仮面の英雄の剣に貫かれ、死にゆく主君を――『笑って』見送った。
全てはこの時のためにあったのだと、これこそが主君の望みであると理解していたからだ。
主は理想に殉じ、自分の表舞台での役目も終わった。
だから主の喪失も、A級戦犯という烙印も受け入れて、辺境の地での隠遁生活に速やかに適応した。

それ故に。

「陛下、ローゼンクロイツ元伯爵が反乱を起こしたとの報告が」
「討ち滅ぼせ」
「イエス、ユア・マジェスティ!」

主の命令で戦場を駆ける喜びも偽りであると、気付きたくなくとも気付いてしまう。
皇帝がおわすこの宮殿の謁見室も、本物を模しただけの仮初めの空間に過ぎない。
ジェレミア・ゴットバルトがマスターの資格を得るのに時間はかからなかった。

甘い夢から現実に引き戻されたジェレミアは玉座の対面に立ったまま、取り戻した記憶を辿る。
きっかけは隠遁先、オレンジ農園で偶然拾い上げた木片だった。
望みがあったわけではない。
ただ偶然に、ジェレミアは巻き込まれた。

そしていつからか謁見室のNPC達は消え、玉座の横には一人の男が立っていた。
サーヴァント――現界したクラスはライダー。
二人きりとなった部屋で、先に口を開いたのはライダーだった。

「問おう」

その声は、質量を持つかのように重い。
いくつもの戦場を潜ってきたジェレミアでも額に汗が浮き、気を抜けば指先に震えが走りそうになる。
このサーヴァントは人の形を維持しながら、既に人の枠組みを大きく逸脱している。
しかしただ一言で場の空気を支配したライダーは、構わぬ様子で続ける。

「お前の望みは何だ?」

ジェレミアと同じ、顔の左半分を仮面で覆った男。
白い衣の上にマントを羽織り、玉座と同じ高い位置からジェレミアを見下ろしている。

「私の望みは――」

望みはない。
主の死を覆そうとも思わない。
あえて望むならば、主の願った優しい世界の永続か。
しかしそれも、その為に他人と殺し合うのでは意味がない。
ただ主の為にできることがあるとすれば――

「あの世界に帰還する。
 そして、世界の行く末を見届ける。
 それが遺された騎士に果たせる、最後の忠義」

優しい世界を望んだ主は、ジェレミアが後を追うことを許さなかった。
ならばできるのは、主が。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが見ることのなかった『明日』を見守ることだけだ。

「聖杯にかけるほどの望みはない、か。
 だが忠義という理由は悪くない」

ライダーは薄く笑い、玉座から歩を進める。
そして段差を降り、ジェレミアと同じ高さに並び立つ。

「私は殷の太師、聞仲。
 全ては我が子、殷の為……お前をマスターと認めよう」


殷とは国。
紀元前十六世紀から六世紀続いた中国最古の王朝である。
そして聞仲は三百年に渡って政治、軍事、あらゆる面で国を支えてきた。
皇帝を指南する立場にもあり、殷は我が子も同然であった。

その殷が、仙女に計略によって傾いた。
仙人界も、殷を滅ぼして新たな国を作ろうとしている。
親友とも決別してしまった。

故に聞仲は誰にも心を開かぬと決めた。
ただ殷の為に、たった一人になろうとも。
殷のためならば何でもしようと決意した。
殷のためならば、この地に集まる全ての願いさえ踏み躙る覚悟がある。
子を失って喜ぶ親は、いないのだから。

「殷とは国の名か?」
「そうだ」

マスターとなった男、ジェレミアに対して聞仲は短く返答する。
ジェレミアは聖杯を積極的に求めるつもりはないようだった。
だがそれも構わない。
魔力供給も期待していない。
殷のため、邪魔にならなければそれでいい。
殷との関わりを持たないマスターに、興味すら湧かない。
しかしジェレミアはそうではなかったようで、聞仲の返事に深く頷いた。

「祖国を想う気持ちは私にも分かる。
 可能な限り、貴公に協力しよう」

二十年や三十年生きただけの人間に、殷への三百年の想いが分かるわけがない。
しかしこの男が殷の太師のマスターに選ばれた理由には得心がいった。

人には優先順位というものがある。
聞仲にとっての『一番』は殷であり、ジェレミアにとっては主君。
己の命すら、天秤にかけるまでもない。
その意味でこのマスターは、このサーヴァントによく似ていた。




【クラス】ライダー

【真名】聞仲

【パラメーター】筋力B 耐久A 敏捷D 魔力C 幸運E 宝具A

【属性】秩序・善

【クラススキル】
対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
 崑崙十二仙達の捨て身の攻撃でも少々のダメージにしかならなかった。

騎乗:A
 幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。

【保有スキル】
カリスマ:B
 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。

指南の心得:A
 数々の英雄を育て上げた者が得るスキル。指導者としての手腕。
 対象の才能を見極めたうえで隠れたスキルを対象に習得させる。
 殷の代々の皇帝は聞仲の指南を受けていた。

戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

勇猛:A
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

【宝具】黒麒麟
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:―
 聞仲が常に従える霊獣。
 高い知力と忠誠心を持ち、聞仲の相談相手でもある。
 宝貝合金以上の硬度の外殻を持ち、乗り手をその内側に退避させることで守護する。

【宝具】禁鞭
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:100
 七つのスーパー宝貝の一つ。強力だが手にしただけで人の生気を吸い上げ、使いこなすのも困難である。。
 数ある宝貝の中でも最も気位が高く、聞仲が現れるまで誰一人扱えず博物館に飾られていた。
 直径数㎞以内に入った対象を打ち据えるというシンプルな攻撃だが、それだけに破るのも難しいという。

【人物背景】
 金鰲島出身の道士であり殷王朝の太師。趙公明、蘇妲己と並ぶ金鰲三強の一人である。
 元は仙人骨を持たなかったが、自分の体を虐めるほどの修行と肉体の酷使で仙人骨が生まれ道士となる。
 仙人となってからも殷を支え、政治・軍事の他に財政や治水工事など関わる分野は多岐に渡る。
 殷を害する者には容赦がない。
 殷のために金鰲島・崑崙山を壊滅させ、十二仙や元始天尊をも次々と撃破した。
 しかし親友黄飛虎を失ったことで自分が本当に取り戻したかったものを思い出し、太公望に人間界を託し自ら崖に身を投げた。

【サーヴァントとしての願い】
 我が子“殷”の永遠の繁栄。

【基本戦術、方針、運用法】
 武器は禁鞭のみ、戦闘に際して特別な術も使用しない。
 ただ殷のために禁鞭を振るう、一人で仙人界を半壊させる程度の実力者である。

【マスター】ジェレミア・ゴットバルト

【参加方法】農園で偶然ゴフェルの木片を拾う。

【マスターとしての願い】元の世界へ帰還する。

【weapon】
 両腕の手甲剣。グローブに仕込まれており、伸縮自在である。

【能力・技能】
  • 左半身を改造されている。
 ナイトメアフレーム(人型機動兵器、平たく言えばロボ)の爆発に巻き込まれても無傷でいられる程度の頑強さ。
 銃弾は(何故か改造されていないはずの右半身に当たったものも)跳ね返す。
 コードギアス世界で「生身でなら最強」と言われていた篠崎咲世子と互角に戦っていたため、身体能力は高い。

  • 左目は義眼であり、ギアスキャンセラーを有す。
 全てのギアスの解除が可能であり、ジェレミア自身にはそもそもギアスが効かない。
 また煙幕の中を見通す暗視機能もついている。

【人物背景】
 神聖ブリタニア帝国の貴族であり軍人。
 九年前に主君・マリアンヌの暗殺を防げなかったことを悔やみ、軍内部で強い上昇志向を持つようになる。
 一度は一国の代理執政官にまで上り詰めるがルルーシュの策により失脚、その後本人の意思とは無関係に肉体を改造された。
 言語障害、感情の暴走、乗機ごと海底に突っ込まれるなど散々な目に遭い、ギアス組織に拾われて再改造を受ける。
 マリアンヌの遺児ルルーシュを主君と定めてからは安定した戦いを見せた。
 ゼロレクイエムの関係者の一人であり、ルルーシュの目的を知った上で最後まで協力した。
 原作の最後では軍を離れ、ルルーシュからもらった名前と同じ果物を栽培している。

【方針】
 第一目標は生還。聖杯を積極的には求めないが、聞仲には協力する。