「聖杯?ああ、知ってるよ。見たこともあるし、触ったこともある。……使ったことも」

月海原学園、考古学資料室。不気味な土偶や、分厚い本がひしめくカビ臭い場所を根城にしている中年男性────まあ、私のマスターなのだが────は、聖杯についてそう語った。
冗談じゃない。
聖杯というのはもっとこう神秘的なものであって、こんな薄汚い部屋の主がその居所を知っているようなものじゃない。いや、そうであるべきだ。
そもそも聖杯を使った?どういうことなんだ。震える指先で愛用のPDAに文字を打ち込み、マスターへ向ける。

「説明してくれマスター、か。……別に大した話じゃない。僕の知ってる聖杯は万能の願望機なんかじゃなかった。ただ不老不死になれる────そういう伝説があっただけさ」

そう前置きしてから、マスターは自身の知る「聖杯」について話し出した。
マスターの知る聖杯が叶えられる願いはただ一つ、不老不死。永遠の命なんて私からしてみれば馬鹿馬鹿しいと思うが、やはり人々にとっては魅力的なのだろう。
マスターはそんな聖杯の力を悪用しようとしたナチスと聖杯を奪い合い、聖杯を手にした。だがそれも一瞬のことで、すぐに聖杯は失われてしまったのだという。

「さて、これが僕の知ってる聖杯に関する情報だ。……まさか聖杯が不老不死以外の望みも叶えてくれるようになったとはね」

そう言ってため息を吐くと、マスターは黙って部屋の中を見回す。所狭しと並んだ土偶やら木彫りの人形やらはいかにも恐ろし気で、夜になったら絶対に来たくない場所である。

「……それで、ライダー。君は一体何を聖杯に願うつもりなんだ?まさか不老不死、とかいうんじゃないだろうな」

ぎし、と椅子を軋ませながらマスターが問う。
その言葉に私はどきりとしながら胸を探る。私の願いは不老不死なんかじゃない。元から不死に近い身で不老不死を願うはずもないだろう。
私の願いは“首”を取り戻すこと。失くしてしまった私の首。今までずっとそれを探し求めてきたのだ、サーヴァントとして呼び出された理由は恐らくそれだろう。
首とは決別したはずだが、やはり心のどこかでは再開を望んでいたのだろうか。
いずれにせよ、私はいつまでもここには居られない。運び屋の仕事もあるし、いつまでも神羅を放っておいたらどうなるかわからない。
今はとりあえず池袋に帰らなくてはならないのだ。首を取り戻すかどうかはその過程で考えればいい話だろう。

「願いはある。でも、今は元の場所に帰ることを優先したい」

私が打ち込んだ文字を眺めて、マスターは微笑みながら告げる。

「そうか。……ライダー、君のために一つ忠告しておくとすれば────世の中に“万能”なんて決してないってことだ。どんな願いにも対価があるし、そうでなけりゃ制限がある。
僕の知る聖杯は、まさしくそんな願望機だった」

願い、か。もう首に関する未練は捨てたはずだ。しかし、こうしてチャンスを提示されるとどうにも迷ってしまうのは、決して私の意志が薄弱だからではないだろう。
願うことで首が戻ってくるというのなら、それに頼りたくなる気持ちは確かにある。でも、マスターの言う通りなのかもしれない。例え首を取り戻せたとしても、制限があったら?何らかの代償を支払わなければならないとしたら?
……やはりここは、池袋に帰ることを優先すべきだ。生きてさえいればチャンスはあるし、池袋なら首が無くても生きていける。
と、そこまで考えたところでふと疑問に思い至る。
マスターはまるで聖杯で願いを叶えることを否定しているような口ぶりだが、そんな人間がなぜ聖杯を欲しがるのだろうか?願いがないのなら聖杯なんて最初から必要ないし、サーヴァントだって呼び出さなくていい。
そんな疑問をキーボードに叩き付け、マスターへと示してみる。

「なら、貴方はどうして聖杯を欲しがっている?」と。
マスターはその質問に嬉しそうに笑いながら立ち上がり、部屋の中を歩き回る。
そして、部屋の片隅から小さな木彫りの人形を拾い上げて言った。

「僕が聖杯を探しているのはね、ライダー。それが万能の願望機だからなんて理由じゃない。聖杯が歴史的に重要な遺産だからさ!」

……なるほど、どうやらこのマスターは恐らく森厳と同類らしい。己の知的好奇心の為に世界中を動き回るタイプの人間。
ただ、このマスターが森厳と違うのはある程度は話が通じるということだろう。……日常的に変人とばかり接してきた私の感覚も大分ズレてきているのかもしれないが。

「さて、そろそろ行くとしようか」

どこに、と問う間もなくマスターは人形を置いて、壁に掛けていた帽子を被る。

「聖杯を探しにだよ。君はライダーだ、こんな狭苦しい所よりも広い所の方が良いだろ?……それに」

説明しながらマスターは鞭をズボンの横に吊り下げ、拳銃をホルスターに仕舞う。その様子は遠足に行く子供のように嬉しそうだ。
仕方がないな、と心の中で呟いてから、私は愛馬を呼び出した。マスターも私の意図が分かったのか、シートの後ろに座る。

「良き考古学者になるには図書館から出る事だよ、ライダー」

マスターの呟きを背中で聞いて、私は愛馬のエンジンを思いきり加速させる。
歴史資料室の窓を突き破って、真っ黒なオートバイが夜の街へと駆けていった。


ライダー
【真名】
セルティ・ストゥルルソン@デュラララ!
【パラメーター】
筋力C+ 耐久A 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具D
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。

【保有スキル】
神性:E 
ごく一部の説でヴァルキリーとデュラハンは同一視されている。折原臨也もその説を支持する一人。

無辜の怪物:E 
都市伝説として彼女本人の性格とはかけ離れたイメージが語り継がれている。

【宝具】
『池袋の黒き伝説(首なしライダー)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:100人
池袋の都市伝説、「首なしライダー」の噂が具現化した宝具。常時発動型。
噂だけが一人歩きし、本人の要素とはかけ離れた都市伝説として語り継がれたライダーは、相対する相手に自身のステータスを1ランク向上した状態に偽装出来る。

『疾走せよ黒き愛馬(コシュタ・バワー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:1人
ライダーの騎乗する首なし馬。その外見は馬車からオートバイまで自在に姿を変える事が可能。
ライダーが騎乗した時点でこの宝具は一切の物理法則を無視することができ、壁面走行や空中ジャンプのような離れ業も可能となる。
現在は大型のオートバイに偽装している。

【weapon】
「影」ライダーの首から流れ出る不思議SFトンデモ物体。服にしたり鎌を作り上げたりと自在に変化させることが可能。ライダーは主に影から鎌を作って戦う。
「PDA」ライダー愛用の情報端末。これがないとライダーは意思の疎通が出来ない。
【人物背景】
デュラララ!!の主人公。
池袋に出没する“首なしライダー”で、池袋の生きた都市伝説。猫耳のヘルメットに漆黒のライダースーツがトレードマーク。
その正体はデュラハンと呼ばれるアイルランドの妖精。盗まれた自分の首を取り戻すため、首の気配を辿って池袋まで来た。
人外であるにも関わらず、作中人物の中ではトップクラスの常識人。好きなものはネットサーフィンとTVゲーム、嫌いなものは交通機動隊とオカルト。

【サーヴァントとしての願い】
首を取り返したい……?
【基本戦術、方針、運用法】
戦術:影で作った鎌による斬撃、若しくはバイクによる体当たり。
方針:基本的に戦闘は避ける。聖杯が手に入るのならそれも良いが、とりあえずは帰還を優先したい。
運用法:正真正銘、本物の神秘的存在であるためステータスはかなり高いが、宝具があまり強くないのがネック。
「池袋の黒き伝説」によるハッタリと「疾走せよ黒き愛馬」による逃走を上手く組み合わせれば、終盤まで生存できるかもしれない。



【マスター】
インディアナ・ジョーンズ@インディ・ジョーンズシリーズ
【参加方法】
考古学の研究素材として取り寄せたゴフェルの木片に触れた
【マスターとしての願い】
歴史的に重要な遺産を探し出すだけのことさ!これまでと変わりはないよ。
【weapon】
「牛追い鞭」長さ2メートルほどの革製鞭。当たるとかなり痛い。攻撃以外にも色々と応用が可能。
「S&W M1917」45口径のリボルバー式拳銃。装弾数は6発。
【能力・技能】
アメリカ軍の諜報部員であったため、戦闘能力はかなり高い。また、考古学の教授でもあるため古代世界の知識が豊富。別の世界では聖杯に触れたことがある。
【人物背景】
恐らく世界一有名な考古学教授。
「フィールドワーク」と称して人類の秘宝を探し求める冒険を何度も繰り広げたアウトドア派。彼の関わった秘宝には聖杯どころかそれ以上のものもゴロゴロしているが、彼自身は秘宝の金銭的価値などどうでも良いご様子。
元軍人であり、両大戦を生き残った戦闘のプロでもある。鞭一本でライオンを追い払ったり、吊り橋を切り落として敵を倒したりするタフガイだが、ヘビだけは苦手。
【方針】
聖杯を手に入れ、保護する。悪人は倒すが、善人に危害を加えるつもりはない。