オープンカフェ。その中の一席に彼はいた。
注文も出さず、彼はただ、そこに座っていた。
テーブルの向こうには空き席が1つある。
少し暑い。昼時だからだろうか。スーツの上着を脱ぎ、椅子に腰かけた。
彼がオープンカフェに来ているのも昼休みで腹ごしらえに来たかもしれない。
かもしれない、というのも可笑しいが、彼はどうも、なぜ自分がここにいるか分からないようだった。
なんとなく、知らない内にオープンカフェのテーブルに座ったのだろうか?
周囲を見回してみる。
ここは大都会といえる場所なのだろう、オープンカフェから視線を逸らせば道行く人は様々だ。
商談のためにスーツ姿で歩くサラリーマンに暇な時をショッピングで潰す若者。
空から落ちてきた太陽の光が街の人を動かしているようだった。
オープンカフェ内に視線を戻す。
ああ、やはり昼時だ。オープンカフェにごった返す人々。
みなランチを食すためにここに来ているのだ。彼が座るテーブル以外はみな満席だ。

「ああ……失礼……相席、いいかい?」

彼がしばらく呆けていると、ある男が声をかけてきた。身長は高く、190cm弱はある。
しかし男がやってくるまで彼は人の気配を感じず、まるで男が湧いて出たようであった。
男は白人で、ヨーロッパから来たことが分かる。

「ん、ああ、構わんよ」
「悪いな…このオープンカフェ、満席みたいでな…ここ以外空いてなかったんだ」

彼は少し驚いた様子を見せながらも、丁寧に応対する。
その男は席に座ると、彼を不思議そうに見てから尋ねた。

「なあ、おっさん…注文、頼まないのかい?」
「うむ?店員からやってくるんじゃあないのか?」

彼はおっさんと呼ばれても怒ることなく、その質問に答える。
彼は頭部に白髪が目立ち、頬がこけていた。どこか疲れているような印象を持たせる中年の男性だった。

「いや、このカフェはまずレジに行かなくっちゃあならない。そこで注文してから席に座るんだ」
「そうだったのか。すまないな、私はこういうところにあまり来たことがなくてね」
「それで、何を注文するんだ?俺はイタリア出身だからイタリア料理をオススメしたいところだな。例えばピッツァ・マルガリータとか」
「…なら、君に任せてみようかな。私としても何を食べるか決めかねていたところだ」

彼はとりあえずカフェへの注文を男に一任した。
しかし、男は注文をしにレジに向かおうとせず、しばらく黙って彼を見つめていた。

「…私の顔に何かついているのか?」
「いや…その、おっさんは何か悩み事があるのか?」
「………」
「心に何かしょい込んでいるような浮かない顔をしている」

彼は男に会ってから、愛想笑いを見せることはあってもすぐに口元を一の形に戻し、思いつめた表情をしていた。
この男は彼のことを心配しているのだろうか。

「ああ…実は私には気がかりなことがあってな。…変なことを口に出すかもしれないが、許してほしい」

確かに、彼には心に抱えている疑問がいくつかあった。
突拍子もないことだが、この男に話そうと決めた。

「私は……もう死んだはずなんだ」



◇ ◇ ◇




――父さん、頼む死なないでくれ!!

「ライト…」

――父さん

「よ…よかった…」

――ああよかった、動けるか父さん!?

「私はまだ目を持っている。あの死神の…リュークの話ではノートを所有する人間の寿命は見えない」

「おまえはキラじゃない…本当によかった」

――!余計なことはしゃべるな

「す…すまなかった。結局、私は奴を殺せなかった…。わ…私はもう駄目だ」

「ライト…後の事は頼…―――」

――!…父さん、奴の名前を!

――奴の名前を最後の振り絞って書くんだ、やられっぱなしでいいのか!!

――さあ父さん、これじゃ無駄死にだ!それでいいのか!

――書くんだ。父さん早く!しっかり奴の顔を思い出して!



――父さん!



――父さん!父さん!死ぬなバカヤローッ!!



◇ ◇ ◇



「次長………ん?」

「どうした?松田」

「次長が左手に何か持ってますよ」




「これは……エジプトの――」



◇ ◇ ◇



彼の名は、夜神総一郎。二代目Lこと夜神月の父であり、Lや部下達と共に犯罪者を殺す存在「キラ」を追っていた。
総一郎はマフィアから名前を書かれた者が死ぬ「デスノート」を取り返す作戦に参加した際、
デスノートにメロことミハエル=ケールの名前を書くことができずにマフィアの生き残りの凶弾に倒れる。
正義感が強く、警察官の鑑のような人物の彼は、最後の最後でメロをノートで殺すことを躊躇してしまったのだ。

死の床で、死神の目で月の寿命が見えたため月がキラでないと確信した。
Lとの捜査から息子にかかっていた容疑は真実ではなかったことに心から安堵した。
メロの名前を書けなかったことを詫びて意識が暗転すると、総一郎はいつの間にかどこだか知らないオープンカフェの中の一席にいた。
空を見上げると今にも落ちてきそうだった。

総一郎はキラに関する事件の始まりに捜査の経緯から死ぬ直前までの出来事を男に全て話す。
男は黙って総一郎の話を聞き続けていた。

「――今まで犯人と疑われていた息子が無実だと分かった。その事実があるだけで安心して死を受け入れられる。なのに私はまだ、こうして生きている。何故だろう?何か思い当たる節はないか―――レオーネ・アバッキオ?」
「……どうやら、あんたが死神と取引をしたっていう話は嘘じゃあなさそうだな。まさか名乗ってもいないのに名前を言い当てられるなんてな」

総一郎は未だ健在である死神の目を通じてその男――レオーネ・アバッキオに問いかける。
名乗ってもないのに名前を言い当てられるアバッキオは動揺を隠せない。

「私の『死神の目』は、人の顔を見ると名前と残りの寿命が見えるのだが、君の寿命が見えないんだ。その点も私としては不可解だ」

総一郎が持っていた疑問の一つ目は、自分が死んだはずなのに今、ここで確かに生きていること。
二つ目は、目の前にいるアバッキオという男の寿命が見えないこと。
デスノートの所有者の特徴として、死神の目を通して寿命が見えなくなるというものがある。
アバッキオが相席を求めてきたときはキラかと思い、驚いたがキラがヨーロッパ系の人間という事実はLの推理と大きく矛盾している。
この男はキラではない。長年キラの連続殺人事件に関わってきた総一郎は自然と察することができた。
キラでないならば、寿命が見えないことに何か他の理由があるのではないか、もしかしたらこの男は何か知っているのではないかと思い、アバッキオに抱いていた疑問を吐露したのだ。

「そうだな…答える前にこっちからも聞かせてくれ。『聖杯戦争』を知っているか?」

アバッキオは総一郎の質問に質問で返す。

「…聖杯戦争?…知らないな」
「よおく頭の引き出しの中を根掘り葉掘り探し回ってみろ。絶対にあるはずだ…聖杯がおっさんの頭の中に入れた記憶がな」

そう言われて総一郎はなんとか思い出そうと目を閉じた。
総一郎の54年の生涯が詰まっている記憶の海。その中で「聖杯戦争」をキーワードに検索をかける。
すると、確かに聖杯戦争に関する記憶が頭の表層に出てきた。
どこで知ったかもわからない、デジャヴに近い感覚だった。
総一郎は目を見開き、愕然とする。

「…どうやら思い出したみてーだな」
「……あ、ああ……」
「おっさん、俺は何だと思う?」
「…『シーカー』…私のサーヴァント。真名は…レオーネ・アバッキオ…」

そう、アバッキオは総一郎のサーヴァント。そして総一郎は死に際に何故か握っていたシャブティを介してゴッサムへ招かれた存在だったのだ。
アバッキオが相席を求めた際に湧いて出たように感じたのもシャブティがアバッキオに変化したため。
そして寿命が見えなかったのは彼がサーヴァント、つまり、既に死亡している存在だったからだ。



◇ ◇ ◇



しばらくの間、総一郎は顔を手で覆い、俯いていたが今は落ち着きを取り戻している。
テーブルの上には二杯のイタリアンコーヒーが置かれていた。
もちろんアバッキオのチョイスである。

「…なぜ私はその聖杯とやらに呼ばれる必要があったのだ?」
「そこまでは俺にもわからねーな…」
「確かに、事件は私の目が黒い内に解決したいとは思っていた。聖杯に願えば生き返ることもできる…だが、だからといって人を殺すなど決して認められん…!」

サーヴァントという英雄を味方に授かり殺し合うという聖杯戦争に総一郎は怒りを燃やす。
総一郎はこれといった願いを持っていない。
志半ばで命を落としたが、それは月をはじめとする仲間達が受け継いでくれるはずだ。
では、ろくな願いも抱かず、なぜ聖杯に呼ばれたのだろう?

そんな総一郎を見て、アバッキオは警官になったばかりの頃を思い浮かべ、一種の羨望を覚えていた。

――俺もあの時、挫けずに正義を持ち続けていれば…おっさんみたいな立派な警官になれたかもしれない。

過去のアバッキオは汚職警官になり下がり、同僚を死なせてしまい身も心も「暗黒」へと落ちていった。
あの時からアバッキオは何にも心を動かされず、ただ、何もかも忘れて絶対的な存在に従って生きてきた。

この総一郎という男はキラという殺人犯がどんなに危険だとしても決して諦めずに犯人に向かう『意志』を貫くだろう。
この聖杯戦争でも――

「シーカー。たとえ私が死んでいたとしても、私の精神が生きている限り警察官としての職務を全うするつもりだ。
このふざけた殺し合いに乗る者にも、聖杯戦争を仕掛けた者に対しても断固として立ち向かう。そのために私と共に戦ってくれないか?」

――前を向いて『真実』を追い続けるだろう。

総一郎は己の信念を突き通すことを選んだ。
ここが東京だろうがゴッサムシティだろうが警察官がやるべきことは決まっている。そう結論付けたのだ。

総一郎の言葉を聞いたアバッキオはその瞬間、死後の同僚との邂逅を思い出す。
アバッキオの行動を誇りに思ってくれていた、アバッキオを過去の十字架から解き放ったあの瞬間を。


『大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている。向かおうとする意志さえあれば、
たとえ今回は犯人が逃げたとしても、いつかはたどり着くだろう?向かっているわけだからな…違うかい?』


アバッキオは思った。もう一度警官としてやり直したい、と。
総一郎と共に『真実に向かおうとする意志』を持って戦いたいと。

「おっさんが『真実』に向かおうってんなら…俺は全力であんたを手助けするぜ。大切なのは『真実に向かおうとする意志』だからな」
「もちろんだ。キラは私が生きている内に逮捕することはできなかったが…今度は真実へ辿り着いてみせる…!」

真実へ向かい、その途中で死亡した二人は再び行動を開始する。
たとえどんな苦難が彼らを襲おうとも、きっと何か意味のあることを切り開いて行くのだろう。




【クラス】
シーカー

【真名】
レオーネ・アバッキオ@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメータ】
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運C 宝具C

【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
追跡:B
トラッキング能力。僅かな痕跡から敵の能力や行動パターンを予測し、現在位置をある程度の確率で特定する。

【保有スキル】
真実に向かおうとする意志:A+
シーカーがギャングに身を落とした後も心の底で持ち続けていた意志。
どのような肉体・精神状況下においても十全の戦闘技術を発揮できる。
そして、辿り着くべき『真実』に近づいているほど全パラメータが上昇する。

戦闘続行:B
信頼した者にはどこまでもついていく義理堅さ。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。

【宝具】

『映出す証拠(ムーディー・ブルース)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:-
生命が持つ精神エネルギーが具現化した存在。所有者の意思で動かせるビジョン『スタンド』。
人型だが、機械のような外見をしている。
過去にあった物事を再生、早送り、巻き戻し、停止して見る(利用する)ことができる。
スタンドの額にはデジタル表示のタイマーがあり、何時間・何日前の映像なのかが表示されている。
人間やサーヴァントの行動も再現できるが、宝具など敵の持つ異能や固有能力までは再現出来ない。
また再生中は攻撃も防御もできない完全な無防備となる。
この為、追跡や手掛かり探索などの調査などでは非常に役に立つが、直接的な戦闘行為には不向きである。
スタンドビジョンのダメージは本体にフィードバックされる。

『映出す真実(ムーディー・ブルース・プログレッシブ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:-
「映出す証拠」の進化形態。真名解放を行うことで使用可能になる。
従来の再生能力に加え、敵の宝具含む異能をも再生することが可能になる。
実質的に敵の宝具やスタンドを投影して利用することができるが、敵の使う能力によっては魔力消費がかなり多いので注意。

【weapon】
  • 宝具『映出す証拠』のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦を行うことが可能。
ステータスはサーヴァント換算で
筋力D、耐久D、敏捷D相当。
一応戦えないこともないが、本体が戦い、その補助として運用した方がいい。

【人物背景】
ブチャラティチームの一員のイタリアンギャング。
幼いころから正義感が強く、警官になるが、
次第に社会の矛盾に気づきはじめ、やがて自らも収賄などの汚職に手を染めていく。
しかし後にそれが明るみとなって汚職警官として罰を受けたばかりか、
それが原因となって同僚が自分を庇い殉職してしまったことで一生外すことのできない十字架を背負ってしまい、
その後にフーゴとブチャラティの勧誘を受けてギャングとなった。

そんな過去があるため、人をあまり信用しない性格。
特に新入りのジョルノ・ジョバァーナとは初対面時からことあるごとに衝突している。
しかし、一度信頼した者に対しては忠実に従い続ける義理堅さも持ち合わせている。
ブチャラティには絶対の信頼を置いており、ブチャラティが組織を裏切った際にも彼についていくことを選んだ。

トリッシュの記憶からサルディニア島へ辿り着いた後、スタンド能力でボスの過去を探っている時に
変装したボスの一撃により、再生中に致命傷を負わされる。
だが死の間際に最期の力を振り絞り、ボスの素顔のデスマスクと指紋をブチャラティたちに託し絶命した。
死後の世界では、かつて死なせてしまった同僚と再会。
彼が死後もアバッキオを恨んでいないどころか、アバッキオの生前の行いを誇りにさえ思っている事を知る。
かつての同僚と和解することで、アバッキオの魂は本当の意味で救われながら天に昇っていった。

【サーヴァントとしての願い】
警官として総一郎と共に戦う。
総一郎のことは信頼している。


【マスター】
夜神総一郎@DEATH NOTE(漫画)

【マスターとしての願い】
ゴッサムで警察官としての職務を全うする

【weapon】
特になし
ただし、警官として警察庁から拳銃を支給されるかもしれない

【能力・技能】
  • 死神の目
人間の顔を見るとその人間の名前と寿命を見ることができる。
写真や映像であっても、人相が判別できるほど鮮明であれば名前と寿命を見ることができる。
似顔絵では名前と寿命が見えない他、鮮明な写真でも顔が大きく欠けている場合は見えないことがある。
自分自身を含めたデスノート所有者に関しては、名前だけしか見ることができない。
ちなみに、目の取引を行った場合、本来の視力にかかわらず、3.6以上の視力になる。
サーヴァントの真名も見ることができるが、サーヴァントは英霊であり、既に死んでいるため寿命は見えない。
シーカーの『映出す証拠』で人物を再現した場合、その人物の名前を見ることは可能。

【人物背景】
警察庁刑事局局長にして日本捜査本部長でもある。主人公である夜神月の父親。
正義感の塊で、まさに警察官の鑑ともいえる人格者。
Lが息子である月をキラだと疑っていることで、大きなストレスを抱え込んでおり、日に日にやつれていっている。

第2部からは次長に昇進。娘と引き換えにノートを犯人に渡してしまったことに責任を感じており、
死神の目の取引をしてメロの本名を知るも、その正義感故にメロの名前をノートに書くことを躊躇い、
その隙をつかれて銃撃された傷が致命傷となって死亡。
最後まで月がキラだということを知ることがないまま死去した。

【方針】
困っている人がいたら助けたい。
銃を撃つなど人を傷つける事を良しとせず、たとえ敵であろうともむやみに殺そうとは思わない。




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2015年04月20日 02:15