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対話(物理) ◆OSPfO9RMfA


 28人。

 この聖杯戦争における現存するマスターの数だ。
 聖白蓮は通達を聞きながら思う。

 思ったより多い、と。

 おそらく自身と対面することもなく退場するマスターも出るだろう。
 ならば、一期一会、一回一回の出会いを大切にしなければならない。

 いずれは倒す相手だが、ただ無機質に殺し合うつもりはない。
 可能であれば相手と対話し、理解し、その上で倒す。

 だが、対話したマスターはまだ一人、言峰綺礼だけだ。
 聖から動くことが必要だろう。
 お弁当を食べ終わると立ち上がり、街を散策することにした。






 聖は街を歩いていた。
 場所にしてC-8。検索施設の一つである図書館のある区域だ。

 だが、聖には特に検索すべき情報はない。
 休戦同盟をした言峰綺礼のサーヴァントは、自身のサーヴァントがよく知るという。
 強いて調べるのであれば、綺礼達が出会ったという鉄塊を振るうサーヴァントだが、実際に見てもいない相手をその程度の情報で特定するにはさすがに無理だろう。

 では、何故、聖はここを歩いているのか。

 ――わからない。

 聖も何故ここを選んだのか分からないでいた。
 迷子というわけでも、道を間違えたというわけでもない。

 ただ、足がいつの間にか動いていた。
 そう表現するしか無かった。

 ついに図書館の前にまで来てしまう。
 通行人もまばらな通りで、ふと、図書館の前に立つ二人の男と目が合った。

 一人はホスト風のスーツを着た男。
 もう一人は赤いコートを着た長身の男。パラメーターが見える。サーヴァントだ。ならば、おそらく隣の男がマスターであろう。

 マスターと思われる男が口を動かし、不敵な笑みを浮かべる。
 遠くだったので声は聞こえなかった。
 だが、その口の形で何を言ったのかが分かった。


 ――来いよ。


 嗚呼、なるほど。そう言うことか。
 呼ばれたのだ。あの男達に。

「セイバー」

 聖も笑みを浮かべ、一言呟く。蒼い全身甲冑のセイバー、ロトが音もなく隣に現れる。剣と盾を手にし、バイザーの下から男達を見据える。
 対話だ。
 男達は拳による対話を求めていた。
 ならば答えよう。
 拳による対話を。

「ガンガン行きましょう」

 ロトは無言で頷くと、主と同時に男達に向けて駆けだした。






 聖はマスターと思われる男に向かって、コンクリートで出来た地面を穿つように駆ける。
 魔法――裁定者であるカレンらの世界で言うところの魔術――で強化された脚力は、隣を駆けるロトに遅れを取らない。
 男は構えを取り、その場から動かない。
 聖はそのまま勢いを乗せ、牽制のジャブを放つ。

 男は避けない。

 左の拳が男の頬に抉りこむ。
 こちらも魔法で強化された腕力だ。ジャブとはいえ決して軽い物ではない。
 なのに避けようとも受けようともしない。
 不審に思いつつも連撃の右ストレートを入れようと、左手を引く。


 ――男の鋭い眼光が見えた。


 本能的な恐怖を感じた聖は即座にバク転をして距離を取る。

 刹那、強烈な踏み込みと同時に肘鉄が繰り出された。

 踏み込みはコンクリートの地面を穿ち、穴を作る。
 肘鉄は空振りに終わったが、男は笑みを浮かべる。

「どうした。逃げるのか?」

 男は挑発するように手招きする。

 大魔王バーンの奥義に、天地魔闘の構えというものがある。
 『攻撃の直後は必ず隙が出来る』の理論を前提の元、相手の攻撃を防ぎ、しかるのち反撃を行う必勝の構えだ。
 最適化されたその構えは、如何なる相手であろうと打ち破るのは困難、不可能とさえも言われる。

 だが、この男は違う。
 攻撃の前でも、最中でも、後でも、隙があれば容赦なく攻撃する。
 そしてその攻撃は必殺だ。当てれば確実に“持っていく”。

 聖がこの男を倒す方法は一つ。
 必殺の攻撃を全て避けつつ、相手が倒れるまで出来るだけ隙の少ない攻撃をする。

 それは細い道。とてつもなく細く、長い道だ。
 聖の頬に汗が一筋流れる。
 だが、それでも逃げない。射るような瞳で男を睨み付ける。

「ジョンス・リー」

 男が唐突に単語を紡ぐ。

「ジョンス・リーだ」
「聖。聖白蓮です」

 それが名乗りだと気付いたのは、二言目だった。
 聖も名乗ると、懐から巻物を取り出し、掲げる。魔人経巻と呼ばれるそれは聖の背後上空に浮かび、上から下に流し開く。「転読」と呼ばれるお経の読み方の一種だ。
 さらなる魔法強化。それでもまだ道は険しい。

「もう一度、行きますよ!」

 聖は今一度、地面を蹴り、駆けた。






「さぁ、闘争の時間だ」

 ロトと対峙するのは、アーチャーのサーヴァント、アーカード。
 この聖杯戦争が始まって、ようやく待ちに待った闘争の時間だ。
 できればより長く、より楽しく味わいたい。
 だが、廃ビルでの主との闘いのように、またルーラーに水を刺されるのも興ざめだ。

 故に。

「拘束制御術式解放、第三号、第二号、第一号。クロムウェルによる承認認識、眼前敵の完全沈黙までの間、能力使用限定解除開始」

 濃厚で濃密で濃縮された闘争を堪能することにした。
 短期決戦。
 人の形が崩れ、不定型な存在へと化していく。腕が狼の顔に、全身に目が生え、液状化した部分もある。それを見たNPCは悲鳴を上げて散り散りに逃げていく。
 アーカードはロトの周りを囲うように身体を広げていく。

「ほう、貴様……人間だな?」

 ロトを囲うアーカードの全身に生えた目が、めざとくその本性を看破する。
 英霊が人間とは限らない。アーカードがまさにそうだ。他にも、神霊との混血により神性がある者、魔族の者、ヴァルキュリア人などもいる。
 だが、アーカードは直感する。
 対峙しているこの英霊は、“人間”であると。

「――」

 ロトは答えない。無言のまま剣を構える。

「よかろう。存分に楽しませてくれ」

 アーカードは吠える。それと同時にロトを殺めんと襲いかかった。


 四肢を持たぬ狼がロトを喰らわんと首を伸ばす。
 ロトは煌めく剣を振るい、その首を跳ね飛ばした。

 ロトの背後に回った部分から腕が生え、拳銃から銃弾を放つ。 
 背中に目があるかのごとく、ロトは眩い盾で直撃を逸らし、拳銃ごと叩き斬った。

 持ち上げた運転手の居ない車を、ロトに向けて叩き落とす。
 ロトのシールドバッシュによって、巨大な質量である車が宙を舞う。

 鋭く尖った手刀で右手首を引き裂かんとする。
 ロトが振るう剣の柄尻で叩き落とされ、翻した刃でバターのように切り裂かれた。

 斬ろうとも、撃とうとも、打とうとも、突こうとも、貫こうとも。
 打ち落とされ、受け流され、打ち返され、切り払われ、打ち砕かれる。


 ――劣勢だった。


 アーカードは劣勢だった。
 アーカードは化物だ。
 彼は脅威の再生能力や腕力、超感覚、不死性を持つ。さらに、拘束制御術式を解放することにより、その身を人の形から逸脱させ、身体の一部を獣と化し、また無機物と融合することもできる。


 だが――


 ロトは勇者だ。
 魔王を討ち滅ぼすことを宿命づけられた勇者なのだ。
 ロトは幾多の種類の魔物と闘ってきた。液状の魔物、獣の魔物、槍を持った魔物、剣を持った魔物、炎を吐く魔物、吹雪を吐く魔物、石で出来た魔物、鎧で出来た魔物、吸血鬼の魔物、不死の魔物……ありとあらゆるその全てに、打ち勝ってきた。


 そして、そして何より――


 ――化物を倒すのはいつだって人間だ
 ――魔王<化物>を討ち滅ぼすことを宿命づけられた勇者<人間>


 二つもお約束が揃っているのだ。
 アーカードがロトに勝てる道理は微塵も有りはしなかった。






「素晴らしい、素晴らしいぞヒューマン!!! さぁ、殺せ!! 化物である私を殺してみせろ!! 心の臓を抉り取り、切り刻み、叩き潰し、焼き焦がし、塵芥になるまで殺し尽くしてみせろ!!! ハリー! ハリーハリー!! ハリーハリーハリー!!!」
「――ッ!!」

 対する相手が己を殺しうる人間と認識し、興奮しまくし立てるアーカード。
 ロトは無言のまま、全方位から来る攻撃をいなし、反撃を行う。

 未だにロトは無傷、しかしアーカードもまだ再生能力に衰えはない。
 決着には時間が掛かりそうだ。このままではルーラーによる横槍が入ってしまうかもしれない。

 だが、宴は直ぐに終わった。


 ――轟音。


 嫌な予感。
 ロトはその音の正体を確かめるべく、その方向を見る。
 不定型なアーカードの縫い目から視界が通った先に見えた物。
 その予感は当たっていた。


 ひび割れたコンクリートの壁。
 その前で崩れ落ちる聖白蓮。
 そして貼山靠の残心を取るジョンス・リーの姿だった。


 おそらく、数度に渡る近接戦の末、ジョンスの攻撃が聖に当たったのだろう。
 聖に起き上がる様子はない。気絶しているようだ。

 ロトはすぐさま聖の所に行こうとするが、ロトの周囲はアーカードが包囲している。
 駆けつけるため突破口を開こうとした、その時――



「闘争の時間は終わりだ」



 アーカードは身体を人の型に戻し、武器を収める。
 ロトと聖を阻む物は無くなり、さらにアーカードから戦意を感じられなくなった。

 ――何かの罠か。

 ロトがそう不審に思うのも無理はない。
 油断せずにアーカードに対峙する。

「主の所に行くといい。我がマスターの闘争は既に終えている」

 その言葉にロトはジョンスを見る。
 ジョンスは構えを解き、ポケットに手を入れ、満足そうな笑みを浮かべていた。闘う意思はそこにはもはや無かった。
 ロトはもう一度、アーカードの方を見る。

「私の名はアーカード。覚えておくがいい。私を殺すヒューマン」
「――」

 アーカード。聞き覚えがある。確かテレビでジナコが呼びかけていた名前だ。
 だが、それを問う暇は無かった。

 ロトは無言のまま剣を顔の高さまで掲げると、鏡のように刃の平をアーカードに見せる。
 そして、真名解放を行う。
 しかし、竜巻は起こらず、ただ剣に刻まれた文字がくっきりと浮かび上がる。

「なるほど、それが貴様の名か。覚えておこう」

 アーカードは満足げに唇を釣り上げる。
 ロトはジョンスとアーカードを視界に収めながら、聖の所に向かう。
 聖の様態を確認する。出血はしていない。おそらく脳震盪による気絶だろう。しかし、頭を強打しているため楽観視は出来ない。安静に出来る場所で、適切な処置をした方が良い。
 残念ながら、回復魔法などは座に置いてきた。その為、治療するには安全な場所を確保する必要があった。

 ロトは聖を抱きかかえると、人通りの少ない裏道を通って去っていった。



【C-8/図書館付近/一日目 午後】

【聖白蓮@東方Project】
[状態]全身打撲、気絶中、疲労(中)
[令呪]残り三画
[装備]魔人経巻、独鈷
[道具]聖書
[所持金] 富豪並(ただし本人の生活は質素)
[思考・状況]
基本行動方針:人も妖怪も平等に生きられる世界の実現。
0.気絶中……
[備考]
※設定された役割は『命蓮寺の住職』。
※セイバー(オルステッド)、アーチャー(アーカード)のパラメーターを確認済み。
※言峰陣営と同盟を結びました。内容は今の所、休戦協定と情報の共有のみです。
※一日目・未明に発生した事件を把握しました。
※ジナコがマスター、アーカードはそのサーヴァントであると判断しています。

【セイバー(ロト)@DRAGON QUESTⅢ ~そして伝説へ~】
[状態]健康
[装備]王者の剣(ソード・オブ・ロト)
[道具]寺院内で物色した品(エッチな本他)
[思考・状況]
基本行動方針:永劫に続く“勇者と魔王”の物語を終結させる。
0.>白蓮を治療できる場所に移動する。
1.>白蓮の指示に従う。戦う時は>ガンガンいこうぜ。
2.>「勇者であり魔王である者」のセイバー(オルステッド)に強い興味。
3.>言峰綺礼には若干の警戒。
4.>ジナコ(カッツェ)は対話可能な相手ではないと警戒。
5.>アーチャー(アーカード)とはいずれ再戦を行う。
[備考]
※命蓮寺内の棚や壺をつい物色してなんらかの品を入手しています。
 怪しい場所を見ると衝動的に手が出てしまうようだ。
※全ての勇者の始祖としての出自から、オルステッドの正体をほぼ把握しました。
※アーカードの名を知りました。

[その他の情報]
ジナコ(カッツェ)に関する映像がテレビ、ネット上に出回っています。






「顔も見せず、語りもせず、だが仁義は貫く。ピカピカと目立つ身なりの割に、シャイで実直な人間ではないか」

 アーカードは自身の真名を明かすことに躊躇いはない。弱点を知られようが興味が無いからだ。
 しかし、ロトはおそらく違うだろう。それでも真名をアーカードに明かしたのは、推測ではあるが、聖を見逃した事への感謝の意と、中断した闘争への再戦の意。
 折角図書館が目の前にあるのだ。アーカードを追い詰めたロトの生前の行いを確認するのも楽しいかもしれない。

 アーカードはロト達が視界から消えるのを見送ると、ジョンスに近づいた。

「たっぷりと闘争を堪能したようだな、マスター」
「あぁ、本気になるには物足りないが、たっぷりと食わせて貰ったぜ」

 そう言って笑うジョンスの目元や頬には、痣がくっきりと浮き出ている。
 今回はジョンスの方が有利ではあった。だが、必勝ではない。いくらでも敗北する可能性はあった。
 故に、ジョンスの中には勝利の高揚感があった。

「トドメは刺さないで良かったのか?」
「お前、ドSだな。分かってる癖に、俺の口から言わせたいんだろう?」
「さて、何のことかな?」

 したり顔の笑みでしらを切るアーカード。
 ジョンスはその脇腹を小突きながら、言葉を紡ぐ。

「そりゃ闘いの最中に死ぬかもしれねぇ。けどな、闘いが終わっても生きてたら……また闘えるかも知れないだろう?」

 他の主従に襲われて死亡するかもしれない。
 だが、また出会うかもしれない。

「思いっきり負かせたからな。屈辱だろうな。その屈辱を食って強くなったアイツと、また闘う。その時、アイツが俺より強くなっていたら……“おかわり”はさぞ美味いだろうな」
「素晴らしい。それでこそ我が主と認めた人間だ」

 魔法陣が描かれている白い手袋でパチパチと手を叩く。
 からかいにも見える行為だが、ジョンスは害せずさらに言う。

「それに、お前もそうだろ?」
「さて、何のことかな?」
「とぼけるなよ」

 ジョンスはアーカードに、今度はこちらが弄る番だと言いたげな笑みを向ける。

「マスターを倒したらサーヴァントは消えてしまう。トドメを刺してたら、お前はさしずめ、さっきのサーヴァントに勝ち逃げされるわけだ。それは不味い屈辱だろう?」
「ん、んふ、んふふふふふっ、くははははははっ」

 アーカードは肩を大げさに震わせ、両手を激しく叩きながら笑う。

「良いだろう、マイマスター。今度かのサーヴァントとの再戦の暁には、必ずや勝利を収めてご覧に入れよう」
「おう、零号……だったか? アレも使って良いぞ。折角全力出せる相手なんだ。闘争をおもっきり楽しんでこい」
「了解した、マイマスター」

 あぁ、やはり、人間はいつだって最高だ――



【C-8/図書館/一日目 午後】

【ジョンス・リー@エアマスター】
[状態]顔面に痣、疲労(中)
[令呪]残り一画
[装備]なし
[道具]ジナコの自宅の電話番号を書いた紙
[所持金]そこそこある
[思考・状況]
基本行動方針:闘える奴(主にマスターの方)と戦う。
1.図書館でアサシン(カッツェ)を八極拳で倒す方法を探す。
2.ある程度したらジナコに連絡をする
3.聖と再戦する。
[備考]
※先のNPCの暴走は十中八九アサシン(カッツェ)が関係していると考えています。
※現在、アサシン(カッツェ)が一人でなにかやっている可能性が高いと考えています。
※宝具の発動と令呪の関係に気付きました。索敵に使えるのではないかと考えています。
※聖の名を聞きました。アサシン(カッツェ)の真名を聞きました。
※アサシン(カッツェ)、セイバー(ロト)のパラメーターを確認済み。

【アーチャー(アーカード)@HELLSING】
[状態]魔力消費(中)
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:主(ジョンス・リー)に従う。
0.セイバー(ロト)の生前の経歴を戯れに調べる。
1.セイバー(ロト)と再戦し、勝利する。
2.アサシン(カッツェ)が起こそうとしている戦争には興味がある。
3.アサシン(カッツェ)が接触してきた場合、ジョンスに念話で連絡する。
[備考]
※野次馬(NPC)に違和感を感じています。
※現在、アサシン(カッツェ)が一人で何かしている可能性が高いと考えています。
※セイバー(ロト)の真名を見ました。主従共に真名を知ることに余り興味が無いので、ジョンスに伝えるかどうかはその時次第です。



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