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 その時、少年は十五歳だった。


 十五歳。

 まだ音楽や、スポーツや、勉強や、友人とのたわいない会話が世界の全てで、
 そうであることを許されるはずの年頃だった。

 少年には幼い頃から共に育った親友がいた。
 共に学園生活を送ってきた、心許せる級友達がいた。
 彼自身は知らなかったけれど、自分へと想いを寄せている異性だっていた。
 あまり付き合いがない連中だって、掛け替えのない存在には違いがなかった。


 だけど。


 そんな生活は、たった一日で、何もかもぶち壊しにされた。
 あの日、バスに充満したガスの中で遠のいていったのは彼の意識であり、日常だった。
 そして離れていったものは、もう二度と戻っては来なかった。



 ――戦闘実験第六十八番プログラム、通称『プログラム』。



 少年――『七原秋也』の全てを奪い去った悪夢の殺人ゲームが、それだ。


 あのプログラムで、みんな、みんな死んでしまった。
 無二の親友だった慶時も、どんな時もクールだった三村も、無口だけどいいやつだった杉村も。
 自分を救ってくれた委員長も、灯台の女子達も、最初に自分が殺してしまった立道も……それから川田も。
 あの桐山和雄だって、死んでいいわけがなかった。あんなプログラムさえ無ければ人殺しになんてならなかったのに。
 何もかもが秋也の手のひらからこぼれ落ちていって、側に残ったのはたったひとりだった。

 その生き残った少女、中川典子と共に逃亡を始めて、しばらくが過ぎた。
 逃亡に至る道程は過酷を極め、大東亜共和国の犬達は執拗に二人を追い、二人は疲弊しながらも逃げ続けた。
 そして辛うじて合衆国行きの脱出ルートに辿り着き……そのとき、ふと思ったのだ。


 俺達がこの国を離れても、きっとこれからもプログラムは続く。

 毎年毎年、何十人という子供達が理不尽な国家システムの中で死んでいく。

 プログラムだけじゃない。共和国によって無慈悲に命を奪われる者、血を流す者、涙にむせぶ者。

 秋也にはどうしようもない巨大な圧力の下敷きになって、みんな永遠に苦しみ続ける。

 俺達だけが生き延びて脱出する権利が、本当にあったのだろうか。 


 その気持ちは、合衆国に渡ってからも一層強くなった。
 だけどあの国を変えるだけの力なんて、秋也は持っているはずもなかった。
 それに、戦うとしてもテロは駄目だ。革命も駄目だ。あまりにも血が流れ過ぎる。
 だけど……何もしないでいるのも、自分達だけ楽な生き方をしているようで。


 そんなとき、不思議な話を聞いた。

 月のそばには『方舟』があって、試練に打ち勝った者の願いをなんでも叶えてくれるんだという。


 典子はお伽話みたいなものとして面白がっていたが、秋也はただのオカルトだと笑い飛ばした。
 笑いながら、もしもそんなものがあるのなら、きっとあの腐った世の中も変えられるだろうと思った。

 それだけで終われば良かったのかもしれない。しかし秋也は、数日後にその話をもう一度思い出した。
 怪しげな露天商が、なんとかという木片を売っていたのを偶然目にしたのだ。
 馬鹿馬鹿しいと鼻を鳴らし、それでもその露店の前を何度も行き来して、結局秋也は木片を買ってしまった。

 家に帰り、その何の変哲もない木片を片手で掲げて、試しに祈ってみた。
 最初は冗談半分で、そのうちにだんだん本気になって、最後には力むぐらいの勢いで。


 当然、何も起こりはしなかった。


 くだらないことに金を使ったと憤慨し、それからそんなオカルトに縋ろうとしていた自分が惨めになった。 
 そしてそれから、自分の願いが本物だったことを自覚して、秋也は泣いた。
 いや、最初から本気だったのだ。だって……こんな世界じゃ、あまりにも死んだあいつらが報われないじゃないか。

 秋也は木片を放り投げた。こんなものが奇跡を起こすものか。
 だけど自覚した願いだけは、押さえつけようとしても自分の中で延々と膨らみ続けて――




 ――そして、七原秋也は、『方舟』の中で目覚めた。




「どこだ、ここ……」


 呟きながら、しかし秋也は全てを思い出していた。
 方舟。ムーンセル。奪われた記憶。偽りの学園。あいつらとは違うクラスメイトと過ごす日々。
 あの頃とあまりに異なる学校生活への違和感は日を重ねるごとに募り、今こうして炸裂するに至ったのだ。 


「方舟……お伽話じゃ、なかったのか……?」


 自分の手の甲に刻まれた三画の刻印、『令呪』をぼんやりと眺め、独りごちる。
 全ての記憶と共に刷り込まれた、『聖杯戦争』への知識。それを秋也は驚くほど自然に受け入れていた。
 これが、本当に願いを叶えるための試練なら。そうだとしたら、俺は――。

「――自分の世界に浸ってるとこ悪いんだけど。そろそろ、俺の自己紹介もしていい?」

 一人だけの部屋だと思っていたところに予想外の方向から声を掛けられ、秋也はビクリと振り返った。

 椅子に腰掛けてこちらを眺めているのは、髪を茶色に染めた青年だ。
 どちらかというと華奢な体型で、背は低くはないが見上げるほどでもない。
 見る限りでは何処にでもいそうで、妙なところといえば黒い手のひらが描かれたベルトぐらいだ。


「あ、あんたが俺の、サーヴァント……か?」
「そ。俺のことは、気軽にキャスターと呼んでくれればいいさ」


 キャスター。『魔術師』のクラスのサーヴァントか。
 当たり前のように魔術が登場することに眩暈を覚えるが、そんなところで躓いていても仕方がない。
 秋也は質問しようと口を開き、そのままぱくぱくと開閉させて、なんとか言葉を紡ぎ出した。

「ここが方舟の中で、これから始まるのが聖杯戦争……それは分かった。でもなんで俺がこんなところに……」
「さぁね。直接方舟へ魔術的に侵入したんじゃなければ、媒介の『ゴフェルの木』を手に入れたってとこか」
「あの木片が? いくら願っても、何も起きやしなかったぜ」
「起きたからここにいるんだろ。ちょうど今握ってるそれ、そいつが例の木片じゃないのか?」


 キャスターにそう言われ、そこで秋也はようやく自分が何かを握りしめている事に気付いた。
 ゆっくりと、指を一本ずつ引き剥がすように開いていく。
 あの胡散臭い木片を握っているものだと思っていた秋也は、次第におかしさに気付いた。
 大きさが違う。形が違う。感触が違う。
 少なくともあのつまらない木片じゃない……そう思いながら手のひらを開き、中にあるものを目にして。


「そんな……こいつは……!」


 秋也は震えた。
 それから『それ』をもう一度両手で握り締め、目を固く閉じた。

 見間違えでなければ……いや、見間違えるはずがない。
 このちっぽけな木の欠片は、それほど確かに脳裏に焼き付いている。



 ――川田章吾の、赤いバードコール。



 こんなところにあるはずがない。あれは事切れた川田に握らせたままだったはずだ。

 仮に政府が回収したとして、それが巡り巡って合衆国にいた自分の手に転がり込むなどあり得ない。

 そのうえこの木製のバードコールが神秘を帯びた聖遺物? 出来過ぎだ。そんなことがあってたまるか。

 だけど、もしもその通りなら。本当に、奇跡というヤツがあるのなら。


「川田ァ……………………っ!」


 この俺に、もう一度だけ立ち向かうチャンスをくれるというのか、川田。

 固く固くつぶった秋也の眼尻から、熱を持った涙が流れ落ちた。


「……マスター。君はこの聖杯戦争で、何を願う?」


 俯く秋也に、キャスターが問いかける。
 願いはとうの昔に決まっていた。あとは覚悟だけが必要だった。


「俺の育った国を作り変える。これ以上、誰も理不尽に泣かない世の中にする」


 秋也は話した。大東亜共和国、プログラム、死んでいった仲間たちのことを。

「彼らを生き返らせることを願わないのか? あるいはプログラムに選ばれなかったことにだって出来る」

 キャスターの言葉が刺さる。それでも、迷ってはならない。

「そりゃあ願いたいさ。またあいつらに出会えたらどれだけいいかって思う。一緒に今まで通り、仲良くやれたら……」
「……………………」
「だけど、駄目なんだよ。あの地獄を、無かったことにしちゃいけないんだ。俺が覚えてなきゃ、いけないんだ」

 声を絞り出す。対するキャスターの声からは、気取った雰囲気が既に失せていた。

「これは戦争だ。俺達サーヴァントはいい。どうせ一度は死んだ身で、やられたところで英霊の座に戻るだけだからな。
 だけどマスターはそうはいかない。『方舟』の中で負けたら、死ぬ。その命令を下せば……今度こそ人殺しになる」
「その覚悟はあるのかって? 分からない……だけど、あいつらのために俺だけに出来ることなら、俺は……!」

 拳を、川田の形見を握った拳をぎりぎりと握り込む。
 その様子を、キャスターは神妙な顔立ちで見つめていたが、やがておもむろに口を開いた。


「もういい。もう十分だ。俺が召喚に応じるに値するマスターだってことは、よーく分かった」


 思わず顔を上げた秋也の目の前で、改めて名乗らせてもらおうとウィザードは咳払いをして姿勢を正す。


「操真晴人。人呼んで指輪の魔法使い『ウィザード』。此度の聖杯戦争では『魔術師(キャスター)』のクラスとして現界した」


 掲げた指先に輝く、真紅の指輪。その輝きが秋也を射抜く。


「この指輪に誓おう、マスター。俺がお前の、最後の希望だ」


 不敵に微笑む『ウィザード』の視線に、秋也は無意識に深い頷きを返していた。 


 ああ、これから聖杯戦争が始まる。

 迷いはある。戸惑いもある。覚悟が伴っているかも分からない。

 だけど進むしかない。全ての涙を、宝石に変えてやるために。



【クラス】
キャスター

【真名】
操真 晴人@仮面ライダーウィザード

【パラメータ】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A 幸運:D 宝具:B
(通常時)

筋力:C 耐久:C 敏捷:D 魔力:A 幸運:D 宝具:B
(ウィザード・フレイムスタイル時)

【属性】
中庸・善 


【クラススキル】
陣地作成:B
「魔術師」のクラス特性。魔術師として自らに有利な陣地「工房」を作成可能。
晴人の「工房」は後述のクラススキルの補助をメインとした性能となっている。

ウィザードリング作成:A
「魔術師」のクラス特性「道具作成」の変型スキル。
魔力を消費し、自身の宝具に使用する魔術を秘めた指輪ウィザードリングを作成する。
上位フォームへの変身リングなど、高位の指輪になるほど必要となる魔力量は上昇する。
なお生前の晴人は指輪の制作を知己の職人に任せており、このスキルは聖杯戦争にあたって獲得したもの。


【保有スキル】
高速詠唱:-
魔術の詠唱を高速化するスキル。
ウィザードの呪文詠唱は全て宝具が代行するため、必要としない。

ウィザードローブ:D
変身によって身に纏うローブによる特性。対魔力と魔力放出の複合スキルで、それぞれDランク相当。
高位の指輪による変身を行うと、このスキルのランクも同時に上昇する。
なお、このスキルは変身前の状態では一切機能しない。

騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。
本来は騎乗兵のクラスにも適合する晴人だが、キャスターとして召喚されたため劣化している。
生前目にしたことのある乗り物であれば乗りこなすことができるが、未知の乗り物には発揮されない。


【宝具】
『呪文詠う最後の希望(ウィザードライバー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
 晴人が腰に装着する、ベルト状の呪文代行詠唱装置。
 普段は実際にベルトに偽装されているが、ドライバーオンの指輪で本来の姿を取り戻す。
 ウィザードリングをかざすことでそれぞれに対応した音声を発し、晴人本人の詠唱無しで呪文を行使する。
 そしてその真の能力は、変身リングをかざすことにより晴人を戦うための姿『ウィザード』へ変身させることにある。
 変身状態では各能力が上昇しウィザードローブのスキルを獲得する(変身リングによって能力・消費魔力は変動する)。
 詠唱できる呪文はあくまで指輪依存のため、事前のウィザードリング作成の状態次第で有用性が一変する宝具。


『心淵に棲まう竜(ウィザードラゴン)』
ランク:B 種別:対人宝具(対城宝具) レンジ:-(1~?) 最大補足:1(1~?)
 晴人の心象風景内に存在する竜(幻想種としての竜ではなくファントムと呼ばれる精神世界に巣食う魔物である)。
 本来は宿主である晴人を絶望させ喰い尽くす存在であるが、晴人はこれを抑え込み魔力の供給源としている。
 マスターから晴人自身に十分な魔力が供給されている状態であれば、それ以上の消費魔力をこの宝具に肩代わりさせることができる。
 ただし休息なしで行使できる魔力量には限界があり、またマスターからの魔力供給が一定に満たない場合は使用不可能。

 この宝具のもうひとつの特性として、心象風景内でならドラゴンが自我と実体をもって活動できるというものがある。
 つまりこの宝具は、術者の心象風景をもって現実を塗り潰す魔術――『固有結界』に対するカウンターとして機能する。


【weapon】
「ウィザードソードガン」
剣と銃の2形態に変形する武器で、晴人は変身前後を問わず使用する。
基本的に「コネクト」の指輪で別空間から取り寄せ、場合によっては二刀流で戦う。

「ウィザードリング」
宝具『呪文詠う最後の希望(ウィザードライバー)』で呪文を行使するための指輪。
初期から所持しているのは変身リング『フレイム』と魔法リング『ドライバーオン』『コネクト』『キックストライク』。
これ以外の指輪は、専用スキル「ウィザードリング作成」で魔力を媒介に作成する必要がある。


【人物背景】
 かつて謎の儀式「サバト」の生贄にされながらも生還した過去を持つ青年。
 その素質を認めた「白い魔法使い」にウィザードライバーを託され、ファントムと戦う魔法使い「ウィザード」となった。

 一見クールに気取った二枚目半といった印象を受けるが、実際は真面目で責任感の強い性格。
 普段の飄々とした態度は自分の内面を表に出さないためのポーズであり、悩みや葛藤はひたすら内面に抱え込む傾向があった。
 しかし仲間との出会いや幾多の激戦を通して、周囲を信じ自分を曝け出すことを学んでいった。

 同じサバトから生還した記憶喪失の少女・コヨミとは良いコンビであり、次第に心を通わせるようになる。
 しかしサバトの黒幕であった白い魔法使いとの戦いの中で、彼女は白い魔法使いの死んだ娘を模した賢者の石で動く人形と発覚。
 また彼女の体は既に限界に近づいており、遂には晴人の目の前で力尽き消滅してしまう。
 晴人はコヨミの最後の願いを受け入れ、彼女の心を救うという自分自身の希望のために最後の戦いへと挑んでいった。

 好物はドーナツ。それもプレーンシュガーしか食べないというこだわりがあるらしい。


【サーヴァントとしての願い】
 なし。かつてコヨミを失ったという過去には既に自分の中で決着を付けている。
 召喚に応えたのは、秋也の心を満たす深い絶望と、その奥に微かに灯る「最後の希望」を感じ取ったから。


【基本戦術、方針、運用法】
 特殊クラススキル「ウィザードリング作成」による下準備がカギを握る、変則的なキャスター。
 戦闘形態「ウィザード」はキャスターにしては近接戦闘向きの能力だが、そのままでは三騎士クラスには及ばない。
 それをサポートするためには、各種上位フォームや強力な攻撃魔術、搦め手用の魔術に使う指輪の作成が必要となる。
 基本的にはキャスターらしい「待ち」の戦術を取らざるを得ないが、強力な指輪を揃えた瞬間状況は一変する。
 陣地、地脈、宝具、その他の条件を揃えて作成の為の魔力を捻出し、最強フォーム「インフィニティ」の指輪で騎士クラスを正面から叩き潰そう。





【マスター】
 七原 秋也@バトル・ロワイアル


【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。
 媒介となったのは川田のバードコールだが、なぜ秋也が持っていたのかは自分でも分からない。


【マスターとしての願い】
 聖杯の力で大東亜共和国を作り替え、かつての級友のような犠牲を二度と出さない世界にする。


【weapon】
 ベレッタM92F。かつてプログラムからの脱出時に持ち出したもの。


【能力・技能】
 運動神経は抜群であり、プログラムやその後の逃亡を通して相当の修羅場を潜っている。
 しかし戦闘能力は一般人の域を出ず、また魔術師としての能力は当然ながら皆無。


【人物背景】
 城岩中学校3年B組の中学生。
 早くに両親を亡くし孤児院で生活していた。運動神経が高く、陽気で強い精神力を持つ。

 修学旅行中に戦闘実験第六十八番プログラムの対象としてクラスごと拉致され、国家に殺し合いを強いられる。
 開始時に親友を教師役によって殺害され、その後はその親友の想い人であった中川典子と行動。
 更に前回のプログラムの生還者である川田章吾と出会い、共にプログラム脱出を目的として奔走する。

 幾度となく生命の危機に見舞われ、また三村や杉村といった友人を次々に失い続け、
 最後には最大の協力者であった川田までも失いながらも、典子と一緒にプログラムから脱出。
 その後川田の知人を通して国外逃亡の手段を手に入れ、典子と二人で生き続けることを決意する。


【方針】
 焦らずに確実な勝利を目指す。
 決して殺しを受け入れているわけではないが、その葛藤を乗り越えるだけの覚悟を持つ。