真山徹&ホルダー ◆CKro7V0jEc




 真山徹。立教大学卒。
 現職、刑事。階級、警部補。部署、捜査一課弐係。
 性格、粗野でいい加減。
 犯罪者を憎み、どんな事情を持っていたとしても犯罪者を憎悪する。
 相棒の名は、柴田純。

 そんな男が聖杯戦争に巻き込まれた。
 彼は聖杯ならば叶えられる強い願いを持っていたが、同時に、彼は殺人への憎悪も持ち合わせていた。
 それは刑事としてではなく、妹を殺された一人の人間として。

 妹が殺された。
 浅倉という男に輪姦され、殺された。しかし、奴は釈放された。
 そいつを捕まえたい。

 ……たとえ、殺された妹は蘇らないとしても。
 いや、蘇らないからこそ、真山は殺人者・浅倉を憎み、執着しながら生きてきた。

 浅倉が生きる部屋を監視しながら、浅倉に関わる事件を追い続けた。
 浅倉を憎む事が今の真山の生きがいであり、刑事としての人生とまでなっていたのである。

 刑事である真山は、妹が浅倉たちに輪姦される姿も、無残な死体も……捜査資料として何度も繰り返し再生した。
 その光景は、既に真山の脳裏で再生できるほど鮮明な物に、いつの間にか変わっていた。
 繰り返すうちに悲しみは癒え、代わりに憎しみばかりが日々強くなる。

 浅倉……お前を、殺したい。

 その憎しみもまた、否定はさせない。
 ゆえに、この聖杯戦争のゲームを──。



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



「ねぇねぇ、真山さーん」


 真山が呼び出したサーヴァントは、真山と同じく警部補という階級の女刑事であった。
 名前は、当麻紗綾。
 部署は、警視庁公安部未詳事件特別対策係。京都大学理学部卒。
 そんな経歴を聴くと、「英霊」という神々しさとは対照的で、厭に身近な存在に感じてしまう。
 いや、もうこれはれっきとした人間だ。真山と同じ、普通の血の通った人間に違いない。
 京都大学卒業、というキャリアが鼻につくものの、これがまた、例によって、「高学歴で警察に入った奇妙な女」という特徴の人物には真山にも心当たりがある。

 ……そう、真山の相棒、柴田である。ほとんど、この女は柴田の生き写しに近いと言っていい。
 特に、その臭いだ。およそ女性らしくない臭いを発し、たとえ美人でも生理的嫌悪を催す。
 柴田も風呂に入らない性格で頭が臭かったが、この女はそれを踏まえたうえで、にんにくの臭いがする。おそらく餃子を食べたのだろう。
 見てくれだけで言えば美人と認めざるを得ないが、実際に対面した男性の九割が不快感を催すと言っていい。

 柴田に紗綾と、こんな人間を持ってくるとは、警視庁も深刻な人材不足であるように感じる。それとも、人柄より学歴重視って奴なのか。
 しかし、それ以上に深刻な人材不足なのは、むしろ「英霊」という役職の方であろう。

 サーヴァントは、マスターの戦闘力を補う存在であるべきであるはずだ。
 このサーヴァントは、到底、マスターである真山の上を行く存在とは到底思えない。

 今のところ、真山がこの女に負けているのは学歴だけだ。階級も同じ、窓際部署なのも同じ、体力や身長においては真山の方が上だろう。
 ……何せ、この紗綾という女、左腕を怪我しているのか、ギプスで固定しているではないか。
 そんな有様で伝説の闘士たちと戦うのは難しい。
 世界には、英雄として伝えられる者は多数いたような気がするが、真山が思っているほど多くないのだろうか。


「真山さんもぉ、刑事なんすよねぇ~」

「ああ、そうだが」

「じゃあ聞きますけど、捜査一課弐係ってどんな部署なんすか。教えて? 教えて?」

 作ったような微笑みで、しつこく聞いて来る紗綾。
 そんな姿に、言いようのないうざったさを感じながら、あからさまに嫌そうに皮肉を込める。

「未解決の事件を継続捜査する部署だ。警察の誰も手をつけなくなった時効間近の事件を捜査して、犯人を探す。
 こう見えても結構、解決したんだ。……それよりか、未詳事件特別対策係の方が遥かにヘンだと思うがね」

「ええ~、どうしてですか」

「詳細不明の事件に特別な対策を施す部署、と書いて未詳事件特別対策係。そりゃ一体どんな部署だよ」

 真山は半分くらい興味がなさそうだが、皮肉の続きとしてそう答えた。
 それを言うなり、紗綾の方は嬉しそうに顔を歪めた。天使のような笑みだが、反面ではどこか邪悪にも見える。
 笑顔を作るのが下手な女だ。そこが柴田とは違う。柴田はもっと自然に笑う。こいつは自然に笑えない。

「聞きたい? 聞きたい?」

「あー、やっぱりいいわ」

「……チッ」

 紗綾は表情を変え、不快そうに舌打ちをする。不快なのは真山の方だ。
 しぐさ、臭い、それにこの舌打ち。……まったく、何もかもが不愉快な女である。柴田以上に可愛げがない。
 紗綾としては、よほど話したかったのだろう。しかし、紗綾は訊いてもいないのに続きを話し出す。

「未詳っていうのは、科学の常識を超えた超能力による不可能犯罪を解決する部署なんですよ」

「税金の無駄」

 ばさっと切り捨てる真山であった。特殊な部署である未詳の事を聞いても、全く動じない真山である。
 オカルトの領分としか思えない不可能犯罪なんかに税金を導入している暇があるなら、人員を一人でも増やした方がいいのではないか。
 変人ばかりの窓際部署や、この女を見ていると尚更そう思う。

「それが、そんな事もないんですよね~。実際、こっちも弐係に負けないくらい活躍してますし」

「そりゃ良かったな。責任者の顔を見てやりたいね、一体どんな顔して仕事してんだか」

「それが、愉快なおじさんなんですよ。野々村さんって言って……」

 真山が顔色を変えたのはその時だった。
 野々村、という愉快なおじさんの刑事には、真山も一人心当たりがあるのだ。
 いや、そのくらいの共通項を持つ人間ならば数名いてもおかしくないが、刑事としての勘で妙に気になったのだ。

「あー……それちょっと待て」

 やっと、真山が本心から会話に参加する瞬間だった。
 しかし、野々村の下の名前がわからず、とにかく、野々村の特徴として思い出せるものをぱっと頭に浮かべ、その単語を乱雑に吐き出した。
 それが「野々村」であるなら、その言葉で伝わるだろうと思ったのだ。


「柿ピー」

「それ!」

「雅ちゃん」

「それ!」

「やっと議員になれたんです~」

「それは違う」

「ゴリさん」

「うー、多分それ! ビンゴ!」

 そうした会話によって、ようやく話の輪郭が見えてきた。
 真山にとっても、だんだんと紗綾の話に興味が出てくるところまで来たようである。

「野々村光太郎さん、ですね」

「あー、それそれ! それだ」

「奇遇ですね。私の上司が、真山さんのお知り合いだなんて。同じ警視庁とはいえ、出来すぎだと思いません?
 それとも、そういう物なんですかね? 世界って案外狭いから」

 紗綾は笑った。先ほどより自然な微笑みだった。
 真山の方が、もう少し皮肉っぽく笑った。

「……ああ、まったく、奇遇奇遇。俺の部署の上司が、あんたの部署の上司でもあるなんて」

「ええ、英霊の特性上、私たちがいる時代はそれぞれ別であるかもしれませんからね。
 ちなみに真山さんが来たのは西暦何年ですか?」

「2000年」

「ブーッ、それブーッです。何故なら、私が来たのは201X年だから」

 近未来の数字を告げられてから、真山は溜息が漏れそうになる。
 とはいえ、聖杯戦争に連れて来られた身だ。非現実的でも受け入れなければならない。
 しかし、万が一ドッキリカメラだった場合を考えて、またも皮肉で返す。

「……つまり、あんたは未来人ってわけか。まるでドラえもんだな」

「真山さん、喩えが可愛いですね」

 真山が不快そうに睨むと、紗綾はニコッと微笑んだ。
 本当に、いつも空気の読めない不愉快な笑みばかり向けてくる。

「しっかし、警視庁は10年後も人事不足の税金泥棒かよ……」

「就職氷河期、少子化、汚職、SPEC HOLDERによる事件……日本も10年前と全然変わりませんよ。あっ、アメリカではでっかいテロとかも起こるんでご注意」

 遠くを見るような目で紗綾が懐かしんだ。
 紗綾の十年も、決して生易しい道ではなかったのだろう。
 その頃には、まだ紗綾には家族がいたのだから……。


「……ちょっと待て、SPEC HOLDER? 何それ」

「ああ、そっか。真山さん、前時代の人だからSPEC HOLDER知らないんだ。……ププッ。テラワロス」

 紗綾はノスタルジーを打ち壊し、いつもの調子になった。
 真山もこの女のノリには慣れ始めているはずだが、なおも腹が立つ。
 真山が何の反応も示さずに待っていると、すぐ不機嫌になって説明を始めるのだから、ある意味では扱いやすいともいえるが。

「SPEC HOLDERっていうのは、未詳が捜査する不可能犯罪を起こした使い手です。時を止めたり、未来を見たり、超人的な体力を持っていたり、まあ要するにそういう超能力者の事ですね」

「は? え? 何? 10年後にはそんな奴らがいるの?」

「ええ。いるんすよ、どういうわけか」

「……マジかよ」

 不可能犯罪、という言葉は、真山の中であの「浅倉」と結びついた。
 もしかすれば、彼もそのSPEC HOLDERなる犯罪者だというのではないだろうか。
 浅倉は他者の人格と入れ替わり、他人の精神をマインドコントロールできる犯罪者、というところまで来た。
 それが人間業でない事は真山も承知の通りである。
 そんな犯罪者が更に増えてしまえば、真山のような凡人警察にはお手上げだ。

「まあ、SPEC HOLDERみたいなのはこの聖杯戦争にもウジャウジャいますからねー。今の内に耐性つけといた方が将来的にも良いですよ、絶対」

「やだね。一生関わりたくないぜ、本当に」

「……そうっすか。やっぱりそうっすよねぇ~」





【クラス】
ホルダー(エクストラ)

【真名】
当麻紗綾@SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力C 幸運B 宝具A

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
SPEC:A+
 「SPEC」と呼ばれる超能力を使用する事ができる。
 彼女の能力は、「死んだSPEC HOLDERを呼び出す」という物であり、作中では最強のSPECであると言える。
 現時点では、少なくとも「翔」までに死亡したSPEC HOLDERは呼び出せるはず。

【保有スキル】
奇人:B
 常人では考えられないような行動を平然と行うスキル。
 ほとんど一般常識とかけ離れた行動を取り、周囲の目を気にしない。空気が読めないとも言う。
 このスキルの代わりに、天才的な頭脳を有し、特に理学方面と語学方面に秀でている。
瞬間記憶:B
 一度見たものを完全に暗記するスキル。
 パソコンをスクロールしながら、その内容全てを把握する事ができるレベルである。
名推理:B
 難解事件を推理する超天才的な頭脳。
 事件内容を「書道」で纏める事で強く発揮される。

【宝具】
『封印されし左手(スペック)』
ランク:A 種別:対人 レンジ:1~5 最大補足:1~10
 左手を解放し、過去に死亡したSPEC HOLDERを地中から引きずり出す事が出来る宝具。
 あらゆるSPEC HOLDERと親しくなっていった「絆」の力であると言われる。
 死者は地面に沈んで死後の世界へと帰っていくが、呼び出した当麻が意識を失った場合はその場から消える。
 SPEC HOLDERの協力を得られなければ能力は無意味である。

【Wepon】
 キャリーバッグ(書道道具や捜査資料入り)

【人物背景】
 警部補。警視庁公安部未詳事件特別対策係(通称:未詳〈ミショウ〉)捜査官。IQ201。
 超能力者SPEC HOLDERの一人で、その左手を使って死んだSPEC HOLDERを呼び出す事ができる。
 高い頭脳で事件を解決していくが、性格に難があり、がさつで口が悪い。
 最終的に映画ではなんだかよくわからない事になり、先人類と戦ったり、無間地獄を漂ったりという、和製ドラマにしてはやたら規模のデカい話に発展した。

 「ホルダー」はサーヴァントでありながら、「複数のサーヴァントを呼び出す」という宝具を持ち、マスター同様人間として生活する。
 彼女が呼び出すSPEC HOLDERは全てサーヴァントとして扱われる(ほとんどのSPEC HOLDERは大した能力ではないが……)。
 おそらく、真名を用いて生活しながら、真山と同じ部署に転属されているだろう。ただ、今のところ自らがSPEC HOLDERである事を真山に積極的に話す事はない。

【願い】
 不明。





【マスター】
真山徹@ケイゾク

【マスターとしての願い】
 聖杯戦争の真実を解明する。

【能力・技能】
 警部補としての装備と権限を有する。

【人物背景】
 警部補。捜査一課弐係(通称:ケイゾク)の刑事(主任)。
 浅倉裕人に妹を輪姦されて殺されるが、未成年で証拠不十分だった為に無罪放免となった過去を持つ。
 それゆえ、犯罪を強く憎み、毎回犯人に対して、精神攻撃や暴力で追い詰め、過剰な正義感を振りかざす。
 ある意味気持ちの良いくらい粗野でぶっきらぼうな男だが、根はやさしく、柴田純をはじめとする周囲の人間には本人なりの信頼を向けている。

【方針】
 不明。

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最終更新:2015年01月25日 17:33