信仰は儚き人間の為に ◆IbPU6nWySo


アーチャーことアシタカは早苗が眠りについている間。
彼女の住むマンションの周囲を警戒していた。
単独行動のスキルにより早苗が熟睡してようとも、ある程度の闘いはできるだろう。
実際のところ、アーチャーはここでの戦闘は避けたかった。

そうしていると、上空に一筋の光が見える。
アーチャーがそれを見上げると大旗をなびかせ、空を切る女性のサーヴァントだと分かった。
恐らくあれがルーラー。
ならば、と遠くの方に見える炎。
あれはサーヴァントの闘いによるものであるとアーチャーにも理解できた。

この時刻から闘いを始めるのは最悪の場合と捉えていたが
どうやら中にはそうもいかない者もいるようだ。

アーチャーはよりいっそう警戒を強めたがサーヴァントが現れる事はなかった。
と言ったのとは少し違う。
サーヴァントはいたものの、戦闘に繋がる事はなかった。
と表現するのが正しいだろう。

アーチャーが目視で捉えたサーヴァントは二体。
ファミリーレストランの前で出くわしたらしい二組は、アーチャーに気づく事なく立ち去った。
赤いコートを着た大男のサーヴァントは何とも言えないが
別の赤髪の男?の方は姿が変化したことからアサシンではないかと推測する。
そしてマスターらしき男と少女……
彼らは共にアーチャーの視界から遠ざかっていった。

どういうことなのか?
同盟を組んだということなのか、それとも……

アーチャーは自身のマスター――早苗が方針を悩めていることを思うと
彼らもそうなのかもしれないと判断する。
アーチャーの周囲ではこれ以上のことは何も見当たらなかった。
太陽がのぼる。

東風谷早苗の朝は人並みより早かった。
彼女のNPCの設定は、独り暮らしの女子高校生。
月海原学園へバス通学している。
両親は健在しており、彼女に仕送りをしてくれるがこの月海原にはいない。
だが、早苗は学生服ではなく私服を着る。
女性らしくある程度髪を整え、手荷物を確認してからマンションを後にした。

立ち寄ったのはコンビニである。
早苗は今日の分の食事と保存食、飲み物を購入する。
店員が商店街で盗難があったと噂しているのとハッキリと耳に入れた。

その後、早苗はバスに乗車したが彼女が向かうのは学園とはまるきり別方向である。
早朝のバスとなれば学生の姿は一人もいない。
それどころか彼女以外、乗客は存在すらしていなかった。
アーチャーは霊体化したまま念話で彼女に問いかける。

――マスター、どこへ?
「……学校には行きません。誰かを巻き込んでしまうかもしれませんから」
――しかし、ルーラーが規定として人を巻き込んだ場合の処罰を設けている。
「それは故意に巻き込んだ場合だと思います。
 偶然とか、ちょっとした拍子とか…事故みたいなものは許されるのではないかと…」

アーチャーもそれは否定できなかった。
実際に戦闘があったらしい場所へルーラーが向かうのを目撃したことから。
ルーラーは現場へ向かい、事実確認をしてから処罰を下すのだろうと推測していた。
もし、ルーラーの確認を見越してサーヴァントが撤退してしまえば
ルーラーが証拠を探し、提示するまでの猶予が生じる。
仮にルーラーがどのサーヴァントが起こしたものか把握できなければ、どうすることもできない……

「終点から降りてしばらく山道を歩いた先に廃墟があるって友達から聞きました。
 きっとそこなら誰もいませんし、山の中ですからホームレスの人たちもいないでしょう。
 誰かが私たちと争いに来ても、そこならば安全なはずです」
――…マスター、一応。夜にあった事を話そう。
「夜?え、もしかして夜中……ずっと見張っててくれたんですか…?」
――案ずるな。眠りは必要としない。
「なんというか…申し訳ありません」

バスに静かに揺られながら早苗はアーチャーからの報告を聞いた。

火事。
恐らくサーヴァント同士の戦闘。
駆けつけたルーラーの存在。

サーヴァントの目撃。
赤い男、アサシンらしき存在。
マスターと思われる男性と少女。

「……子供」

早苗の中では迷いが続いている。
この聖杯戦争をどうするのか。
願望を叶えるのか、それとも幻想郷に帰るか。
強欲ならば両方叶えたい。

しかし、それは絶対間違っている気がする。
もしマスターかもしれない少女も殺さなくては願いが叶わないならば
聖杯名乗る願望機はきっと穢れており、この世の悪を取り込んだ怖気の走る邪悪の塊でしかない。
早苗はそう思った。

聖杯。
そもそも聖杯とはなにか。
神の聖遺物、というのが一般の見解かもしれないが
血で血を争う戦争の何が神の聖遺物だ。
これではない、こうじゃない。これは違う。
神である訳がない。

それとも――聖杯はタタリ神が産み出した聖遺物なのだろうか…?

――マスター……
「一言では収まり切れません。確かに言える事は、誰かの命を奪いたくありません」
――それでいい。一つ心が定まれば、自ずと道が見えるであろう。
「アシ…じゃなくて、ここではアーチャーの方がいいですよね。
 アーチャーはその女の子がどちらへ向かったかは把握していますか?」
――追跡はしていない。相手も二人、闘いになればこちらが不利となっていた。
「そうですよね……」
――彼らを探すと?
「会ってみたい、よりかは心配です」

確かにあの少女は非常に幼い。戦争などに巻き込まれる年代ではない。
アーチャーも自然と同意していた。
そして

やはり心の美しいマスターである……彼女は守らなくては…
彼女がいればこの戦争に光が差し込むはずだ。

そうも思えた。
早苗とアシタカ。
彼らが向かう廃墟というのは廃教会であった。
神に纏わる彼らが、廃れた神を崇める場所へ赴くというのは何たる皮肉か。
そしてまた
そこで待ちかまえている者も神を崇める者なのである――……



【C-9/廃教会へ移動中/一日目 早朝】

【東風谷早苗@東方Project】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]なし
[道具]今日一日の食事、保存食、飲み物、着替えいくつか
[所持金]一人暮らしには十分な仕送り
[思考・状況]
基本行動方針:誰も殺したくはない
1.聖杯はタタリ神と関係している…?
2.廃教会へ向かう
3.少女(れんげ)が心配
[備考]
※月海原学園の生徒ですが学校へ行くつもりはありません。
※アシタカからアーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しましたが
 あくまで外観的情報です。名前は把握していません。
※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。

【アーチャー(アシタカ)@もののけ姫】
[状態]健康 霊体化
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:早苗に従い、早苗を守る
1.廃教会へ向かう
[備考]
※アーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しました。
※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。



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