者など誰もいないし、行く宛も完全にないのが現状だ。
警察にまで追われる立場になった以上、下手な場所にも匿ってはもらえないだろう。

どこかないのか。
自分を守ってくれる、安心していることができる、警察に追われている身でも保護してくれそうな場所は。
もっともどれだけ求めようとも、そんな都合が良すぎる場所などそうそうあるはずが……


(……あ……待って……)


そこまで考えた、その瞬間だった。
ジナコは、あるひとつの可能性に気がついた。
そう……幸か不幸か、あるかもしれないのだ。
追われている自分ですらも匿ってくれる様な場所がひとつ、この街に。
今まで数多くのゲームをプレイし、同じく漫画の類を見てきたが、概ねその役目は共通している。
そこは戦いに敗れた主人公が最初に目を覚ますセーブポイントだったり、毒やマヒに苦しむパーティを治療してくれたり……
弱き者の味方として、常に安心させてくれる施設だった。

だったら、今だって……そこに逃げ込めば、もしかしたら……
そんな希望を抱かずには、いられなかった。


『……ヤクザ……聞こえる……?』


故にジナコは、慌てて己がサーヴァントへと念話を飛ばした。
一分一秒でも早く、その場に逃げるために。
この苦しみから、少しでも逃れるために……彼には、その旨を伝える必要があった。


『どうした……?』
『……アタシ……逃げる。
やだ……このまま、殺されるなんて……怖い……!!』


簡潔に、用件を伝え……そして、鼻水をすすりひと呼吸おいた後。
ジナコは、その場所の名をはっきりと口にした。



『……アタシ……教会に逃げる。
 たしか、この街のどっかに……あったと思う……
 そこだったら……アタシ、助けてもらえる、よね……?』


【B-10/街外れの一軒家/一日目 夕方】


【ジナコ・カリギリ@Fate/EXTRA CCC】
[状態]脇腹と肩に鈍痛、精神消耗(大)、トラウマ抉られて情緒不安定、ストレス性の体調不良(嘔吐、腹痛)
    昼夜逆転、現実逃避、空腹、悲しみと罪悪感、いわゆるレイプ目
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]変装道具一式
[所持金]ニートの癖して金はある
[思考・状況]
きほん■■■■:ひとりぼっち
0.……教会に逃げたら、助かるかな……
1.怖い……死にたくない
2.れんげやジョンスに謝りたい、でも自分からは何も出来ない。
3.『もう一人のジナコ=カリギリ』の情報を集める……?
[備考]
※ジョンス・リー組を把握しました。
※密林サイトで新作ゲームを注文しました。二日目の昼には着く予定ですが仮に届いても受け取れません。
※アサシン(ベルク・カッツェ)にトラウマを深く抉られました。ですがトラウマを抉ったのがカッツェだとは知りませんし、忘れようと必死です。
※『もう一人のジナコ=カリギリ』の再起不能をヤクザに依頼し、ゴルゴから『もう一人のジナコ=カリギリ』についての仮説を聞きました。
  『もう一人のジナコ=カリギリ』殺害で宝具を発動するためにはかなり高レベルの殺意と情報提供の必要があります。
  心の底からの拒絶が呼応し、かなり高いレベルの『殺意』を抱いていると宝具『13の男』に認識されています。
  さらに高いレベルの宝具『13の男』発動のために情報収集を行い、ヤクザに情報提供する必要があります。
※ヤクザ(ゴルゴ13)がジョンス組・れんげを警戒対象としていることは知りません。
※変装道具一式をヤクザから受け取りました。内容は服・髪型を変えるための装飾品・小物がいくつかです。
  マネキン買いしたものなのでデザインに問題はありませんが、サイズが少し合わない可能性があります。
※放送を耳にしました。
  しかし、参加者が27組いるという情報以外は知りません。
※教会なら自分を保護してくれると思い込んでいます。
  ただし、教会の場所についてはまだ把握していません。



◇◆◇



『では、"びぃよん"に関してはこのまま"えぬぴぃしぃ"に情報を集めさせ……
我々はその間、他の地区を洗うべきか』
『ああ、敵の拠点に目星を付けることはできたんだ。
後は高層マンションの周辺にNPCを潜伏させ、しばらく様子を見る。
何かあり次第連絡をさせるとしよう』


時を同じくして。
B-4への対処法を纏めた二人は、今後の動きについて再び相談に入った。
丁度今、他の地域―――B-10に放ったNPCからも報告があったところだ。


『三人ほど、ジナコ=カリギリの自宅にたどり着いた。
既に逃げたかと思ったが、どうやら運良くも間に合ったらしい。
NPCは全員、相手に悟られないギリギリの位置で待機し、様子を見ている……
もしも何か動きがあれば、即座にわかるはずだ』


HAL達にとっては幸運にも、そしてジナコにとっては不幸にも。
既にHALの操るNPCが、彼女の家を取り囲んでいたのだ。
こうしておけば、ジナコが逃げようとした場合はもちろん、ジナコを狙いやってくる者達の情報も手に入る。
後一歩彼女が立ち上がるのが早ければ、もしかしたら逃げられたのかもしれない。
間に合ってよかった……そう、HALはため息をひとつ付いた。


『アサシン、引き続き周囲の警戒を頼む。
明らかになった情報はそれなりにあるが、まだ焦るな……確実な時を待つ。
今は、勝利のためにも……長くなろうとも、見極める事を最優先に考えるべきだ』



【C-6/錯刃大学・春川研究室/1日目 夕方】


【電人HAL@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]『コードキャスト:電子ドラッグ』
[道具] 研究室のパソコン、洗脳済みの人間が多数(主に大学の人間)
[所持金] 豊富
[思考・状況]
基本行動方針:勝利し、聖杯を得る。
1. ルーラーを含む、他の参加者の情報の収集。特にB-4、B-10。
2. B-4に潜む違反者のNPCをコピーする能力に興味がある。
3.『ハッキングできるマスター』はなるべく早く把握し、排除したい。
4. 性行為を攻撃として行ってくるサーヴァントに対する脅威を感じている。
[備考]
※『ルーラーの能力』『聖杯戦争のルール』に関して情報を集め、ルーラーを排除することを選択肢の一つとして考えています。
 ルーラーは、囮や欺瞞の可能性を考慮しつつも、監視役としては能力不足だと分析しています。
 →ルーラーの排除は一旦保留しています。情報収集は継続しています。
※大学の人間の他に、一部外部の人間も洗脳しています。
※洗脳した大学の人間を、不自然で無い程度の数、外部に出して偵察させています。
※C-6の病院には、洗脳済みの人間が多数入り込んでいます。
※鏡子により洗脳が解かれたNPCが数人外部に出ています。洗脳時の記憶はありませんが、『洗脳時の記憶が無い』ことはわかります。
※ビルが崩壊するほどの戦闘があり、それにルーラーが介入したことを知っています。
 ルーラー以外の戦闘の当事者が誰なのかは把握していません。
※他の、以前の時間帯に行われた戦闘に関しても、戦闘があった地点はおおよそ把握しています。誰が戦ったのかは特定していません。
※性行為を攻撃としてくるサーヴァントが存在することを認識しました。
 →房中術や性技に長けた英霊だと考えています。
※『アーカード』のパラメータとスキル、生前の伝承は知り得ましたが、アーカードの存在について懐疑的です。
※ジナコの住所、プロフィール、容姿などを入手済み。別垢や他串を使い、情報を流布しています。
※他人になりすます能力の使い手(ベルク・カッツェ)を警戒しています。
※B-4に潜む違反者はキャスターのクラスであると踏んでいます。
  実力的には相当なレベルであると判断し、ルーラー殺害も目的にしていると見ています。
※B-4に潜む違反者の拠点は、高層マンションである可能性が高いとも見ています。
※B-4のNPCは大部分が違反者の生み出したコピーと入れ替わっていると判断しています。
そのコピーの能力については、深い興味を持っています。
※B-10のジナコ宅の周辺にNPCを三人ほど設置しており、何かがあれば即時報告するようにNPCに伝えています。



【アサシン(甲賀弦之介)@バジリスク~甲賀忍法帖~】
[状態] 健康
[装備] 忍者刀
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針:勝利し、聖杯を得る。
1. HALの戦略に従う。
2.自分たちの脅威となる組は、ルーラーによる抑止が機能するうちに討ち取っておきたい。
3. 性行為を行うサーヴァント(鏡子)への警戒。
4.他人になりすます能力の使い手(ベルク・カッツェ)を警戒。


[共通備考] 
※他人になりすます能力の使い手として、如月左衛門(@バジリスク~甲賀忍法帖~)について、主従で情報を共有しています。ただし、登場していないので、所謂ハズレ情報です。
※ヴォルデモートが大学、病院に放った蛇の使い魔を始末しました。スキル:情報抹消があるので、弦之介の情報を得るのは困難でしょう。また、大魔王バーンの悪魔の目玉が偵察に来ていた場合も、これを始末しました。



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096:忍音 電人HAL&アサシン(甲賀弦之介