Kranteerl y io xal(本編)

  • #1 FAFS
「あ…。」
教室に入った翔太は違和感を覚えていた。
クラス内の空気はいつもと違う。

「はい、おいお前ら着席しろ!」
担任が入ってくる、と共に欧米風の銀髪の少女が入ってきた。
「今日、転校してきたアレス・シャルさんだ。」
暑苦しい担任は、教室を指し彼女に自己紹介を示唆した。

少女は一歩前へ、

"Mi'd aloajerlerm es ales.xal. plaxci co lu."
「じゃ、空いてる席に座ってくれ~」


シャルは自分の横教室の左最後尾に座ることになった。
しかし、あれは何語だろうか、彼女はどこから来たのだろうか


「昼飯、昼飯っと おい、夕張!行くぞ」
夕張とは、クラスメイトの友達でいつもいっしょに飯を食っている。
「おい、八ヶ崎」
「ん?」
「あの、転校生の女の子可愛かったよな。」
「あ、うんそうだな」
「あっ、そうやって平凡気取ってても気になってるの分かってるんだからな!」
夕張が言い終わる前に屋上のドアが開いた。
そこにはシャルがいた。

シャルは僕を見つけ手を掴んで引っ張っていった。
夕張が呆然と立ち尽くしていたが階段に入るまで「抜け駆けはゆるざんぞ!」などと喚いていた。

  • #2 DaSH
_____

シャルは僕を連れてどんどん歩いていく。

僕は暫く彼女にされるがままでいたが、やがて足を止めた。

シャルは急に僕が止まって驚いたのか、こちらに振り向いた。

「???????!! ?????!?」

彼女は何かを伝えようとしているみたいだが、僕には全く伝わってこない。

彼女はなおも意味不明な言葉を口にしている。

このままじゃ埒が明かない。

なら・・・!

「どぅ・・・Do you speak English?」

僕は決して英語が得意というわけではないが、こうするしか無い。

シャルの動きが止まった。

どうやら通じたらしい。

すると、彼女は、
「I can't understand why you stopped so quickly! I was very suprised!」

どうやらかなり怒っていらっしゃるようだ。

「I'm sorry. But, I want you to tell me why you take me. I was suprised,too because you took me without saying anything.」

ここまで一気に喋って、一息ついた。

ああ、英語っていざ使うとなると凄く難しい!

「And, If you can speak Japanese,please speak in Japanese.」

日本語通じますように・・・!

そう念じながら、シャルに言ってみた。
「・・最初っからそう言ってよ。あんたの英語グダグダ過ぎて分かりづらかったわよ」

なら最初から日本語で喋れよ!
俺が屋上で日本語話してたの知ってんだろ!

そう心の中で叫んでいたら、シャルはくすっと笑った。

その笑顔は、とても可愛らしくて、さっきの事なんかどうでも良くなってきた。

「何がおかしいんだよ」

「違うわよ。初めて話した人との会話があんなだったら、おかしくなるでしょ」

それ結局バカにしてんじゃん・・・

「転校生の挨拶の時、ちょっと皆に自慢したくて、あんな風に喋っちゃったけど、そしたらクラスで浮いちゃって。だから、君と話せて、とっても嬉しいんだ」

そういえば、彼女は休み時間、ずっと席に一人でいたっけ。

もしかして、ずっと誰かに話しかけて欲しかったのかもしれない。

「って、どうしてシャルは日本語を話せるの?」

  • #3 FAFS
「私は、日本語を教えられたのよ。 奴らに…」
「奴ら?」
シャルは怖いほど無表情になっていたが暫くして声が漏れた。
「あなたの知ることじゃないわ」
「そう」

シャルは立ち上がって翔太の方を向いた。
「喋ってくれてありがとう、じゃあ私は教室に戻るわ。」
シャルが視界から消えかけたときシャルはこちらを向いてもう一言言った。
「一つ聞いていい?」
「ああ」
「最近、この周りで変なことが起きてたりしない?」
「変なこと」
「幽霊とか都市伝説の類とか」
「知らないな」
「そう」
奇妙な会話を終えシャルの姿は、いつの間にか消えていた。
五校時が始まることを知らせるチャイムが空しく鳴っていた。

「はぁ~疲れた」
翔太はベットに飛び込んだ。
(奇妙なことか…)

翔太は知っていた最近の事件のことを。
それは夜一人出歩いていた人間が突然失踪し
ある日八つ裂きにされ路上で発見されるという一連の事件だった。

「調べてみるか」

ジャンパーを羽織り翔太は家の外へ出る。
心地よい風が頬に当たって気持ちよかった。
「!?」

刹那、翔太の横を物凄いスピードで走りかけてゆく黒い影
影は翔太に手をかざすと何も無いところからバールを出し投げてきた。
翔太は寸でのところで避けるが避けた反動で動けない。
影はニヤリと笑った。

次の瞬間、影を貫通したのは矢だった。
「Iska lut fantaser!」
そう、叫びながら影は消えた。
「シャル!」

矢を打った人物は他の誰でもないシャルであった。
「奇遇ね。」

月に照らされシャルは話し始めた。
「何故、こうなったか知りたい?」
「え」
「狙われているのよ。」
「だ、誰にだ!」
「xelkenよ。 奴らは私たちだけでは物足りず。 地球を食いつぶそうとしている。」
「どういうことだ。」
「詳しい話は、明日ね。」
シャルは霧のように消え去った。

昼飯の時間、シャルに説明を乞うために夕張と食べるのはキャンセルした。

「シャル、説明してもらえるかな。」
「まず何が知りたいの?」
「何で僕は殺されそうになったのか、それと昨日のxelkenって何者なんだ。」
シャルは仕方がなさそうに話し始めた。
「xelkenは異世界であるファイクレオネのテロ組織で古代のリパライン語を復活させようとしている団体よ。」
「それと殺傷事件となにが関係があるんだ。」
「Xelkenは貴方たちの首脳に古理語を普及させなければ軍事行動に出ると脅迫したの、もちろん誰もそんなことに耳を貸さなかったわ」
「だから、民間人を殺しているというのか?」
「そうよ。」

バカな、そんな話信じられるわけないだろ。
「いかにも信じられないという顔ね。 証拠があれば信じてもらえるかしら?」
そういいながらシャルは制服のポケットから三枚写真を取り出した。
「これは…」
その写真はつい三日前に失踪したクラスメイトだった

  • #4 DaSH
「どう?これで信じて貰えた?」
「・・・確かに、この人がいなくなったのは事実だ。正直驚いたよ。」
「だったら・・・」
「でも、これが君の言うxelkenが民間人を殺しているという証拠にはならない」

僕は、彼女の言う事を全く信じていない訳ではない。
事実、3日前から失踪した彼の写真を見せてきたのだから。
でも、それでも、僕には疑問があった。

「君の言う事を全く信じていない訳じゃない。でも、だったら君は何者なんだ?こんな誰も知らないことを知っていて、しかも、僕が狙われていることまで知っていた」
「・・・・・」
「だから、君が何者なのか、僕に教えてくれないか?そうしてくれないと、僕は君を信じることが出来ない」

シャルは暫く黙っていたが、やがて、
「・・・そうね。だったら教えましょう、私が何者なのか」
真っ青だった空が、だんだんと雲に覆われていく。
辺りの木々は風に煽られ、轟々と音をたてている。
僕はゴクリと息を呑んだ。

「私はね・・・xelkenの正体を知っているの」
「・・・どうして?」
「・・・あまり、言いたくないけれど、言うしかないわね」

そして彼女は言った。

「私・・・xelkenの会長の娘なのよ」

空を雲が完全に覆い尽くす。
辺りに雷鳴が響き、風も先程にも増して強くなる。

「・・・え?」
僕は、そう口にすることしか出来なかった。
「君が、xelkenの会長の、娘・・・?」
「そう。xelkenは、私の父親よ。この事は、誰にも言わないで」
「ちょ、ちょっとタンマ」

落ち着け、落ち着け俺。
まずは落ち着いて因数分解を・・・
ってちがーう!
そうじゃなくて、彼女は今、何て?
xelkenの会長の娘?
そんなこと急に言われても、こちらが困ってしまう。
それに、何故父親に協力しないんだ?
何で、僕なんかを庇ったんだ?

頭の中がごちゃごちゃしていて、何をどうしたらいいか、分からなくなる。
「と、取り敢えず質問」
辛うじて出せた言葉はこれだった。
「何かしら?」
「どうして、父親に協力しないの?」
その時、シャルは顔を伏せた。
「・・・っ、それは、その・・・」
「・・・私は、小さい頃から、リパライン語は神が創り出した崇高な言語だって父に教わってきたの」
「でも、父はリパライン語が民間人の間で使われていない事に対して、かなり憤っていて、リパライン語を使わない奴らは皆死ねばいいとまで言い出したの」

シャルの父さんは過激派だな。
というか激し過ぎて怖い。
「おかしいと思った。いくら何でも、それは変だって思った。だから、そう父に言ったら、そんな奴を育てた覚えは無い、出ていけ、って言われたの」

そこまで言うと、シャルの顔が崩れ、彼女の眼から涙が溢れ出した。
「お、おい・・・」
「だから、私は父と・・・父さんと戦うの。父さんが間違ってるって伝えるために」
「分かった、分かったからもう話すな。無理しなくていい。取り敢えず、涙拭きなよ」

そう言ってハンカチを渡す。
シャルは泣いて赤くなった眼をこちらに向け、そして、ハンカチを受け取った。

「ありがとう」
「気にすんなって。辛い事言わせてごめん」
「いいの。私の感情が溢れちゃっただけだから。・・・納得、してくれた?」
「女の子に涙流されたら納得するしかないよ」
「・・・そっか。でも、こんな事話せたの君が初めてだよ。君には、何でも話していいような気がする」
「どうだろうな。まあ、シャルの好きしていいよ。それで、君の父が僕を狙うのはどうして?」

「・・・君には、特殊な力があるの」
「特殊な力?」
「そのうち分かるわ。どうやら父さんは、その力を欲しているみたい」
「そんなこと言われたって、僕はどうすれば・・・」
「まだ、その力を使えないのでしょう?だったら、それを使えるようになった方がいいわ」
「どうして?」
「その力は、父さんにとって脅威になるから」
「そうは言うけど、どうすればいいの?」
「私に聞かれても・・・。でも、巻き込んでしまった以上、私も協力するわ」

その時、予鈴が鳴った。
「あら、授業始まっちゃうみたい。あとでまた会いましょ」
「待って!」
「なに?」
「メアド交換しない?連絡出来ないと何かと不便だし」
「ええ、いいわよ」

そう言ってメアドを交換した。
「それじゃあ、また後で」
そう言うと、シャルは廊下を駆けていった。

  • #5 FAFS
「放課後、学校の屋上で」
シャルは昼休みにそういっていた。

「って、ことだから夕張、今日は遊びにいけないんだ。」
「あこしhれいあおwpv:あpw@!」
「ああ、またな」(スルースキル Lv.1)

向きを変え屋上へ向かう。
夕張はまだ「世界平等宣言!」だとか「そうかそうか、きみはそういうやつだったのか」などと喚いていたので「エーミール!そこにクジャクヤママユが!」と言ってやったら温かい目で見つめながら呆然と立ち尽くしていた。

ネタをネタで返して何が悪いのか。

屋上にはシャルがもうすでにいた
「遅い」
「ごめん」
おお、怒らせてしまったようだ。

「ごめんごめん、その特別な力の話だよね」
「そう、…昔話をしましょう」
「昔話?」
「昔、ファイクレオネという異世界から掟を破り地球世界に来た集落がありました。その集落は地球のあらゆる場所で魔法―ウェールフープを使い生活していました。」
「やけにファンタジーな昔話だな」
「しかし、何が原因か魔力は現代では消え去ってしまいました。」
一体それが何と関係しているんだ?

「現代地球、xelkenの攻撃を避けられるのはファイクレオネから来た魔族ケートニアーの末裔であなただけなのよ。」
一生懸命さ、真面目さが伝わってくる。
それほど重要な問題なんだろうか?
「でも、別にその…ケートニアーの末裔なら他の人もいるはずじゃ…」
そう、言った刹那、シャルは手を僕の真横にかざした。
瞬間後ろで炎が上がり機械のような生物のような物体を焼いた。

「連邦の盗撮システムね。」
「連邦?」
「Xelkenに立ち向かうために私たちは契約をしたのxelkenが害であるユエスレオネ連邦と…」
「どのような?」
「資金、武器、連邦が有する全てのサービスよ。 Xelkenを倒さなければ代償が私たちに降りかかるわ。」
「そんな、無茶な」
「しかも、この地域にケートニアーの末裔は貴方だけなの他の人たちは全員魔力を失っているわ。」
あんな事ができるXelkenに勝てるかは解らない。
だが、ここで引けば多くの人が不幸になる。
そんなことは…させないッ。

「解った。 協力するよ」
「本当に?」
「ああ、で何をすればいいんだ。」

#6
DaSH
「そうね・・・まずは、君が持っているその力を自由に使えるようにしないとね」
「うーん。でも、力の使い方なんて分かんないよ」
「それもそうね・・・何かきっかけがあれば良いのだけれど」

そうは言っても、そんなきっかけ起きて欲しくない。
嫌な予感しかしないし。

「・・・まあ、いいわ。取り敢えず、話はこれで終わりよ。さ、帰りましょ」
「うん、そうだね」

気がつくと、もう日が沈みかけていた。
さて、早く帰らないと。
僕は家路に着く。
シャルと一緒に。
シャルと・・・一緒・・・

「って、なんでシャルがいるの!?」
「何でって、私の家こっちだもの」
「ああ、なるほど・・・って、ここ一本道なんですけど!?もうすでに僕の家の前なんですけど!?」
「ただいまー」
「って無視かよ!?だから、そこは僕の家・・・」

「あら、あなたがシャルちゃん?今日からよろしくね?」
「って母さん!?何でシャルの事知ってんの?っていうかなんで家にいるの!?」
この人は俺の母さん、八ケ崎加奈子。おっとりとした性格で、いつもぼ?っとしているが、頼もしい一面もある。
「そんな一気に言われても困るわよ?。ていうか翔ちゃん、どうしてシャルちゃんの事を知ってるの?」

シャルの前で翔ちゃんはやめろ。
「・・・・・くすっ」
ほら、シャルが笑いこらえてる。
「今日、学校で会ったんだよ。んで、なんか俺に・・・」
「オホン」
シャルが咳払いをする。
う?ん、どうやら言わないほうが良さそうだ。まあ当然か。
「・・・たまたま意気投合して、一緒に家に帰ることになっただけ」
「あら??翔ちゃん、もしかしてシャルちゃんの事好きになった?」
「はぁ!?んなわけ無いだろ、いくら何でも初対面だぞ?あと、翔ちゃんっていうのやめろ!」
「一目惚れとか」
「だから無視すんなよ!で、なんで家にシャルがいるんだ?」

ああもう、この人と会話するときはいつもこうだ。
いつの間にかあちらのペースに飲まれているから、油断も隙もない。

「シャルちゃん、海外から日本に留学してるみたいで、ホームステイする家を探してたみたい。だから、今日から家に住むことになったの」
「なったの、じゃねえよ!いくらなんでも軽すぎだろおい!?ってか、家泊まる部屋ねーぞ!?」
「あ?それなら、翔ちゃんの部屋で寝てもらうから平気よ」

「えっ!?」
シャルが驚いて声を上げた。
何故だかシャルの頬が赤くなってる気がするが、気のせいだろうか。
「俺の寝床はどうなる!?」
「はぁ?あんたら二人で使いなさいよ」
「はぁ!?」
「え!?」
僕とシャルがほぼ同時に声を出す。
「いやおかしいだろ!?いくら何でも適当すぎだろ!」
「そうは言っても、もう決めちゃったし?」
「ったく、シャルからもなんか言ってやれよ」
「・・・私は別に、その、構いませんけど・・・」
「おい!?」

シャル、そこは違うだろ?
っていうか、何で顔赤くなってんだよ?嬉しそうだし。
「だそうよ。てなわけで、よろしく、翔ちゃん」
「あ、ちょ、待っ・・・!」
そう言って、さっさとリビングへ行ってしまった。
「・・・はぁ、これだから家の母さんは・・・悪いなシャル、こんな家で」
玄関で靴を脱ぎ、自分の部屋へ向かう。
「いいわよ、これくらい。逆に、ちょっとうれしいかも」
「どうして?」
「だって、私、家族とこう言うことした事ないから」
「ふ?ん」
部屋を片付けながら、シャルの話を聞く。
僕の部屋はそれ程汚い訳ではないが、流石に人が二人泊まるのにこの状況はまずい。

「布団ここに置いとくわよ?」
下から母さんの声がする。
ホントいいかげんなんだからあの人は。
「あなたのお母さん、面白い人ね」
「あれでも立派な社会人だよ」
僕の家は共働きをしているから、両親がいる事なんて滅多にない。
今日母さんがいたのは、きっとシャルが来るからだったのだろう。

「母さん、これから仕事だから、適当にご飯食べてね?」
「ん、わかった」
そう言って母さんは家を出た。
「大変そうね」
「まあ、家は昔色々あったから」
「ふ?ん」
話を終えると、シャルは部屋を見回した。
「まあ、悪くはないわね。布団、どうするの?」
「適当に敷いとけばいいよ。俺はコンビニに行って夕飯買ってくる」
「分かったわ」
「何がいい?」
「そうね・・・サンドイッチがいいわ」
「分かった、じゃあ行ってくる」
そして、僕は靴を履いて外へ出た。

今日は冷えるな。
いつもと比べて、風が強い。
ジャンパー来てくれば良かった。
そう思った刹那、僕の目の前に影が現れた。
「・・・・!」
あれは、さっきの・・・!
まずい。シャルがいないのに相手なんか出来るわけがない!

そんな事を思う間もなく、影が僕に向かって黒い何かを投げてくる。
日頃運動をしているおかげで、何とかそれらを避けたが、これでは埒が明かない。
くそっ、逃げるしかないか・・・!
僕は後ろに振り向き、全力で走る。
だが、すぐに足に痛みが走る。
「・・・・・!!」
走りが止まる。
あまりの痛さにその場に倒れる。

くそ、体が動かない・・・!
ちきしょう、僕はここで死ぬのか・・・?
どうして、僕に特別な力なんかあるんだ・・・!
僕にはそれが使えないのに、どうして奴らは僕を狙うんだ・・・!
せめて、力を使えたのなら・・・

影が近づいてくる。
ごめん、シャル、僕は、君を助けることが出来ない・・・!
涙を流してまで、真実を語ってくれたのに、僕は、君の力にもなれない・・・!
ごめん・・・!

その時、影が何かを僕に向けて振り下ろした。
ドン、という音。
それと共に、地面が崩れ、僕を飲み込もうとしているのが分かった。

「・・始末完了。これより、八ケ崎翔太を連行する」
影が、崩れた地面に歩み寄る。
だが、そこに翔太の姿はない。
「・・・!!奴は何処だ!?」
辺りを見回す。
何処にもいない。
「・・・!?」
背中に衝撃を受けた。
思わぬ力に、体がよろめく。
何事かと、後ろを振り向くと、そこには、炎を纏った翔太がいた。
「馬鹿な・・・!まだ、その段階には達していないはず・・・!」

僕は、一体何をしているのだろう?
どうして、立っているのだろう?
さっきまで、痛みで立つことさえできなかったのに。
でも、体の内側から力が湧いてくる。
「何が、ごめん、だよ・・・」
僕は思う。
シャルが必死で頑張っているのに、どうして僕は簡単に諦めたりしたんだ!
あの時決めたじゃないか!

シャルを助けようって!

「俺は、シャルを、助けるんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

To be continued…

#7
FAFS
翔太の手にまとった炎のエネルギーは、影の全身へと広がり焼き尽くす。
"Xet, fantaser! Jiesesn de!"
(糞連邦人め! 死ね!)
影の中の顔がちらりとこちらを向いた。
瞬間、エネルギーが逆流する。

"ayplerd niv! Mi es xelken-elmer jujo panqa de!!"
(無礼るなぁ! 俺も一人のxelken軍人だ!!)

糞が…
逆流してくるエネルギーを受け止め第二波を放つ、影を吹き飛ばす。

"hgg... Fqa... larta... xel no io no io falkacxici's..."
(くっ…この…野郎が…見てろ…今に、今にファルカス様が)

そう言いながら、目の前の一軍人は倒れた。
「翔太!」
声の方を振り向くとシャルが駆けてきた。
「翔太、大丈夫?」
「あ、ああ それより、これ僕がやったのか?」
シャルは軍人の手に触れて何かを調べている。
「…モーニ失調による過活動交換症候群-致死型」
「何だって?」
「WPによって殺されたのよ。 あなたがやったの。」

「シャル、一つ聞いていい?」
シャルは無表情で答えた。
「何?」
「何で人が死んだのにそんなに冷静なの?」
「…私たちはこの戦いをずっとずっと続けてきた。 人一人死んだってもう何も思わないわ。」
そうか、この人たちと僕たちでは生死感が違いすぎるんだ。
方や数年も親と戦い殺し殺され血を血で洗う戦いを続けてきた人たちと
十数年、小競り合いさえあったが血を使うような争いなんてしたことが無い人たちでは…

「連邦に連絡しないと」
シャルはそういって携帯を取り出した。
「何を連絡するのさ?」
「死亡報告よ。 いずれ、連邦の検死チームがくるわ。」
そういって、連邦らしき相手に外国語で話していた。

「そういえば、翔太?」
「ん?」
「夕飯は?」
「こんな事件のあとに良くそんなことを…」
「お腹がすいたのよ」
方向を変え僕たちはコンビニへ向かっていった。

ユエスレオネ連邦 クランタルの西に郊外、影たちが無をかこんで話を始めていた。
"Falkasxici... jazgasaki,xorta yst voles edioll lu."
(ファルカス様…八ヶ崎翔太が覚醒しました。)

ファルカスは狂喜を覚えていた。
やっと…
やっと、我と…
我と、戦える者が…

"No io y pormerzes. la lex loto mol."
(まだ、試す必要がある、私が出る幕ではない)

"Mal,harmae xeu io es lu? "
(では、次には誰をお考えですか?)

"Xelken.ales ler zirk vynut y nienex shrlo."
(Xelken.alesより良い敵を贈れ)

"Cene niv miss lius. Fqa es la lex celde lu?"
(私たちは使えないということですか?)

"Niv,shrlo y nix niv kante. Fqass liusil mole eo lex lius."
(お前らは使うべきところから使う。)

#8
DaSH
僕達はコンビニで弁当を買い、家へ帰った。
まだ母さんは帰ってきていない様だ。
「翔太、取り敢えずお風呂入ったら?そんなじ身体じゃ親がびっくりするよ」
「うわっ!?服血だらけじゃん!?」
僕はようやくそのことに気づいた。
「あれ?でも何で足が痛まないんだ?」
確か、あの時足に物凄い衝撃を受けたはずだが。
「・・・って、痛ててててててて!?」
足が痛む。
さっきまで歩けたのが嘘のようだ。
あまりの痛さにその場に倒れ込む。
「翔太、大丈夫?」
「・・・大丈夫だ、問題、ない・・・」
「冗談を言ってる余裕はなさそうだけど?」
「・・・うん、ちょっと、無理・・・」

どうやらあの時は、身体が興奮状態だったらしい。
そのせいで、痛みを感じなかったのだろう。
「僕、ちょっと、部屋で・・・、寝て、来・・・」
「ちょっと!?」
そのまま部屋に向かおうとしたが、意識が薄らいでいく。
シャルが何やら騒いでいるが、もう何も出来ない。
もう、疲れた・・・疲れたよ、パト○ッシュ・・・。
そんな事を思いながら、まぶたを閉じた。

「・・・・・」(←翔太)
「・・・・・」(←シャル)
「どうしたの?二人とも。何かあったの?」
「・・・いや、ちょっと、まあ・・・」
「やだっ、もうそんなことやっちゃったの?」
「違げーよ!母さんは俺等を何だと思ってるんだ!」
「彼氏と彼女」
「出会ってまだ2日だっつの!そこまで展開速くねえだろ!」
「分かった、分かった。それで、どうしたの?」     
            ・・・ 
「とぼけんなよ。母さん、シャルの布団は何処にある?」
    ・・・
「あら、あんたのならあるわよ」
     ・・・
「だから、シャルの布団は?」
「無いわよ」
「・・・シャル、この人ぶん殴ってもいいぞ」
「私はそこまで非情じゃ無いわよ」

今朝、俺は目を覚ました。
まあ、これは当然のことだ。
だか、何かいつもと違う。
何故だか、背中に温もりを感じる。 
まるで、一人分の布団なのに、もう一人寝ているような・・・
「って、うわぉ!?」
俺の横にシャルがいた。
あまりに驚いた為、脳がフル稼働した。

えっと、何でシャルが俺の布団に?
うお、寝顔めっちゃ可愛い。
ってか、シャルの布団どこ?
辺りを見回す。
無いし。
僕の布団しか敷いてない。
う?ん、何で?
      • 母さんか・・・

この思考と行動に0,1秒。そして、シャルを起こそうとするまで0,2秒。
シャルが起きるまで10秒。
母さんの場合5分。
おお、なんか凄くスムーズに物事が進んでる気がする。
いやそうでは無く、まず、シャルに話を聞かねば。
「・・・おはよう、翔太」
「・・・えっと、寝起きのところ悪いんですが、何で僕の布団に?そして、シャルの布団は?」

「え?ああ、それは、布団が一つしか無かったから」
「といいますと?」
「昨日、布団を置いとくって翔太のお母さんに言われたんだけど、一つしか無くって」
なるほど、大体状況を理解した。
つまり、シャルは布団を敷こうとしたが、一つしか無く、仕方なく一緒に寝たと。
そういう事かと聞いてみると、
    ・・・・
「・・・仕方なく、か・・・はぁ・・・」
あれ?何か違ったか?
まあいいや。うん。

そんな訳で、母さん問い詰め中なんだが・・・
「良いじゃない、別に。何か問題あるの?」
「大ありだろ!せめてもう一つなんかねえのかよ!」
「無いわ」
「即答かよ!?」
「もう、五月蝿いわね。そのくらい我慢しなさいよ」
「・・・分かったよ、ったく。無いならなんでホームステイ許可したんだか」
「何か言った?」
「いや、何も」
鬱だ、とまでは言わないが、これから苦労しそうだ。
不幸体質でも持ってんのかな、俺・・・
「良いじゃない、そんな落ち込まなくても」
「・・・悪い。ちょっと急に色々あり過ぎて・・・」
「それなら良いけど」
そう言ったシャルは、すこし嬉しそうだった。

#9
FAFS
ユエスレオネ連邦 フェーユ・シェユ
"Kladi'asti, hartkarfel la lex'i ."
(クラディアよ、あの件について報告せよ。)
銀髪を輝かせてドアの方から一人少女が出てきた。

"Yad, dzeparsyststa, Panqa jiesesn, ad lizer es panqa lu."
(はい、事務長 一人が死亡しましたまた一人の負傷者が出ています。)

「事務長」と呼ばれた男はドアを出るすれ違いざまに少女の方を向いた。
"lusus yst y niv y als io. Fantas xel co."
(絶対にこの計画を失敗に終わらせるな。裏切りも許さないぞ。)

"Liaxu y firlex lu. Mi Als'i selkosist fua es eso.."
(解っています。 全ては四星三蒼のために。)

「翔太?おい、大丈夫か?」
夕張が覗き込む。

「ん、疲れた。」
「俺らはいつも疲れているのさ。そう全て合衆国の陰謀…」
「はいはい、陰謀説ですね、よく分かります。」

「本当に大丈夫か?保健室に行ったほうが」
夕張の声は少し硬くなったように感じた。
「大丈夫だよ。」
「そうか、体には気をつけろよな」

昨日から、WPを発動させようと頑張っているのだがどうも上手くいかない。
精神力とその他もろもろが消えていくだけだった。

「翔太、翔太~?」
あ~、夕張五月蝿い。
「翔太~シャルちゃんが呼んでたよ」
「なんだって!?」
急速的とはこのことである、いや違うか

「お前、あの子のことになると性格変わるよな。 …なんか在った?」
へ?
「あ、あっ もう、下校時間だな帰らないと」
「待てよ、お前熱があるだろ、一緒についていってやるよ。」
ニヤリと笑みを効かせて夕張は付いて来た。
家までストーカーのように…という表現はあまり好ましくないな。

「さて、もうすぐ八ヶ崎の家だ。 はっはっは、謎を暴いてやるぜ!」
(ああ、うぜぇ、病人についてくる態度じゃないわ…)
そう思いながら、ドアを開ける。

「こんにちわー! シャールちゃーん! !? あぁ!?」
「!?」
そこには銀の長髪の少女とシャルが服をボロボロにして倒れている。
玄関は焦げ臭く火が上がっているところもあった。

「おうおう、八ヶ崎君、これは何かのショーかね。」
「自重しろ、糞夕張。」

引き離すのに数十分かかった、銀の長髪の彼女はレシェール・クラディア(Lexerl.kladi'a)と言う名前らしく連邦の要人護衛官という職についているらしい。
「で、そんな要人護衛官さんがなんでこんなところに?」
「私の任務は貴方たちの任務遂行の見届け、また八ヶ崎翔太の護衛任務です。」
そういうわけか、しかし何故シャルがいるのに。
「そうですね、アレスシャルだけでは、その任務報告に虚偽が発生する可能性があるからです。そのために連邦から私は派遣されました。」
そうか、シャルの居る組織と連邦は直接には繋がってないんだった。
「また、アレスシャルの護衛能力に不安がありました。総合的観点から見て連邦から特別護衛の派遣は必須との判断が出ました。」
ん?じゃ、なんでもみ合いになるんだ?
「それは…」

    • To be continued

#10
DaSH
シャルとクラディアはまた睨み合う。
「・・・あの、お二方?あなた方はどうして理由を説明しろと言っているのに、また睨み合いやがるんですか?」
ちょっと声を低くして、ゆっくりと言ってみた。
すると、二人は何かを察したのか、姿勢を正しくして、
「だってこいつが・・・」
「だってこの人が・・・」
おい。
なんだそのよくあるガキのケンカの時みたいな会話は?
「・・・えっと、じゃあ、まず、クラディアさんから理由を説明してください」
クラディアは一瞬肩を震わせた。
なんだ?寒いのか?
後でコーヒー淹れてあげようかな。

「・・・この人に、貴方の護衛が務まるのか、と聞いたところ、ちょっと怒らせちゃったみたいで・・・」
シャル、お前は子供かよ。
「・・・。で、シャルの言い分は?」
「・・・こいつにそう言われた後に、じゃあアンタには務まるの、って聞いたら、じゃあやってみる?って・・・」
クラディア、お前も子供かよ。
なんでこう、二人して性格が似てるんだか。

「・・・言い分は分かりました。けど、何でこんな事になってるんですか?」
そう言って、部屋を見渡す。
そこには幾つものヒビが入っていた。
中にはくぼんでいたり、突き抜けてしまっている箇所もある。
家具は倒れ、窓は割れている。
部屋はまさにカオスな状況だ。
「・・・それで、私がコイツに攻撃されて、そんな程度なのか、って言ったら、ますます激しく・・・」

シャル、人のプライドを傷つけてやるな。
特にこういうタイプは一度怒ると面倒だからな。
「私は、軽くあしらうつもりだったのですが・・・。すみません、大人気なかったですね」
おや、反省はしてくれているようだ。
「ただ、その後、少し力を出し過ぎて、吹き飛ばしちゃったんですよ。そしたら、まだまだ私の力はこんなものじゃないわ、って・・・」
うん、もういい。大体わかった。
取り敢えず、二人とも、とてつもなく負けず嫌いなんだな。
これはまた、厄介なことになった。
「まいったな・・・。いくら何でも、こんな部屋じゃ、まともに直すのに時間が掛かる。どうしたものか・・・」
「でも、悪いのはコイツよ」
「悪いのはこの人よ」
「あなた方は反省してくださいよ。どちらにしろ、部屋をこんなにしたのはあなた方なんだから・・・」
「はい・・・」
「すみません・・・」

      • なんか、俺、何も悪くないのに、凄く悪い事をしている気がするんですけど。
      • 言い過ぎた?
いや、でも、これくらいは言わないと・・・。
「・・・なあ、お前ら、いつまで俺は待ってればいいんだ?」
「お前、まだいたのか・・・こんなだし、帰ったら?」
「いや、まだ、シャルちゃんの事聞いてな」
「帰ったら?」
「・・・そうするよ」

はぁ・・・。
「それで、クラディアさんはどうするの?」
「私は、その、本部に戻らないといけないので、そのうち戻ります。その前に、貴方の母親にも謝罪しないといけないので、今すぐと言う訳にはいかないですが」
「・・・もう、あんな事しないでくださいね?」
「分かってます。本当に申し訳ありませんでした」
クラディアはそう言って頭を下げた。

「あっ、やべ、今日約束があるんたった!」
今は4時20分。
待ち合わせまであと20分も無い!
早く行かないと!
ん?でも待てよ。
ここでこいつらを二人にしたら、また乱闘しかねない。
となると、シャルを連れて行くしかないか・・・。
「シャル、この後空いてるか?」
「え?まあ、一応」
「じゃあ、少し用事があるから、ちょっと付いてきてくれ」
「そんな、急に・・・。まあいいわ。じゃあ準備するから少し待って」
そう言って、シャルは部屋に行った。
「クラディアさん、あんたも、監視するなら、みられないようにな」 
「へ?・・・あ、はい。そうですね」
「準備できたわよ」
「よし。じゃあ、行くか」

#11
FAFS
翔太はシャルを連れて人ごみを走って行った。
(くそっ、近くだからと侮ったか、あと5分ッ)
「ちょっと!翔太!気をつけてぅ」
最後のほうは人にぶつかったのか良く聞こえなかった。
走っていた一本道が開け全力疾走に入った、何故かシャルも追いついている。
すると、一つの看板が自分たちをさえぎった。

=どうろこーじのおしらせ=
ここわーどうろこうじするんでー
てきとうにーうかいしてーみたいなかんじー?
  ギャル建設

「クッ!」
勢い余って看板を蹴ってしまった。
丁寧に直して、迂回路を探す。
こういうときに人間の脳はフル稼働するのだと実感した一瞬であったのだが、
その直後、目の前は閃光に包まれた。

「ん?」
そこは待合場所であった。
時計を見るとあと4分はある。
息も整っている。
「あれ?僕は看板を蹴って…」
「私がWPでここまで飛ばしたのよ。」
ゑ?WPで?
「そんなこともできるの?」
「WPは唯人を殺す剣ではないわ。使いようによっては善にも悪にもなれる。だから私は…」
その後の言葉は結局聞けなかった。
「それで、待ち合わせていた人は誰なの?」
「ああ、それは、」
「グーテンターク!今日も貴方のハートに一撃!藤見桜登場よ!」

ゑ?
そう、この変人に見える女の子が今回待ち合わせをした違う高校へ受験したため今まで会えずに居た藤見桜なのであるが…
「翔太、誰この人怖い。」
シャルは自分の後ろに隠れてしまう。
臨戦態勢だ。

「あれぇ~翔太君?入学早々彼女ですか?」
やべぇ、めっちゃ殺したい(笑)
「いや、あのさ」
「うん、大丈夫大丈夫」
「いやさ、大丈夫じゃなくて」
「その何とか語を教えてくれってことでしょ」
「ああ、リパライン語だっけ」
リパライン語を前から学びたいと思っていた。シャルも日本語話者と謙遜の無いレベルで会話できるが時々こういっている。
「やはり、リパライン語の方が喋りやすいわ。」

リパライン語について教師が必要だった。
それで、中学時代人工言語を作るほど言語好きだった桜を呼び出した。
「んで、どうなの解ったの?」
「まぁまぁね、とりまそこのベンチに座ったら?」

指示どうり桜の隣に座った。
「そこのシャルちゃんの音声資料、その他諸々渡したけど結局はどうなんだ、桜」
「リパライン語は人工言語ね。日本のコミュニティは小さいけどインド、ドイツ、フィンランドでは活発なようね。それで、」
「ちょっと、待った、人工言語ってどういうこと」
「人工言語とは、個人または少人数の集団によって短時間に作られた言語の総称で」
「そうじゃなくって、現実にある言語じゃないの?」
シャルはいたって平然だ。 自分のアイデンティティの一つが消されようとしているのに。

「リパライン語、FAFS.sashimiによって作られた芸術言語であり基本語順はSVO、列記とした準アプリオリ人工言語ね。」
どういうことなんだ、ここでは人工言語として異世界では実在する言語。
「Et'd unde io lineparine'd la vsfafgh…」
シャルはつぶやいた。
「何それ」
「他世界においてのリパライン語の認知についての研究、有名な論文よ。」
「何が関係しているの?」
「ユエスレオネやリパライン語はこの地球世界では、創作物として認識されてるの。 ユエスレオネでは地球をWPによる移動で認識している。つまり、どの世界にもお互いを認識することができるという研究よ。」
「全然分かんないけど、そうなんだ。」
「そのおかげで、民間人は他世界にウェールフープできない。」
「なんで?」
「連邦はxelkenが誰か分からない、誰か民間人が他世界に入って情報を勝手に見るのは連邦にとって酷だからなんせここには連邦の軍備、歴史すべてが網羅されているから」
「あの~話の流れが全然理解できないんですけれど」
桜がにょっと翔太とシャルの間に出てきて言う
「ああ、ちょっと取り込んでるんだ帰らせてくれないか?」
「…。 分かった、言語研修はまた今度ね。 容赦しないよ。」
「受けて立つ。」
そういって、翔太はベンチを後にして歩き出した。
夕日を背に受けて、

#12
Dash
なぜか格好良く別れたあと、僕はある所を目指していた。
「家に帰るんじゃ無かったの?」
「そのつもりだったけど、ちょっと用事が出来て」
「ふーん」
そのことにシャルは特に興味を示していないらしい。
だが、あれを初めて見た人の中に、驚かなかった人はいなかった。
だから、是非シャルに見て欲しかったのだ。
もちろん用事もあるが。
「そろそろ着くよ。準備は大丈夫?」
「準備って・・・特に何もしてないけど」
「・・・後悔するなよ」
「ん?何か言った?」
「いや、ちょっとノリで言ってみただけだよ。そんな深い意味はないよ」
実際は大アリなんだが、今回は内緒にしておく。
シャルには楽しんでもらいたいし。

「さ、着いたよ」
「・・・・・何?ここ」
着いたのは何処からどう見たって廃墟にしか見えない家。
家の壁にはヒビが入り、窓は数ヵ所割れている。
大きさもそんなに無く、近寄り難い雰囲気を醸し出している。
「どう?驚いた?」
「まあ、違う意味でね」
「まだまだ、驚くのはこれからさ」

そう言って建物の中に入ろうとする。 
そして、ドアをノックし、
「戻ったよ、父さ・・・」
言いかけて、やめる。
急に背筋が凍った。
何か、とてつもなく危険な存在を感じる。
身体のありとあらゆる感覚が活性化して、その脅威の出処を探そうとする。
「どうしたの、翔太?急に止まって」
「・・・いや、別に・・・」
シャルは気づいていないのだろうか?
こんなにもはっきりとした殺意を感じれば、誰だって気づくと思うのだが・・・
それとも、これも僕の力でしか感じられないものなのだろうか?
よく分からないが、それが近づいて来るのは確か。
後ろ。空から・・・!

「シャル、後ろの空に何かあるか?」
「・・・いや、何も無いよ」
「・・・そう」
だが、明らかに近づいている。
凄まじい威圧感。
恐怖で動けないほどに。
「翔太?大丈夫?顔色悪いよ?」
「・・・・・」
シャルの言葉も耳に入らない。
後ろを振り向くことが出来ない。
身体が震える。
泣きたくなる。
そして、それは僕のすぐそばまで来ている。
そんな気がした。
多分、僕の真後ろにいる。
そして、それが話しかけてくる。
直接、脳に話しかけてくるみたいに。
「・・・君は、翔太か?」
返事が出来なかった。
ただ、逃げたかった。
早くこの威圧感から解放されたかった。

「間違いないようだな。では、君は力を使えるのか?」
使えないよ・・・!
それより、早く解放してくれ・・・!
「そう焦るな。私は君に危害は加えない」
え?
僕、何も喋って無いのに。
「私には、君の心がわかる。喋らずとも、意志は伝わる」
そんな滅茶苦茶な。
じゃあ、敵意が無いって、どういうこと?
「言葉どうりの意味だ。私は君に協力しに来たのだ」
      • はい?
状況全く分からんのですが。
ていうか貴方は何者?
さっきの殺意は何なの?
何が目的?
「そんな一気に質問されても困る。さっきのは力のテストといったところか。実際に力を扱えなくても、力を持っていれば本能的にあれを察知できる。つまり、君には力があるという事だ。あれは普通の人間には感じられん」
「・・・おっと、自己紹介がまだだったか。私は、君の守護霊のようなものだ。君が生まれたときからずっと憑いておる」
えっ、なんか怖い。
「・・・君が力を持って生まれた以上、仕方のない事だ。いつもは空から君を見ているが、今日は少し話があってな。無論、他言無用で頼む」
「・・・とはいえ、君の隣の少女は、どうにかして盗聴しようと試みているようだがね」
そう言われて、シャルの方を見ると、何やらブツブツ言ったり、地面に陣を書いたりしている。
「聞き取るとは我らにしか出来ん。気にするような事では無い」

「さて、本題に入ろうか。さっき、君は目的を尋ねたな。それは、君の力の解放じゃ」
僕の・・・力の、解放・・・?
「うむ。今のままでは、また奴らが現れても対処出来ん。そこで、私から君に提案がある」
提案、というと?
「簡単に言うなら、数日の間、私と修行をせんかという事じゃ」
えと・・・、そう言われましても。
「まあ、ゆっくり考えて決めるといい。まだ時間の猶予はある。決まったら、私を呼べ。呼び方は、ううん・・・まあ、何か心から念じれば大丈夫じゃろう」
      • 適当ですね。
「だっていつも見てるからわかるかな?って」
      • はぁ、まあ良いです、決めときますよ。
「じゃ、結論を楽しみにしてるぞい」

そう言った瞬間、身体を縛っていた力が無くなった。

#13
FAFS
「翔太。」
シャルが話しかける。
「うん、ちょっと頭が痛くなって…」
もうちょっとましな言い訳は無かっただろうか?
時間に縛られるとはこういうことかもしれない。

「いいわ、分かった。 で、この廃墟に翔太のお父さんが居るのね。」
「そう、シャルが家にきてから父さんには会ってないからね。」
冷や汗を拭いて、息を整え
ドアを開ける。

あ…れ…?
「父さん!?」
それは玄関先で倒れていた。
首らへんから血が出ている。
「シャル、どうしよう!」
シャルは脈を計りデスターのようなもので何かを計測している。
どういうことだ。

つい、一週間前まであんなに元気だったのに。
「早く応急処置を!」
「何処、シュカージュ 私は逃げないわ。」
シャルが後ろを向いて言う。
瞬間、シャルの左の足に傷ができ血がふきだす。
「くぁっ!」
シャルは目の前で倒れ苦しそうにもがいていた。
流れ出した血が翔太の靴に触れる。

「少年。」
左に気配を感じ声も聞こえる。
だが、さっきの守護霊のとは違う。
「私はXelken.alesのレシェール・シュカージュだ。 君の力を我々は欲している。」
「で、でもだからって…」
「邪魔なんだ。 連邦の犬どもめがな。」
このッ、野郎ッ
右手が勝手に動く左側の存在を殴ろうとするがかすりもしない。
「アハハハハハハ! 面白い、面白いよ君は、是非Xelkenに来てくれよ。」
「断る!」
「そうか、悲しいな。 シャルを殺すしかなさそうだ。」
なんだって?

「翔…太…」
シャルが辛そうに声を出す。
「私は…いいから…逃げ…て…」
「黙れ!連邦の犬、裏切り者の分際がこの私から逃げられると思うなよ。」
シャルの足から出る血の量は増えてゆく。
シャルの目から生気が失われていく。

「フハハハハハ、どうするアフツァーフリーガの子孫よ!こいつを殺したいのか?」
シャルには死んで欲しくは無い。
だが,xelkenに加勢した所で彼女を生かせて置けるだろうか。

怖い。
考えがまとまらない。
完全な思考停止。

瞬間、目の前を鋭い氷塊が横切った。
左の方に行きシュカージュと思われる少年の右肩に刺さる。
"Xet kladi'asti!"
(クラディアめ!)

氷塊の飛んできた方を見るとクラディアが立っていた。
"Mole mi reto co pa Xkardzysti, Cene co snusnyj y io no."
(私は貴方を殺すべきですが今なら貴方は戻ってくることができます。)
"Iska lut iulo... Mi reto co y io no."
(糞めが、私が貴方を殺す! 今に!)

クラディアとシュカージュは数分無言でにらみ合っていたが翔太がシャルの方を見た瞬間双方は臨戦態勢に入った。

#14
DaSH
クラディアの身体から白い霧が立ち昇った。
そして、それを見ていたシュカージュも、何処からか光る剣を取り出す。
「フハハハ!まさか姉さんと戦う事になるとはね!」
「あんたに姉なんて呼ぶ資格は無い!」
クラディアを包んでいる霧が、クラディアの腕に集まり、巨大な槍に変化する。
長さ2メートルはあると思われるその槍を、クラディアは軽々と操る。

「私は、貴方を此処で倒す!」
「イイねェ、イイねェ!闘いってのはこうで無くっちゃなぁ!!」
シュカージュは剣を一閃。
それは、大地を切り裂き、海を割る破壊の剣。
触れればひとたまりもない。
だが、クラディアはそれを素手で受け止め、もう片方の手で持っていた槍をシュカージュに突きつける。

彼女の持つ槍は、元々は意思を持っていた神獣の化身。
それは、彼女を宿主と認め、彼女に強大な力を与えた。
おかげで、彼女は神獣の力の一部を使えるようになったほか、身体が蘇生をするという能力まで持っている。
彼女の霧も、神獣の力の一部に過ぎない。

「フフ、なかなかやるね、姉さん」
突き付けられた槍を紙一重の所でかわし、後方にジャンプした。
そして、そのまま彼は剣を掲げ、
「ホントはもっと遊びたかったけど、こっちも時間は無いんでね。また殺るときは楽しみにしてるよ、姉さん!」
そう言った直後、彼の剣が閃光を放つ。
「ぐっ・・・!油断した・・・!」
その時にはもう、シュカージュの姿は無かった。

#15
FAFS
「クラディア!シャルが!父さんが!」
必死に叫ぶ。

クラディアはシャルに近づき手をかざした。
"Larta morliul esel 1-5 yst ecpielnt fas."
(人体回復法1-5最短経路開始。)

クラディアの右手が眩い光を放つ。
"Edioll La akranti es, la morliul cenees. y fas."
(解析完了。 回復可能、回復を開始。)
シャルの目に生気が戻ってくる。
"Fantas LME 1-5 yst ecpielnt ny fas."
(連邦人体回復法1-5最短経路完了)
クラディアが手を翳すのを止めたと同時にシャルが息をしていることが確認された。
「これでもう大丈夫です。」
次は父のほうへ向かう。
"Fantas LME 1-5 yst ecpielnt fa...."
言葉が詰まった。

"yst nix la y mol y 0x00002F'l y io werlfurpo."
(エラー確認、0x00002Fよりウェールフーポエラー)
"Xeu, 0x000034,0x000035...la malef."
(続いて0x000034,0x000035...危篤)
クラディアの焦り様は言葉、表情からは分からないが伝わってくる。
"Cirla?, Fq...0x000000ler cysilarta's ny mol. Foi werlfurp'd..."
(本当に?これは…0x000000から主領域に欠損。 高度ウェールフープ…)

クラディアはこちらに振り向いて言った。
「八ヶ崎翔太。 貴方の父は現在非常に危篤な状態にあります。連邦の医療センターへ連れて行きますが私にはその系統のWPは発動できません。」
「つまり、手伝えということ?」
「はい、彼を連邦に30分以内に連れて行けなければ死亡してしまうでしょう。」
くっ…
そんな、今急に言われても分かるわけ無いのに…
どうすれば…

考えれば、考える程分からなくなってくる。
その時、脳内に声が聞こえた。

"少年よ、私が居るではないか。"
そう、あの守護霊の声であった。
"手を貸そう。"
そういった瞬間、体中に力が行き渡り何でもできるような気がした。
父に手を翳すと眩い光とともに消えた。

「これで…連邦に転送できたみたいですね。」
「よかった。」
安堵の声が聞こえた。シャルのものだった。
「シャル!大丈夫!?」
「ええ、そこの美少女のおかげでね。」
達者な口が叩けるほど回復したのか、なるほど。
「アレス・シャル、八ヶ崎翔太、あなた方にはユエスレオネ連邦総務省特別法務局との契約がまだ残っています。膨大な借金を帳消しにできるほど連邦にリソースの余裕はありません。迂闊な行動をしないでください。」
冷たく感情のこもっていない、いや勘定の聞こえない声が突き刺さる。

「このッ!」
シャルが駆けてきて手に篭った炎を刺そうとするがクラディアはそれを避ける。
「契約の執行者を殺してきたのは誰!?他でもない貴方たち連邦政府よ!スキルセットも何も考えず戦場へ出しては、はい損害計上、国債強制積み上げね。って!」
「連邦政府は正当な社会主義的ワークバランスの配分によって実行された対Xelken作戦に正当な会計を行ってきました。これは事実であり不当な経済行為ではありません。」
「正当?正当ですって!?中翼経済の活発化のためにケートニアーヘXelken討伐を依頼して死んだ人を金にするのが罪じゃないというの!?」
「貴方たちを殺したとしても中翼経済は発展しません。連邦は2000年人権宣言に沿って適正な作戦を依頼、展開してきました。」
「そうね、適正ね。連邦にとっては…あなたも知っているはずよ。大切な人は居なくなるよりつらいということを!」
そう言い放ってシャルは明後日の方向に走っていった。
「…」
「クラディア、さっきのシュカージュって」
「レシェール・シュカージュ 私の弟です。」
弟がXelkenなのか?
「彼は不運でした。私は…」
その後の言葉をクラディアは遮った。
クラディアの目は少し青かった。

「八ヶ崎翔太、私は上司からの貴方への能力アセスメントと説明責任の一部を解消する必要があります。 ここでは、話づらい話になると思います。 場所を変えましょうか。」

#16
DaSH
クラディアと翔太はその場から離れ、どこかへ向かっていく。

それを見ている…いや、見守る二人。
二人は今、あの家の向かい側のビルの屋上にいる。
彼等は先程の出来事の一部始終を見ていた。
彼らは二人が何処かに行くのを確認すると、安堵の息を漏らした。
「ふぅ・・・何とかあれだけは回避出来たな」
「ああ。だが、問題はシャルの方だ」
「シャルちゃん?何か問題でもあるのかい?」
「まあな・・・。いずれはあいつが何とかしてくれるとは思うが、万が一があるからな」
「用意周到だねえ、全く。それにしても、翔太の奴、ちゃんとやってくれるんだろうな?」

「・・・少なくとも、シャルは翔太に好意を抱いている。そして翔太も、何かとフラグ建築士だしな」
「あんた、どこでそんな言葉覚えたんだよ・・・。しかし、翔太はかなり鈍感だぞ?そのくせ天然ジゴロときた。シャルちゃんには可哀想な気がするんだが・・・」
「相手が悪かったと諦めるんだな」
「くそぅ・・・俺だったらちゃんと気づいてあげられたのに・・・」
「お前では好かれんよ」
「・・・軽く傷ついたんですけど・・・」
「ハハハ、冗談だ。そこまで気にするな」
「冗談には到底思えないんですが・・・」

彼らはそんな会話をしばらくしていた。
だが、ふと、一人の表情が曇った。
「・・・そろそろ、Xelkenが本格的に動く」
「うん?今までだって動いていたじゃないか」
「・・・翔太が覚醒した事をXelkenは知っている。つまり、これまでよりも激化するって事だ」
「あいつらだけで対処出来んのか?」
「ほぼ不可能に近くなる」
「な・・・!じゃあ、どうすればいいんだ!?」
「その為の我々だろう?」
「・・・そう、だったな」
「こちらも行動に移ろう。では、いくぞ」
「へいへい」
そう言って彼らはその場を去っていく。

と、一人が立ち止まる。
「・・・翔太、頼むぜ。世界はお前にかかっている。ま、お前の友達の俺がそんな事頼んでも仕方ねぇわな」
「どうした?」
「いや、ちょっと未練がましいというかさ」
「そういうのは今のうちに祓っておけ。後々苦労するぞ」
「ああ、わかってるよ」
そして、彼らは今度こそその場から消え去った。
「翔太・・・あいつらを、護ってやれ・・・」

#17
FAFS
翔太とクラディアは近くのカフェによっていた。
互いにアイスコーヒーを頼みちびちびと舐めていた。

「八ヶ崎翔太、」
「あのさ、何でフルネームで呼ぶの?」
「それが貴方の名前だからです。」
「翔太でいいよ、翔太で」
「え、いやあの…しょ、翔太…。」
クラディアの顔が少し赤くなったような気がした。

「何か、
今までのXelkenとの戦闘で気になったところとかはありますか?」
「気になったこと…あ、なんで君たちは、ウェールフープが使えるの?」
「連邦の人種には通常の人間であるネートニアー、そして魔法の使えるケートニアーが存在します。私たちの一族は、ケートニアー一族だったので。」
「じゃあ、なんで僕は」
「翔太は『アフツァーフリーガの子孫』と言うのを知っていますか?」
「ああ、あのシュカージュが言っていた奴か」
「略してアフの子孫とも言いますが昔、ケートニアーの一族が地球に来たことがあるんです。それが各地の魔法類の基礎となったと言えます。」
つまり、言われているファンタジーの類は古代には実在したと言うことか。

「その一族がまだ発達していない各地域を、その地域の文化を壊さないように発達させました。日本で言えば渡来人の類です。その一族の血が混じった者、特に地球の民族をアフツァーフリーガの子孫と言います。」
「それが日本には僕しか居ないと」
「確定事実ではないですがそう思われます。 現代ではウェールフープを使う必要が無くなりケートニアーとネートニアーの差異は現代ではほとんどなくなりました。」
なるほどな

「じゃあ、何で僕はウェールフープが使えるのさ」
「アフの子孫の三代目日本系八ヶ崎、松本、織田その他の血族以下においてはケートニアー特有の器官、造・発モーニ体が現存しています。」
「はぁ!?」
驚いた。
つまり、言いたいのは普通の人間ではないということか。
「で、でもさそんなのがもしあれば分かるんじゃないの」
「分かる前に文化、文明保護のためにいかなる方法でも見つけられないよう隠蔽しています。」
「そうなのか…」
普通の人間と違うということは知っていたが体の中まで違うとは…

「他に聞きたいことはありますか?」
「あ、あのさあ」
「?」
「本当に聞き難いんだけど」
そこまで聞いてクラディアは言った。
「私とシュカージュのことですね」
こくん。

「まぁ、何があったか知りたいかなぁって、僕を巻き込んだ罪滅ぼしにでも」
「罪滅ぼし…まぁ、そうですね。あれは十年前のことでした。」
そういってクラディアはその日のことを鮮明に思い出した。

    • *
血は雨のように降り注ぐ。
壁には血の旋律。

"Xkardzysti! Xkardzysti!"
(シュカージュ! シュカージュ!)
弟の名を叫びながら少女は血の雨のなか町を走る。
町の建物は荒廃し火事、爆発が起こり電線は切れショートで火花を散らしている。
時々、人の死体が見えるが少女は気にせずに走る。
四肢の一部が無くなった死体、生首が道に転がり蚊の程度意識のある人間が手を伸ばしては力尽きてゆく。

"Harmue co mol xkardzy."
(どこにいるのシュカージュ。)
少女はそれを見つけた。
"Xkardzy! Harmue tydiest! Top!"
(シュカージュ! 何処へ連れて行くの! 待って!)
少女の弟は数人の男に連れられていた。

"Hn? Fqa mol mian de. Y letix la lex liaxu?"
(ん? そこに女の子がいるぜ持ってくか)
"Jad, fqaes lecu."
(そうだなそうしよう)

男たちが近づいてくる。
「「気を付けろ」」

声が聞こえる。
「「気を付けろ、奴らは…」」

やめて、やめて
「「奴らは集団で」」

「「奴らは集団でやってくる」」
鮮明な父の警告が脳内でこだまする。

「「とりあえず逃げろ、とにかく遠くへ逃げろ」」
「「そして、遠くの地で助けを請え」」

男たちが近づく、もう手の伸びる所まで。
「「私が…私が…」」

力を与えよう。

それ以降少女の記憶には残っていない。
男たちはなぎ倒せたが弟は連れて行かれてしまった。

少女はまた歩き出した。
誰かが肩をさわった。
「悲しかったね。」

肩を触った軍服の男は泣いていた。
少女はなぜこの男が泣いているのか分からなかった。
少女の心の怒りは黒い物へ変化して心を覆った。
    • *

#18
DaSH
「そんな事が…」
翔太は驚愕した。
クラディアが言った事がまるで自分のことのように感じられた。
それほどまで衝撃は大きかったのだろう。
「大体、こんな感じでいいかしら・・・シュカージュについては、あの後どうなったか知らないわ」
「・・・そっか。ごめんな」
「何も、翔太、あなたが謝る必要は無いわ。これは私・・・いや、私達の責任だから」
そう言うと、窓の外をぼんやりと眺め始めた。
その眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。

ピリリリリッ。
翔太の携帯が鳴る。
ん?メールか?
画面を見た。
どうやらシャルからのようだ。
      • そういえば、シャルとメアド交換して以来、一回しかメールしなかったな。
シャルは家に泊まってるわけだし。
メールを開く。
"午後7時にまでにここから離れて"
そのまま下に進む。
"Xelkenがこの街を襲うみたい"
「翔太、何かあったの?」
「・・・ああ、Xelkenが、今夜この街を襲うらしい」
「なんですって・・・!」
クラディアの顔が引き攣る。
「取り敢えず、状況をシャルに聞いてみる」
「私も行く」
二人は会計を済まし、シャルの元へ向かった。

彼は1人、ぼんやりと外を眺めている。
窓の外は曇っている。
「どうした?お前がボーッとするなんて、珍しいな、シュカージュ」
彼の友人らしき人物が話かける。
「・・・昔の友人に会ってな・・・。少し考えてたのさ」
「ははっ、お前にも友人と呼べる奴はいたのか」
「失礼だな。俺も昔は、結構友達いたんだぜ?ここに来るまではな」

      • いつから、ここにいるだろうか。
もう、思い出せない。
ただ、今でも、はっきり覚えている事は、ここへ来た時のこと。
いや・・・連れ去られた時かな。
あの時、姉さんが助けてくれようとしたけど、俺はそのまま、ここに連れてこられた。
そして、ここのリーダーと思しき人が、姉さんを死なせたくなければ協力しろと、俺を脅迫した。
最初は断ったんだが、その後は拷問攻め。
身体中をムチで叩かれるわ、電気を流されるわ、石を投げつけられるわ、とにかく物凄く辛かった。
毎日泣いて、姉さんの助けを待ってたっけ。
だが、とうとう俺は折れて、この一味に入った。
その時に、俺は光の眷属を身体に埋め込まれた。
そいつに身体が乗っ取られていく、そんな気がした。
でも、自由に使えるようになってからは、力を使うのが楽しくなってきた。
自分の力を試そうと、人も殺した。
人を殺すことに抵抗は無い。
むしろ快感を覚えるくらいだ。
だが、そろそろ飽きた。
姉さんと対峙した時、思った。
俺は、なんでこの人と戦ってるんだろうって。
あの時、助けを求めた相手と、なんで、って。
      • とはいえ、ここから抜けるつもりは無い。
俺には、成し遂げなくてはならない事があるから。
たとえ、姉さんの敵に回ってでも。

「おい、シュカージュ、総統がお呼びだぞ」
「・・・ああ、今行く」
「どうした?元気ないぞ?」
「少し、考え事をしててな」
「あまり考えすぎるなよ。任務に支障が出ては困る」
「分かってるさ、それくらい。さて、今回の任務は大仕事だ。気合入れていかないとな」
「ああ、何としても成功させるぞ」
彼と別れ、総統のいる部屋に向かった。

#19
FAFS
ユエスレオネ連邦 総務省庁
だだっ広い会議室にスーツの男がぞろぞろと集まる。
静寂に包まれた後、プロジェクターの前に一人の男が立った。
「始めていいか?」
男は横にいるプロジェクターの補助者を見る。
補助者は無言でうなずいた。

「ええ、諸君に今回集まってもらったのは他でもない。」
プロジェクターに文章と黒ずくめのケートニアーたちが写される。
「第一部によると先週から偵察捜査中の諜報三課が持ち帰った情報から第266情報から今回特警内で特別対策チームを立ち上げることになった。」
「今回のチーム設立理由としては、Xelkenのゲリラ、特殊部隊によるテロの悪化が予想される。」
会議室がざわざわし始める。
「今まででも酷かったのに…」「また、あの戦争と同じようになるのか」
ところどころ声が聞こえてくる。
「三課の調査情報によると中央部の他に今回のテロではあの八ヶ崎をふくむアフの一族も目標になっている。」
なんだと?
八ヶ崎が目標になっている?
待て、それは困る。
「あと今回のXelkenのテロについて後方攪乱を行うチームとして特殊一課、二課、三課、また諜報四課を」
「待ってください!なんで後方支援に諜四を徴用するんですか!?」
「DAPEの治安維持、Xelken.Alesの武装解除に伴う正規内部偵察を行っている。これにともなって特別部は過半数が減っているため後方攪乱の支援のために諜四を利用する。」
「む、無理ですよ!諜報部は戦闘チームじゃないんですよ!」
男の横の女性が声を張る。
「諜四は後方支援をしてもらう。」
「だから…だから…」
女性は下を向いて震えている。
男性が立って『事務長』へ向けて歩き出す。
そして、事務長の前のデスクを強く叩いた。
「ふざけんな。」
そういい残し男は部屋を出た。

「以上だ、後方攪乱に参加しない部署には情報収集を依頼したい。」
事務長の表情は変わらなかった。

あの…

あの様なことを我等が二度と起こさないために。
我等が犠牲を払わなくてはならないのだ。
無言の犠牲を。

#20
FAFS
「Xelkenが動き出したって、どういう事?」
シャルがこっちを向いた。
「連邦から特別警察情報部から人が来たの翔太を含むアフの子孫が狙われるって」
「その情報は事実ですか?私は聞かされていませんよ。」
クラディアが顔を引き攣らせて言った。
「本当よ。私の前にアレス・レシェール・イングリュー・シュトナフ(Ales L.I Xtonah)が来たわ」
「イングリュー?幹部レベルで事が進んでいる…」
クラディアは左を向いて言った。
「それでどうすればいいんだシャル?」
「逃げなきゃ、DAPEの様になる…」
「いいえ、DAPEよりも酷い損害を得ると思います。特別警察庁の幹部レベルで組織ぐるみの被攻撃警告を行うのはDAPEでもありませんでした。」
クラディアはいつもと同じ冷えた声で言った。
「あ、クラディア DAPEって何?」
「デュイン・アレス独立戦争、連邦とデュインにおけるXelkenと癒着したデュイン総合府との戦争です。ここで言うと第二次世界大戦に当たります。」

…。
静寂が訪れた。
逃げなければならない。
その言葉が重く圧し掛かる。

「ここの…人間を見捨てるのね。」
シャルがボソッと言った。
そうだ、ここを逃れれば地球の人間を見捨てることになる。

「?」
クラディアの方から着信音らしき音がする。
クラディアは手を耳に翳した。
"Salar, Mi es krardi'a."
(はい、クラディアです。)
"Hn? La lex celde? jad. jad, edioll y firlex. Als es fantas fua."
(え?本当ですか?はい、はい、解りました。 全ては連邦のために)

クラディアは同盟国に宣戦布告を言い渡された外交官のように立っていた。
「なんか言うことは?」
「二つあります。 二つとも悪い知らせです。」
「一つ目、治療中の翔太のお父さんがXelkenに誘拐されたようです。現在特別警察が動いているようです。
二つ目に、現在連邦とデュインの公営放送がジャックされXelkenへの蜂起を呼びかけているようです。対策として市民にテレビ、ラジオを切るように呼びかけているそうです。」
かたかた震えるクラディア
「どうしたの、クラディア? 大丈夫?」
「あ、あの時と同じ…は…」
「え?」
その声を聞いた後翔太たちは防災放送のサイレンを聞いた。
"Fq...e...xelke...ale..."
(こち…Xelke...Ale…あ…)
"El... Elm!... Mis...Lkur...fq..'d...acir...lfami...ches"
(戦…戦え…私た…こ…の…放s…繰…返す)
"El... Elm!... Mis...Lkur...fq..'d...acir...lfami...ches"
(戦…戦え…私た…こ…の…放s…繰…返す)
"Lies...panq...lfami...ches...fant..er...! m...ret...c!..."
(時か…一時…繰…返す…連ぽ…民! 我…殺…汝…)

ノイズによってよく聞こえなかったが大体内容はわかった。
Xelkenは迫っている。

#21
DaSH
    • *
「…で、僕たちはどうするべきだ?」
翔太は尋ねる。
「貴方の命を最優先するならここから離れる、つまり地球を捨てるのが最善でしょう」
クラディアはいつも通りの事務的な口調で言う。
「そうは言っても、どうせXelkenは宇宙の果てまで追ってくるんでしょう?」
シャルは釈然としない顔で言う。
「…少なくとも、彼等を倒すだけの力は今はありません。時間を稼ぐべきかと」
クラディアは言う。
確かに、僕はアフの子孫と言われているが、力を使えない。
かといって、今まで暮らしてきた地球を捨てるわけにはいかない。
僕は…どうしたら良いんだ。

「…翔太は、どうしたいの?」
「…え?」
「翔太は、地球を…捨てたいの?」
「……そんな事は無い」
そう。
そんな事は出来ない。
「では、どうなさるおつもりですか?このままでは、どの道地球に未来はありません」
クラディアの言葉が胸に突き刺さる。
「……現実から目を背け、理想の世界だけを見ていても意味はありません。たとえどれだけ祈っても、貴方が望む未来は来ない」
「…僕は」
僕は。
地球の未来なんて背負えない。
僕の一存で、そんな事決めて言い訳がない。
こんな現実、無かったことにしたい。
夢であって欲しい。

「…僕は、所詮一人の人間だよ」
命を狙われた時から、思っていた。
怖い。
逃げたい。
ここから目を背けたい。

「結局、僕は自分だけ助かればいいって思ってる。地球をどうこうするとか、Xelkenを倒すとか、正直、まだピンと来てないよ」
「翔太…」
「今だってそうだ。ここから逃げ出して、早くこんな所離れたいって思ってる。こんな世界は嫌だって思ってる。目を背けたいよ。今すぐ逃げ出したいよ!」

…けど。

「でもさ…」

それでも…。

「それでも…僕は…」

"世界"だとか、"地球"なんて大きなものは護れるわけがない。
でも、僕の周りには、

「護りたい人達がいる。」

だから、

「その人達だけは…」

たとえ何があっても。
僕が死ぬ事になっても。
絶対に。

「……"護って"みせる」

「……馬鹿ね。自分がどんな立場なのか、分かっているのかしら?」
シャルはくすっと笑った。
「イマイチ分かんないよ。でも、やる事は決まったよ」
「本当、馬鹿ね。でも、翔太らしいわね」
「そんな事は無いよ」
そして、クラディアの方を見る。
「そういう訳だ。クラディアはどうするの?」
「もちろん、お供しますよ、翔太。個人的には、貴方ならそう言うと、信じてましたよ」
…意外だった。
いつもの事務的な感じと、少し違う。
彼女が自分の気持ちを、はっきり表すなんて今までに無かった。
「…シャル、クラディア、悪いな。色々迷惑かけて」
「何を今更」
「とっくの昔からですよ」
「そうだったな。…まあ、また迷惑かける事になるけど、よろしく頼むよ」
「もちろん!」
「こちらこそ」
「…それじゃ、Xelkenの野郎を倒すぞ!」
    • *

#22
FAFS
    • *
「特警本部より連絡です。駅周辺にXelkenが居る模様。」
「駅!?」
「どうしたの翔太」
心配そうに顔をのぞくシャル
「い、妹が駅方面に…」
クラディアは耳に手を当てて何かを言っている。
"l'stonex celdin mol? jad, edioll y firlex."
(増援は?そうですか、わかりました。)

「増援は見込めないようです。私たちだけで戦う必要がありそうですね。」
そんな、まだWPに慣れていない今戦闘は流石に早すぎる。
でもここで出なければ、沢山の人が死ぬ。
「行こう、一秒でも早く。」
「ええ。」
「~~~!」
「シュ~ジ~起~!」
「シュカージュ!」
「はっ!」
起きた。 時計の針は十二時を過ぎている。
「シュカージュ、地球への侵攻命令が出た。本日1325に現地だ。」
「何処だ。」
「ヤパエオ(日本)の相模原だ。」
行くか…
姉さん、次こそ次こそ…

「これは…」
酷いの一言だった。
駅ビルは崩れ十人ほど倒れている。
壁に血がベッタリと付いている。

「ああ、私たちはなんて悪夢を…」
シャルが言った。

「ところでXelkenの姿が見えませんね。」
「イールドは?」
「近辺、展開されていません。奇襲の可能性も少ないです。」
どういうことなんだ?もう襲撃は終わって別を襲撃している?
次の瞬間クラディアの方からアラート音が聞こえた。

「何!?」
「高線量WP波の接近を感知しています。NZWPだと思われます。」
「NZWP?ど、どうするの!?」
NZWP、クラディアの戦争の説明で聞いた。
核兵器以上の威力をもつ破壊兵器。

「迎撃します。」
そういってクラディアは手を空に翳した。
するとアラームは止まった。

「あなた、何したの?」
シャルが怪しげな顔で聞く。
「空中にある微粒子を高速でNZWPにぶつけて爆破させました。」
「爆破による影響は?」
「…」
「あ、貴方…」
「私の任務は八ヶ崎翔太を」
言い切る前にシャルはクラディアを殴った。
"fqa'd iska lut,xeterrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!"
"top, mi'd syster kli..."
"iskaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa"

#23
DaSH
    • *

「はぁ、はぁ…」
翔太は駅を走り回っていた。
「(和葉…和葉は!?)」
あれから、和葉の姿を見ていない。
駅の何処かに居るはずなんだが…
まさか、アレに巻き込まれたのか?
「くそっ…どこ行ったんだあいつは!?」
なおも走り回る。
嫌な予感がした。
父さんに続いて、和葉までも…!
そんな気がする。
Xelkenの事だ。最初からそのつもりで駅を襲撃したのかもしれない。
じゃあ、何故帰ったのか。

妹の身柄を確保したから。

「…そんな事…あるわけねえ!」
そう言い聞かせ、更に走りを強めると、
「……!」
いた。
駅のショッピングモールの中で、警備員に誘導されるまま動いている。
僕は和葉の元へ駆けつける。
「和葉!」
「…!お、お兄ちゃん!?」
「…良かった、無事だったか」
一気に全身の力が抜けた。
そのままその場に倒れ込む。
「お兄ちゃん?大丈夫?」
「…ああ、大丈夫だ。それより、お前はどうなんだ?駅で大きな爆発があったらしいが…」
取り敢えず、何故ここにいるのか聞かれなかった分、ラッキーと言うものだ。
お前が心配だから、なんて言ったらシスコンと勘違いされるし。

「ほんとだよ、まったく。危うく爆発に巻き込まれる所だったよ」
…え?
「ちょうど目の前で爆発が起きて。あ、終わった、って思ったもん」
「ちょ、ちょっと待て。お前、どうやって爆発から逃げてきたんだ?」
「…よく覚えてないんだけど、爆発が起きた直後に、黒服の人が私の目の前に現れて、爆発から守ってくれたみたいなの。その人は……助からなかった」
「そうか…」
やっぱり、Xelkenは和葉を狙っていたんだ。
最悪、死んでいたかもしれないと思うとぞっとした。
黒服の人は、一体何者なのだろう。

「……黒服の人には感謝しないとな。それもそうだが、お前、怪我はないか?」
「うん、大丈夫だよ」
「そっか…そりゃ良かった。あと、家に戻ったほうがいい」
「なんで?」
お前が狙われているから。
なんてとても言えない。
「…母さん、心配してたから」
と言って凌ぐしか無いだろう。
「そっか。じゃあ、帰ろっか」
「ああ、そうだな」
四人は肩を並べて、駅から離れていった。

「……そう。わかった。09.rabuyが…残念ね」
黒服は言う。
「でも、彼は勇気ある人よ。何たって、和葉を救ったんだもの」
「…分かってる。彼を弔っている時間はない事くらい。私には、やらなくちゃならない事があるものね」
「ええ、分かったわ。直ぐに行くわ。15.kanakの名にかけて」
彼女は通信を切った。
「さあ、…最後の大仕事に行くとしますか」
    • *

#24
FAFS
    • *
「お兄ちゃん…この人たちは?」
和葉はシャルとクラディアを見ていった。
「翔太の妹である八ヶ崎和葉さんですね。私は連邦特別警察のクラディアです。宜しくお願いします。」

「ゑ?」
小一時間のクラディアの説明が続いた何処までこの人は真面目なんだろう。
「でこっちがシャルさんなのね。」
「そうそう」

「説明の直後ですが連邦からXelkenの討伐命令が出ています。」
「…」
「お兄ちゃん?」
「ん?」
「別にお兄ちゃんが行かなくてもこの人たちが行けば…」
和葉の顔が恐怖におびえている。
翔太は和葉の頭をそっと撫でた。

「僕が、僕が行かなきゃ行けないんだ。」
「今度は町田の方で被害が出ている模様です。」
「町田?」

何故、町田を選んだんだ?
近辺の被害で僕たちを煽るためか?
とにかく、行かなければ。

町田の様子も以前の相模大野の状況と同じだった。
「クラディア、前回と同じWP波の検出は」
「ありません、正常範囲内です。」
クラディアはメーターを見て言った。

「おーい、誰かいるんか?」
暫くして、崩れた建物の隙間から少女が出てきた。
「あ~あ、派手にやっちゃって、ん?キミ達は誰?」
「特別警察です。」
それを聞いた少女はクラディアから一歩体を引いた。
「特警?な、なんで特警がここにいるんねん!?」
「連邦よりXelken討伐の要請が来ましたから」
「わ、私はユエスレオネ軍特別工作隊のスカースナ・リーサであります!」
少女は敬礼をして言った。

「れ、連邦の栄光はセルコジストにあり我らの栄光は連邦の栄光、連邦の栄光は我らの栄光!そして…」
「もういいです。それ以上言わなくて大丈夫です。 軍がくるとは聞かされていませんでしたが」
クラディアがリーサに近づいて言った。
「は、はっ、軍は連邦指導部の指導によって出動を要請されたのであります。ここで調査を行っていたのですが突然爆発が起きたのです。」
「怪我は?」
「いえ、私はケートニアーなので!」

連邦が襲撃地を予測していた?
意味が解らない。
内通者でもいるのか?

「指導部の指導の情報源は特別警察庁から出ていましたか?」
「いえ、情報源は伝えられていません。」
「おかしいですね、普通は伝えられるはずですが」

連邦内で機密にされている情報源?
一体何なんだ。

四人は混沌とした駅構内で静寂という敵と戦っていた。
    • *

#25
DaSH
    • *
その後、僕たち四人は町田駅付近を調べてみたが、特に収穫は無かった。
Xelkenの目的は一体何なのだろうか。

「ただいまー」
「お帰りー、ってお兄ちゃん!?無事だったの!?」
「勝手に俺に怪我させるなよ」
「良かった…無事で」
「まあな…。結局、何も分からなかったか…」
「ええ、そうですね。一体何が目的なのか…」

「あ、あの」
「ん?」
翔太は振り向く。
「わ、私は、そろそら軍の方へ戻っても大丈夫でありますか?」
「…ええ、いいわよ」
クラディアは何か考えていたようだが、意外にあっさりと承諾した。
「では、失礼します」
「ああ、気をつけてな?」
「はい。ってうわわ!?」
早速つまづいてコケている。
結構ドジっ娘なのか?

「お兄ちゃん、あの人誰?」
何だか怪訝な顔つきで僕に問う。
「ああ、えーと…スカースナ・リーサっていう人で、この人の知り合いなんだ」
翔太はクラディアを指差しながら言う。
「え!?ちょっと、翔太、どういうことですか!?」
「シーッ!」
指で小さく合図し、クラディアに近寄る。
「(流石に軍の人です、なんて言えないだろ。だから話を合わせてくれ)」
「(…わかりました。そういう事なら)」
クラディアを納得させた所で、
「まあ、そういう訳だ。だからたまに会うかもしれないけど、そんときはよろしく頼むよ」
「……いまいち釈然としないなあ」
和葉はまだ納得いっていない様子だった。

それから数日は、特に何も無く過ぎていった。

そして…
「翔太、起きて!」
「う……う?ん?どうした、シャル?まだ二時だぞ?」
「それが、クラディアから連絡が…」
「どんな?」

「Xelkenが地球に来たって!」

知覚。
沈黙。
思考。
理解。
絶句。
「はぁぁぁぁぁ!?」
    • *

#26
FAFS
    • *
ん?あれ?でもXelkenって今まで地球に来てなかったのか
「日本だけでなく中国、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ諸国で攻勢を強めているようです。」
「うわぁっ!」
横にクラディアがいた.
「あの後連邦へ行きましたが連邦の入国審査を何故か通れませんでした。なので、ここで一晩止めさせていただきました。」
「救世sh、八ヶ崎さん、私も同じくであります!」
リーサはクラディアの隣から顔を出してそう言った。
きゅうせいってなんだろう急性中耳炎?

「とにかく今の状況を整理するのであります!」
そういってリーサはポケットから小さいブロックを取り出して床に置いた。
"y fua xol."
(革命のために。)

ブロックから光が出て地球が映し出された。
「現在、ユエスレオネ陸海空軍、デュイン海軍、ハタ王国陸海空軍がアメリカ、ロシアで作戦を展開しています。」
クラディアが言った。

「またスキ・カラムディア軍が中国、アフリカ、インドに展開中であります。」
「戦闘状況は?」
「イギリス、フランス、スペインは占領されたようであります。ドイツで食い止めるためにユエスレオネと合同作戦を展開しています。」
「ぼ、僕たちはどうすれば?」
「連邦からは指示を待つように命令されています。」

そういい終わるとクラディアが手を耳にかざした。
"Jad, Mi es kladi'a. hn, jad."
(はい クラディアです。 え?そうですか)
クラディアは翔太のほうを向いて言った。
「Xelken海軍が中国制圧を完了し日本へ進撃しているとのことです。」

「なんだ…あれは…」
そこに見えるのは暗黒に包まれた戦艦たちだった。
船員がそれを確認した直後彼らは砲の照準を我らに合わせた。
そして射撃を開始した。

「敵、WP主砲発砲!」
「WP砲発砲準備完了!」
「発射!打ち込めぇ!」
FAFS級戦艦より砲弾の雨が敵艦に降る。
しかし、それらは当たらない。

我らの艦に敵の砲が着弾する。
「ぐあぁ!」
「敵砲弾機関部に直撃!艦が傾斜しています!」
「鈍間め!修復しろ!次弾装填開始!」
「装填完了!」

敵はもうひとつの砲を我らに照準を合わせる。
「敵発砲っ!」
着弾、爆破する。 飛び散る血と悲鳴。
「くっ、て、撤退する。 リスターメ第三艦隊全艦に告ぐ本海域より撤退せよ!」

#27
DaSH
    • *
「そんな…!それでも、待ってろって言うのかよ!」
「…ええ。彼らには従わなくてはなりません」
クラディアは相変わらず、平然としている。
「くそ…!」
僕は壁を殴った。
「こんな時に…何もできないなんて…!」
「翔太、落ち着いて」
シャルが言う。
「今、貴方が行っても、何も出来ないでしょう?彼らを止めたいのは私も同じ。だから、今回は我慢して」
そう言ったシャルの口は強く結ばれていた。
きっと、シャルは僕以上に悔しいのだろう。

「…そうだな。大人気なかったな。悪かったよ」
そうだ。
今は、待つんだ。
と、その時、クラディアの携帯らしきものが鳴った。
「はい、こちらクラディア。…え?……そうですか。…しばらく待っていただけますか?」

クラディアがこちらを向く。
「翔太、貴方に話があります」
「ん?何だよ」
「Xelkenが、我々にメッセージを送り込んで来たようです」
「……!それって、どんな!?」
「翔太を連れて、今日の7時、本部へ来い、だそうです」
「本部へ…?それってクラディアたちがいるところ?」
「はい。そこで待っているとの事です。しかし、本部内部への侵入者はいないそうなのですが…」
「…よく分からないけど、行くしか無いだろう」
「…戦闘になる可能性が大きいですよ?」
「そんなん、最初からだろ。もともとこっちは、その覚悟でいるんだから」
「…分かりました。…もしもし、ええ、行く、との事です。…はい、…了解しました」
通話が切れる音がした。
「では、行きましょう」
「も、もう行くの?」
「ええ。ここから本部まで、かなり距離がありますから」
「…分かった。じゃ、行こうか」
「…そう。Xelkenが…。分かったわ。我々も本部へ向かうとしましょう」
黒服の女は言う。
「翔太……。今まで、迷惑かけたわね。でも、これでお別れよ。分かって頂戴」
彼女はその場を後にする。
その目には涙が滲んでいた。
    • *

#28
FAFS
    • *
「事務官!どういうことですか!?彼らは過激派拿捕作戦まで」
「黙れ、上層部の決定だ。 逆らうと国公警察に捕まるぞ。」
『事務官』とスーツ姿の男が口論している。

「上層部って、特別警察に上層部がいると言うのですか!?」
そういって、男は部屋を出て行った。

すると『事務官』の秘書が近づき彼に言った。
「アロアイェールですよね。 奴らの指令で党の指導部が動かされ結局警備部はこの仕事に付くことになった。 そうですよね。」
「…」
自分の口からはとても言えなかった。

「ええ、私が案内します」
WPでユエスレオネに来た。
特別警察本部へ行くらしい。

「あのさ特別警察って何。」
リーサが身震いしたが気にしない。
そんなに特別警察が怖いのだろうか。

「連邦革命にてユエスレオネ連邦が成立したとき刑事警察の対応できない事態に対応するために作られた機関です。軍からの監視を受け刑事警察を監視します。」
「着いたわね。」

"NCF"
(特別警察)

これから僕たちは何を見ていくんだろう。

    • *

#29 DaSH
    • *
「状況は!?」
部屋のドアを開けるなり、クラディアは叫んだ。
「ああ、それがな。未だ侵入された形跡が見つからない。奴は何がしたいのかサッパリだ」
「…そうですか。兎に角、翔太を連れてきました。これで何とかなると良いのですが…」
そんな事を言っていると、不意にモニターが起動した。
「やあ、特別警察の諸君、そして八ヶ崎翔太君」
そこに映ったのはXelkenの姿。
「Xelken…!」
「何故こんな事をするのです!」
クラディアが叫ぶ。
「まあまあ、落ち着きたまえ。私は、そこの翔太君と話がしたいだけだ。危害は加えん」
「そんな事、信用出来る訳ありません!」
「…ふぅ。これでも、一度言った事は守るタチなんでね。何なら、今いる場所を教えてもいい」
「…結構です。どうせ偽の場所を教えるだけですから」
「つれないねぇ、全く。兎に角、翔太君、いいかな?」
「…アンタの目的が何か知らないが、それでアンタが納得するなら良い」

「ちょっと、翔太!?」
シャルが呼びとめる。
「危険よ!やめた方がいいわ!」
「そうです。きっと裏で何かしてくるに違いありません!」
クラディアも言う。
「…言ったろ。命をかける覚悟は出来てるって。だから大丈夫」
「そんな…」
「翔太…」
「ふむ…そこまで心配だと言うのなら、隣の部屋からモニターで見るなり直接見るなりすればいい。ただ、会話の内容は、シークレットで頼むよ」
「…分かりました。翔太も合意の上だというのなら、反対はしません。しかし、様子は見させていただきます」
「話を分かってくれて助かるよ。では、翔太君以外はこの部屋から出てくれ」
そう言うのを聞くと、翔太以外の皆が退出した。
翔太の様子をモニターを介して見つめるクラディアたち。
どうやら話を始めたみたいだ。

何も起きない。
とりあえず一安心と言ったところか。
だが、そんな事は次の瞬間には言えなくなってしまった。
「…翔太の様子がおかしいわ!」
シャルは言う。
「え?」
それにつられて、他の皆も翔太を見る。
「あいつ…、泣いてるのか?」
「一体、何を話しているんだ?」

それから、翔太は部屋から出てきた。
その顔は、苦痛に歪んでいた。
    • *

#30
FAFS
    • *
「何を話していたんだ。」
特別警察の男が翔太に話しかける。

「Xelkenの歴史を、この無様な紛争を終わらせるのは君しか居ないって。」
「翔太!それはあなたを落とし入れXelkenに勝利をもたらすための嘘です!信じてはなりません!」
クラディアが叫ぶ。

「無様な戦争ですって…あなたたちが…あなたたちがッ!」
クラディアは手に氷を纏いモニターを破壊した。
"Iska lut fankas! Iska lut unde! Fqa'd unde es iskaer! retooooooooo!!!!!!"
(糞連邦め! 糞世界め! この世界は糞野郎だ! 殺せぇええええええ!!!!!)

クラディアは周りのものを破壊し続けていたが暫くたって特別警察の男らに鎮静剤を打たれて力が抜けながらも退室して行った。

「…」
シャルが硬直している。
「さて、質問を続けよう。 翔太君」
特別警察の男は顔を変えずに言った。
「君は、Xelkenに勧誘されたんだね」
「はい」
「なんか、条件とかいってなかった?」
「あ、そういえば、入らなければ父さんと妹を殺すと…」
「…人質を取ったか」
チッと舌打ちをし男は部屋を早足で出て行った。

「クラディア…」
ベットにクラディアが寝ている。
静かで感情の起伏を感じさせないいつものクラディアに戻っていた様であった。
だが、一瞬たりとも目を合わせてはくれなかった。

個室の中はとても静かで空気が澄んでいる。
自分の感情まで消されそうな静寂にクラディアはただこう言いつづけた。
「翔太…行かないで…死んじゃだめ…」

この言葉を聞いたとき翔太は涙を覚えた。
自分を犠牲にし続けてきたクラディアは遂に今感情が爆発してしまった。
この愛すべき隣人と共に守らなければいけない人間がまた一人増えたのだと。
自分のキャパシティで足りるかわからない重責に立ち向かわなくてはならない事を。

#31
DaSH
    • *
翔太が病室から出てきた。
「どう…だった?」
少し不安になりながら聞いてみた。
あんなクラディアはもう見たくない。
「もう落ち着いてるよ。たぶん、大丈夫」
「そう…良かった」
ほっと一息つく。
容態が安定しているのなら、心配はいらないだろう。

だが、もう一つ、気になる事があった。
「…翔太は、大丈夫?」
「え?」
そう。
翔太の容態も心配だった。
Xelkenから何を言われたか知らないが、かなりショックを受けたはずだ。
翔太の精神が壊れていないか、心配だった。
「ほら…。さっきの…」
「…ああ。まあ、かなりショックは受けたけど、これで決心がついたよ」
「え?」
予想外の答えだった。
大丈夫、とか、そう言うのを期待していたのだが。
「俺、暫く家に帰れないと思うから、母さんによろしく伝えといて」
「え!?ちょっと、待っ…!」
そして、翔太は部屋から出ていってしまった。
「ちょっと、翔太!」
後を追いかけたが、もう翔太の姿はなかった。


「…クラディアも翔太も、一体どうしたっていうのよ…」
私は途方に暮れるしかなかった。
「…私はどうしようかしら」
二人が離脱した以上、私が何とかするしかない。
だが、一体どうすれば…
「あの…」
「ん?」
リーサだ。
「シャル殿、少し、相談があるのですが…」
「…何?今すぐ終わる?」
あまり話している場合じゃない。
「直ぐかどうかは分かりかねますが…Xelkenを倒す為の話です」
どうやら、私と同じ事を考えていたらしい。
「…分かったわ。取り敢えず、場所を変えましょう」
そう言って、私は部屋から出た。


私は、建物の倉庫らしき所で止まった。
「ここなら大丈夫ね。じゃあ、どうするか話し合いましょう」
「了解です。で、早速なのですが、Xelkenの基地に潜入したいのであります」
「え?場所、分かるの?」
「ええ。さっき確認しました。ここから東に100km程のところです」
「意外と近いわね…」
想像以上の収穫が得られた。
場所が分かったのなら、此方から奇襲をかけられる。
「他に情報はある?」
「後は、その建物の構造くらいです」
「よし…!」
これで、此方からも仕掛けられる!
    • *

#32
FAFS
「仇を打つことができるのね」
シャルは虚無感に押されて言った。
「では、明日私の同僚を連れてきますのでここで集合でお願いしますであります」
リーサはシャルに紙切れを渡した。
そこには、フェーユのカヴィーナ側の連邦鉄道の終着駅周辺の地図と集合地点が記されていた。

朝、今日こそXelkenに先手を取って地球への進撃を止めようとカヴィーナの終着駅から30分の地点に軍人と少女の姿が見えた。

「諸君、今回の作戦は私から報告したよう特警諜報部からの情報における怪しいXelken過激派の基地の調査及びユエスレオネ法に違反する物品の破壊工作である。」
リーサが作戦を特殊工作部隊に説明している。
いつものリーサとは違い、『ボス』の風格を見せていた。

「リーサ、どうやって入っていくの?」
「あ、そうですね、ここの基地の西側、警備の薄いところから攻めましょう。」


「第一、第二特工隊、それでは侵入する!」
特別工作隊の男たちが言った。

侵入-17分後
爆風と爆音が耳を劈く。
数人の連邦兵が倒れている。
塹壕から状況を察するにXelken兵がWPライフルを使っているようだ。

こちらは、第一特工隊。
状況はこちらが劣勢。
連邦兵三人が負傷、また二人が死亡。

塹壕の中で負傷した連邦兵たちを介抱していると声が聞こえてきた。

"liaxu l'jalfkark als'd fankas'd elminalstasti! senost!"
(任務遂行中の全ての連邦兵よ! 聞け!)

"Mi's coss'i skamarleo'd eo lex liaxa ternejafna!"
(我等は貴官たちを受け入れる準備が出来た!)

"Coss taloraxe mal eo lex shrlo cuturl."
(貴官らは投降し出てきたまえ!)

兵士たちは慌てた。
口々に"Fqa es nisa!"(これは罠だ!)、"Cirla es?"(本当か?)とか言っている。
傷ついてない連邦兵は負傷して腹から血を出している隊長を見て混乱が頂点になり動けなくなっていた。

静寂の中で時間が過ぎていく、その時一つの野太い歌声が聞こえた。

"Sneryk vodypersti! No's miss'd fankassti!"
(立て 飢えたる者よ! 今ぞ、我等の連邦!)

"Pustyl fankaser! tolid klie edioll."
(醒めよ 我が同胞! 暁は来た。)

連邦の国歌だ。
連邦兵たちははっ、と気づいた。
自分たちは連邦民だ。
自分たちはXelkenに負けない。
そして、仲間の仇を打つという使命を負っていることを。

"Malnefo'i lex niv es cel nurun. selkosisto destek rytiet io. mal mi tydiest."
(参い行いの鎖 絶つ日 四星三青は 風にひらめき そして 我は行く)

副隊長は歌った。 そして、言い放った。

"tydiest!!"
(突撃!!)

連邦兵たちは連邦旗の刺繍を胸に持ちながら果敢にXelkenに突撃した。

#33
DaSH
    • *

突撃の合図が出てから5時間後。
私達は今、Xelkenの拠点内部にいる。
何とか正面を突破し、四方へ分散するよう指示を受けた後、ここに来た。
リーダーによると、死傷者は半数を超えたとのことだ。
これまでの犠牲を無駄にするわけにはいかない。
何としても情報を得ねば…!
「では、行きましょうか」
「了解」
私達は廊下を進んでいった。


「覚悟は出来たんだろうな?」
誰かは言う。
「ああ…。もう、後には引けない」
もう一人は、力強く頷いた。
「では、始めようか」


「閣下、どうやら軍の奴らが例の部屋に入ったみたいです」
部下と思われる男は言う。
「…放っておけ」
閣下と呼ばれた男は答える。
「…良いのですか?このままでは、特警が極東の国を滅ぼしてしまうかもしれませんよ?」
部下は神妙な顔つきで言う。
「…どのみち、いずれ発覚する事だ。知るなら早い方が良いだろう。それに…」
男は窓の外を眺め、ニヤリと笑った。

「そろそろ、楽しめそうだからな」


あれから2時間。
私達は、とある部屋の前にいる。
情報管理室。
このドアを開ければ、かなりの情報を手に入れることが出来る。
ただ、何となく、この部屋には入っては行けない気がする。
シャルの第六感がそう告げている。
「どうしたのでありますか、シャル殿?」
リーサが心配そうに尋ねてくる。
「…いえ、何でも無いわ。敵の待ち伏せを想定していただけよ」
そう言って、部屋のドアを開けた。

誰もいない。
あるのは沢山のコンピュータと思われるもの。
「何かしら、此処…警備が無いなんておかしいわ」
シャルは未だ警戒しているが、正直混乱していた。
(こんな大事そうな部屋、警備が薄いはずないのだけれど…)
「コンピュータの解析完了!」
「な…!」

おかしい。
警備どころか、警戒すらしてないというの?
それに、いくら何でもセキュリティを付けていないコンピュータを何故こんな所に置いているの?
セキュリティをかけるまでも無い…つまり、これは囮?
そうだとするなら、速くこの場から離れるべきだ。
時間を無駄にした…!

「シャル殿、こ、これを…!」
だが、シャルの思考は、リーサの一言によってかき消されてしまった。
「何これ?通信履歴…?」
そこには、今までのやり取りが鮮明に記録されたデータがあった。
上から順に眺めて、とある文字を見た時、目の動きが止まった。
そして、驚愕した。

「特別警察……!?一体、どういう事なの!?」
そこには、特別警察とのやり取りが示されていた。

"to X
暫くだな。用件とはなんだ?
from AF"

"to AF
単刀直入に言う。八ヶ崎家を監視して欲しい。どうやら、資質を持っている者が残っていたらしい。
from X"

"to X
日本にも居たか…。分かった。連邦の
総務省警護部要人護衛第一班から一人送っておくよ。
from AF"

"to AF
そういう長ったらしい名前は止めてくれ。協力、感謝する。
悪いが…もう一つ頼んでいいか?
from X"

"to X
構わないさ。昔のよしみだ。俺に出来る事なら何でもするさ。
from AF"

"to AF
頼もしいな。なら、我々が地球に侵攻している、という情報を流してほしい。もちろん、私達以外にこの事は漏らすな。
from X"

"to X
かなり無茶ぶりだが、準備は完了した。今すぐにでも可能だ。
from AF"

"to AF
ありがとう。予定よりも早く済ませてくれて感謝する。これで私の悲願も達成されるわけだ。
from X"

"to X
昔から変わらないそれ、いい加減諦めたらどうだ?最悪、地球が失くなってしまうぞ。
from AF"

"to AF
地球如き、どうって事は無いさ。私は、この為だけに生きてきたような物だからな。君こそ、私と内通している事がバレたら、大変なんじゃないか、委員長?
from X"

"to X
それは昔の事だ。今の私はただの連邦総長。どうなろうが変わらないさ。だが、反乱が起きるのは確実だろうな。私としては、また君と遊べて楽しいがな。
from AF"

"to AF
遊び、か。それも悪くない。
無駄話が過ぎたな。これくらいにしよう。じゃあ、また後で。
from X"

"to AF
ああ、分かった。
from X"

    • *

#34
FAFS
クラディアは暗い廊下を早足で歩いていた。
彼女は病室を抜けて今、連邦総務省の公舎内を歩いている。

「ここですか」

クラディアは見つかったその部屋のドアノブを開けた。
"Sinot acirlan snutok"
(第三情報室)

クラディアはパソコンにログインしてログのデータを参照した。
「特別警察!?、これは…連邦総長? 共産党のデータベースには…乗っていない?」
そういいながらクラディアはさらに調査を進めようとしたがその瞬間ドアが開いた。

「みぃつけた。」
その、洞のような深い暗い目に引き寄せられて行くほかなかった。
「私たちはダメージを受けたのです。」
リーサは言った。

「情報不足でした。 これでは、勝ち目は…」
リーサの顔は青ざめていた。
きっと、恐怖に震えているのだろう。

破壊ではない抹消へ彼らが動くことを。
だが、私たちは後に戻れない。
私には約束がある。

「私は…」
「私は…翔太との約束を守る」

耐え切れなかった。
それがXelkenでも世界を敵にしても同じようなものだ。
もう…誰も…私を止められない。

#35
DaSH
    • *
「…っ。ここで負けるわけにはいかない…!」
シャルは唇を噛んだ。
横ではリーサが今も恐怖に顔を染めている。
かといって、私だけでどうにかなるとは思わない。
ここは一旦、引くべきか…。

そんな考えを巡らせていると、急にコンピュータが動き出した。
「やあ、また会ったね」
「Xelken…!」
モニターに映し出されるXelken。
その顔を見た途端、私の中で何かが熱く燃え出した。
「諸君らは行動が速いな、感心感心。だが、こんなのを見たら、やはり少しは動揺するかな?」
「翔太に…」
「うん?」
Xelkenの話など耳に入ってこない。
私は、ただ…
「翔太に何を言ったの!?」
これだけが知りたかった。
「…単刀直入に聞くね、全く。彼の家族を人質に取る…」
「何でそんなこ…」
私はXelkenに疑問をぶつけようとした。

「とでも言うと思ったか?」

が、Xelkenの言葉によってその疑問はかき消されてしまった。
「え…?」
さっきとは違う種類の疑問が起こる。
頭が混乱する。
今の言葉を真に受けていいかどうかなんて、今のシャルの頭の中には無い。
「私は、彼に家族の無事を伝えただけだ。そんな事は一言も言ってはいない」
「…え?」
どういう事?
家族が…無事?
Xelkenは、翔太の家族を人質にしたんじゃなかったの?
「…信じられない、という顔だな。だが事実だ。彼にはちゃんと、家族の無事を伝えたよ」
Xelkenは続ける。
だが、シャルは、頭がさらに混乱したせいで、話の一割も理解できていないだろう。
しかも、シャルの心は困惑を上回るほどの強い感情が支配していた。
「…じゃあ、翔太は…私達を…騙したの?」
翔太への怒りと、失望。
「翔太は……私達に嘘をついたの!?」
やり場のない怒り。
叫ぶ以外、方法なんて無かったと思う。
「…落ち着きたまえ。私が彼に話した事は、両親が人質に取られたこと以上の、残酷な話だったのだから…」
Xelkenは遠くを眺めた。


「…なあ、オッサン」
「その呼び方はよせと言っただろう」
二人が会話している。
ちょうど、休憩時間といったところだろう。
「あいつの言ってた事、本当なの?」
少年は聞く。
「何故それをわしに聞く?」
老人は答える。
「…あんた、知ってんだろ。俺をずっと見てたんだから」
少年は表情を固くして尋ねる。
「…………」
老人は黙っている。
「答えてよ」
少年は問い詰める。
「……事実だ。正直わしもびっくりしたがな」
老人はついに諦めたのか、間をおいてから答えた。
「…そっか」
少年は、やはりそうか、という感情と、受け入れたくない、という感情が混じって複雑な心境だった。
「…そろそろ、続き、やろうぜ」
少年は、そんな考えを捨てようとして、老人に提案する。
「…いいのか?」
老人は尋ねる。
「…ああ」
少年は答える。
と、同時に、彼の姿が変貌する。
全身を炎に包み、腕や足は鎧を纏ったような姿になる。
額には黒い紋章が浮かび上がる。
先程とはまるで違う、威圧感を持った姿。
「ごめんな…シャル…皆…」

    • *

#36
FAFS
    • *
シャル、クラディア、リーサ…
彼女ら、そしてその背景である別の世界は僕を巻き込んできたと思っていた。
だが、実は僕が巻き込んでいた。

Xelkenの組織の奴が言っていたのはこういうことだった。
僕たち地球上にいるアフの子孫、それを巡って戦争直後ながらXelkenと連邦は身を削って戦っていた。

僕たちのせいで彼ら彼女らを巻き込んでしまった。
僕は、まずやり遂げなくてはならないことがあるんだ。
「ようこそ、地獄の門へ。 なぁんてな。」
黒マントの男は翔太を嘲けた。

「さっさとしてくれ、時間が無いんだ。」
「ああ、恋人が来る前に…な」
黒マントは翔太を嘲笑すると瞬間翔太は黒マントの後ろ髪を掴み顔を近づけて言った。

「さっさとしろ、さもなきゃ灰になりたいのか。」
「はっ、勝手にしろ。 どっちのみち、俺はケートニアーだぜ。」
そうだった。
ケートニアーには攻撃を受けても灰になっても再生するんだった。

ああ、ここに入ってどうすればいいんだ。
僕はどうなるのだろう。
考えても仕方が無い、彼女らをもう一つの世界を救うため。

「勝手に動いてもらっちゃ困るね。」
男がクラディアに言う。
クラディアはいすに手足を縛られて身動きが出来なかった。

「私らだって君をすくいたいと思っているよ。でもな、もう手遅れなんだな。」
男は銃を持ってクラディアに向けた。

「さようなら、クラディア。 無の世界でまた会おう。」
そう男が言い終わる前にドアが勢い良く開いて黒服の男たちが入ってきた。
男はクラディアに向けていた銃を男たちにむけて撃ったが反応は乏しいものだった。

「銃を下げろ。 ケートニアーじゃあるまいし無駄な抵抗はしないことだな。」
「ちょっと、だけだ眠ってもらおう」
クラディアを監禁していた男は入ってきた男たちのWPによって眠らされた。

「ラヴュール…なんでここに」
「なんでって、君も気づいたんだろう。 あれに」
「…」
「僕たちはいずれ抹消される。 それまでにやらなければならないことがある。」

もう分かったんだろとラヴュールと呼ばれた青年はクラディアに呼びかける。

「連邦の上層部とXelkenの上層部が癒着していました。」
「ほう、んで?」
「彼らは双方の軍兵の消耗を避けるためにDAPE以降努力してきました。 秘密会談が増えたのはそのせいです。」
「なるほどな」
「そして、Xelkenが地球を侵攻すると知った連邦特別警察は各部上層部レベルでこの情報を秘密情報としました。そして、連邦の文化保護の影響下にあるのに連邦はちっとも軍や特別警察の類を大量に送り込まなかった。結果、地球は侵攻されました。連邦軍が抑えられるレベルなのに抑えませんでした。Xelkenは本気を出してません。」
「君らしくないな、本気を出してないなんて言い方は。」

クラディアは顔を背けて言った。
「ええ、彼の影響かもしれませんね。」
「このままだとどうなると思う?」
「地球はXelkenのものとなり連邦はその事実を隠蔽します。」

「クラディア」
銀髪の青年は少女に尋ねた。

「何でしょう」
「私たちの仕事はなんだ?」
「公共の安全を守り」

「違う」
ラヴュールは言い切った。

「私たちの仕事は連邦に付き従い。 連邦の犬となることだ。」
「では、私たちは連邦に従いこの事実を隠蔽しろと?」
「ああ、連邦を愛するものならな」
「それでも、人間ですか?」
クラディアは憤怒に染まった声で言った。
瞬間、ラヴュールが壁を殴る。
「だがな…クラディア、私は…特別警察の職員であっても今の連邦は愛していない。」
歩き出しクラディアの顔を覗き込んで言う。
「自分の利益だけに動かされ慈悲もクソッタレも無い。2000年人権宣言など何処へ行ったやら。我等はアフの子孫を守りこの無様な争いを終わらせる。奴らを上層部から引きずり落として無の世界まで引きずって行ってやる。」
「あちらで言う死神ですかね。」
「ふっ、もしかしたらその死神よりもたちが悪いのかもな。」
「行きますか、ラヴュール。」
「助けに行くぞ。」
    • *

#37
DaSH
    • *

「…その前に、一つ良いですか?」
クラディアは、早速翔太の元へ行こうとしていたラヴュールを呼びとめる。
「…なにか?」
ラヴュールは少し苛立ち気味に言う。
だがクラディアはそんな事は気にせずに続けた。
「翔太の居場所、分かるんですか?」
「………」
ラヴュールは黙り込む。
クラディアはやはり分かっていないのだと思った。
「…やはりそうですか。ならば、まずは居場所の確認を…」
「…場所なら分かっている」
「え?」
ラヴュールは深刻な顔つきで言う。
「なら、その場所を教えてくださいませんか?」
クラディアは尋ねる。
しかし、ラヴュールは首を振る。
「駄目だ。私達が行けるのは彼の居る場所の1km後方までだ」
何故か顔が恐怖に歪んでいる。
「どういう事ですか?」
クラディアは少しだけ身を引いて尋ねた。
「…私達は、彼の邪魔をしてはならない。だから、私達が出来るのは、彼を影から護ることだけだ」
彼の顔色がどんどん悪くなっていく。 
「ちょっと、どういう事ですか!?もう少し詳しく教えてください!」
クラディアは、苛立ち半分、興味半分でラヴュールに言った。
「…君が少しでも興味本意で聴いているなら、話す事は出来ない。私に"覚悟"を見せたら教えてやる」
ラヴュールはいちいち遠回しに言ってくるが、これは彼の癖だ。
だが、今回は、いつにも増して回りくどくなっている。
それだけ隠蔽すべき事だというのだろうか?
「…"覚悟"ですか。確かに、私には少なからず興味本意があります。しかし、私は、いえ、私達には、翔太を護る義務があります。だから、どのような形であれ、"覚悟"を示して見せますよ」
クラディアは決意を込めて言った。


「…ここは…何処…?」
目が覚めたら、そこは闇の中だった。
何も無い、完全な無。
翔太がここに入ってから、既に1日は過ぎているだろう。
しかし、今の今まで、翔太は寝たままだったのだ。
「何も無い……今は何時だ…?僕は、一体どれだけ寝ていたんだ…?」
何もわからない。
辺りを埋め尽くす闇が、翔太の心を一層不安にさせる。
「…くそ…!何なんだここは……!」
あの時、黒服や爺さんが言ってた"覚悟"っていうのはこの事だったのか…
そして、ふと翔太は気づく。
あの二人がいない。
一緒に入ったと思っていたから、いて当然と思っていたのだが。
ここには翔太しかいない。

しかし、そんな闇を照らすかのような、一筋の光が現れる。
翔太は思わず目を細める。
"アフの子孫よ。お前に覚悟があるのなら、これを授けよう。"
何処からか聞こえる声。
そして、その声が消えた途端、一筋の光だったものが形を変え、紅い珠に変化した。
翔太はそれに触ろうとする。
しかし、珠は翔太を受け付けようとしない。
「…っ!」
翔太が珠に触れた瞬間、ハンマーで頭を殴られたような衝撃が翔太を襲ったのだ。
しかし、翔太は痛みをこらえ、なお触れようとする。
すると、今度は身体の奥深くから湧き上がってくる何かを感じた。
先程とは違う種類の苦痛。
その何かに翔太は恐怖した。
この何かは、触れてはいけない禁忌のような気がする。
しかし、ここまで来た以上、翔太に引き下がる事は許されなかった。
"アフの子孫よ。お主には覚悟が足りぬ。お主はまだ、心の何処かに逃げ出したいという気持ちがある。それを上回る覚悟が無いならば、これを受け取る資格はない。"
またしても声。
翔太は、ただ聞いている事しか出来なかった。
    • *

#38
FAFS
    • *
「本当に知りたいんだな。」
「はい。」
ラヴュールは窓の外をのぞきながら話し始めた。

「彼らは正義だ。」
「え?」

正義?まさか、今まで戦ってきた敵が正しいとでも言うの?

「彼らは、Xelken.valtoalではない。Xelkenの反戦派だ。」
「何故、彼らは私たちと戦っているのですか?」
「君たちが戦っていたのはvaltoalだ。 めんどくさいが反戦派は連邦の正式ルートを通らず翔太君を連れて行きたかったようだね。」
特警の情報網からすでに彼の情報も流れていたのかとクラディアは分かったので
「それは…どうしてですか?」
「連邦に気づかれたくなかった。かな、連邦上層部も軍上部も特別警察上部も腐っているから一緒に動けば消されるのが分かっているはず。だから、翔太君を呼びつけた。」
「何故彼が?」
「彼の力を利用して連邦とXelken.valtoalの上層部を消し去る。Xelken.valtoalから彼らを守るのが私たちの使命だ。」
「…」
翔太の護衛も全て仕組まれていたと言うことか。

「じゃあ、僕は最後の仕事があるから。」
そういって、ラヴュールはドアから出て行った。

瞬間銃声がした。
クラディアがドアを開け廊下を見ると銃を持って崩れ落ちたラヴュールの姿があった。手元にクラディアが共に写った写真があった。

「ラヴュール…疲れたのですね。 後は私たちに任せてください。」
そういってクラディアは歩き出した。
    • *

#39
DaSH
    • *
あれから既に3日経過している。
しかし、翔太は未だにあの珠に触れていない。
「……っ。まだ、足りない……」
翔太は色々な方法を試した。
しかし、珠の反応は全く変わらないのであった。
蓄積される疲労。
それらは翔太を身体的にも精神的にも蝕んでゆく。
「……。こんな事、やってる意味あるのか…?俺は一刻も早くシャル達の所に行かなくちゃいけないのに…!」
しかし、一度入ってしまったら抜け出せない。
翔太は途方に暮れていた。

(俺は、どうしたいのだろうか…) 

次第に、自問自答を始める。

(シャル達の力になりたい?確かに、それはそうだ。ただ、何か足りない……)

(その為にはこの珠を使う必要がある……本当に?あの人達が嘘をついている可能性はないのか?例えば、あの人達は実はスパイとか…)

(……そもそも、こんな事になったのはアイツ等のせいだ。俺はなにも悪くない。被害者だ。いきなりこんな事に関わって、覚悟がどうとか言われても、決められるわけないじゃないか…!)
    • *

#40
FAFS
    • *
リーサとシャルはクラディアの連絡を受けていた。
「それで、翔太は…」
「そういうことです。 出来るだけ人を集めて翔太を守らないと」

シャルは基地の会議室を見渡して叫んだ。
「皆!聞いて! 翔太とXelkenを守らないといけないの!」
懐疑に駆られながらも兵士たちはシャルの話を聞いていた。

会議室にクラディアが入っていたころシャルの説得は終わっていた。
「本日の発表で翔太たちの拠点に攻撃をする情報を得ました。」
「本当に?」
「はい、連邦自身が広報しています。」

いまだにメンバーが少なく集まって居ない。

『西防衛線から12Aまで準備完了。』
『東はまだ完了せず。 開始3時間前には間に合うようにします。』
兵士たちの声が無線から聞こえてくる。

「連邦が入ってくる時刻は1200です。それまでに完成させてください。」
クラディアは立ちつくしていた。
疲労がたまっている。
だが、時間までに準備を済ませなければならない。
連邦がいつ攻めてくるか。
翔太がいつ連邦上層部を殺せるか。
いつ、連邦軍の攻めて来たほうを武装解除できるか。
問題は色々あるがやるしかない。
    • *

#41
DaSH
    • *
シャル達は未だ待ち続けている。
翔太の帰りを。
連邦もそろそろ動く頃だろう。
翔太はまだ戻らない。
彼は今、どんな事をしているのだろう…。
シャルは不意にそんな事を思った。
しかし、シャルはそれを振り払い、また元のように待ち続けた。


「………はあっ!」
翔太の手に力が入る。
彼の手が珠に触れようとした。
「……っ!」
またしても悪寒。
だが、今の翔太を止めることはできない。
何故なら、彼は今まで触れようとしてきた物の真髄を理解したから。
そして、それを理解してなお、受け入れる覚悟が出来たから。
それは、すなわち_

人間で無くなる覚悟が出来たから。

「うおおぉぉぉぉおお!」
そして、遂に翔太は珠を手にした。

「良くやったな。このまま時が過ぎるだけかと思っていたが……大した奴だよ、お前は」
誰かが語りかける。
「そいつの使い方は……まあ、何となくわかるだろ。注意する事は、それを使えるのは一度きり、という事だけだ。後はお前の判断に任せる」
使い方の説明がざっくりしていた事は敢えてスルーし、彼は礼を告げる。
「……ありがとう。それじゃ…行ってくる」
そう言って、彼は外へと駆け出した。
    • *

#42
FAFS
    • *
翔太たちは倒れぐったりとしている連邦軍ケートニアーを尻目に市街地―共産党総裁・Xelken.valtoalの上部を殺すために歩いていた。
「ここが共産党本部か。」
翔太の前には目が届かないほどの高さのビル―共産党本部―があった。
「とりあえず、入るか。」
自動ドアが開くと目の前に連邦軍が数人銃を構えていた。
「撃て!」
号令と共に多くの銃弾が翔太と黒服の体を貫通する。
しかし、不思議にまったく痛くは無かった。
「ケートニアーをこれくらいで足止めしようとはね。」
黒服が手を振ると兵士たちはいとも容易く壁に叩きつけられた。
「大丈夫だ、死にはしない。 ケートニアーだからな。」
そういった黒服の後を翔太は追いかけていった。

「姉さん、いやクラディア! 貴様が死ねば最後の一つが揃う!」
シュカージュはこんな風な謎の言葉を吐きながらクラディアに向けて氷で串刺しにしようとするがあと一歩のところで当たらず地面に当たっては衝撃で砂煙が舞っていた。

「シュカージュ、あなたはXelkenなんですか?」
自分に向かってくる氷を避けながらシュカージュに聞く。
「違う~!あんな極右組織の思想に飲み込まれるわけが無い!だから、最後に貴様を殺して力を得る!」
時間稼ぎでどれくらい持てるか分からない。
翔太が早く共産党総裁とXelkenの上部を殺して加勢してもらわないと勝てない。

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最終更新:2019年12月26日 11:39