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アーヴィング・ナイトウォーカー&セイバー



びゅう、びゅう、びゅうと、乾き枯れた風の音。そんな寂しい音ばかりがその場所には満ちていた。

暗く埃っぽく、そして終わっているという印象のある場所だった。
床はどこも罅割れて、並んでいる機械であったものらは悉く赤錆に塗れ、中には躯体を折り崩れているものもある。
粉々の硝子が床に散乱していて、近い間に雨が降ったのかそこかしこに握った水溜りも見られる。
造られたものを守るべき屋根はとうにその役目を放棄したらしく、見上げればいくつも穴が開いているのがわかった。

有体に言えばそこは所詮廃工場と呼ばれる場所だった。
放棄されて幾程か、最早活動はおろか意思も血も通わぬ死骸のような廃工場。
当然、蛍光灯のような明かりなど点いているはずもなく、屋根の穴を通り夜空から降り注ぐ月光だけが唯一の光源だった。
そして一際大きな穴から月光が射す、まるでスポットライトのような場所に“彼女”は立っていた。



美しい女性だった。豪奢なドレスに気品を漂わせる佇まい。プラチナブロンドの長い髪が月光を反射しキラキラと輝いている。
紙の様に白い肌。真っ直ぐ通った鼻。細い顎。長い睫毛。黄金の瞳。血色の唇。そしてその唇の中から覗く長い――牙。
凄惨な――アーヴィング・ナイトウォーカーが彼女の美しさを表すのに最初に思いついたのはそんな単語だった。

なんだかこんなことが前にもあったな。
目の前の彼女のドレスと揃えたように真っ赤なコートを着ている青年はそれを口にせず心の中だけで思った。
それはいつだったか。記憶は曖昧だ。いや、なにもかもが曖昧だ。今この状況そのものに対する認識からして曖昧だった。

「…………うぬよ」

目の前の凄惨な美女が口を開く。唾液に濡れた長い牙がよく見えた。そしてあの金色に輝く双眸がこちらを向いていた。
こんな時にはどうするんだっけ? 前は、その前はどうしたっけ?
青年の表層意識に思考が走る。認識は曖昧だったが、彼はこの状況に危機感を覚えていた。いや、記憶があった。そして。

そう、こうするんだ。

微かな風の音を吹き飛ばして破壊の轟音が廃墟の中に鳴り響き、そして美女の頭は砕け散り埃塗れの床に真っ赤にばら撒かれた。


  Ж Ж Ж


「あれ?」

アーヴィの口から間の抜けた声が漏れる。
目の前にはついさっきと変わらぬ姿で美女が立っている。なんら一切変わらぬ姿で。“拳銃で頭を吹き飛ばした”というのに、血の一滴すら垂らすことなく。

「いきなりだな。儂(わし)が儂でなければすでに終わっていたところであったぞ?」

似合わぬ口調でそう言う美女はアーヴィを見ながらくすりと笑う。なにが“すでに”なのか、アーヴィにはわからなかった。いや、今解った。

「あの、その……どうも、すいません。…………頭、大丈夫ですか? あっ、そういう意味で言ったんではなく」

手馴れた所作で右手に握っていた拳銃――五〇口径エンチャントマグナム――を懐に戻しながら、それでいてこんな様子を見せるアーヴィに美女はまた笑う。
今度はカカと声を出して笑った。そしてそんな様子にアーヴィは、“目の前の美女を瞬間で殺害しそしてその復活を受け入れている”彼はまた萎縮する。
それは非常に奇妙な光景だった。

「よもや、儂を呼び出したのがうぬのような青瓢箪とはな。
 が、うぬは運がよい。誰が主であろうと儂を呼び出した時点でその主の勝利は約束されたようなものじゃ」

そして、彼女は、凄惨な美女はその名を名乗った。

「鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼。怪異の王にして最強の怪異。
 “怪異殺し”のキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードとはこの儂のことよ」

彼女はまたカカと笑う。そう彼女は吸血鬼なのだ。であるからしてたとえ“頭欠”になろうとも“死ぬ”などということはない。一瞬で再生する。
そもそもとして厳密に言えば吸血鬼に生死の概念はないのだが、ともかくアーヴィは吸血鬼というものをよく知っていた。
吸血鬼とはは縁が深い。彼の母は吸血鬼に噛まれ吸血鬼になった。その母を殺したのは彼だ。
そして天涯孤独の身となった彼と連れ添った、半身とも言える少女――ミラ・ヘルシング――彼女も吸血鬼だった。
結局、彼女も失われて、アーヴィのそれからは全て彼女との再会を願うだけの日々だったのだ。

そして今、『聖杯戦争』――それが願いを叶えてくれるという。たかだが“自分達以外の全員を殺すというだけ”のことで。

アーヴィは自分がそんなことを考えられることに笑いそうになってしまう。
根暗でどんくさく、空気も読めず黙っていることくらいしか得意なことがない自分が、それは全く今も同じなのにどうしてこんな風に考えられるのか。

「じゃ、じゃあ、これからよろしくお願い。します。……キスショット、さん」

おずおずと差し出された手は、しかし握られることはなかった。

「戯け。儂のことはハートアンダーブレードと呼べ。次にキスショットなどと呼べばうぬの魂ごと砕いて殺すぞ」

それは今まで見たどの吸血鬼からも感じられなかった氷の様な威圧だった。心臓をばくばくと鳴らすアーヴィは差し出した手をゆっくりと戻す。

「す、すみません。ハートアンダーブレード、さん」
「わかればよい。儂を召喚したのは確かにうぬだ。しかしそれ如きで儂とうぬとの間にある上下が逆転するなどとは思わぬことだな」

額に汗を浮かべ頭を垂れるアーヴィにそう言い切ると、すっとハートアンダーブレードの姿が消える。
自分の影の中に潜ったのだと気づいたのはそこから彼女の声が聞こえてきてからだった。

「力を無駄遣いせぬよう儂はうぬの影の中で寝る。敵を見つけたなら起こすがいい」
「あっ、はい。……あ、えっと、俺はアーヴィング・ナイトウォーカーっていって、その――」
「聞かぬ。儂は人間の名前を覚えん。うぬは小僧。それだけだ」
「そ、そうですか……どうも、すみません」

ぴしゃりと言い切られ、アーヴィは自分の影に向かって項垂れるように頭を下げる。だが、もうハートアンダーブレードからの言葉はなかった。
ただ、彼女の気配だけが冷たく感じられ、そしてびゅうびゅうという風の音が耳に届くだけだった。



「頑張らないと……」

アーヴィは右手の甲を見る。そこにはいつの間にか刺青のように模様が刻まれていた。令呪というものらしく、聖杯戦争に参加する権利を得た証でもあるらしい。
願いは、決まっている。“彼女”とどのような形であっても再会すること。願えることなんてそれ以外に持っていない。ただ、彼女に会いたい。

左腕の鉤爪の義手をカキンカキンと鳴らす。寂しい音をカキンカキン。涙の代わりにカキンカキン。






【クラス】 セイバー
【真名】 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード
【属性】 混沌・中立

【ステータス】
 筋力:A 耐久:E 敏捷:B++ 魔力:B 幸運:E 宝具:B

【クラススキル】
 対魔力:C 第二節以下の詠唱による魔術を完全に無効化。大魔術、儀礼呪方等の大掛かりな魔術及びそれに匹敵するものは防げない。
 騎乗:B 騎乗の才能。人が作り出したあらゆる乗り物の運転が可能。魔獣、聖獣等神秘的な乗り物に関してはこのスキルは発揮されない。

【保有スキル】
 吸血鬼:A
  怪異の王として様々な異能力を使用することができる。
  吸血による人間の下僕化。飛行。影への潜行。霧、闇、獣への変化。透明化。眼力による物質の破砕等々。
  それでいて吸血鬼としての弱点はほとんど持たない。太陽の直射によって体表面が炎上するがそのダメージが再生能力を上回ることはない。

 再生:EX
  吸血鬼としても異常の再生能力、もはや復元と言ってもよいレベルのものを持ち、受けたダメージは次の瞬間に元通りになる。
  これは体内に「心臓」が存在する場合のみ発揮され、「心臓」が存在さえしていれば例え「心臓」が破壊されようともこれも同じく再生される。

 物質具現化:B
  意思により非生物であるものならば自由に物質として具現化させることができる。(纏っている衣装は常にこの能力によるものである)
  機械や電子部品など、非常に複雑な構成をした物もバッテリーや燃料を含めて具現化可能。
  魔術道具や宝具も一度手にしたものであれば複製することが可能であるが、その場合、複製されたものはランクがひとつ落ち、真価を発揮することはできない。

 人食(カニバリズム):A
  吸血のみならず、人体を血肉として喰らうことで自身の魔力をより回復することができる。
  また相手が霊体や魔力を持つ者であれば、直接それを自身のものとして取り込むことが可能。

 神性:B
  かつて人民から神と崇拝を受けていたことから神霊適性を獲得している。社などの場を用意することで土着神程度ならなることが可能。

【宝具】
 『心渡(こころわたり)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大捕捉:1人
 全長2メートルの大太刀。
 物質非物質を問わず両断する切れ味を持ち、特に怪異に対し絶大な効果を発揮するところから別名『怪異殺し』とも呼ばれる。
 キスショットが持つこれは実は『初代怪異殺し(人名)』が持っていたものの複製であり、そのせいでランクが落ちている。

【weapon】
 宝具と同じ。

【人物背景】
 出展は「化物語シリーズ」
 齢六百年を近く迎える女吸血鬼。元人間の貴族であり、ドレスを主に衣装に選ぶのはその名残。しかし人間だった時の記憶はほぼないらしい。
 吸血鬼となって以後は世界を放浪しており、かつて日本に滞在していたこともある。その間は意図したものではないが神として崇拝を受けていた。
 その後、再び日本を訪れた際に紆余曲折を経て阿良々木暦と逆転した主従関係を結び、以後彼と怪異に纏わる事件に関わることになる。
 ある別時間軸の世界ではゾンビのような劣化した下僕を増殖させ世界を滅亡直前にまで追いやっていたことがあった。
 その原因は家出したところを発見してもらえなかったからという他愛もない理由だが、この例が表す通り、メンタル面は非常に弱く寂しがり屋である。

 身体的、能力のスペックは一般的な吸血鬼と比してもかなりのものがあり、その全開の力は南極から日本へ跳躍するという程。
 ただし、心臓が盗まれるなどして身体の外に出ると途端に並の吸血鬼になってしまい、人間のハンターにもあっさりと遅れを取ってしまうと、極端。
 更に血液不足などから弱体化すると見た目が幼くなっていくという特徴がある。(全開時の見た目年齢は二十七歳)

 今回の聖杯戦争では、阿良々木暦と関わる以前の『怪異殺し』と呼ばれていた状態で召喚された。

【サーヴァントとしての願い】
 太陽の破壊。

【基本戦術、方針、運用法】
 気分屋でぐうたらなところはあるが、基本的にマスターに従って行動する。
 昼夜は逆転するが人間並みに睡眠欲はあるので、昼の間はあまり活発的には活動はしない。

 戦闘は主に高速突進からの殴る蹴るで、動きを止めたところを吸血で力を吸いとりそのまま絶命させるというのが基本。
 相手が難敵と見れば『心渡』を体内より取り出して斬りかかる。また格下の相手であれば眼力による破砕で退けることもある。
 基本的に倒した相手は食べて自分の魔力にする。吸血による下僕作りはよほどのことがない限りしない。


【マスター】 アーヴィング・ナイトウォーカー

【参加方法】
 ケイオスヘキサ(都市)から東方へと脱出する際に用意した逃走資金(宝石等)の中に『ゴフェルの木片』が紛れていたため意図せず召喚された。

【マスターとしての願い】
 (亡くなった)ミラ・ヘルシングと再会する。

【weapon】
 『リード&ヴォーン九二型・五〇口径エンチャントマグナム』
 対化物用の大口径リボルバー拳銃。軟弾頭を使用しているため生身の肉体を持つ相手に対して尋常ではない威力を発揮する。

 『鉤爪』
 失われた生来の左手の代わりにつけられた金属性の鉤爪型義手。引っ掛ければ凶器になる。

【能力・技能】
 『遺体蘇生保全処置技術者資格』
 破損した死体を部品(パーツ)として使用できるよう保全するための処置技術や、その過程で死体がゾンビ化しないようにする為の知識など。

 『修羅』
 表層人格とは別に「修羅」と呼ばれる攻撃衝動人格を持つ。
 なので本人が怖気つこうとも、洗脳や催眠、呪縛を受けていようとも敵性の存在を感知すれば条件反射的に最適な攻撃を行える。
 またその最中は相手からの攻撃や殺意も的確に察知し、自動的に回避と反撃を行う。
 攻撃衝動は無差別なものではなく敵性の判断は基本的に表層人格と一致するが、殺人による禁忌感が著しく低下しているため些細なことでも殺害してしまう。

【人物背景】
 出展は「ブラッドジャケット」 ※後日談についてのみ「ブライトライツ・ホーリーランド」
 積層都市・ケイオスヘキサで、病身の母と二人暮らしをしていた死体蘇生保全処置業の青年。
 持ち込まれた遺体から拳銃を見つけ、それで吸血鬼化した母を殺害してしまった際に『修羅』が目覚め、直後都市下層で衝動的な殺人を繰り返す。
 ある達人に左手を負傷させられた後、同じく片手(右手)を失っていた少女(ミラ)と出会い、身寄りをなくした者同士生活することになる。
 その後、追手をかわす為に都市外への逃走を図り、その資金稼ぎのために二人で強盗殺人を繰り返す。(この時、巷ではフック兄弟と呼ばれていた)
 だが、脱出の間際にミラの父親であるヘルシング教授と彼の部隊に追いつかれ、アーヴィはそれを壊滅させるもミラはそこで亡くなってしまった。
 最終的にアーヴィは一人で都市を離れ東方へと向かい、その後修行を重ね道士となりミラの転生を待ち続けた(※)。

 見た目は冴えない青年であり、見た目通りに中身も冴えなく、積極性がなく真面目だがどこか抜けていて人と(特に女性と)話すのが苦手で吃音が出る。
 よどみなく話せるのはよほど気を許した相手のみで、この性格は「修羅」が覚醒した後も都市を出るまで変わらなかった。

 召喚は都市を出た直後(ブラッドジャケットの最後)よりとなる。

【方針】
 聖杯戦争のルールに従い、他の組を殺害していくつもり。(「修羅」の影響と、繰り返した強盗殺人により殺害への禁忌感は希薄になっている)
 作戦の立案は非常に苦手なので、いきあたりばったりになる。(コンビの頭脳はミラの役割で、生活のなにからなにまで彼女頼りだった)
 戦闘は敵を見たらEマグで撃つのみ。敵を見極める能力が乏しい為、攻撃されてはじめて「修羅」が発動し反撃するというのが基本になるだろう。