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ウルトラ

 授業の終了を告げるチャイムが鳴る。
 子供達は一斉に教室を飛び出し、校庭に躍り出、場所を確保するやすぐさま思い思いの遊びを始める。授業と授業の間の短い休み時間でも、いや、だからこそ授業の鬱憤を晴らすべく子供達は全力で遊ぶ。
 休み時間の定番と言えば、ドッジボールだ。
 ボールを持ってきて、校庭の土に靴底で線を引けば準備完了。線を引くこともせず、目印代わりの石を置くだけ、という大雑把なやり方もある。そういうお手軽さが理由の一つ。もう一つの理由は短い時間の中でも何人討ち取った、あいつのボールを受け止めてやった、外野に上手くパスを回してチームに貢献出来た――等々、勝敗が決さなくても、達成感を得ることができるという点だ。
 オリンピックの正式競技に採用された影響もあるかもしれない。
 近代スポーツの発展は気の力と密接な関係にある。最も早く気の力を取り入れた競技は、諸説あるが――サッカーである、と言われている。当初は気の練度が低く、手を触れずに相手選手を妨害するような小細工程度だったが、ボールに気の力を込め、いわゆる必殺シュートが撃てるようになるやいなや気の力は注目を集めた。テニスプレイヤーも必殺ショットを撃つようになった。
 ドッジボールもまたそうした気の力を競技に取り入れ、一躍世界的に人気のスポーツになった。
 人気の理由は単純明快。外野へのパスを除き、ほぼ全てが必殺ショットであるという派手さが衆目の支持を集めたのだ。
「往生せいやァァァッ!!」
 雄叫びを上げながら、トキオが全身全霊の気をボールに込めた必殺・ウルトラサイクロンマグナムウルトラショットを放った。
 気の力によって陰陽の回転を得たボールは八の字に似たランダム軌道を描き、着弾点を予測させない。
「グハァッ!」
「ぶへぁッ!?」
 一人討ち、そして次の一人の顔面を撃ち抜き、次の標的に迫る。
 その瞬間、ボールからやや離れた位置にいるサトルの目が闘志で爛々と輝いた。
 ランダム軌道で飛来するとは言え、そもそもの距離が離れている。サトル自身は安全圏にいることは明白だった。だが、休み時間はあっという間に終わってしまう。ぼーっとしていたら、突っ立ってるだけで終わってしまう。
 短い時間の中で全力を尽くすべく、サトルは両の掌に溜め込んだ気を解放して、渦状に練り上げ、吸引力でボールを引き寄せた。軌道変化系の必殺ショットに対して、吸引系の必殺キャッチは定石通りと言える。
「ぬぅ――!!」
 ボールが気の渦の中に吸い込まれる。だが、気の力では威力を完全に削ぐことはできない。吸引系の必殺キャッチは最後の詰めに自分自身の腕力でボールを捉えなければいけない。
 抱え込むようにボールを胸の中に受け止める。両足を踏ん張る。爪先に力を入れ、倒れまいと前傾姿勢――衝撃を耐え切る。キャッチ成功。地面に落下する前にキャッチしたことで、先の二名もアウトにならずに済んだ。チームメイトのために勇気を示した彼の英雄的行為に級友達が一斉に沸く。
 ――そんな光景が今、校庭のあちらこちらで繰り広げられている。
 世はまさにドッジボール黄金時代。