第4の座――真実の探求者
かちゃかちゃという金属音が、絶えず室内に響いている。
フォークを皿に置いたかと思えば、また次の皿に手を伸ばし、フォークを持ち直してそちらへ向ける。
テーブル狭しと並べられた、色とりどりのスイーツ達は、かちゃかちゃと音を立てながら、次々と姿を消していく。
ショートケーキも、シュークリームも、ゼリーもムースもモンブランもだ。
全てがその男の口へ運ばれ、むしゃむしゃと咀嚼されながら、美味しく味わわれて食道へと消えた。
「ホンットによく食べるわね、あんた」
そしてその男の様子を、呆れた目線を向けながら、遠坂凛はそう評した。
「まぁ大目に見といてよ。これで魔力が得られるんだからさ」
そんな気配も物ともせず、満面の笑みを浮かべながら、男はそのように返した。
小汚い黒コートに身を包んだ青年は、今回の凜のサーヴァントだ。
ライダーのサーヴァント・涼邑零――それが赤いアーチャーに代わる、彼女の新たな駒だった。
「それにしても、今度は私が巻き込まれることになるとはね……」
ため息をつきながら、凜が言った。
現状に至る経緯は、こうだ。
冬木市の聖杯戦争が終結してから、一月程が経過した後。
その日の凜は魔術師らしく、実家の礼装を整理しながら、魔術の修練に勤しんでいた。
そしてちょうどその中で、名高き方舟にも使われたという、ゴフェルの木片に触れたのだ。
瞬間凜の意識は掻き消え、あの和装の男と顔を合わせ、気付けばここにいたというわけだった。
冬木市から飛ばされたかと思えば、またも冬木市にいたというのは、何とも奇妙な話ではあったが。
「はは、マスターも運がなかったな」
チーズスフレを飲み込むと同時に、ライダーがそんな感想を述べた。
実際は不運というよりも、うっかりミスが多いというのが、凜の本質だったのだが。
どちらにせよからかわれていることには変わりない。凜は一層機嫌を悪くし、ジト目でライダーを睨んだ。
「……だいたい、この聖杯戦争自体がおかしいのよ。
本来聖杯戦争といったら、冬木市に集った魔術師達が、自発的に参加するものと相場が決まってるの」
巻き込まれを前提としたルール構成など、本来ならば有り得ないと。
ライダーの近くから皿を引ったくり、チョコレートケーキを頬張りながら、凜が言う。
「本来の聖杯戦争、ねぇ。そんなもんがあったのか」
「おまけにあのサムライ男、魔術って言葉を一度も使ってなかった。
これじゃ魔術師の儀式って部分も、守られてるかどうか疑わしいわ」
「でも俺とマスターとは、ちゃんと魔力バイパスで繋がってるぜ?」
「そこが訳分かんないのよ」
何から何までぐちゃぐちゃだ。
杜撰なのか裏があるのか、どちらとも取れないカオスの中で、頭がどうにかなりそうだった。
ケーキを飲み込んだ凜は、さながら不貞寝するかのように、机に突っ伏して頭を抱えた。
「まぁでもさ、それって要するに、魔術師やってるマスターが、圧倒的に有利ってことじゃん?」
エクレアを食べながら、ライダーが言う。
少しはみ出たクリームを、紙ナフキンを取ってさっと拭う。
確かに凜の推測通りなら、正規の(という表現も変だが)魔術師マスターは、かなり数を減らすことになる。
そうなれば魔術のいろはも知らない、素人マスターの数が増える。同じマスター相手ならば、そちらと戦う方が容易いはずだ。
「そりゃまぁ、そう考えられなくもないけど……」
「どうせ行く先不明瞭なら、ポジティブに考えていこうぜ。その方がマスターの『やる気』にもなるさ」
いつの間にかライダーは、無数のスイーツを完食していた。
立ち上がり皿の山を背に、ぽんと凜の肩を叩くと、ライダーは出口の方へと向かう。
「だからしゃんとしろよ。俺も奢ってもらった分だけ、きちんと働くつもりだからさ」
「……分かったわよ、やればいいんでしょやれば!」
こうなったらもう自棄糞だ。
半ば捨て鉢に叫びながら、凜もまたテーブルを立った。
気になることはたくさんある。
この紛い物の聖杯戦争は何なのか。汚染された冬木の聖杯と、何か関係はあるのか。
それでもあれこれ考えた結果、それらを解決するためには、この戦いを勝ち残ることが、何よりの近道であるように思えた。
それこそライダーが言うところの、ポジティブシンキングというやつだ。
やるからには勝ち抜いてやる。最後の最後まで戦い抜いて、真実を見極めてやる。
そう心に決めた遠坂凜は、懐の財布に手をやりながら、ずかずかとレジへ歩いていった。
「……ところでライダー。今の食事であんたの魔力、だいたいどれくらい回復したのよ?」
「え? そんな大した量じゃないよ。だいたいこんなお手軽なスキルで、大魔力を得られたら苦労しないって」
「はぁああああああっ!?」
食べ放題のバイキングといえど、決して代金は安くない。
無駄金を平然と使わせた従者に、それこそ無駄だと理解しつつも、凜は鉄拳を浴びせずにはいられなかった。
【マスター】遠坂凛
【出典】Fate/stay night
【性別】女性
【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。遠坂家の所有していた『ゴフェルの木杭』に触れた
【マスターとしての願い】
聖杯にかける願いはないが、聖杯の正体は見極めたい
【weapon】
宝石
宝石魔術に用いるための、魔力を込めた宝石の数々。
【能力・技能】
魔術
魔力を用いて人為的に神秘・奇跡を再現する術の総称。
凜が専門とするものは、宝石に蓄積した魔力を利用する「宝石魔術」。
更に魔術の五大属性全てをマスターした、「五大元素使い(アベレージ・ワン)」と呼ばれる天才魔術師としても知られている。
得意技は初級魔法・ガンドを、物理的破壊力を持つまでに昇華した「フィンの一撃」。
【人物背景】
穂群原学園に通う高校2年生の少女。
冬木の管理者・遠坂家の六代目継承者であり、自身も強力な魔術師である。
表向きには容姿端麗、文武両道、才色兼備の優等生。
しかし本来は勝ち気でプライドの高い性格であり、「競争相手がいるならば周回遅れにし、刃向かう輩は反抗心をつぶすまで痛めつける」とのこと。
「やるからには徹底的に」を信条としており、第五次聖杯戦争にも、全力で臨む決意を固めていた。
反面、何だかんだ言ってお人好しな人物でもあり、素人マスターであるはずの衛宮士郎と、最後まで共闘関係を結んでいる。
第五次聖杯戦争には、アーチャーのサーヴァントを召喚して挑んだが、バーサーカーとの戦いで脱落。
以降は士郎をサポートし、最終局面においては、アゾット剣を託して背中を後押しした。
【方針】
どうせやるなら優勝を狙う。この聖杯戦争の正体を探る
【クラス】ライダー
【真名】涼邑零
【出典】牙狼-GARO-シリーズ
【性別】男性
【属性】混沌・善
【パラメーター】
筋力:D+ 耐久:E+ 敏捷:C 魔力:D 幸運:C 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:E (C)
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
『銀牙騎士・絶狼(ゼロのよろい)』発動時にはCランクに変化し、第二節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。
騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせる。
【保有スキル】
無窮の武練:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神干渉の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。
魔力回復:E
甘いものを食べることにより、多少の魔力回復を行うことができる。
生前のライダーは甘党かつ大食漢であったと言われており、その逸話がスキルとなったもの。
【宝具】
『銀牙騎士・絶狼(ゼロのよろい)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
筋力:B 耐久:C+ 敏捷:B+ 魔力:B 幸運:C
光あるところに、漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた。
しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ。
――古より人を襲ってきた、魔界の怪物・ホラー。それと戦う力を身につけた、魔戒騎士の鎧である。
この鎧には活動制限時間が存在しており、人間界では99.9秒間しか纏うことができない。
セイバーの纏う「絶狼の鎧」は、銀色の光を放つ鎧であり、二刀流による俊敏な戦闘スタイルを有している。
更に青い魔導火を纏うことにより、攻撃力を底上げする「烈火炎装」を発動することが可能。
『魔導馬・銀河(ギンガ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大補足:50人
100体のホラーを狩った者にのみ与えられる、馬の姿をした魔戒獣。ライダーのサーヴァントたる所以。
この宝具に騎乗することにより、絶狼の筋力・耐久の値が1ランクアップする。
更に魔戒剣に力を与え、大型の「絶狼斬馬刀」へと変化させることが可能。
【weapon】
魔戒剣
ソウルメタルによって鍛え上げられた、魔戒騎士のための剣。
修行を経た者はこれを自在に操ることができるが、そうでない者には持ち上げることすらできない。
零の魔戒剣は短めの直刀で、これを二振り握って、二刀流の戦闘スタイルを取る。
魔導火
正確には魔導火の込められたライター。
これでホラーを識別したり、烈火炎装発動のキーとしたりする。
【人物背景】
魔戒騎士の系譜に存在しない独自の称号・銀牙騎士を自称した魔戒騎士。
本名は「銀牙(苗字不明)」だが、魔戒騎士となった時にその名を捨てたため、サーヴァントとしては「涼邑零」が真名となる。
魔戒騎士の中でも社交的な部類で、飄々泰然とした態度を取っている。しかし心の底では、冷静な戦闘者としての顔を併せ持つ。
婚約者と師匠を「黄金騎士に似た太刀筋を持つ魔戒騎士」に殺害されており、
その復讐を果たすため、当時の黄金騎士・冴島鋼牙を付け狙っていた。
しかし自らの仇の正体が、先代黄金騎士に師事していた暗黒騎士・バラゴだと知って以降は和解。
鋼牙の無二の戦友として、そして最大の好敵手として、人類を守るために力を合わせている。
魔戒騎士としての実力は非常に高く、魔戒騎士の闘技大会・サバックでは、見事優勝を果たしている。
『銀牙騎士絶狼(ゼロのよろい)』を纏った際、手にした二振りの魔戒剣は、「絶狼剣」と呼ばれる剣へと変化。
柄の両端を連結させ、「銀牙絶狼剣」と呼ばれる形態にすることで、ブーメランのように扱うことも可能となる。
【サーヴァントとしての願い】
特になし
最終更新:2014年09月17日 03:52