第一回定時通達~二人の少女の警告と忠告~ ◆A23CJmo9LE



『正午になりましたので私、ルーラーのサーヴァントが定時通達を行います。まずは遅くなりましたが、予選を突破したマスターおよびサーヴァントに祝辞を、おめでとうございます。
この念話は現在現界している28騎のサーヴァント及びゴフェルの木片を携帯しているマスターに送っています。
通達では残りのサーヴァントの数、警告やルールの追加などを発信しますので、今後も通達を受けとりたいと考えるならばマスターは常に木片を携帯しておくことを勧めます』

全てのサーヴァントと一部のマスターの脳内に裁定者の声が響き渡る。

『現在残ったサーヴァントは先ほども述べましたが28騎。全てのサーヴァントが通常の7つのクラスにあてがわれ、全クラスが少なくとも3騎は存在しています。
今回は初回であるため少し踏み込んだ情報を発信しますが、次回以降に残存サーヴァントのクラス内訳などを話すとは限りませんのでご了解を。
なお今回追加のルールはありません…が捕捉をさせてもらいます』

息をつき、続く言葉を吐き出す。何かを心配するようでもあり、気疲れしたようにも感じられる。

『承知でしょうがNPCの殺害及び魂喰いはよほどのものでなければ違反にはなりません。
ですが建造物の破壊及び広範囲にわたる宝具の使用など、大きな影響を及ぼすものに関しては場合により警告を発させていただきます。思い当たる方もいるでしょう。
もし対城宝具の使用や建造物の破壊などを行う場合、人払いや夜間の実行などNPCへの影響を考慮することを強く要請します。こちらもよほどひどくないかぎり口出しはしたくはないのですが……』

廃ビルの倒壊、倉庫の火災、猟奇殺人、館や小屋の乗っ取り…一部のサーヴァントやマスターは己が所業を思い返し様々な考えを抱く。
しかしそれ以上にルーラーの思考を占める事件があった。

『つまり公衆の面前で新都の都心部において破壊活動を行う等の行為は警告の対象になります。幸いまださほど大きな被害は出ていないようですが。
この騒ぎの主犯に加え、深山町において重大な違反行為を行ったキャスター。あなたには重点的にこの場で警告を発しておきます。
今後さらなる違反行為が明らかになれば両名ともに何らかのペナルティを課します』

詳細を掴めてはいないが、伝聞情報によると問題が起きているのは確実。ならば取り上げておくべきと考え、発言するルーラー。

『以上で私からの通達を終了します。この聖杯戦争が恙なく進行することを願っています』
『監督役から特に補足はないわ。個人的に言うなら…アヴェンジャー、あなたのマスターは碌な男じゃない。早々に見切りをつけることを勧めるわ』

締めのカレンの発言に驚き、それを咎めようとするルーラーだが、カレンはまだ他にやらなければならないことがあるとそれを止める。それを受け、仕方なく事前の相談通りに念話の相手を切り替えるルーラー。

『ここからはバーサーカーのマスターにのみ伝えているわ。
ルーラーはマスター全員に伝達を送りたかったようだけれど、感知の比較的容易なサーヴァントに比してマスターの捜索は…やれないことはないけど若干面倒なの。魔術の心得もない相手ではなおのこと、パスなしでは念話を送るのも難しい。
そこで高位の聖遺物の欠片であるゴフェルの木片を目印に通達を行ったけど、それでは所持していないマスターに届いていないでしょう?
サーヴァントには問題なく伝わったから相談できればいいけれど、万一あなた達…バーサーカーのマスターが木片を所持していなかった場合情報が均一ではなくなってしまう。それは不平等だと私が進言したの、感謝してもらいたいわね』

続いて一部のマスターの脳内のみに響き渡るのは慈愛と喜悦に満ちた修道女の声。

『伝える内容は基本的に全体に発したものと同じ。残りのサーヴァントの数と警告、追加ルールの有無、通達を安定して聞きたかったらゴフェルの木片を手放さないこと。
今回の残りは28騎、基本のクラス7つが少なくとも3騎存在しているわ。詳細は自分で調べなさい。追加ルールはなし。
警告対象は新都で騒いでいる問題児と、重大な違反をした深山町のキャスターよ。
補足説明が効きたかったら他のマスターか、教会にいるだろう私たちに会いにくるといいわ』

ルーラーの伝達に比べ少々不足はある。聞きたければ教会に来い、というのが加わった情報だが…彼女の発言はそこでは終わらなかった。

『ここからはバーサーカーというサーヴァントを引き当て、パートナーに相談が出来ないマスターに個人的なおせっかい。
この方舟は現在過去未来の様々な記憶を再現する。覚えのある顔や建物を確認したでしょう?
ひょっとしたら見知った顔が蛇に囚われたり、魔法少女と刃を交えたり、墓標にその名を刻んだり、その純潔を花と散らしてるかもしれないわね。興味があるなら思い当たる節を探してみては?心配ならなおさら。私からは以上よ』



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「何を考えているのですか、あなたは!」

らしくなく声を荒げるルーラー。特定の相手への過ぎた干渉は監督役としての越権行為だ。
これでは恙ない聖杯戦争の進行など言えたものではない。

「あら、パートナーに恵まれなかった隣人への親切よ。私の隣人を愛することの何が罪だというのかしら?」

それに対して美しく微笑んで答えるカレン・オルテンシア。彼女の発言は確かに好意に満ちたものだったかもしれない…それは彼女なりのモノであり、一般的には極めて歪んだものではあったが。

「…それでも!バーサーカーのマスターへの進言も、言峰綺礼に対する発言も人を貶めるものです!それをよりにもよって不特定多数の人物の聞く通達の中で発するなど……!」
「あの男に対する評価を改めるつもりはないわ。それに通達内での失言というならあなたもそう。新都の事件に関してそこにサーヴァントがいると発したのは構わないというのかしら?」

熱くなるルーラーに対して冷たく応じるカレン。その発言を受けて苦い顔をするルーラー。
この話題で二人に重要なのは新都についてではなく、もう一つのことだというのが分かっているようだ。

「キャスターについても同様。よりにもよって魔術師のクラスが不正を働いているとなったらいきり立つ参加者は少なくないはず。遠坂凛たちの動きにも、協力を要請された貴女にも影響は出る。
それともひょっとして、それがキャスターへのペナルティなのかしら?深山町という広範囲でしか示さなかったのは先ほど見せたあなたのこだわり?」
「……キャスターの違反は新都の騒ぎに比べ重大なものだというのは分かっています。現時点では双方警告対象にすぎないとはいえ、同様には扱えません。それに彼女たちの協力要請は、受けられませんから」

それは苦渋の決断だったかもしれない。公正中立なる裁定者か、違反者を裁く裁定者か…幼い魔術師の依頼を断り、彼女は誰にも味方しないことを選んだ。

「私はルーラー…誰かの側に立つことは許されるものではありません。情報の聴取、収集は行いますが、今後も誰かに協力することは……ないでしょう。通達を聞いた参加者がキャスターを狙うならば、それもまた聖杯戦争」

不正を犯したキャスターも含め、情報は均一に与えた。動きのきっかけにはなるだろうが、その中で戦いに動くか息をひそめるかは各々の自由。
明確なペナルティや討伐例などなくとも通常の聖杯戦争が進むのなら、戦いのなかで不正を行ったサーヴァントが脱落するなら、その動きから不正を感知できるならそれで裁定者の役割は十分、ということだろうか。

「……まあいいわ。バーサーカーのマスターに対して確実に通達を行いたいという私の発言を汲んでくれたのには感謝しています。勤め先の近くにいたウェイバー・ベルベットや先ほど私と接触したテンカワ・アキトはともかく、月海原学園から離れた美遊・エーデルフェルトによく念話が出来たわね?」

議論は続くかと思ったが、予想外に強かなルーラーの反応に毒気を抜かれ労わるような対応をする。さすがにただの愚かな田舎娘ではない、というわけか。

「彼女は聖杯ですから」
「ああ、なるほど。ある意味でゴフェルの木片などよりも探知は簡単と」

ぽつりと返し、再び思考の海に潜るルーラー。それを愉快気に一瞥すると

「それじゃあ通常業務に戻りましょう。遠坂凛たちに連絡を入れたら、新都か大魔王バーンのところに行く?二手に分かれた方がいいかしらね」

問いを投げるも返事を待たず立ち上がりどこかに向かうカレン。
対してルーラーは思考を続ける。

(多くの聖遺物がこの地には集まっている…)

『ゴフェルの木片』……この聖杯戦争への参加条件であり、多くのマスターが今もなお所持している。意図せぬ参加者を集めた一因ともいえる。
『聖杯』……この戦いの果てに手に入るもの、であるにもかかわらず美遊・エーデルフェルトという完成した聖杯が存在している。彼女に望みはあるのだろうか。
『聖釘』……かつてアレクサンドル・アンデルセンがその心臓に打ち込み一つとなった。今は保持していないようだが……最高位の聖遺物がそう容易く消滅するものだろうか?
彼もまた望まぬ参加者の一人のようだ。
『聖骸布』……カレン・オルテンシアが所持し、またエミヤシロウもその身に纏っている。
そして『聖人』……場合によりスキルによる聖骸布の作成を可能とする者。私と、神裂火織。

この場に存在しないのは『聖槍』。しかしランサークラスは最多の5騎が馳せ、多くが神と深い関わりを持っている。
敬虔な信徒たるヴラド三世、おなじく信徒たる佐倉杏子、異教ではあるが神の血を引くクー・フーリン。
彼らの槍が聖人…私や神裂火織の血に染まればそれは『聖槍』たり得るのではないだろうか。もとは一介の兵長に過ぎなかった聖ロンギヌスに、聖人としてはともかく英雄としての格でセルベリア・ブレスやエリザベート・バートリーも含め、彼らが劣るとは思い難い。

(聖杯は意図的に召喚されるものを選んでいる?それに私は……ランサーを恐れている?)

通達による影響でキャスターの敵が集まるのはいい。もしあの二人のランサーがそうして集まったサーヴァントや、集まった者との諍いが原因でキャスターに敗れれば…
その戦いの中でキャスターの不正の証拠をつかむことが出来れば…

(何を考えているのだ、私は!)

確かに生前は手段を問わず勝利を追及したが、それは故国のためだ。自らの保身のために他者の不幸を願うなど罰せられるべき悪徳だ。
もしこの聖杯戦争で私の血が必要ならば…それが主の思し召しなら私は…

(―――主よ、この身を委ねます―――)




【?-?/教会/1日目・正午】

【ルーラー(ジャンヌ・ダルク)@Fate/Apocrypha】
[状態]:健康
[装備]:聖旗
[道具]:???
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行。
1. 遠坂凛に連絡を取り、要請に断りを入れる。岸波白野に対しては……
2. 大魔王バーンの調査を続けるか、新都の騒ぎに赴くか考える
3. …………………………………………私は。
[備考]
※カレンと同様にリターンクリスタルを持っているかは不明。
※Apocryphaと違い誰かの身体に憑依しているわけではないため、霊体化などに関する制約はありません。

【カレン・オルテンシア@Fate/hollow ataraxia】
[状態]:健康
[装備]:マグダラの聖骸布
[道具]:リターンクリスタル(無駄遣いしても問題ない程度の個数、もしくは使用回数)、???
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争の恙ない進行時々趣味
1. ???
[備考]
※聖杯が望むのは偽りの聖杯戦争、繰り返す四日間ではないようです。
※そのため、時間遡行に関する能力には制限がかかり、万一に備えてその状況を解決しうるカレンが監督役に選ばれたようです。
他に理由があるのかは不明。