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東風谷早苗&アーチャー ◆Y4Dzm5QLvo




 ――張り詰めた弓の、震える弦よ。月の光にざわめく、おまえの心――



   ▼  ▼  ▼



 森が、森が死んでいく。

 古き世の信仰が、神々が、もののけ達が、命を吸われ死んでいく。

 失われていく。かつてこの世界にあった大切なモノが、この世界から消えていく。


(……これは、夢。夢のはずなのに、なんで私……)


 東風谷早苗は自分が夢の中にいるのだと自覚していながら、それでも頬を伝う涙を止められずにいた。

 あたりに満ちるのは、死と、鉄と、滅びと、喪失のにおい。  

 自然が、神々の手から離れていく。その只中に、早苗はただ立ち尽くしている。

 人々が怯え惑い、もののけ達は呪い呻き、無数の木霊(コダマ)達が木の葉が落ちるように音も無く降り注ぐ。


(神奈子様! 諏訪子様っ……!!)


 早苗は無意識に、風祝(かぜはふり)たる自分が仕える二柱の神の名を呼んだ。

 かつて地上を治め、しかし信仰を失い力をも衰えさせていった、早苗の大切な家族。

 その彼女達が外の世界の人々から遠ざけられていったという事実が、目の前の滅びの光景と二重写しになる。

 かつて世界が信仰で満ちていた頃、森はあんなにも豊かだったというのに。

 人はいつだって神を蔑ろにして、顧みず、忘れ去って、はじめからいなかったように振る舞うのか。


(あなたも、神奈子様や諏訪子様と同じなの? この自然とともに在った旧き神……そして同じように、遠くへ……)


 早苗は、山をも跨ぐばかりに膨れ上がった、半透明に輝く、首なしの巨人を見上げた。

 ――ディダラボッチ。その神は、夜の間はそう呼ばれている。

 その姿がゆらゆらと揺らめいているのは、今も命を吸い続けているからか、それとも早苗の目に溢れる涙のせいか。

 失われた何かを探し回るように蠢くディダラボッチの姿に、早苗は言いようのない寂しさを覚えた。


(神の時代はこうして終わり、もののけ達は滅んだ。だから私達は、幻想郷に移り住むしかなかった。だけど……)


 だけど、と早苗はむせび泣きながら思う。

 人間だって、元はこの地上に息づく命のひとつだったはずなのに。同じ命の環の中に、確かにあったはずなのに――。



   ▼  ▼  ▼



「――気がつかれたか」
「ええ……悲しい夢でした。この上ないくらいに、悲しい夢……」


 平屋建ての民家の一室で目覚めた早苗は、涙目をこすりながらそばにある存在に答えた。

 目覚めとともに、霧が晴れるように記憶が鮮明になっていく。
 あれは早苗がまだ幻想郷にいた頃。友人である魔法使いの古い知り合いの古物商が構えている店を訪れた時のこと。
 ふと見つけたひどく年季の入った木彫りの像。それを店主は「ごふぇる」と呼んだ。
 いわく、天蓋に浮かぶ、あらゆる願いを叶える方舟へと持ち主を誘う鍵なのだと。
 とはいえ店主はその道具の名前と使い途は知っていても使い方は知らず、早苗もまた信じてはいなかった。
 ただ無性に興味を惹かれて、そっとその像に手を触れ……気付いたら、ここにいた。

 偽りの学園生活は、思い返せば早苗にとって随分と懐かしいようで、しかし馴染み難いものだった。
 幻想郷へと移住する前は、早苗もああやって学校に通っていたはずなのに、まるで別の世界の出来事のようで。
 その違和感が募り、自分にはもっとやるべきことが、仕えるべき相手がいるのではないか……そう思っていた矢先。

 ――あの、もののけの夢を見たのだ。
 そして早苗は記憶を取り戻した。そしてこの方舟の、ムーンセルの、聖杯戦争の意味を知った。

 いわく万能の願望機。それに願えばこの世の全ての願いが叶うという。
 あの木像に自分以外の誰が触れても反応しなかったのは、「外の世界への未練」を持つのが自分だけだったのかも知れないとぼんやり思う。
 自分だけが幻想郷を抜け出し、こうして月のそばへと召喚されて、聖杯戦争に挑もうとしている。

「それで……ええと、あなたが私のサーヴァントですか?」

 今更にも程があると思いながら、早苗は傍らに控える、青い衣の少年に問いかけた。

「そうだ。我が名はアシタカヒコ。此度は『弓兵』の座を得て、そなたに召喚された」
「アシ……タカ……?」
「アシタカでいい。皆そう呼ぶ」

 アシタカ――サーヴァント・アーチャーはそう言い、マスターである早苗を見つめる。
 その視線だけで鳥をも射落とせそうな、意志を秘めた瞳。

「――あの、もののけの森の夢は、あなたの記憶なんですか?」
「シシ神の森のことなら、そうだ。あれは我が宝具のひとつが呼ぶ『固有結界』でもある。使わせないでくれ」

 宝具。サーヴァントが持つ生前の武器や逸話の再現であり、それ自体が一個の奇跡。
 それを使うなということは、アーチャーもまたあの光景を思い出したくないと感じているからなのだろう。

「あれ、宝具のひとつということは、他にも?」
「ああ。この呪いがそれだ」

 アシタカが右腕を掲げると、その周りに無数の蠢く黒い蛇のような瘴気が出現した。
 それを見た早苗が、はっと息を呑む。

「……っ! タタリ神……!?」
「知っているのか、マスター?」

 その整った顔に僅かに怪訝な表情を浮かべるアーチャー。  
 しかし早苗は、そのアーチャーの呪いがあまりに自分に縁深いものであることに驚愕していた。

 守谷の風祝の祖である国津神・洩矢諏訪子。彼女こそ、旧き地に住まうタタリ神達の主たる柱だったのだから。
 そのことを、そして二柱のことを、幻想を失ったものが辿り着く幻想郷のことを、早苗は話した。
 それを黙って聞いていたアーチャーは、聞き終わると神妙な顔で頷いた。

「古き自然を懐かしむ想い、タタリ神への浅からぬ繋がり。それらが二重の縁(えにし)となって、私とそなたを引き合わせたか」

 アーチャーはその呪われた右腕に視線を落としていたが、やがて目を上げ真っ直ぐに早苗を見据えた。


「ならばマスター。問おう、聖杯にマスターは何を望む。守谷の信仰を蘇らせるか。それとも、神と人がともに棲まう世をもたらすか」


 真正面からぶつけられた、自分の願い。
 早苗は最初はおずおずと、それから何度も首を縦に振った。
 頷きながら、また目に涙が浮かびそうになって、早苗は声を無理やり絞り出した。

「信仰を取り戻す、その願いは確かにあるんです……だから方舟は私を喚んだのかもしれない、でも、それでもっ……!
 そのためだけに、他のマスターの人達を殺して、それで願いを叶えたいなんて思えなくて、それでも、ううっ……!
 だけど、戦わなかったら、私死んじゃって、そしたら神奈子様も諏訪子様も悲しむ、私、お二人を泣かせたくない……!」

 結局抑えきれずに、早苗はまた涙を流した。
 自分が情けない。
 願いは確かにあって、だけどそのために誰かを殺すなんて出来なくて。
 せめて最初から何もかも切り捨ててでも願いを叶える覚悟が、聖杯なんていらないと切り捨てる潔さが、自分にあったら。
 こんなマスターじゃ、召喚に答えてくれたアシタカにも申し訳ないと早苗は唇を噛み締めた。

 しかし。


「それでいい」


 早苗の涙ながらの返事を聞き届け、その時、アシタカははじめてはっきりと微笑んだ。


「憎しみを増やしながら無理にでも叶えなければならぬものでもない。そなたは、ただそなたであればいい」 


 私が私である、それってどういうことですかと濡れた瞳を上げた早苗に、アシタカはただ一言で答えた。



 ――――生きろ。



 そのためならば私はそなたに力を貸し続けると、弓の英霊はそう言った。

 その言葉を聞いたからこそ、早苗も涙を拭って、はじめて彼に微笑むことが出来たのだろう。



【クラス】
 アーチャー

【真名】
アシタカ@もののけ姫

【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力C 幸運B 宝具D

【属性】
中立・中庸 


【クラススキル】
単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Bランクの場合、魂に致命的損傷を受けても短期間ならば生存できる。

対魔力:C
魔術に対する抵抗力。
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。


【保有スキル】
騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。
アシタカは幻想種を除く生物を乗りこなせるが、機械は対象外となる。

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。

気配感知:B
気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境を認識する。
生前のアシタカは常人では気付けないような僅かな気配からもののけの存在を察知することが少なくなかった。


【宝具】
『絡みつく呪痣(タタリヘビ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 タタリ神によってアシタカが受けた呪いの痣。右腕に絡みつくような無数の蛇のような形で発現する。
 発動時はアシタカの筋力をランクアップさせ、また放つ矢の威力と速度を跳ね上がらせる。
 魔力消費も決して高くないため汎用性が高いが、その代わり多様するとアシタカの体と魂は徐々に侵食される。


『シシ神の首』
ランク:? 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 水を張った桶に浸けられたシシ神の首。これ単体が何らかの効力を発揮する宝具ではない(後述)。


『もののけの夜(ディダラボッチ)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:???
 シシ神の首が実体化した時、シシ神の夜の姿「ディダラボッチ」がそれを追うように出現する。
 太古の精霊とでも言うべきこのディダラボッチと、シシ神の森のもののけ達の心象風景で現実を塗り替える固有結界。
 そのため厳密にはアシタカの宝具ではなく、アシタカ自身の心象風景によるものでもない。

 その風景は一見鬱蒼と生い茂る夜の森だが、森はすぐに首を奪われ暴走するディダラボッチにより生命を吸い尽くされていく。
 ディダラボッチが自然に属するものであるため固有結界は半永久的に維持され、ディダラボッチは結界内の者に無秩序に死と破壊を振り撒く。
 止めるためには神性に対して有効な武器や宝具でもって打倒するか、シシ神の首を返還して怒りを鎮めるほかない。

 ムーンセルに記録された、亡びゆくもののけ達の怒りと嘆きの心象の発現であるため、アシタカはこの宝具を忌避している。


【weapon】
「朱塗りの弓」「山刀」
どちらも神秘を帯びたものではないが、タタリ神の呪いによって他のサーヴァントにも通用する威力を持つ。


【人物背景】
北の地の果てに隠れ住むエミシ一族の数少ない若者。17歳。
無口だが正義感が強く潔く、決断力と行動力に長ける。弓の達人。

村を襲おうとするタタリ神に矢を放ち、命を奪う事と引き換えに死の呪いをかけられる。
タタリ神を傷つけた鉄の礫に呪いを解く鍵があると考え西に向かい、シシ神の森にて人間ともののけの対立に巻き込まれる。
そして山犬の娘として育てられた「もののけ姫」サンと出会い、
誰に頼まれたわけでも望まれたわけでもなく、アシタカは人ともののけの間に立って奔走する。

右腕には呪いの印である痣が浮き出ており、時にタタリヘビとして顕現する。
アシタカに絶大な力を与える反面時々制御不能に陥っていたが、アシタカの精神の成長に伴い暴走は見られなくなっていった。

最後は首を奪われ暴走したディダラボッチの怒りをサンと共に鎮め、自身はタタラ場に残り、山で暮らすサンと共に生きると誓う。


【サーヴァントとしての願い】
無し。あくまで彼自身の信念に従って早苗に力を貸す。
早苗のサーヴァントとして召喚されたのは「自然信仰」と「タタリ神」という二重の縁によるものである。


【基本戦術、方針、運用法】
固有結界を展開する宝具を持つがアシタカ自身は使いたがらず、また一度発動させたら容易く制御できない厄介な代物。
あくまで切り札としてとどめ、もうひとつの宝具『絡みつく呪痣』による遊撃戦に徹するべきだろう。
そうすれば華こそないが代わりに目立った欠点もない、堅実ながら優秀なサーヴァントとして運用できるはずだ。



【マスター】
東風谷早苗@東方Project


【参加方法】
香霖堂で見つけた古い木彫りの人形を媒介として。
店主の森近霖之助も、このアイテムの使い方は把握していなかった。


【マスターとしての願い】
生きて幻想郷に帰りたいし、外の世界に信仰を取り戻したいという願いもある。
しかし他のマスター達を殺してまで叶えるべき願いだとは思い切れずにいる。


【weapon】
御幣(ごへい)。
神秘の力を行使する時に振るう。


【能力・技能】
奇跡を起こす程度の能力を持つ。
主に天候を操るという形で発揮され、風を呼び水を割り白昼に客星を輝かせることができる。
しかし方舟の中では二柱由来の力は限定的にしか使えず、原作のような弾幕戦は不可能(完全に使えないわけではない)。
また幻想郷の外であるため、空も飛べなくなっている。


【人物背景】
信仰の失われた現代社会を捨て、神社ごと幻想郷に移住した風祝(かぜはふり)の少女。
基本的には真面目で明るい常識人だが、思い込みが激しく突っ走りがちなところもある。
当初は自信過剰な性格であったが、幻想郷のアクの強い面々に揉まれたか徐々に丸くなっていった。


【方針】
生きるための戦いはやむを得ないが、それでも相手の生命までは奪いたくないと思っている。



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