真島誠&セイバー ◆CKro7V0jEc




 池袋西口公園。ここが俺の庭。
 この庭に溜まっている俺たちはIWGP、池袋ウエストゲートパークと呼んでいる。なんでって、その方がカッコいいから。
 まあ、今では、このIWGPもテレビで有名。ワイドショー。仰々しい字体。表情も言葉も的外れなコメンテーター。
 マスコミの奴らは、IGWPに溜まる奴らは行き場のない若者だと思っているらしい。
 確かに、俺は学校も行ってないし、定職を持っているわけでもないし、平日の昼間も仲間とブラブラ遊んでいるだけだ。

 だが、俺たちは行き場がないからここにいるんじゃない。
 このIWGPを愛しているから俺たちはここをたまり場にしてるんだ。
 ここが俺たちが最後に辿り着く「行き場」。だから俺たちはここにいる。




 ────じゃあ、ここまで、一言で言うと、ハイ!





 ────ブクロ最高ォォォォォォォォーーーーーッッ!!!





 ……。
 …………。
 ………………。
 ……………………おぅ。



 …………だいたい、俺は仕事がないと言っても、収入がまるっきりゼロっていうわけじゃない。
 池袋は事件だらけの街だ。誰も彼もが乾いてる。人が多けりゃ多いだけキメてる奴もいる。ヤクザも大量にいる。おまけに警察がほとんど役に立たない。
 だからこそ、たまに俺を頼ってくる「依頼人」なんかが現れる。
 警察ではどうしようもないような事件や面倒事を抱えた奴が、たまに俺を頼って金をぶら下げてやって来るんだ。
 いつの間にか、俺は≪池袋のトラブルシューター≫と呼ばれるようになった。俺もよくわかんねーけど、まあ探偵みたいなもん?

 その日はまあ、何のトラブルも舞い込んでこないただの暇な一日だった。
 これが俺にとっても普通なんだけど、まあ一応、上のトラブルシューターの話は俺の紹介って事で。俺は本位じゃないけどこれを一応全部紹介しなきゃならないんだろ。
 んで、家の手伝いをするのも面倒で、真夜中のブクロをぶらぶらしていたら、やがて俺は吸い込まれるようにIWGPに辿り着いた。

 横っちょでGボーイズが騒いでいる。
 Gボーイズっていうのは、池袋の黄色の若い恰好のギャングたち。いま流行りのカラーギャング。
 ……一言で言うと、ブクロで一番迷惑な奴ら。IGWPで溜まってる行き場のない若者は多分こいつらの事。
 でも、気の良い奴らでみんな俺のダチ。特に、こいつらのボス・崇とは、ずっと昔、ガキの頃からのダチだ。


 そのGボーイズどもが普段通り何やら騒いでる横で、俺はのんびり、ベンチに寝転がって空を眺めた。
 まあ、別に星を見るのが好きなわけじゃないけど。どっちかというと、……そうそう、横になるのが好きなんだ。
 そろそろ俺たちはピンクの看板よりも目に良い光を見る事を思い出した方が良い。
 ん、俺カッコいい事言った?


 まあ、それで、その後、俺、もっと重大な事を思ったわけよ。



 ────あれ? なんで月が赤ぇの……?



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



「……っつーのが、まあ俺がここに来るまでの紹介? みたいな?」

 真島誠。彼がおよそ80年後から≪セイバー≫大神一郎を呼び出したマスターである。
 彼は真正面からセイバーを見つめている。まるでお見合いか、にらめっこだ。
 お陰で、セイバーもここに召喚されてすぐに、上から下までざっと彼の身体的特徴を眺める事ができた。

 マコトは長身で、外国人のように整った顔立ちだ。大神の時代ならば──その感覚が彼らの時代でも通用するならば、美男子であろう。
 男性の舞台役者──いや、この時代ならば「アイドルグループ」の一員でも全くおかしくない。
 しかし、それでも、どこか表情が硬く、初見だと凶悪な顔付にさえ見える。
 あまり飾り気のない灰色のパーカーにキャップ帽、という出で立ちは、セイバーにはあまりにも馴染みのない姿だった。
 ファッションはこれから随分と変わっていくらしい。「モダンガール」も、もはや誰も知らない死語だ。「ハイカラ」は「ナウい」へ。時代を感じる。

 パーカーもキャップ帽も、一応召喚の際に頭の中にインプットされてはいるが、やはりセイバーとしても目は慣れない光景だ。
 実はこれはマコトの年齢からすればやや幼いくらいの恰好なのだが、セイバーはそこまではわからなかった。
 この時代のこの年齢の人間はだいたいこのような恰好をしているのだろうと思った。

「他に聞きたい事あるか? えっと……セイバー」

 さて、マコトはセイバーにとっても調子が狂う相手だが、幸いにも「悪いやつではない」らしい。
 セイバーにとって大切なのは、自分のマスターが悪人ではないという事実である。
 ──彼が善良な市民か、あるいは悪か。それ以外ならば、あとはどんな立場の人間でも魔力の強弱も彼にとっては関係はない。たとえどれだけ弱くてもセイバーが守って見せる。
 マコトは、一言で言えばバカ(セイバーはそう思っておらず、あくまで「エリカくんとかと同じタイプ」とかお茶を濁したような表現で彼を表現するだろう)だが、それも裏を返せば純粋な人柄の男だ。
 目的の為に願いを殺してはならないという程度の良心は持っているだろうし、少しでも悩みを持った人間を放っておけない優しさを持っている──だから、池袋では彼は「バカ」と呼ばれているのだが。

 そんなマコトが、セイバーにとって、「最適」と呼べるマスターであった。
 自分の願いに屈しない生まれながらの正義感が彼の中に眠っているのを、セイバーはその胸で感じている。

「……いや、ありがとう。君たちの帝都の事が、住んでいる人の口から聞けただけで嬉しいよ」

 セイバーは、特にマコトの砕けた若者言葉に眉を顰める事もなく、そう返した。
 マコトたちの帝都がどれだけ平和であるのかを、一市民の言葉で聞きたかったのである。
 また、ここに来るまでの経緯を確認し、マコトが意識的にここに来ようとしたわけでもなさそうな事を知る事ができた。
 マコトに説明を要したのは、その為であった。

「いやいやいや。ありがとうっつーなら、こっちの台詞じゃねえかな……。いやー、マジで感動だなぁ。
 セイバーがテートを守らなかったら俺たちのブクロもなくなってたわけだろ?
 崇たちもGボーイズなんか解散して、低俗……低俗……低俗過激団? みたいな平和守るカッコいいチーム作ればいいのに」
「あ、ああ……。ちなみに、帝国華撃団なんだけど」
「すいません。えーっと、テイ……テイ……風俗過激団?」
「帝国華撃団」
「あー、それ! あはは……」

 マコトは気まずそうに笑って濁した。
 ともかく、このマコトという男は、彼なりにこの池袋を愛している。ここで会ってから、「ブクロ」と呼ばれる未来の池袋を楽しそうに話してくれている。
 この時もまた、マスター・大神一郎が太正時代に活躍した(マコトたちの歴史では「大正時代」が正しいのだが、マコトの学力ではそもそも「タイショウジダイ」がどんな字を書くのかおそらく知らないだろう)帝国華撃団の隊長である事を知り、純粋に喜んでいるのである。

 当のマコトは、軍人といえば人間と戦うイメージで好かなかったが、何でも大神一郎は降魔とかいう化け物と戦っていたらしいと聞いて納得したらしい。
 一般市民のマコトがここまでの事象・事実どの程度信じているのかは全くわからないが、とにかくただならぬ状況であるのは彼も理解している。

「……しかし、一応言っておくけど、俺たちの住む世界とマスターの住む世界は別物だ。俺たちは君たちの池袋を守ったわけじゃない。君たちの帝都を築き上げてきたのはまた別の人間で──」
「別にいいよ、それでも。どういう理屈だか知らねえけど。まあどんな世界でも、セイバーが俺たちのブクロを守ってくれたって話だけで、こっちは焼きそば十杯はいけんだよ」

 どこまでも純粋な男である。焼きそばのくだりは全く意味がわからないが。
 ……まあ、ある世界の帝都が2000年頃まで平和を保っている事実はセイバーとしても喜ばしい。
 異世界の話だとしても、こうして、未来の帝都の人々から、「英霊」として褒められるのも照れる物がある。
 と、ここでマコトは少し態度を改め、少し丁寧な口調になった。

「……あ……。それじゃあ記念にサインもらえます? このパーカーの上でいいんで」
「サイン……?」
「ブクロを守った英霊のサイン」
「はは……照れるな」

 セイバーは、ギザギザ頭を掻いた。
 マコトも少しそちらに目をやっている。ワックス等で固めているわけではなさそうで不思議であった。

「あれ? もしかしてサイン書いた事ないっすか?」
「そうでもないよ。たまに俺のサインを欲しがる人もいたんだ。帝国歌劇団ではモギリだったんだけど……何故か有名になってね。まあ、滅多に機会はなかったけど」
「そうっすか。あー、でもパーカーの上に書くと真名バレちゃうか……。それじゃあ、パーカー脱ぐんで、このシャツの背中んとこお願いします」

 マコトから差し出されたサインペンで、セイバーは「大神一郎」の名を書いた。
 書きなれた様子で滑らかにペンがその名を記すのをマコトは背中で感じた。マコトのシャツには色んな有名人の名前が記されている。たとえば、川崎麻世とか川崎麻世とか川崎麻世とか。
 さて、その川崎麻世のサインだらけのシャツに大神一郎のサインが加わって、これで満足……といった様子である。

 そこまでの挨拶作業を終えたところで、マコトにも、一つだけどうしても気になる事があったようで、これからそれを大神に告げる事になった。

「で、親睦を深めたところで早速一つ言いたいんだけどさぁ──」

 マコトは息を大きく吸う。
 そして、飲み込んだ分、大声で叫んだ。





「────ここ渋谷じゃん!! だって、あれ109じゃん!!」





 ──二人の目の前で、かの有名な渋谷のシンボル109がこちらを見下ろしている。セイバーも、109の存在は召喚された時に辛うじて知っている。
 マコトが愛する池袋とは対をなす街が、ここ渋谷なのである。
 マコトも別に渋谷が嫌いというわけではないだろうが、渋谷と池袋ならばやはり池袋派である。池袋こそが彼の故郷、彼の庭、彼の寝床。
 IWGPではないにせよ、そこがサンシャインシティならまだわかる。しかし、あれは109だ。

「バットマンといえばゴッサムシティ、スパイダーマンといえばニューヨーク、じゃあマコトといえば? ……ブクロだろ!? ブクロ行こうぜ!? なぁ、セイバー」
「はぁ……」
「つーか、本当のブクロに帰りてえ……。母ちゃんの焼きそば食いてえ……。ぶっちゃけ、ここどこなんだよ……」

 気づけば、もうマコトは泣きそうな顔で項垂れていた。
 月の裏側。一般市民にとっては、遠すぎる旅路。三秒でホームシックになってもおかしくない。三秒は自分が置かれている状況を正確に理解し、信じるに至る時間だ。
 彼はどうやら、あまりにもバカすぎて、今更その三秒が巡って来たらしい。

 マコトの性格を悪口紛いに説明しておくと、「マザコン」、「ブクコン(池袋コンプレックス)」、「焼きコン(焼きそばコンプレックス)」である。
 池袋で最強の男である彼も、人の数倍純朴で、郷土愛が強い分だけ、そこから離れるのを嫌う人間なのである。
 ホームシックの度合いは人よりも激しい。

 その様子をセイバーは察した。

「……マスター、いや、マコトくん。俺の使命は、君を無事に生きて元の池袋に返す事だ。
 令呪に命じられるまでもなく、俺は君たちを守ると決めている。サーヴァントとしても、友人としても、何でも命じてくれ
 たとえ仮初でも、俺は帝都に住まう人間を傷つける者を、そして帝都を利用する者を許さない。俺と共に生きてここから帰ろう、マコトくん」

 セイバーは優しい声でそう言う。
 悪を蹴散らして、正義を示す──それが帝国華撃団・大神一郎の生き様である。
 マコトのように帝都の聖杯戦争に巻き込まれた人間は全て守る。
 そして、マコトも彼ほど露骨ではないが、困っている人間を放っておけない性質の人間であり、たとえ仮初でも池袋が傷つけられていくのを許せない男であった。
 しかし、それでもこう叫ばずにはいられなかった。
 あの時、空なんか眺めてしまった自分を呪いながら────




「めんどくせえええええええええええええええええええええええーーーーーーー!!!!!!!」




【クラス】
セイバー

【真名】
大神一郎@サクラ大戦

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運B 宝具B

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:B
 大抵の動物を乗りこなしてしまう技能。幻想種(魔獣・聖獣)を乗りこなすことはできない。

【保有スキル】
カリスマ:A
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 特に女性に対して強い効力を発揮する。
呪縛:D
 女性が風呂に入っていると体が勝手に風呂場の方に動いてしまう保有スキル。
 魔力、又は強い意志で抑え込む事ができる。

【宝具】
『霊子甲冑』
ランク:A~D 種別:対人、対獣、対機 レンジ:1~5 最大補足:1
 所有者の霊力を引きだすシルスウス鋼製の甲冑。現代ではパワードスーツ、あるいは巨大ロボットの中間にあたる(サイズは3米ほど)。
 大神機は銀色。二刀流を装備している。
 光武、光武改、光武二式、光武F、光武F2、神武、天武など、あらゆる機体を繰った伝説が残っているが、いずれの霊子甲冑が宝具として召喚されるのかは不明。
 この宝具によって彼のパラメーターは一時的に底上げされる。

『狼虎滅却・震天動地』
ランク:EX 種別:対界 レンジ:∞ 最大補足:∞
 帝都と巴里、二つの街を守った時にたくさんの人々から受けた信頼と絆こそが大神一郎にとって最大の宝具である。
 ここでも彼が受けた信頼の数だけこの宝具は強くなっていく。ただし、信頼値が低ければ使えない。
 また、特定人物との信頼と絆を深めた場合、それはこの縮小版である『合体技』として発現される事もある。

【weapon】
 神刀滅却
 光刀無形

【人物背景】
 太正十二年から太正十六年にかけて帝都、巴里で活躍されたとされる軍人。階級は少尉→中尉→大尉。
 海軍士官学校を主席で卒業。その後、銀座・大帝国劇場にモギリとして配属された。太正十六年に大帝国劇場の支配人となる。
 (公的な記録で残っているのはここまで)

 これらはあまりにも不自然な記録であるが、実は大帝国劇場が普通の劇場であったのは表向きの話。
 大帝国劇場は、秘密防衛組織『帝国華撃団』の拠点であり、舞台で踊る帝国歌劇団のスタアは全員、霊力を有している「花組」の戦士なのである。
 大神一郎は帝国華撃団花組の隊長として、彼女たちの信頼を勝ち取り、黒之巣会や黒鬼会と戦い、これを迎撃。
 二度の帝都防衛に成功した後は、その功績を買われて巴里に派遣され、巴里華撃団の隊長として現地でまたも首都防衛に成功している。
 これらの功績により、二十四歳にして帝国華撃団総司令にまで出世する。
 また、帝国華撃団及び巴里華撃団の十三名の女性隊員は殆ど、彼に対して恋愛感情を抱いていたとされ、他にも彼に好意を持つ女性は数知れなかったと言われている。

【サーヴァントとしての願い】
 人々を守る。マスター・マコトの護衛。

【方針】
 マコトのマスターとしてマコトを護衛する。
 力なき人々の剣となり、正義を果たすのが大神一郎である。
 ただし、帝都を脅かす降魔や悪は容赦なく迎え撃つ。


【マスター】
真島誠@ドラマ版池袋ウエストゲートパーク

【マスターとしての願い】
 帰りたい。

【weapon】
 なし。

【能力・技能】
 すぐれた行動力、体力、機転。
 ボウリングが物凄く上手。

【人物背景】
 池袋に住んでいる無職の青年。実家は果物屋。しかし、池袋で起こるトラブルを解決する「トラブルシューター」として信頼されている。
 本人にトラブルシューターとしての自覚はなく、面倒事に巻き込まれるのは嫌う。そのため、殆どの依頼は断るが、友人や人の良い相手に頼まれてやむを得ずいくつかの依頼を受けている。
 池袋を愛しており、中でも池袋西口公園を拠点としている。カラーギャング「G-Boys」にも信頼されており、リーダーであるキング(安藤崇)とは幼い頃からの親友同士。
 ストラングラーの事件や池袋カラーギャング抗争を解決した事によって最終回後は表向きにも有名になっているが、G-Boysが存在している時間軸の頃である為、少なくとも中盤ごろの参戦であると思われる。
 ちなみにインポテンツ。

【方針】
 まずは池袋を目指す。
 つーか帰りたい。

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最終更新:2014年12月21日 15:16