関係あるとみられるもの
八雲紫(東方妖々夢ほか)
住所
千葉県市川市八幡2-8(JR総武本線,都営地下鉄新宿線「本八幡駅」から徒歩5分)
八幡の藪知らず(やわたのやぶしらず)
※周囲の都市風景から浮きまくっている異質な空間
本八幡駅付近の街中、国道14号沿いにある古跡。不知八幡森(しらずやわたのもり)ともいう。絶対に入ってはいけない場所、すなわち禁足地として知られる。
住宅地の中に突如現われる不自然な藪に、フェンスが張り巡らされ、手前には明神鳥居と祠(不知森神社という超かっこいい名前がある模様)が安置されている。
繰り返しになるが、現地に行っても絶対藪の中には入らないように。人目の多い場所なので、不審な動きをしていればすぐ他人に見つかって怒られると思います。
禁足地としての「八幡の藪知らず」に関する伝承は、そうとう古いものだと考えられる。
2016年現在、「八幡の藪知らず」の正面左端には、市川市教育委員会が設置した案内板が(草木に覆われるようにして)設置されているが、その案内板によれば、
江戸時代に記された八幡地方の地誌や紀行文の多くが、すでにこの「八幡の藪知らず」のことを載せており、諸国に名の知れたミステリースポットだったという。
また、この江戸時代に書かれた「八幡の藪知らず」に関する記載を具体的に見てみると、
「この藪(八幡の藪知らず)はあまり大きいわけでも背が高いわけでもないが、鬱蒼としていて内部を見通すことができない。」
「藪の広さはようやく十間(18m)ある程度で、奥行きも同程度にすぎない。中心がくぼんだ竹やぶである。」
といったもので、現代と外観や伝承に既にかなり近いものが書き残されている。特に広さについての記載が、現在の様相とかなり近しい。
一方で、昭和末期頃までの「八幡の藪知らず」は漆、松、杉、柏、栗などの古木が茂る「森」であったが、近年では竹に侵食されて樹木は僅かしか残っていない。
古木も竹も、群生していれば見通しの悪い事に変わりない。しかし、大木が重なりあって作る闇と、竹が重なりあって作る闇とでは、闇の密度が明らかに異なる。
そういう意味では、「八幡の藪知らず」が通行人に与える不安感や不気味さは、現代までにずいぶんと緩和してしまったと言えるかもしれない。
※正面から見た不知森神社
上述のように、江戸時代から一種のオカルトスポットとして全国的に有名であった「八幡の藪知らず」だが、
不思議なことに、「なぜ絶対にこの地に入ってはならないのか」を伝える明確な根拠は残されておらず、その理由に関する諸説が乱立している。
その代表的なものを上げるだけでも
①日本武尊の旧跡説
日本武尊(ヤマトタケル)の陣屋跡であり、神聖な場所だから入ってはならないとする説。諸説の中ではその由来を最古に求めている。
②神社の跡地説
「八幡の藪知らず」の近くにある「葛飾八幡宮」がかつてこの地にあったことから、聖地として扱われているとする説。
③鬼門伝説
10世紀ごろ朝廷に反乱した平将門(たいらのまさかど)を討伐すべく討伐軍が遠征してきた際に、この地にただならぬ不吉を感じ鬼門としたことに由来するとする説。
④八門遁甲(はちもんとんこう)地雷説
平将門の討伐に加わった平貞盛がこの地に八門遁甲陣(占星術により吉兆を操作する秘術)を敷いたため、この地に入れば必ず不幸になるとする説。
⑤平良将(たいらのよしまさ)墓所説
平将門の父良将の墓であるが、反乱者の父の墓であるとは公にしがたく、「名も知らぬ人の藪の墓所」として崇敬されてきたものが「藪知らず」に転じたとする説。
非常にそれっぽく聞こえるが、明治時代に著された『平将門古蹟考』が初出のため根拠としてはかなり薄い。
⑥水戸黄門迷子説
水戸黄門こと水戸光圀がこの地に入り、神の怒りに触れたことから、以後「絶対に入るな」と言う教えが広まったとする説。
⑤の八門遁甲地雷説の後日談の体裁をとって伝承されている。話ができすぎており、非常に信憑性が低い。
⑦毒ガス説
藪知らずの中心地がくぼんでおり、そこから瘴気=毒ガスが噴出しているというする説。もしそうだったら、藪周辺がタダですむわけがない。
⑧底なし沼説
藪知らずの中心に底なし沼があり、はまれば生きて帰れないとする説。まずあり得ない。
⑨迷子防止対策説
非常に迷子になりやすい地形なので、子どもにおどろおどろしい事を言って「入ってはいけません!」と言っている内に、その伝説が定着してしまった説。
⑩入会地説
この地はかつて八幡の民の共有地であり、部外者が入れなかった。その後、入場権を持つ者がいなくなり、誰も入れなくなってしまったという説。
アンチコモンズの悲劇の一種と言えようか。
⑪怪異発生説
この地は呪われており、何かしらの怪異が発生するとする説。その最たるものが神隠しであり、異世界へ飛ばされる、竜宮へ迷い込むなどのバリエーションがある。
この「神隠し」は本来、禁忌を犯して聖なる地(あるいは呪われた地)である藪に立ち入ったものへの「罰」として想定されていた怪異だと思われる。
しかし、現代都市伝説の中では、「神隠しに遭うから八幡の藪知らずには入ってはいけない」という文脈で、直接理由として語られることの方が多いのではないだろうか。
など諸説が入り乱れている状況である。
また、江戸期以降オカルト・スポットとして定着した「八幡の藪知らず」付近では、明治~大正以降
①「藪知らず」の中から機(はた)を織る音が聞こえてきた。
②機(はた)織りをする女の姿を見えた。
③真夜中その女が周辺の民家に深夜、機織りの道具や部品を借りに来た。部品を貸してやると、翌日には返しに来たが、その道具や部品にはべっとりと血がついていた。
④「藪知らず」の中で浮游する火の玉を目撃した。
⑤「藪知らず」の前を深夜とおると「白い影」が「ボーッ」と立っていた。
という、もはや神隠しや祟りとは関係なさそうな怪談話まで聞かれるようになった。
いつの世も、不可思議が不可思議を呼び都市伝説が新たな都市伝説を創造していくものである。
東方projectにおいては「神隠しの主犯」として八雲紫が登場する。
「八幡の藪知らず」はおそらく日本で最も有名であろう「神隠しの頻発地」として現代に知られていることから、
東方projectの世界における「外界」にも「八幡の藪知らず」がある場合、これらの伝承にのっとりゆかりんが「神隠し」を行っている可能性が考えられる。
聖地だの呪いの地だのと並びたてられる「胡散臭い理由」が、「八幡の藪知らず」をよりミステリアスに、より蠱惑的に仕立て上げているようにも見えるが、
しかしもしそれ自体が「罠」であったするならば、真実を解き明すべく「八幡の藪知らず」へと侵入した無謀な方々は、幻想郷へとさらわれてしまうのかもしれない。
知的探求心という魅力的なエサにひっかけられられないよう、みなさんも自重しましょう。
最終更新:2017年03月02日 08:13