埋め込み機器(インプラント)

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*埋め込み機器  埋め込み機器は、主にアシスト機器では達成不可能な役割のために使われます。  埋め込み機器の最も代表的な例が人工臓器です。  外付けのアシスト機器では、能力的あるいはインタフェース的に間に合わない場合、埋め込み機器が用いられています。病気の人間が移植する人工臓器は、まさにアシスト機器では間に合わないから移植する人体拡張機器です。    この例は、つまり埋め込み機器とアシスト機器の差が、命がかかっていれば、あっさり吹き飛ぶということでもあります。  命の危険にさらされている場所では、埋め込み機器も一般的に用いられます。  軍人や一部の治安関係者がそれで、埋め込み機器の使用は珍しいことではありません。 *強化身体能力  身体能力の埋め込み機器による拡張で、もっともよく扱われるものは医療用途です。身体のきかなくなった病人や老人にとって、もう一度運動ができるようになることは人生の質を大きく上げる効果が見込めます。  ただし、この用途では、一般成人男性程度くらいまでと出力や強度に制限がかけられています。  人工関節や人工骨のような耐久性の高いパーツは、移植後一年くらいまでの経過観察で拒絶がないことを確認すれば、その後は一生メンテナンスしないこともあります。  埋め込み機器による筋力などのそれ以上の強化は、外付けのアシスト機器で行うよりもハードルが高くなります。外付け機器では強いフレームを外付けできましたが、埋め込みでこれをやるには力に見合ったレベルまで骨格と腱を強化しなければならないためです。  しかも、フレームが歪みや破断を起こしたとき、この矯正や取り替えに手術が必要になります。フレームは、戦闘のような力のかかる仕事に使うと歪むリスクを常に抱えています。歪みを防ぐほど頑強かつ柔軟な素材で作ることも可能ですが、そうした素材はとても高額です。  なので、このメンテナンス性の悪さから、軍では全身義体よりもパワードスーツのほうが圧倒的によく用いられます。少なくとも、パワードスーツの制式装備は存在しますが、制式装備としての全身義体は世界中の軍で存在しません。  身体能力を埋め込み機器で強化する場合、まず収入の手段があって目的に合うように行われます。ただし、メンテナンスの経費も契約によっては自分持ちであるため、手術費用を稼ぐことも容易ではありません。  社会不安の強い地域では、高額の報酬を求めて身体強化をするケースが多いのも特徴です。紛争地域などでは、四肢を失う確率も高く、義肢にするとき強化を施した民兵がニュースによく登場します。基本的に身体能力の強化は、自分の身体ひとつで稼ぐ労働者が、自らに投資するため行うものなのです  こうした山っ気が強いユーザーが多いため、身体能力の強化をしている者が白い目で見られることはよくあります。  身体能力強化のもうひとつの注意されるべき側面としては、心理的なケアが継続して必要であることがあります。  身体感覚と強化した身体は、育んできた身体感覚とズレを生じます。これが自分を見失うきっかけとなり、社会生活を危機に陥らせ、あるいは強迫神経症や統合失調症など精神症の原因となります。  身体能力強化のユーザーに山師が多いため、こうして追い詰められても適切なケアを受けていないことがよくあります。そして、取り返しのつかない事件を起こすケースもしばしば起こっています。  こうしたことから、会員制クラブや一部のレストランのような入場者を厳しく制限する場所では、身体能力に医療用以上の強化を施した人間が入場できません。入場不可能な店はそれなりに多く、ガイドブックには、強化を施したユーザーが入場可能かどうかは必ず記載されています。  日本では、身体能力強化を施した人間は、その施した部位と身体能力を警察に登録する必要があります。これは、強化をした人体が凶器であるとみなされるためです。  たとえば身体能力強化をした人間が、生身の人間を殴って傷害事件になった場合、裁判では凶器を用いたとして扱われることにあります。 *感覚機器  埋め込み機器としては、感覚機器はもっとも簡易なものと、もっとも人間性のエッジラインに迫るものが存在するカテゴリです。  感覚器の増強は、ボディガードや警察官、兵士などに特によく用いられます。両手を常に開けておくということが、生存に繋がるためです。  埋め込み機器での感覚増強は、暗視や望遠などの機能追加の他、老眼など生体の事由で感覚が弱まった人々にも使われます。  埋め込み機器による感覚増強には、皮下に無線機を埋め込むような、ごくごく簡単なものが存在します。  これは太めの注射針のような専用の道具を用いて、手術なしでもインプラントができるほどです。しかも、機器自体が糖でできていて、放っておくと体内に吸収されてしまします。  無線機を頭蓋骨に接触する位置に埋め込むのは、もっともよく行われているインプラントのひとつです。これは無線通話がハンズフリーで行えるためで、携帯端末のヘビーユーザーにしばしば行われます。  また、携帯端末の画面として機能する画像素子を網膜に貼り付けるようなことも、高い頻度で行われています。  端末画像をゴーグルや眼鏡などに頼らずハンズフリーで見ることができるのは、大きなアドバンテージです。無線機と端末画像については、あらゆる職業、人種、年齢で行われています。  端末をいついかなるときでもハンズフリーで扱えるとは、ネットワークにいつでも接続できるということで、生身の目の人間とは明確に違った視界を生きるとも言えます。  感覚器増強のうち、端末画面のハンズフリー化は、長期の入院や療養を行っている患者が行っているケースもあります。これは、退屈を紛らわすためと、恐怖をまぎらわすためです。 ゲームや映画などのハードユーザーが、年を取る前にハンズフリー化を行ったり、寝たきりになって端末を保持するのもつらい状態になって埋め込み機器を使うケースもよくあります。老人が快適な場所でずっと中空を眺めている風景は、珍しいものではありません。 *脳処理能力の増強  埋め込み機器による脳処理能力増強は、「副脳」と呼ばれる埋め込み機器で行います。  この「副脳」による強化は、感覚としては機器を使用している感覚が一切無く、ボーダーレスで自分の能力が上がったように感じられます。  その効果は非常に高く、思考力や論理構成力、発想力が顕著に上がります。ただし、副脳による強化で上がる発想力とは、図形の角度を変えるような「ものの見え方の角度を変える能力」と「同じパターンを探す」能力が中心になります。  また、脳と接続した外部記憶領域、あるいはネットワーク上のデータを、脳の海馬と同じように使うことも可能なので、莫大なデータにアクセスすることも可能です。  ただし、その万能感は多くの部分、錯覚であることも判明しています。(参考「拡張された人間-人体補助機器と人工知能」)  それでもなお、人間の生体の脳の能力とアーキテクチャの問題により、高度AIの能力(超高度AIですらはなく)に勝つことは、たいていの仕事でほぼないのです。これは自動車に対して人間をどこまで強化すれば徒競走で勝てるのかという例で語られることがあります。人間の能力を上げることは無意味ではないのですが、自動車に競走で勝てるかはまた別の問題です。  神経反応を加速して、アスリートに人間以上の動きをさせるようなことも可能です。ですが、脳と加速している機器の間のなかだちは人工知能がおこなうことになります。  脳の処理能力の増強は、ホワイトカラーの労働者にしばしば行われます。ビジネスの現場では、健康的に見えるということが重視されるため、アシスト機器による外部増強よりも埋め込み機器が使用されることは数多くあります。 *純粋拡張機器  人間の能力にない機能を追加する純粋拡張機器は、埋め込み機器によって行われることはほとんどありません。  アシスト機器によるものとは違って、仕事のためだけに使われることが軍事以外ではないためです。  一般的な企業では、人間の能力にない能力を機器で外付け追加するならともかく、埋め込み機器で行うことを倫理にもとるとしているのです。(※) (※)埋め込み機器による純粋拡張は、一種の人間改造であると考えられています。これが倫理的に問題ないということは、一昔ふうの怪人への改造が問題ないということでもあるためです。  純粋拡張機器の埋め込みは、ライフスタイルや信条の問題であるとみなされます。  この違いは、社会から見られる目の差にあらわれます。  純粋拡張機器の埋め込み自体に法的規制がかかっていることは少なくありません。日本でも制限があります。  機器を市場流通させるためには認可マークが必要になり、許諾されている機器のほうが少ないほどです。  こうした拡張機器の埋め込みは、宇宙生活者の間ではしばしば行われます。これは、宇宙生活者たちが埋め込み機器に寛容であるためです。  宇宙生活で四肢や内臓を失う可能性が高いためもありますが、単純に必要であることが大きく影響しています。引力と酸素と水がある地上で進化した生物である人間は、宇宙では不自由することが多いのです。  たとえば、蜘蛛のような粘着質の糸を射出する機能を、地上生活ではそれほど必要としません。けれど、無重量状態でひとつところに留まることにすら苦労する宇宙では、これは遥かに使い出がある能力なのです。  このため、宇宙生活者のニーズに応えるため、埋め込み機器メーカーは宇宙に拠点を持ちたがっています。  けれど、これは宇宙に高度AIを持ち込むことを制限するIAIAの方針などによって実現していません。宇宙で人間性を大きく変動させる文化が花開くことを、地球文化は恐れているのです。(参照「宇宙利用」) *美容機器  埋め込み式機器の中で、もうひとつよく用いられているのは、埋め込み機器による美容整形です。  これは鼻を高くするなどの整形のための人工骨格、恒久的な瞳や虹彩の色彩変化も含まれます。  美容整形の技術の歴史により、鼻を高くする手術などは利便性が上がっています。手術後に三日間程度なら可塑性があり、鼻のかたちや顎やほお骨のかたちなどは、術後に調整を行います。  また、人工表情筋の移植によって、顔のかたちだけではなく、笑顔などの表情レベルでの整形が可能になっています。  人工皮膚への張り替え技術も存在し、六十台、七十台でも、見た目では二十台に見えるような人間もいます。  最もよく扱われる美容機器は、医療用途の埋め込み機器との中間的な存在である人工顎です。再生治療による歯肉再生と差し歯では、崩れ落ちる砂山を何度も作り直すようなものでもあり、ものを食べ続けるために入れ歯のかわりに人工顎の移植をする人々は一定割合でいます。  ただし、これは突き詰めると姿勢を保つために骨格を増強したり、皮膚コンディションを保つために人工臓器を移植することにも繋がります。  最終的に、美容を保つために全身義体にする必要があるということであり、美容機器は際限なくお金のかかる一種の泥沼であると考えられています。
*埋め込み機器  埋め込み機器は、主にアシスト機器では達成不可能な役割のために使われます。  埋め込み機器の最も代表的な例が人工臓器です。  外付けのアシスト機器では、能力的あるいはインタフェース的に間に合わない場合、埋め込み機器が用いられています。病気の人間が移植する人工臓器は、まさにアシスト機器では間に合わないから移植する人体拡張機器です。    この例は、つまり埋め込み機器とアシスト機器の差が、命がかかっていれば、あっさり吹き飛ぶということでもあります。  命の危険にさらされている場所では、埋め込み機器も一般的に用いられます。  軍人や一部の治安関係者がそれで、埋め込み機器の使用は珍しいことではありません。 *強化身体能力  身体能力の埋め込み機器による拡張で、もっともよく扱われるものは医療用途です。身体のきかなくなった病人や老人にとって、もう一度運動ができるようになることは人生の質を大きく上げる効果が見込めます。  ただし、この用途では、一般成人男性程度くらいまでと出力や強度に制限がかけられています。  人工関節や人工骨のような耐久性の高いパーツは、移植後一年くらいまでの経過観察で拒絶がないことを確認すれば、その後は一生メンテナンスしないこともあります。  埋め込み機器による筋力などのそれ以上の強化は、外付けのアシスト機器で行うよりもハードルが高くなります。外付け機器では強いフレームを外付けできましたが、埋め込みでこれをやるには力に見合ったレベルまで骨格と腱を強化しなければならないためです。  しかも、フレームが歪みや破断を起こしたとき、この矯正や取り替えに手術が必要になります。フレームは、戦闘のような力のかかる仕事に使うと歪むリスクを常に抱えています。歪みを防ぐほど頑強かつ柔軟な素材で作ることも可能ですが、そうした素材はとても高額です。  なので、このメンテナンス性の悪さから、軍では全身義体よりもパワードスーツのほうが圧倒的によく用いられます。少なくとも、パワードスーツの制式装備は存在しますが、制式装備としての全身義体は世界中の軍で存在しません。  身体能力を埋め込み機器で強化する場合、まず収入の手段があって目的に合うように行われます。ただし、メンテナンスの経費も契約によっては自分持ちであるため、手術費用を稼ぐことも容易ではありません。  社会不安の強い地域では、高額の報酬を求めて身体強化をするケースが多いのも特徴です。紛争地域などでは、四肢を失う確率も高く、義肢にするとき強化を施した民兵がニュースによく登場します。基本的に身体能力の強化は、自分の身体ひとつで稼ぐ労働者が、自らに投資するため行うものなのです  こうした山っ気が強いユーザーが多いため、身体能力の強化をしている者が白い目で見られることはよくあります。  身体能力強化のもうひとつの注意されるべき側面としては、心理的なケアが継続して必要であることがあります。  身体感覚と強化した身体は、育んできた身体感覚とズレを生じます。これが自分を見失うきっかけとなり、社会生活を危機に陥らせ、あるいは強迫神経症や統合失調症など精神症の原因となります。  身体能力強化のユーザーに山師が多いため、こうして追い詰められても適切なケアを受けていないことがよくあります。そして、取り返しのつかない事件を起こすケースもしばしば起こっています。  こうしたことから、会員制クラブや一部のレストランのような入場者を厳しく制限する場所では、身体能力に医療用以上の強化を施した人間が入場できません。入場不可能な店はそれなりに多く、ガイドブックには、強化を施したユーザーが入場可能かどうかは必ず記載されています。  日本では、身体能力強化を施した人間は、その施した部位と身体能力を警察に登録する必要があります。これは、強化をした人体が凶器であるとみなされるためです。  たとえば身体能力強化をした人間が、生身の人間を殴って傷害事件になった場合、裁判では凶器を用いたとして扱われることにあります。 *感覚機器  埋め込み機器としては、感覚機器はもっとも簡易なものと、もっとも人間性のエッジラインに迫るものが存在するカテゴリです。  感覚器の増強は、ボディガードや警察官、兵士などに特によく用いられます。両手を常に開けておくということが、生存に繋がるためです。  埋め込み機器での感覚増強は、暗視や望遠などの機能追加の他、老眼など生体の事由で感覚が弱まった人々にも使われます。  埋め込み機器による感覚増強には、皮下に無線機を埋め込むような、ごくごく簡単なものが存在します。  これは太めの注射針のような専用の道具を用いて、手術なしでもインプラントができるほどです。しかも、機器自体が糖でできていて、放っておくと体内に吸収されてしまします。  無線機を頭蓋骨に接触する位置に埋め込むのは、もっともよく行われているインプラントのひとつです。これは無線通話がハンズフリーで行えるためで、携帯端末のヘビーユーザーにしばしば行われます。  また、携帯端末の画面として機能する画像素子を網膜に貼り付けるようなことも、高い頻度で行われています。  端末画像をゴーグルや眼鏡などに頼らずハンズフリーで見ることができるのは、大きなアドバンテージです。無線機と端末画像については、あらゆる職業、人種、年齢で行われています。  端末をいついかなるときでもハンズフリーで扱えるとは、ネットワークにいつでも接続できるということで、生身の目の人間とは明確に違った視界を生きるとも言えます。  感覚器増強のうち、端末画面のハンズフリー化は、長期の入院や療養を行っている患者が行っているケースもあります。これは、退屈を紛らわすためと、恐怖をまぎらわすためです。 ゲームや映画などのハードユーザーが、年を取る前にハンズフリー化を行ったり、寝たきりになって端末を保持するのもつらい状態になって埋め込み機器を使うケースもよくあります。老人が快適な場所でずっと中空を眺めている風景は、珍しいものではありません。 *脳処理能力の増強  埋め込み機器による脳処理能力増強は、「副脳」と呼ばれる埋め込み機器で行います。  この「副脳」による強化は、感覚としては機器を使用している感覚が一切無く、ボーダーレスで自分の能力が上がったように感じられます。  その効果は非常に高く、思考力や論理構成力、発想力が顕著に上がります。ただし、副脳による強化で上がる発想力とは、図形の角度を変えるような「ものの見え方の角度を変える能力」と「同じパターンを探す」能力が中心になります。  また、脳と接続した外部記憶領域、あるいはネットワーク上のデータを、脳の海馬と同じように使うことも可能なので、莫大なデータにアクセスすることも可能です。  ただし、その万能感は多くの部分、錯覚であることも判明しています。(参考「拡張された人間-人体補助機器と人工知能」)  それでもなお、人間の生体の脳の能力とアーキテクチャの問題により、高度AIの能力(超高度AIですらはなく)に勝つことは、たいていの仕事でほぼないのです。これは自動車に対して人間をどこまで強化すれば徒競走で勝てるのかという例で語られることがあります。人間の能力を上げることは無意味ではないのですが、自動車に競走で勝てるかはまた別の問題です。  神経反応を加速して、アスリートに人間以上の動きをさせるようなことも可能です。ですが、脳と加速している機器の間のなかだちは人工知能がおこなうことになります。(参考「拡張された人間-人体補助機器と人工知能」)  脳の処理能力の増強は、ホワイトカラーの労働者にしばしば行われます。ビジネスの現場では、健康的に見えるということが重視されるため、アシスト機器による外部増強よりも埋め込み機器が使用されることは数多くあります。 *純粋拡張機器  人間の能力にない機能を追加する純粋拡張機器は、埋め込み機器によって行われることはほとんどありません。  アシスト機器によるものとは違って、仕事のためだけに使われることが軍事以外ではないためです。  一般的な企業では、人間の能力にない能力を機器で外付け追加するならともかく、埋め込み機器で行うことを倫理にもとるとしているのです。(※) (※)埋め込み機器による純粋拡張は、一種の人間改造であると考えられています。これが倫理的に問題ないということは、一昔ふうの怪人への改造が問題ないということでもあるためです。  純粋拡張機器の埋め込みは、ライフスタイルや信条の問題であるとみなされます。  この違いは、社会から見られる目の差にあらわれます。  純粋拡張機器の埋め込み自体に法的規制がかかっていることは少なくありません。日本でも制限があります。  機器を市場流通させるためには認可マークが必要になり、許諾されている機器のほうが少ないほどです。  こうした拡張機器の埋め込みは、宇宙生活者の間ではしばしば行われます。これは、宇宙生活者たちが埋め込み機器に寛容であるためです。  宇宙生活で四肢や内臓を失う可能性が高いためもありますが、単純に必要であることが大きく影響しています。引力と酸素と水がある地上で進化した生物である人間は、宇宙では不自由することが多いのです。  たとえば、蜘蛛のような粘着質の糸を射出する機能を、地上生活ではそれほど必要としません。けれど、無重量状態でひとつところに留まることにすら苦労する宇宙では、これは遥かに使い出がある能力なのです。  このため、宇宙生活者のニーズに応えるため、埋め込み機器メーカーは宇宙に拠点を持ちたがっています。  けれど、これは宇宙に高度AIを持ち込むことを制限するIAIAの方針などによって実現していません。宇宙で人間性を大きく変動させる文化が花開くことを、地球文化は恐れているのです。(参照「宇宙利用」) *美容機器  埋め込み式機器の中で、もうひとつよく用いられているのは、埋め込み機器による美容整形です。  これは鼻を高くするなどの整形のための人工骨格、恒久的な瞳や虹彩の色彩変化も含まれます。  美容整形の技術の歴史により、鼻を高くする手術などは利便性が上がっています。手術後に三日間程度なら可塑性があり、鼻のかたちや顎やほお骨のかたちなどは、術後に調整を行います。  また、人工表情筋の移植によって、顔のかたちだけではなく、笑顔などの表情レベルでの整形が可能になっています。  人工皮膚への張り替え技術も存在し、六十台、七十台でも、見た目では二十台に見えるような人間もいます。  最もよく扱われる美容機器は、医療用途の埋め込み機器との中間的な存在である人工顎です。再生治療による歯肉再生と差し歯では、崩れ落ちる砂山を何度も作り直すようなものでもあり、ものを食べ続けるために入れ歯のかわりに人工顎の移植をする人々は一定割合でいます。  ただし、これは突き詰めると姿勢を保つために骨格を増強したり、皮膚コンディションを保つために人工臓器を移植することにも繋がります。  最終的に、美容を保つために全身義体にする必要があるということであり、美容機器は際限なくお金のかかる一種の泥沼であると考えられています。

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