轟音が辺りを響かせる。爆発音だ。数秒して緊急事態を告げるサイレンが響き渡る。
「……塔が、燃えている…!?」
 騎士の一人がそう呟いた。爆発は塔の内部から起こったものらしい。たまたま近くにいた彼は塔内部へと駆けこむ。塔管理者に何かあれば危険だ。彼は塔を駆け昇っていく。彼女がいる場所は把握している。彼の足取りは真っ直ぐで迅速であった。

扉が開かれる。
「…レボリア様!!」
 管理者「レボリア」の居る空間は既に一面火の海だった。この空間はセキュリティが厳重で騎士の彼含め一部の人物しか知り得ない筈だ。このような侵入はあり得ない。
 火の海の中に、少女の姿があった。
「レボリア様!ご無事ですか!」
『緊急事態です。此処は危険です。早々に退却してください』
「危険であるとは重々承知しております。ですが、塔の損傷は即ち貴女の損傷です。このまま見過ごす事は出来ません」
 騎士はレボリアの手を握った。瞳の中の炎が激しく揺らめいている。レボリアはリンケージ越しにそれを見つめていた。それから火の海を見遣る。

『其処に侵入者がいます』

彼女の言葉とほぼ同時に黒い影がゆらりと立ち上がった。
「…お前は…」
「……予言の為、未来の為、この塔はボクが壊さなきゃいけない。…余計な真似はしないでくれるかな?」
 謎の青年は冷ややかに笑い、ナイフを握りしめレボリアに突撃する。騎士はレボリアを護るようにそれを剣で受け止めた。刃がぶつかり合う音も炎の海の音で掻き消される。
「ふざけるのも大概にしろ。この塔がこの地の要だ。落とさせはしない」
『戦闘を停止してください』
「この世界を救う為にはこれしかないんだよ、人間」
『戦闘を停止して、ください』
 レボリアは制止させようとした。だが、既に襲撃のダメージが大きい。だがこの状況で何が最善か?このままでは自分やこの騎士までもが危ない。
『…二人とも…私を許してください…今はこうするしかありません…』
 彼女の言葉に二人が振り向いた。
「何を―!!」
『―Ma zweie wa slepir ware colga yorra―』



 数時間後、鎮火されたその場所には、二つのポッドのみが横たわっていた。レボリアは居ない。塔が稼働している以上、彼女は生存しているのだろう。だが何処にも居なかった。


 ポッドの一つはその間で厳重に保管された。
 ポッドの一つはいつの間にか何処かへと消えてしまった。


 そして、空白の時間が300年も続いた。

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最終更新:2014年10月21日 21:46