第8章:冒険

 〈恐怖の墓所〉奥深くに踏み込み、ウォーターディープの裏路地をすり抜け、〈恐怖の島〉の深いジャングルに踏み分け道を切り開く――D&Dの冒険を構成するのはこうした物事だ。君のキャラクターは忘れられた遺跡と地図無き土地を踏査し、暗黒の秘密と狡猾邪悪な陰謀を暴き、汚れた怪物を斬り伏せるだろう。うまくいけば、キャラクターは生き延びてたくさんの報酬を手に入れ、そうして次の冒険に旅立つのだ。
 本章では、移動のルールから複雑な社会関係に至る、冒険生活を構成する基本的な物事について説明する。休息に関するルールや、冒険と冒険の間にキャラクターができることも説明する。
 探索するのが埃っぽいダンジョンだろうと、王宮の複雑な勢力関係だろうと、ゲーム自体の持つリズムは変わらない。それは「はじめに」の章で説明した通り、以下のようなものだ

 1.DMが状況を説明する
 2.プレイヤー達は何がしたいかを説明する
 3.DMはプレイヤーたちの行動の結果を説明する

 一般的なやり方は、DMが冒険する場所の概要を描いた地図を使い、ダンジョンの通路や未開地域をキャラクター達が探検していくのにしたがって、現在位置と通過経路を確認していくというものだ。DM用の注意書きには、地図のどこに何があるかが書かれており、地図上のエリアごとに冒険者たちが初めて入った際に何が起きるかも説明されている。
 時には、時間経過と冒険者たちの行動によって何が起こるかが決まるタイプの冒険もある。その場合、DMは地図の代わりに時刻表やフローチャートを使って進行管理を行なうことができるだろう。

時間 Time

 経過時間の記録が必要な状況では、行動ごとの所要時間をDMが決定する。DMは現在の状況に合わせて、様々な時間単位を使うことにしてよい。ダンジョンの中では、冒険者の行動は分単位で進む。たとえば長い通廊を慎重に抜けるのに1分、その先の部屋で何か面白い物や値打ち物がないか探し回るのに約10分かかる。
 街や荒野では、おおむね1時間単位の進行が適切だろう。たとえば冒険者達は森の真ん中にぽつんと立つ塔に何とかたどり着こうとしており、15マイルを急いで4時間以内に踏破しなければならない。
 長距離旅行では、1日単位の進行が最適だ。たとえば冒険者たちはバルダーズ・ゲートからウォーターディープに向け、道沿いに4日間旅したところでゴブリンの待ち伏せを受けるまでは平穏に旅ができる。
 戦闘など速いペースで状況が変化する時は、ゲームは1ラウンドごとに進行する。1ラウンドは6秒間であり、これについては第9章で解説する。

移動 Movement

 流れの速い川を泳ぎ渡る、ダンジョンの通廊を忍び歩く、足場の悪い山の斜面をよじ登る――どんな種類の移動も、D&Dの冒険において重要な役割を果たす。
 DMは冒険者の移動について、正確な距離と時間を計算せずに簡略化してよい。たとえば「君たちがダンジョンの入り口を見つけたのは、森の中を進んで三日目の夕方も遅くなった時だった」という具合。ダンジョン内であっても、大きなダンジョンや複雑な洞窟群では特に、遭遇と遭遇の間の移動を簡略化することがある。たとえば「古代のドワーフによる要塞の入口で衛兵を殺した後、君たちが地図を見ながら物音のよく響く通路を何マイルも進むと、裂け目にかかる石造のアーチ橋にたどり着いた」という具合。 
 しかしながら、ある地点から別の地点への移動に、日単位、時間単位、分単位のいずれであれ、どの程度の時間がかかるかが重要になることもある。ルール上で移動にかかる時間を決定するのは、クリーチャーの移動ペースと、移動する場所の地形という二つの要素だ。

移動速度 Speed

 すべてのキャラクターやモンスターが持つ「移動速度」は、キャラクターもしくはモンスターが1ラウンドに歩いて移動できる距離(単位はフィート)である。この数字は、命の危険を前にして短時間精力的に動くような状況を想定している。
 以下のルールは、キャラクターやモンスターが1分毎、1時間ごと、1日ごとに移動できる距離を決定する。

移動ペース Travel Pace

 移動するにあたって、冒険者の一団は「表:移動ペース」に記載された「遅いペース」「通常ペース」「速いペース」のいずれかを選ぶ。この表は、パーティが一定時間内に移動可能な距離と、ペースごとの特別な効果を示している。キャラクターは速いペースで移動すると物事を知覚しにくくなる一方、遅いペースで移動すると姿を隠して忍び歩く試みが可能になり、より慎重にある区域を捜索することができるようになる(本章にて後述。「移動中の活動」の項を参照)。
  強行軍(Forced March) 移動ペース表は一日に8時間の移動を想定している。疲労するリスクはあるが、この制限を超えて移動することもできる。
 8時間を超えて1時間移動するごとに、移動ペースに応じて表:移動ペースの「時間」の列に示された距離だけ移動できる。1時間が経過したところで、キャラクターごとに【耐久力】セーヴを行わなければならない。DCは「10+8時間を超える1時間ごとに1」である。失敗すると1レベル疲労する(疲労については別表:状態異常を参照)
 乗騎と乗り物(Mounts and Vehicles) 短時間(1時間以内)であれば、多くの動物は人型生物より速く移動できる。
騎乗したキャラクターは、1時間のあいだ全速力で進み、速いペースの二倍の距離を移動できる。8~10マイルごとに元気な乗騎に乗りかえるなら、このペースで更に長く移動できるが、これが可能なのは人口密度の高い地域における例外的に稀な状況である。
 荷馬車、大型四輪馬車などの陸上を移動する乗り物に乗ったキャラクターは通常通り移動ペースを選ぶ。船舶の類に乗っているキャラクターの移動は、船舶の移動速度に限定される(第5章参照)が、速いペースによるペナルティを受けることはなく、遅いペースによる利益を得ることもない。船舶はサイズと乗員数によっては1日24時間移動することができる。
 ペガサスやグリフォンなどの特殊な乗騎や、フライング・カーペット(空飛ぶ絨毯)のような特殊な乗り物に乗れば、より速く移動することができる。特殊な移動方法については、ダンジョンマスターズ・ガイドブックにより多くの情報が記載されている。

移動ペース
ペース 1分毎 1時間毎 1日毎 効果
速いペース 400フィート 4マイル 30マイル 受動【判断力】〈知覚〉のスコアに-5ペナルティ
通常ペース 300フィート 3マイル 24マイル なし
遅いペース 200フィート 2マイル 18マイル 〈隠密〉を使用できる

移動困難な地形 Difficult Terrain

 表:移動ペースに記載された移動速度は、比較的障害のない地形での移動を想定している。すなわち、街道、開けた土地、障害物のないダンジョンの通廊などである。しかし冒険者はしばしば深い森、深い沼、瓦礫に覆われた廃墟、険しい山、氷結した地面などに直面する。これらは全て移動困難地形として扱う。
 移動困難地形では移動速度は半分になる。つまり、移動困難地形を1フィート移動すると移動速度を2フィート分消費する。同様に1分毎、1時間毎、1日毎の移動でも、通常の半分の距離しか進むことができない。

特殊な移動 Special Types of Movement

 危険地帯や未開地域での移動は、普通に歩くだけでは済まないことも多い。冒険者たちは、よじ登ったり、這ったり、泳いだり、ジャンプしなければ行けない場所に行く必要があるかもしなれい。

登る、泳ぐ、這う Climbing, Swimming, and Crawling

 登ったり泳いだりする時は、1フィート移動するごとに1フィート余計に移動速度を消費する(移動困難地形なら2フィート余計に消費する)。ただし登攀移動速度や水泳移動速度を持っているクリーチャー以外は例外である。滑りやすい垂直な壁や手がかりの少ない壁面を登る場合は、DMの判断次第で【筋】〈運動〉チェックに成功する必要がある。同様に、激しく動く水面や水中を移動する場合も【筋】〈運動〉チェックに成功しなければならないかもしれない。

ジャンプ Jumping

 ジャンプできる距離は【筋力】 によって決まる。
 幅跳び 幅跳びの際は、【筋力】基本値と同じフィート数だけジャンプできる。ただし、ジャンプの直前に少なくとも10フィート助走する必要がある。立ち幅跳びなら、ジャンプできる距離は半分になる。どちらの場合も、ジャンプした1フィートごとに1フィート分の移動速度を消費する。
 このルールはジャンプの高さは問題にならない場合、つまり小川や裂け目を飛び越えるような場合を想定している。生垣や低い壁などの(ジャンプした距離の1/4以下の高さの)低い障害物を飛び越える場合は、DMの判断によってはDC10の【筋】〈運動〉チェックが必要になる。失敗すると障害物にぶつかる。
 着地した場所が移動困難な地形なら、転倒を避けるためにDC10の【敏】〈軽業〉チェックに成功しなければならず、失敗すると着地の際に転倒する。
 高跳び 高跳びの場合、「3+【筋】修正値」フィート跳び上がることができる。ただし、ジャンプの直前に少なくとも10フィート助走する必要がある。立ち高跳びなら、ジャンプできる高さは半分になる。どちらの場合も、ジャンプした1フィートごとに1フィート分の移動速度を消費する。状況によっては、DMは通常より高く跳ぶための【筋】〈運動〉チェックを許可してもよい。
 キャラクターはジャンプする時に、自分の身長の半分まで腕を伸ばすことができる。したがって、ジャンプした高さに自分の身長の1.5倍を加えた高さにまで手が届くことになる。

移動中の活動 Activity While Traveling

 冒険者たちがダンジョンや荒野を抜けて移動する際は、危険に対して常に警戒していなければならない。さらに、キャラクターによっては仲間の旅を助けるような活動をすることもできる。

隊列 Marching Order

 冒険者たちは隊列を決めておくべきである。どのキャラクターが罠の効果を受けるのか、隠れた敵に気付く可能性があるのは誰か、戦闘が始まった時点で敵に一番近いのは誰か、といったことを決める際には、隊列が決まっていたほうが簡単だ。
 キャラクターは最前列、中列(複数列の場合もある)、最後列のいずれかを占める。最前列と最後列が横一列に並べるだけの空間の幅が必要なので、狭い場所では隊列を変更しなければならない(通常はキャラクターが中列に移動する)。
 3列より少ない場合 冒険者パーティーの隊列が横列2つしかない場合は、最前列と最後列だけになる。横一列の隊列なら、その列は最前列として扱う。

隠密 Stealth

 遅いペースで移動する場合、隠密して動くことができる。開けた場所でなければ、遭遇した他のクリーチャーを不意を打ったり、隠れて通り抜けたりを試みることができる。詳しくは第7章参照のこと。


パーティーの分割 Splitting Up the Party

 パーティーを分割する事に意味がある場合もある。特に、一部のキャラクターが先行して偵察したい時などである。冒険者たちは複数のパーティーに分かれてそれぞれ異なる速度で進むことができる。それぞれのグループが前列、中列、後列に分かれるのだ。
 このやり方の欠点は、攻撃を受けてしまった場合に、パーティーがいくつかの小グループに分断されることだ。利点は、隠密に優れるキャラクターがゆっくり移動すれば、不器用なキャラクターなら警戒されてしまうだろう敵の側を隠れたまま通過できることだ。二人のローグが遅いペースで移動する際には、仲間のドワーフ・ファイターは後方に置いていく方がずっと気づかれ難い。


脅威に気付く Noticing Threats

 キャラクターの受動【判断力】〈知覚〉のスコアを使って、グループの誰かが隠された脅威に気付いたかどうかを判定することができる。DMは、ある脅威について、特定の列にいるキャラクターのみがそれに気付く可能性があると決めることができる。例えば、キャラクターがあるトンネルの迷路を探検するにあたってDMは、隠密に後をつけてくるクリーチャーを見つけたりその音を聞きつけたりする可能性があるのは、後列にいるキャラクターのみであると決めることができる。前列や中列にいるキャラクターには、気づくチャンスがないのだ。
 速いペースで移動している間、キャラクターは隠れた脅威に気づくための受動【判断力】〈知覚〉のスコアに-5のペナルティを受ける。

クリーチャーとの遭遇(Encountering Creatures) 移動中の冒険者たちがクリーチャーに遭遇した、とDMが決めたなら、次に何が起きるかは双方の出方次第という事になる。両グループが、攻撃するか、対話を始めるか、逃げるか、それとも相手の出方を見るか、という決断をすることになる。
敵を不意打ちする(Surprising Foes) 冒険者たちが敵対的なクリーチャーと遭遇したなら、戦いが始まった時に冒険者たちや敵側が不意を打たれるかどうかをDMが判断する。不意打ちに関するより詳しい情報は、第9章にある。

その他の活動 Other Activities

 グループで移動している時に他のことをしているキャラクターは、危険に対する警戒に注意を集中することができない。彼らはグループが隠れた脅威に気付くための【判】〈知覚〉チェックに貢献することができないが、危険に対して警戒していないキャラクターは、かわりに下記の活動のどれか一つ(もしくはDMが許可したその他の活動)を行うことができる。
 ナビゲート(Navigate) グループが密に迷わないようにする試み。DMが求めた際には【判】〈生存〉チェックを行う(ダンジョンマスターズ・ガイドには、グループが道に迷うかどうかを判定するルールが掲載されている)。
 地図を描く(Draw a Map) 地図を描いてグループの行程を記録し、道に迷ったら来た道を戻る時の役に立てることができる。能力値チェックは必要ない。
 追跡(Track) 他のクリーチャーの痕跡を追うことができる。DMが求めた際には【判】〈生存〉チェックを行う(ダンジョンマスターズ・ガイドには、追跡のためのルールが掲載されている)。
 食糧採集(Forage) 食べられる水や食料が無いかと目を光らせ続ける。DMが求めた際には【判】〈生存〉チェックを行う(ダンジョンマスターズ・ガイドには、食糧採集のためのルールが掲載されている)。

環境 The Environment

 冒険というものは、その定義からして、暗くて危険で探索すべき秘密に満ちた場所に潜り込むものだ。このセクションでは、冒険者がそうした場所の環境と関わる際のルールを記載する。ダンジョンマスターズ・ガイドには、もっと普通ではない状況のためのルールが掲載されている。

窒息 Suffocating

 クリーチャーは「1+【耐】修正値」分だけ息を止めることができる(最短30秒)。
 それが経過してしまったら、【耐】修正値ラウンド(最短1ラウンド)は生きていられる。このラウンド数が経過した次のラウンドの開始時に、ヒット・ポイントが0になって瀕死状態になる。
 たとえば、【耐】14のクリーチャーは3ラウンド息を止めることができる。窒息し始めたら、ヒット・ポイントが0になるまで2ラウンドの時間がある。

落下 Falling

 すごく高い所から落ちるというのは、冒険者が直面する事故の中では一番よくあるものだ。
 落下した地点では、落下距離10フィートごとに1d6(最大20d6)の殴打ダメージを受ける。落下によるダメージを受けないようにしない限り、キャラクターは着地したら伏せ状態になる。

視野と明かり Vision and Light

 冒険におけるもっとも基本的な行動――いくつか挙げるなら、危険に気付くこと、隠されたものを見つける事、戦闘で敵に命中打を加え、呪文の狙いをつけること――これらはキャラクターの見る能力に強く依存している。暗闇や、その他の視覚を妨害する効果は極めて重大な障害となり得る。
 ある区域は軽度に、もしくは重度に隠蔽されている可能性がある。薄暗い明かりに照らされた区域、切れ切れの霧に覆われた区域、中程度の薮など、軽度に隠蔽された場所では、視覚に依存する【判】〈知覚〉チェックは劣位を被る。重度に隠蔽された区域――暗闇、不透明な濃霧、密生した薮など――は完全に視野を遮る。重度に隠蔽された区域内では、クリーチャーは実質的に盲目状態(別表参照)となる。
 光源の有無によって、照明の程度は3段階のカテゴリに分けられる。明るい光(bright light)、薄暗い光(dim light)、暗闇(darkness)の3つである。
  明るい光の下では、ほとんどのクリーチャーは通常通りに見ることができる。日中は、たとえ日の陰った日であっても明るい。松明、ランタン、火などの光源も、特定の半径内には明るい照明をもたらす。
  薄暗い光は影(shadow)ともよばれ、軽度に隠蔽された区域を作り出す。薄暗い区域は、通常、明るい光を放つ光源(たとえば松明)とそれを取り巻く暗闇の境界部分に発生する。黄昏や夜明けの薄明かりも薄暗い照明として扱う。
  暗闇は重度に隠蔽された区域を作り出す。野外で暗闇に出会うのは夜間(たとえ最も月の明るい夜でも)である。明かりのないダンジョンや地下洞穴といった閉鎖空間、魔法的な暗黒地帯も暗闇である。

非視覚視野 Blindsight

 非視覚視野を持つクリーチャーは、自分から一定半径内を視覚に頼らず知覚する。粘体などの目のないクリーチャー、コウモリや真の竜族といった、反響定位能力や極めて鋭敏な感覚を持つクリーチャーが非視覚視野を持つ。

暗視 Darkvision

 D&D諸世界においては、多くのクリーチャーが暗視を持っており、中でも地下に住むものに多い。暗視を持つクリーチャーは、特定の距離までの暗闇を、薄暗い区域であるかのように見通すことができる。したがって、クリーチャーの暗視距離までは、暗闇の区域も軽度に隠蔽されているのみとなる。しかしながら、暗視では色を見分けることができず、色の違いは灰色の階調としてのみ見ることができる。

完全視 Truesight

 完全視を持つクリーチャーは、完全視の距離内であれば以下のことができる。通常の暗闇と魔法的な暗闇を見通すことができ、不可視のクリーチャーや物体を見ることができ、視覚的な幻を自動的に探知してこれに対するセーヴを行うことができる。変身生物(shapechanger)や魔法的に変身しているクリーチャーの真の姿を見抜くことができる。加えて、エーテル界(Ethereal Plane)まで見通すことができる。

食料と水 Food and Water

 キャラクターは飲み食いしないと疲労の効果を受ける(別表参照)。食料や水の欠乏によって疲労状態になった場合、キャラクターが必要量を十分に満たすだけ飲み食いしない限り、疲労は取り除けない。
 1人のキャラクターは1日に1ポンドの食料を必要とする。半分の食料で持たせることで食料を食い延ばすことは可能だ。半分の食料で1日過ごすごとに、半日食料なしで過ごしたものとして扱う。

食料 Food

 食料なしで過ごせるのは「3+【耐】修正値」日(最短1日)である。この限界を超えて1日経過するごとに、自動的に1レベル疲労する。普通に食べて1日過ごせば、食べずに過ごした日数はリセットされてゼロに戻る。

水 Water

 キャラクターは1日に1ガロンの水を必要とし、暑い気候の下では、必要量は1日2ガロンになる。必要量の半分しか水を飲まなかったキャラクターは、1日の終わりにDC15の【耐】セーヴに成功しなければ1レベル疲労する。
 半分未満の量の水しか手に入らないのなら、そのキャラクターは1日の終わりに自動的に1レベル疲労する。
 キャラクターがすでに1レベル以上疲労しているのなら、上記のどちらのケースでもキャラクターは2レベル疲労する。

物体に関するルール Interacting with Objects

 環境の中での物体に対するキャラクターの行動は、ゲーム内では往々にして単純に処理される。プレイヤーはDMに対して、レバーを動かすなどのやりたいことを伝え、DMは何かが起こるならそれを描写する。
 たとえば、キャラクターがレバーを引くことにしたら、続いて起こるのは、落とし格子が上がる、部屋に大量の水があふれる、近くの壁にあった秘密の扉が開く、などであるかもしれない。しかし、もしレバーがそこで錆びついているのなら、力任せに引かなければならないだろう。そのような場合、DMはキャラクターがレバーを望む位置まで動かせたかどうかを判定するために【筋】チェックを求めるかもしれない。こうした行動のたび、タスクの難しさに応じてDMがDCを設定する。
 キャラクターは武器や呪文で物体にダメージを与えることもできる。物体は毒(poison)と精神(psychic)ダメージには耐性があるが、それ以外の物理的・魔法的な攻撃からはクリーチャーとよく似た形で影響を受ける。DMは物体のアーマー・クラスとヒット・ポイントを決め、特定の種類の攻撃に抵抗や耐性を持つかどうかも決める(たとえば、棍棒でロープを切るのは難しい)。物体は【筋】セーヴと【敏】セーヴには常に失敗し、その他のセーヴを要求する効果には耐性を有する。ヒット・ポイントがゼロになったら、物体は壊れる。キャラクターは、【筋】チェックによって物体の破壊を試みることもできる。こうしたチェックのDCはDMが定める。

他者とのやり取り Social Interaction

 ダンジョンを探索し、障害を克服し、モンスターを倒すのがD&Dにおける冒険の中心的部分だ。だが、それに劣らず重要なのが、冒険者たちと世界の住人との間の社交的なやり取りだ。やり取りは様々な形をとる。良心の無い盗賊に不正行為を告白するよう説得する必要に迫られるかもしれないし、ドラゴンを言いくるめて自分を殺さずにおいてもらうようにすることを試みるのかもしれない。DMはやり取りに参加しているキャラクターのうち、ゲームに参加しているプレイヤーに属さないキャラクターの役割を引き受ける。そのようなキャラクターをノンプレイヤー・キャラクター(NPC)と呼ぶ。
 一般的にはNPCの態度は友好的、中立的、敵対的、のいずれかとなる。友好的なNPCは君たちを助けてくれるだろう。敵対的なら、君たちの前に立ちふさがる傾向にある。友好的なNPCからのほうが、君たちの望むところを得やすいのはもちろんだ。
 社会的やり取りには、大きく分けて2つの要素がある。ロールプレイと能力値チェックである。

ロールプレイ Roleplaying

 ロールプレイとは、文字通り役割(ロール)を演ずる(プレイする)ことである
。この場合は、君がキャラクターとなって、キャラクターがどのように考え、行動し、話すかを決定するのだ。
 ロールプレイはゲームのどの部分にも含まれている。しかし前面に出てくるのは、社会的やり取りの場面だ。君のキャラクターの変わったところや癖、個性などが、やり取りの結果に影響する。
 君のキャラクターのロールプレイをする際には、二つのスタイルがある。説明的なやり方と、演劇的なやり方だ。ほとんどのプレイヤーは、二つの方法を組み合わせて使う。自分にとって一番良い配分で二つを混ぜて使おう。

説明的なやり方 Descriptive Approach to Roleplaying

 このやり方では、君はキャラクターの台詞や行動をDMと他のプレイヤーに説明する。君の脳内にあるキャラクターのイメージを描き出し、キャラクターが何をしたのかと、どのようにそれをしたのかを皆に説明する。たとえばこんな具合だ。クリスはドワーフのトルデクをプレイしている。トルデクは喧嘩っ早く、一族の不幸をクロークウッドのエルフたちのせいだと考えている。ある酒場で、感じの悪いエルフの吟遊詩人がトルデクのテーブルに座り、このドワーフと会話を始めようとした。
 クリス「トルデクは床に唾を吐いて、そのバードを唸るように侮蔑して、バーに向かってドスドス歩くよ。椅子に座って、もう一杯注文する前にエルフをにらみつける」
 この例では、クリスはトルデクの気分を表現し、態度と行動について明確なイメージをDMに伝えている。
 説明的なロールプレイをするときには、以下の点に注意するとよい。

 ・君のキャラクターの感情と態度を説明する
 ・君のキャラクターの意図と、他の者がそれをどう受け取るかを第一に考える
 ・君が楽しくできる程度に描写に脚色を入れる

 すべてを正しくやろうと気に病む必要はない。君のキャラクターが何をしそうなのか考えることと、脳内のイメージを説明すること、そこに集中しよう。

演劇的なやり方 Active Approach to Roleplaying

 説明的なやり方がDMや同席するプレイヤーに君のキャラクターが何を考え何をするのかを話すやり方であるなら、演劇的なやり方はそれを見せる。
 演劇的なロールプレイングを用いる場合、君は役を演じる俳優のようにキャラクターの声色で話す。キャラクターの行動や仕草をそのまま演じてもいい。これは説明的なやり方よりも没入させる力があるが、それでもなお、演技で上手く表せない部分については説明が必要だ。
 ここで再び、上述のクリスがやったトルデクのロールプレイを例に取ろう。クリスが演劇的なロールプレイをするなら……
 トルデクとして話すとき、クリスは低くしわがれた声色で話す「急に酷い匂いがしたから何かと思ったぞ。ワシが貴様から聞きたいことがあるとすれば、貴様の腕をひと捻りして悲鳴を楽しみたいってくらいのものだ」それからクリスは普通の声に戻って言う「僕は立ち上がってエルフを睨み付けると、バーに向かうよ」

ロールプレイの結果 Results of Roleplaying

 DMは君のキャラクターの行動や態度を見て、NPCがどう反応するのかを決める。臆病なキャラクターなら、暴力で脅されれば屈服する。頑固なドワーフは他人が何やかやと口を出すのに従うのは拒む。見栄張りのドラゴンはお世辞に弱い。
 NPCとやり取りする時には、DMが描写するNPCの雰囲気、台詞、個性に注意を払おう。NPCの個人的なtrait、ideals、flaws、bondを見極めることができれば、NPCの態度に影響を与えるためにそれらを利用できるだろう。
 D&Dにおけるやり取りは実生活でのやり取りとよく似ている。君たちがNPCに対してほしがるものを差し出すことができたり、彼らが恐れるもので脅しをかけたり、彼らの共感を得たり彼らの目的に沿うことができれば、適切な言葉を使って、望むものをほとんど何でも手に入れることができるだろう。一方で、誇り高い戦士を侮辱したり、貴族の取り巻きを悪く言ったりすれば、相手を説得したり騙すのはうまくいかないだろう。

能力値チェック Ability Checks

 ロールプレイに加えて、能力値チェックもやり取りの結果を決める重要な要素だ。
 ロールプレイによってNPCの態度を変えることもできるが、状況によってはなお偶然の要素が絡む場合もある。たとえば、DMがDMがNPCの反応を決めるのにダイスに一役買ってもらいたいと考えたなら、やり取りの途中、任意の時点で【魅】チェックを要求するかもしれない。
 NPCとどのようなやり取りをしたいか考える際には、自分が習熟している技能に注意を払おう。そして自分の持つ最良のボーナスと技能を利用して優位に立とう。グループが城に入れてもらうために衛兵を引っかける必要があるなら、〈虚偽〉技能に習熟したローグが会話をリードするのが最も成功を期待できるだろう。人質の解放について話し合うなら、〈説得〉技能を持つクレリックが主に話すべきだろう。

休息 Resting

 どれほど英雄的な冒険者であっても、1日24時間を濃密な探索や他者とのやり取りや戦闘に費やすことはできない。彼らは休息を必要とする。眠り、食べ、傷の手当てをし、呪文を唱えるために頭と心をリフレッシュして、さらなる冒険に備えるのだ。
 冒険者たちは冒険中の一日の間に何度か「小休憩」を取り、一日の終わりには「大休憩」を取る。

小休憩 Short Rest

 小休憩は少なくとも1時間の休憩で、その間キャラクター達は飲み食いし、読み、傷の手当てをする以上の激しい行動はしない。小休憩の最後に、各キャラクターは上限(すなわちキャラクターのレベルと同数)までのヒット・ダイスを消費することができる。消費したヒット・ダイスと同じ個数、同じ種類のダイスを振り、各ダイスの出目に自分の【耐】修正値を加え、合計に等しい値のヒット・ポイントを回復する。この際プレイヤーは、ヒット・ダイスを1個づつロールして、その出目を見てから次の1個を振るかどうかを決めてよい。こうして消費したヒット・ダイスが回復するのは、大休憩の終了時である(下記参照)。

大休憩 Long Rest

 大休憩はかなり長時間の休憩で、少なくとも8時間の長さが必要となる。その間にキャラクターたちは眠ったり軽度の活動(読んだり、話したり、食べたり、2時間を越えない長さで見張りに立つ)をする。休憩がある程度の時間にわたる激しい活動(1時間以上にわたって歩き、戦い、呪文を発動し、そのほか類似の冒険的行動を取る事)によって中断された場合、キャラクターたちはまた最初から休憩を始めなければならず、休憩による利益は何も得られない。
 大休憩の終了時には、減少していたヒット・ポイントは回復する。消費していたヒット・ダイスも、最大値の半分にあたる分だけ回復する。たとえばキャラクターのヒット・ダイスが8個だとすると、大休憩終了時には、消費していたヒット・ダイスを最大4個まで回復できる。
 キャラクターは24時間に1回までしか大休憩の利益を受けられない。また、キャラクターは大休憩開始時に少なくとも1ポイントのヒット・ポイントを有していなければ、大休憩の利益を得ることができない。

冒険と冒険の間 Between Adventures

 ダンジョンへの旅の後、旧き邪悪に対する戦いの前に、冒険者は休息し、回復し、次の冒険の準備をするための時間を必要とする。多くの冒険者はこの時間をその他の仕事にも充てている。武器防具を作り、調査研究をし、汗水垂らして稼いだ金を使う、といった事だ。
 時間が経過しても特に盛り上げたり描写すべきことが起きないケースもある。その場合、DMは新しい冒険を始めるにあたって単に経過した時間を明言し、プレイヤーたちにその間キャラクターが何をしていたのかを大まかに説明させる。そうでない時は、君たちに見えないところで何かが起きているので、正確な時間経過を記録しておきたいとDMが考えているのかもしれない。

ライフスタイルの諸経費 Lifestyle Expenses

 冒険と冒険の間に、キャラクターは生活の質を選んでそのライフスタイルを維持するコストを支払う(第5章参照)。
 特定のライフスタイルで暮らすことが、キャラクターに多大な影響を及ぼすわけではない。しかし、君のライフスタイルは個人やグループのキャラクターに対する反応を左右する。たとえば、貴族的なライフスタイルで暮らしているなら、ある都市の貴族たちに影響を及ぼすのは貧しい暮らしをしている時より容易になるだろう。

休息期間の活動 Downtime Activities

 冒険と冒険の間に、DMは君に休息期間中のキャラクターが何をしているかを尋ねるかもしれない。休息期間の長さは様々だが、休息期間中の活動は完了までに日単位の時間をかけて初めて、何らかの利益を得ることができる。一日活動したと数えるには、少なくとも1日に8時間を費やす必要がある。連続して毎日活動を行う必要はない。また、最低限必要な日数以上の期間が取れるなら、より長く同じ活動を行ってもいいし、別の活動に切り替えることもできる。
 休息期間中の活動は、ここで解説する以外にもあり得る。君のキャラクターの休息期間を本章がカバーしていないことに使いたいなら、DMに相談すること。

製作 Crafting

 冒険用具や芸術作品といった魔法的でない物品を製作することができる。前提として、作成しようとする物品に関連付けられたツール(一般的には工匠の道具類)に習熟している必要がある。それ以外にも、特殊な素材や場所を使える必要があるかもしれない。たとえば、鍛冶道具に習熟しているキャラクターは剣や鎧一式を製作するために炉を必要とする。
 製作に費やした休息期間の一日毎に、市価が合計5gpまでのアイテム(一つまたは複数)を作り出すことができる。その際、市価の半額に相当する原料を消費する。市場価格が5gpより高いものについては、毎日5gp分づつ作業が進捗していくので、そのアイテムの市価に達した時点で完成となる。たとえば、市価1,500gpのプレート・アーマー一式を一人で作るには300日が必要となる。
 複数のキャラクターが労力を結集して一つのアイテムを製作することもできる。これには全員が必要なツールに習熟しており、一か所に集まって作業するのが前提条件となる。一人につき1日5gp分の進捗に貢献できる。たとえば、必要なツールに習熟したキャラクターが3人でプレート・アーマー一式を製作するのにかかる日数は100日、必要経費は750gpとなる。
 製作を行っている間、質素なライフスタイルを維持するなら、それに必要な1日1gpのコストはかからない。あるいは、快適なライフスタイルを通常の半額で維持することができる(ライフスタイルの諸経費の詳細については第5章参照)。

働く Practicing a Profession

 冒険と冒険の間に働くなら、1日1gpを払わなくても質素なライフスタイルを維持できる(ライフスタイルの諸経費の詳細については第5章参照)。この利益は正業に就いて働く限り持続する。
 寺院や盗賊ギルドなど、待遇の良い雇用を提供する組織の一員であるなら、快適なライフスタイルを維持することができる。
 〈芸能〉技能に習熟しており、休息期間中にそれを使用するなら、富裕なライフスタイルを維持することができる。

療養 Recuperating

 冒険と冒険の間の休息期間を能力を損なう負傷や病気、毒からの回復に使うこともできる。
 3日間を療養に費やした後で、DC15の【耐】セーヴを行うことができる。成功すれば、下記のいずれかを選択できる。
 ・ヒット・ポイントの回復を妨げる効果ひとつの効果を終了させる
 ・続く24時間の間、現在影響を受けている病気や毒に対するセーヴに優位を得る

調査 Researching

 冒険と冒険の間の時間は、キャンペーン全体に関わる謎の手がかりを得るための調査に最適の機会となる。これには、文書館で埃っぽい写本やぼろぼろの巻物を読みふけったり、地元の連中から噂話やゴシップを聞き出すために飲み物をおごったりすることが含まれる。
 君たちが調査を始める際に、DMは情報が手に入るかどうか、それを見つけ出すのに何日の休息期間を費やす必要があるのか、調査には何らかの制約(特定個人や一冊の写本、あるいは特定の場所になるなど)があるのか、といったことを決定する。
 調査を一日行うごとに、諸経費を賄うために1gpを費やす必要がある。このコストは、ライフスタイルの諸経費(第5章参照)とは別に必要となる

訓練 Training

 冒険と冒険の間の時間を、新しい言語を学んだり、ツールの訓練に使う事もできる。それ以外の訓練も、DMが許可してくれる可能性はある。
 まず、君に教える気のある教師を見つける必要がある。DMはかかる期間と、能力値チェックが必要かどうかと、必要ならその種類と回数を決定する。
 訓練には250日かかり、1日あたり1gpがかかる。必要な時間と金銭を費やした後に、キャラクターは新たな言語を習得するか、新しいツールに習熟する。

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最終更新:2014年09月17日 12:38