三0の記(ぼくたちの日本書紀)


倭国史を日本書紀に書き換えた筑紫史益はぼう大な賞与をもらった                                   日本書紀持統天皇記


 月日は流れた。笹口薬師堂は青年のにぎわい、悟れなかった多くの人を土へと戻して 行った。人の苦悩はいかように表現しても滑稽で人の喜びは紙面を尽くしてもきらめく 星の光の長さもない。時は短縮し空は凝縮して人は束の間のうたかたにひたる。人は生 まれて死ぬ、そこに何が残るというのだろう。瞬きの間に人は生まれ死んでいる。  渟鏡子ちゃんは学部の研究室で蘇我くんのことを考えていた。自分の印象に残ったこ とは何だったのだろうか・・・日の元はどんな風に記録していたのかと思った。越のシ ハタにいる筑紫くんはまだ独身なのだろうか、心配になってしまう。アイシテルとシバ タにその日の電子メールを入れておいた。

 アソカくんと文姫ちゃんは新しい家庭をアメリカでつくっている。アソカくんはノー モア・ベトナムに従い平壌の空爆撃死傷者と飢餓死傷者の数を天秤にかけ南朝鮮の貯金 通帳の残高とニラメッコしている。越の海(東海)から上陸するコースを考えている。 ハウスで文姫ちゃんとまぐわっても心配そうな顔をしている。ヘンリーが「王者の墓を 空爆するな」と言い残して死んでいた。祖父の骨が越の海のあるということは海に爆弾 を落とせない事になり苦悩の度合いが深まっている。  子供も二人目である。初孫はアメリカで生まれでTATTOと綴られた。笹口薬師堂 が気に入ってさっさとこちらに引っ越して来ている。明日香ちゃんのやり方かも知れな い。筑紫くんはTATTOと目線を合わせると蘇我くんにそっくりで動揺してしまう。 高い声で自分のマイネームを発音したが「太郎」と聞こえた。文姫ちゃんが四才になっ たらあっさり手放して育児を託した。  スカートをヒラヒラさせてドキドキさせた百女ちゃんも明日香ちゃんもただのおばちゃ んだ。けれども町で見かけても心がドキドキする華があった。赤い袴をはいた素敵な女 の子がとても優しい笑顔になっている。若い娘に興味をもったらまず最初に側にいるお 年寄りを大切にすることかも知れない。これがなかなか手ごわくてこちらの気持ちは見 据えている。彼女らの知恵を借りればいいことがあるかもしれない。  ある日すっかり白髪の多くなった筑紫くんは志波田城から笹口薬師堂に向かった。志 波田城は金くんの父親が眠りケヤキがあるので「金神社」と土地の人が呼んでいる。貞 操帯をつけた犬はある日後ろ向きに歩き去った。金氏の再審を認めぬ日の元の裁判所は まだ抵抗しているが土地の倭人は無実を誰も疑っていない。

 金くんは兄の名前で出国したので現在の当事者は金花郎の子つまり文姫ちゃんに裁判

は引き継がれようとしている。戸籍では蘇我くんの子供が文姫ちゃんと読める。弁護士 は聖夜ちゃんの父でこちらの方も彼自信の「再審」となっている。大いに国選の不真面 目を恥じている。娘の貞操帯は奪われたが、娘の生んだタットーの子供はあまりにもか わいく優秀なので、最後の死力を振り絞って弁護士の仕事をしている。  億になる書籍はここにある。日の元が越に建設したどの大学よりも多くの蔵書がある。 薪のかわりに構内で燃やしていた古書の残りを越に移したので足の踏み場もない。足が 悪いのでなかなか自由がきかない。「ぼくたちの日本書紀」の上梓も近づいていた。  筑紫くんは笹口薬師堂に呼び出されている。栗ノ木川は埋められバイパスが通ってい る。橋のたもとにアヒルの家ももうとっくに撤去されている。  笹口薬師堂では、明日香ちゃんの隣に和服を着た見知らぬ女人がひときわ輝いてそこ に座っていた。姫子ちゃんといい二五、六才であろうか。テーブルの上にはお茶としん 粉餅とおしんこが出ていた。その客が来るとこの組み合わせが多い。明日香ちゃんをは じめ姫子ちゃんは、どうやらしんこ(神功)が好きのようであった。部屋の隅に百女ちゃ んも来ている。妖艶さを増しますますあやしい。 「このお金を自由に使ってください。わたしの気持ちです。ご苦労さまでした」  紫の布がテーブルの上でハラリと落ちた。大金である。 「こんなにたくさんいただけませんが」  筑紫くんは持ってきたフロッピー・ディスクを差しだした。 「パスワードはTATTOです」  ぼくたちの日本書紀が納められていた。 「どうもありがとう。さっそく読ませてもらいます。ところで筑紫さん、この方とお見 合いされたらいかがですか」


卑弥呼には宮の中であっていた無名の男がいた             魏誌倭人伝


 百女ちゃんは話に加わってきた。 「失礼ですが、お写真をお見せしたら是非あわせて下さいということで・・・」 「二人で相談したんだけど、この方とお見合いたらどうですか?わたしが見つけてきた 人です。子供の面倒も見てもらっていました」  明日香ちゃんは晴れ晴れとした顔をしていた。筑紫くんの誘惑から逃れられるからだ。 蘇我くんの紹介よりも安心は安心だ。おとなしそうなその人は丁寧に頭を下げた。声に 聞き覚えがあった。アソカちゃんに白鳥の来訪を告げた人だ。目が切れ長で緋色の服が 似合う。真珠のネックレスと翡翠のブローチをしている。物静かだが鬼道につかえよく 衆を惑わす、感じだ。宗教法人のほうで祈祷でもやっているのだろうか。 「姫子(ひめこ)と申します。よろしくお願いします」  出身は筑紫国、広大な敷地にさながら宮のような生活をしていたが原爆で焼け出され たという。調度、行儀見習いで大和にいたので被災を免れたが一族浪党の骨すら拾えず 苦境に陥ったという。その後、あまたの人がほかに屋敷、宮の跡を指摘したが痕跡すら とどめていない。原子の力が根こそぎ地をひっくりかえしたわけだ。遺跡ごと消えてし まった。原爆で宮の跡が消え去る様が見えるようになった。 「せめて、その地を訪ね当て石碑でも立てたいのですが」  涙ぐんでいる。筑紫くんは心を打たれてた。 「わたしは最後の戦争で右足を爆裂切断しました。その時警棒で睾丸も失いまして。蘇 我くんに渟鏡子さんのお世話を申し渡されていたのですが、逆に渟鏡子さんにその後の 世話を受ける始末でした。幸い、蘇我くんが図書館から持ち出した書籍のおかげて生活 には困りませんでしたが約束を何一つ果たしていません。蘇我くんが明日香ちゃんと結 婚してくれと遺言したというのにそれも果たしていません。それにわたしは足が不自由 で男として役にたちません」 「まぐわえないということですか。女人を満足させられないと云う事ですか?」  百女ちゃんが口を開いた。姫子さんは表情を動かさずこちらを見ている。明日香ちゃ んは頬を赤くして顔をふせている。

 筑紫くんは即答を避けて廊下に出た。

妻妾が夫のために捨てられ他に嫁ぐは世の常である           孝徳天皇紀


 百女ちゃんが追いかけてきた。着物の裾に手をやって乱れを抑えている。筑紫くんは 誘われるまま彼女の居室に向かった。百女ちゃんは敷地のすみの別棟に住んでいた。外 部から遮断され銀杏の木が陽の光を遠ざけている。母屋が陽なら別棟は陰、筑紫くんは 初めて通されたわけだ。百女ちゃんの庵は建坪が弐百坪の日本式の家屋であった。  木にオナガが来ている。多くの女人が出迎えている。剃髪しているものもいる。客室 に通されて茶が出された。白い着物を着ている。年の頃はみな一八、九であろうか。 「髪を剃っていない人が多いですね」  うわさに聞いていた尼寺のような所なのだ。 「年頃ですからいたしません。行儀を習いに来ています。でもオイタをしているから下 はわたしが剃ってしまいます。町へ出てもまぐわれませんから。町でお漏らしをするの よ、近ごろの子は」  女人の裾をずらし見せた。あわてて立ち去った。坂田くんが少年課に頼まれて連れて くる少女もいるという。  百女ちゃんは隣の部屋の部屋の襖を開けた。一人の若い女人が布団に寝ている。北海 道の親が娘が髪を染めたり近所の不良仲間と遊びはじめたので不安でこの寺にあづけた と云った。両親が相手の男を調べたらプレイボーイで女人を養う気はないと判断した。 性に興味を持っているので出来れば沈めて欲しい、自分と学校には何も出来ないと母親 は泣いた。 「具合はどうですか?」

 百女ちゃんは茶を出した後、女人に話しかけた。着物に手をかける。着物の胸をはだ

け膨らんでいる乳房を拭いた。下履きを見られまいとあわてて木綿の浴衣の裾に手をや り下腹部を隠した。 「あら、恥ずかしいのね、まだ男の人を知らないの?」  足を開かせ股間をこちらに向けて濡れた布を当てた。躰に力を入れている。 「恥ずかしい・・・」 「彼氏とはどこまで進んでいるの?」 「Bまで」 「Bってなあに?」  説明を聞いて百女ちゃんは笑いころげた。 「どんな人なの?」 「親から買って貰った車で校門まで迎えに来るんです」 「どんな人かな?どんな人と喧嘩をしているの?」 「誰とも・・・」 「若い頃、喧嘩しないで育った男は一生何もしないわよ」 「・・・」 「両親はなんて云っているの?」 「反対しています」  地手で身体を拭いてやっている。病気で入浴が出来ないのである。 「初恋はいつなの?」 「小学校二年の時、幼稚園でももう好きな子はいたけど」 「最近は早いのね。いまでも好き?」 「はい、一番好きだったんです」 「いまの大学生とどっちが好きなの?」 「いまの彼が一番好きです」 「初恋の人が一番好きだって云ったじゃない」 「初恋は結ばれないんです」 「どうしてかしら?」 「でもここに来てから恋しくなくなって来たんです」 「あら、困ったわ。ポケットなんとかがいつも鳴っているわね。でも、わたしは初恋の 人がいまでも好きよ。彼が鳴らしているの?」 「いまの連絡方法ですよ」  筑紫くんが口をはさむ。若い肌を見ているだけでは悪いと思ったのだ。 「わたし達、純愛ですよ。でもおばさまはもうZですよ!」  パンティを見せているから羞恥心が消えたようだ。 「あらいやだ、この子ったら聞いていたの?でもZの次はAよ」 「・・・恐くなっちゃいます。自分にもあんなものが潜んでいると考えると、あんなこ とのためにポケットベルをもっていたなんて。このベルにはわたしの身体を欲しがって いるみたい。向こうの用事で鳴るだけで夢とか希望とかはベルを鳴らさないんです。わ たし、男の人に興味があっただけかも知れません。この気持ちを沈めてみてもう一度彼 とのことは考えるんです」 「あら、そうなの」 「わたしはおばさまの会社で働きたいのです。北海道に返さないでください」

 金くんが百女ちゃんに残した廃品回収センターがリサイクルショップに様変わりして いた。志波田城の隣だ。金くんの城の横はバイパスが通り土地の値段が高騰していた。 土地が買い足されて合筆して増えている。土地は蘇我くんと金くんの名義に書き換えら れていた。北の異国の漁師が立ち寄り車や洗濯機を蟹缶と交換するため忙しい。もう十 年分の缶詰めが備蓄されていた。猛反対したのに明日香ちゃんが旧敵の中藤四兄弟に経 営の一端を任せたのだ。百女ちゃんも高額所得者ですっかり有名になってしまった。そ の会社のことを云っているのだ。父母が何回も説得していることがたちどころに現実と なった。向こうのボスとの直通電話が引かれて持ち船の大方の入港時期は全部知ってい た。ボスは電話で「アイ・ラブ・ユー」と慣れない英語で再会を楽しみにしていた。越 の島での外人のまぐあいを盗み見たのが参考になった。グラスノスチでいきなり聞き分 けの悪い駄駄っ子が一人増え世界はにぎやかになった。

「このおじさまなんか最初、会社の事も知っているし一番いいのよ、なんでも教えてく れるわよ。シハタに先に行っていますか?学校は転校してもちゃんと卒業してね」 「そうだと嬉しいんですけど」 「・・・どうする?今日からまた母屋のタットーちゃんと一緒の部屋で寝る?あそこに はまた新しい娘が行っているでしょう。お風呂で九州から来てる子の胸をさわるんだっ てね。大きいから気に入ったのかしら、あなたもずっと一緒に寝ていたじゃない、あな たのにはあきちゃったのかな」 「まだ、わたしのも触ります!」 「あら、そうあなたの胸も小さいけどハリがあるからね」

 若い娘はその一言に満足そうな顔をした。胸が現れた。

「一緒にお風呂に入っているとわたしたちの下着を隠すんですよ」  余裕が出てきたのか鉾先がこちらに向いた。 「あら、いやだ、パンティなしじゃ大変よねえ、でも寝室では裸が決まりなんでしょ」 「そうなんですけど」 「今、何人でお世話しているの」 「三人ですけど」 「ちゃんとタットーのベットへ入って寝かせつけている?」 「ええ、交代ですけど」 「タットーくんの所へ今日戻る?」  もう一度娘の胸を木綿で拭いた。犬猫は小さいうちから番で飼うべきだ。最も子供を 動物だと云うわけではないが。自涜が禁じられていた。男女七才にして席を同じくする というわけだ。一人っ子の軟弱なママが多い中では理解されないだろう。 「もう一晩、ここにいます、まだ熱もあるし」 「あら、そう。今日は隣に姫子のおば様とおじさまが泊まるかもしれないからそれでも いいならお泊まりなさい」

 襖は閉められふたたび百女ちゃんと和室に対座した。 「隣はわたしの寝室になっておりますの。年頃になると病気が多くなり困ります」  意味ありげに微笑んだ。 「ああ、それからお見合いの相手は昨日から泊まっていますからわたしがよく吟味して おきました。まだ、男の人をそんなに知りません」  耳元でささやく。 「エッ!」  筑紫くんは百女ちゃんが何を云おうとしているのかわからなかった。 「しみとかアザはありませんし、あの部分もよく汗をかきますがきつうございました。 胸は鳩胸で男の方は大きい方がおよろしいんでしょ、本人は感じないと申しておりまし たが、きついくらいに噛みますとお声をお出しになりますよ。一度目お腰を浮かべてお 指で致して下さい。暗いと怖がりますので明かりをつけて乳房を噛んで差し上げるたら いかがですか?必ず二回は差し上げて下さい。知らない仲ではありませんしきちんとし た人をご紹介しないと・・・まぐわりは一人よがりを避けて逝かせませんと必ず謀反が おきます。理解してもらえましたか。まぐわいはお腰をつかうとは限りませんよ」  身体から汗が吹き出した。自分の身勝手なセックスがどれほど女人をいらだたせてい るか考えるべきだろう。 「あっ、それから今夜一緒に泊まられてみて下さい。達するとき声が大きすぎるって隣 の明日香ちゃんに今朝云われましたの。こちらに移られてきても結構ですよ、明日香ちゃ んもご自分のことを棚に上げて・・・そんなことをおっしゃるのよ。それから明日香ちゃ んですけど、まだ子供さんが一人でもったいないのですけど、あの身体はわたしが満足 させてあげれますからご遺言のこと、あきらめてくださいね、本当に白い陶磁器のよう な肌で男の衆が抱いて上げられれば一番よろしいんですけどね。昨日なんてその後、わ たし明日香ちゃんとご一緒したんですけど朝まで寝かしてくれないんですよ。毎夜わた くしが天国にお連れしますから。もう十才の頃からわたしがお教えしていますから」  舎人くんが明日香ちゃんの寝室の世話をしていたから意外だった。百女ちゃんは首す じのアザを腰をくねらせたが目は相手をうかがうように光っていた。どんなスキャンダ ルを隠そうとしてこんな話をしたのだろう。 「筑紫さん、集まって来たあの子たちのために学校をつくってくれませんか?」 「学校ですか?塾のようなものでよろしいですか」 「何を教えてもかまいません。万世一系でもかまいませんよ」  目が笑っている。百女ちゃんは学校に行けなかったので執念を持っている。今日、子 供は社会で「戦争放棄」を「平和主義」と教えられている。武邑先生は朽ち果てている。 もう一度子供は必ず戦争を始めるはずだ。すぐに元に戻るものだ。 「何か他には?」 「あっ、ありません」 「姫子さんは今晩こちらでお泊まりですから。言い含めておきましたから・・・本人も それの方がいいと申していますから。お断りになるにしても一度まぐわいませんとね。 よろしいですね・・・」 「はい、頂戴いたします。ご面倒おかけします」 「あっ、それから先方にはわたしのこの話は内緒にしておいて下さい。あの方はわたし に安心してなんでも話してくれましたから。睦みごとでお別れになる方もいらっしゃい ますようで・・・ご夫婦でもそういうことは話しにくいものなのでしょうか・・・ご夫 婦になられたらもう私には相談しないで下さいね。信頼と実行でね、難しいことはわか りませんから。女同士ということで心を開いたのですから、お教え出来る事は昨晩で済 ませました、あなたには今終わりました」  策略にはまったような気もするが真相はわからない。その庵を後にして近所の薬局の 自販機に飛びつき栄養ドリンクを小銭の続く限り買い求めた。一週間前その自動販売機 が歩道にはみ出しているとメジャーを当てて議会と警察の資料を作っていたので薬局の 主人は不思議そうな顔をした。妻妾をみんなが持てばよい、と詔した蘇我くんが笑って いるようだった。  筑紫くんは遺骨のことはあきらめてなかった。金くんがいれば、反対してくれるのに と明日香ちゃんは皮肉を云った。六角堂に近づかぬように見張っていた。死んだ蘇我く んが尚、自分を越の海に走らすと思っているのだろう。

 ある日、明日香ちゃんは六角堂に筑紫くんを誘い中に入った。赤い骨壷が二つありそ の一つを渡した。それを越の海に卷いて世人の涙を誘い新聞に取り上げられた。明日香 ちゃんは笑みさえ浮かべていた。越の海が許可された。心の中でこれほどの年月を必要 としたのだろうか。  年々妖艶さが増し笑みが戻った。女人とは不思議なものだ・・・  めずらしく髪を下ろし少女のようなにぎわいだ。

 日の元の警察から届けられた筑紫くんが器の骨壷だった。もう一つ同じものがあった

ので大いに不審に思い、ある日ついに忍び込んだ。その赤い無名異焼きの骨坪は学生会 館の金庫ものと同じだった。  筑紫くんはこの骨壷の中にどうして骨があるのか不可解だった。何故ならん、あと一 器の舎利の存するは。一緒の写真は黄色に変色されており眉の太い蘇我くんの写真が入っ ていた。何故、わざわざ古い自分の写真を骨壷に入れたのか解明出来ない。筑紫くんが 届けた金庫の中の無名異焼きは蘇我くんが持って来たものだ。六角堂に入らず仏間にと めおかれていた。明日香ちゃんが拝んだ形跡はない。明日香ちゃんが警察からのその骨 壷に手をふれただけで涙も見せなかったのは解せない。  内ゲバの新聞記事、週刊誌、発表された内部記事が届けられ秘密にしたことを何度も あやまった。 「蘇我が死んだと云うのは本当ですか?新聞に書いて有るだけじゃないですか?」  明日香ちゃんは新聞の唯一信じられる死亡記事も信じないのだろうか。  どうしてそんなことを云ったのだろう。

別記壱の記(日の元の日本書紀-渟鏡子ちゃんの届けた資料)


昭和天皇のある年  この年、地震があり民が多く焼け出された。家を失うもの山の下 1964 に集まり口々に天も地も見たくないと叫んだ。ペルシアの燃える

                   水が燃え続け一家十人が阿鼻叫喚し焼け死ぬ。ただ一人生き残る
                   子、多額の賠償金を受け人々の義援金加わり財をなす。その名を

          太郎と謂う。

昭和天皇のある年  金花郎が越から船に乗り国に帰った。 1966 昭和天皇のある年  笹口の百女に女子が産まれた。蒲原の中藤は大いに喜んで財産を 1966        与えた。

昭和天皇のある年  越のテルコに不義の子が生まれた。親子の交わりは禁じられてい           るはずだ。 1967 昭和天皇のある年  北の朝鮮への百女の旅券が拒否された。 1967

昭和天皇のある年 蒲原の百女に男子が産まれた。 1969 昭和天皇のある年  越のセリカが舞人、良く歌う美女を集めて毎夜宴を催し連日盛況 1969        を呈した。

昭和天皇のある年  美濃で大抗争が起こりサカタが捕縛され後釈き放された。 1969 昭和天皇のある年  蒲原の百女に男子が産まれた。 1970 昭和天皇のある年  中藤の蒲原が明け方死んだ。子供は男子六名で女子は四人である 1970        。盛大に葬儀が催されお昼過ぎ白い鳳が降りたので人々はあれは           誰だろうと云った。ある人によると男子は八名女子は五名という           。そのうち米山中藤が家をついだが蒲原の非嫡出子が意義をとな           へある日裁判所に話があると呼出、和解を勧めたけれど入口で言           葉に気をつけろというものがあったので、そのまま家にかえった 昭和天皇のある年  大唐の水軍と合戦して倭の水軍ヤスダは利なしとして退いた。倭 1969,01,18     漢氏が倭軍との戦いの勝利の状況をことさら大げさに語ったが天           皇は御嘉賞の言葉を発せず倭軍に死者の無い事を確認しこれを即           刻帰した。

昭和天皇のある年  蒲原の中藤、木戸の赤井をつかいて蒲原の非嫡出子を責める。 1970        蒲原の百女がこの時一一月住まいを古町に移し多くの人はこれに           従った。一人の女子のみ引き取る。蒲原中藤、残る人少なくその           年、蒲原平野に凶作が起こる。

昭和天皇のある年  越のセイヤが口入屋を繁盛させた。 1970 昭和天皇のある年  越の金花郎が出国した。別人という人もいる。その年妹のアスカ 1970        が欧州にしばしとどまった。

昭和天皇のある年  ミマナが役目を終えて解散した。 1972


昭和天皇のある年  越の金花郎がアメリカから日の元に帰国した。 1971 昭和天皇のある年  この年、日食が起こる。蒲原の百女の旅券が止められた。武蔵の 1971        国の名前は分からないがある男が民を惑わし扇動するので頭骸を           割っておいた。そののち舌をぬき指を折りてこれを許し野に捨て           た。虎を野に放つが如しと云う者もあるが喋ることも書くことも           出来ないからいい気味である。心あるものは誰も相手にしなかっ           た。厩戸の皇子のいった和が分からぬ者はいつの世にもいるもの           でよい例になるからここに記載した。           蒲原の百女は嘆き悲しみ人々に訴えたが人々は理由が分からずか           えってこれを非難した。やはり野に放った虎にはならなかった。           戦人も勝利し盾をおいた。怨霊が出ることもあるまい。    

昭和天皇のある年  欧州の景教の国に雷(いかずち)が落ちて国を走る城壁が朽ち果 1971        てた。そののち雷声が北の凍土の国に響き渡りふたたび神が舞い           降りた。旧の高句麗の国にて金花郎なる者、宮の賢き姫を西方に           連れ出した罪にて労役を課したがその後反省しないので鉛の球を           口に食わらせたたちまちにして果てた。

昭和天皇のある年  欧州のアスカが男子を生んで越に戻った。 1972- 昭和天皇のある日  アサマが落城した。 1972,02 昭和天皇のある年  日本の白鳥が北の朝鮮に降りた。淀(ヨド)の川が溢れた。 1972-- 昭和天皇のある年  笹口にある学校に女子が入学した。幼女がお礼の言葉をとなへた 1972        。その女子の名は蒲原の文姫といい美貌恵まれ多くの人々が感動           した。市の重鎮、みなその女子の名を問う。六角堂に住居すると           答えた。不気味なので火を放てと人が云っている。文姫の美貌で           重鎮の誰も云わなくなった。愚かな事である。

昭和天皇のある年  笹口に寺が出来た。 1975-1978 昭和天皇のある年  アメリカに亡命した絹姫が男子を生んだ。 1978 昭和天皇のある年  この年六角の文姫朝鮮を旅行す。見目麗しい文姫は白山豪に内縁 1978        を申し込まれている。凍土の国極東を経由し越に帰国す。中藤不           審に思い木戸を使者とし再度の恋文を届けた。           我が妻何故に半島と極東にに赴くと。ある人の曰く、途中欧州を           経由すと。また、ある人曰くアスカ、文姫に同行す、と。アスカ           とはよくわかないが笹口の出身らしい。黒目が美しくまぐわりた           いと思った男人たくさんいたが独り身らしい。男子が一人いるら           しい。その名前がアスカというのかも知れない。恋の歌を多く書           いているようだ。昔日誰かを愛したという人もいる。

昭和天皇のある年  越のアソカと文姫が婚約した。 1978 昭和天皇のある年  南の朝鮮に向かっていた白鳳が途中傷をおって舞い落ちた。他の 1988        白鳳も傷ついたが青い目の漁師に助けられた。1988,11,29

平成天皇の一年   一月、昭和天皇崩御、武蔵野陵に葬る。この日諸人大いに嘆く。 1989        一人として外に出でず。陛下の崩御をテレビで見んが為也。倭国           誌に曰く、諸国のビデオ屋に人殺到し店員は助けを求めたという           。調べた結果外に出た人は少ないはずだからそんなことはないと           分かった。おかしなことを書く本もあるものである。慎まなけれ           ばならない。           この年アメリカから文姫の長子タットーが戻った。

平成天皇のある年  越の百女の旅券が拒否された。米国の文姫が旅券を申請した。 1992 平成天皇のある年  シハタの城にロシアの漁民が朝貢した。倭国は天皇といって貢物 1993        を受け取った。国司が中央に報告したが沙汰がなかった。

平成天皇のある年  北の遼東のミサイルが越に向かい試射されその後、日の元種ケ島 1993        国がロケットを発射す。人々大いに驚き諸国に使者を送りこれを           責めんと欲す。鬼畜遼東の北と人々ののしり核を乗せた戦船がつ           いたから安全であると云った。

平成天皇のある年  アスカが欧州に行く。三ケ月に一度行。長くて十泊、もう三十一 1994,01       回になる。ヌカコがアスカを批判した。

平成天皇のある年  越のツクシがトジコを呼んで看護のために薬師学校を作った。 1994,02 平成天皇のある年  星が月に入った。流星が越の海に入ったと伝えられた。 1993,03 平成天皇のある年 1994,04  この年、鮭がたくさん三面の川で取れた。なにかの前兆なのか。人は海鮭に堰を設け ることが出来ない。ましていやんや人間をや。諸人は祭事にからめていろんな事を云う が土に柵することは出来ても人の心に柵することは出来ない。いろんな事を書いてきた けれど死に望むときその事は否定できなかった。そして、天が怒り星が落ち土が砕け、 人が水に飲み込まれるとき分かるであろう。けれどもその時はみんなが死んでしまって いてふたたび罪を繰り返す。多くの人は夕餉の食事を家族と共にとることを望んでいる だけで同胞を殺したいと思っていない。自分の妻の鉾と子の盾を奪う王だけを殺したい と思っているだけである。妻の女陰を埋め娘の陰を奪うものに誰が従うであろうか。妻 子の糊口を凌ごうと押し黙っているだけなのである。古来半島と交流があったが、殺し あってその結果なにが残っただろうか。何も残らなかったでないか。一面の屍の前に和 を誓ったではないか。屍が土に戻らぬうちに次の闘いを挑むつもりなのだろうか。貧は 弱ではない。戦いは常に勝つとは限らない。諸人終われなき遊技に狂奔するがよい。  倭国誌にはこんなことを書いているらしいが、たわいのないことである。つつしまな ければならない。つつしまなければならない。

別記弐の記(語り部あとがき、謹んで妃蘇我明日香に上梓す)


或本に曰く・・・                           日本書紀


 いまわたしが思い返して見ると十才で仕様がすべて決まってしまったことに気づい たのです。その後の中学、高校、大学とぼくたちはその車を走らせたにすぎません。き しんでゆがんでエンコしました。何度も小学校に戻って直しました。幼くて幼稚な思想 ではなかったのです。特に中学、高校の六年間の間に蘇我くんたちが二回に渡る縄張り 戦争を強いられています。圧倒的多数は個性的でありえない。養殖で太らされている現 実では鶏舎で太らされるのと同様に青春はありえません。二0才を過ぎた老巧した肉体 には夢が消えています。その心は姿以上に醜く思想は不安、不堅実です。少年を塗りか える老年の思想は醜怪で自分と社会への裏切りです。死する勇気がいつの世から消え去っ たのでしょう。  風に生きたタットー、わたしたちは十才でした。  その後の人生は死と引換に堕落との戦いだったでしょう。

 実際の金くんの生年ですが、これは当時の資料が不明確でわかりません。だいだいこ のくらいという父親の申告で小学校に編入されていました。また、蘇我くんに対しては、 双子で産まれたという説があります。どちらにしても謎は残ります。健康に問題があり 医師は長くないと安楽死を勧めましたが母親が諦めきれず自宅に持ち帰り父はどうせ死 ぬんならと一子は出生届を出さなかったそうです。蘇我くんの生命は甦りその後三年遅 れて出生届を出されたということです。両者とも三才程度高いはずです。今後の明日香 ちゃんがどの程度加筆してくれるかにかかっています。  性的な記述で誤解を受ける場面もありますがそういう事情です。地震で外で投げ捨て られたタットーがどちらなのかさらに謎は深まり事実を待つと永久に書けませんからや めておきます。救出されたタットーが蘇我くんだったのか双子の弟だった可能性がある ということです。

 系図そのものを疑う優れた歴史家なら納得していたと信じています。文字を信じる人

はこの語り部に免じて今後おやめ下さい。本書については明日香ちゃんの加筆を待つし かありません。みなさんの日の元の日本書紀に対して誤解を受けるような表現や解釈が あったら許して頂きたいと思います。金くんの父親に頂いた遺品の文庫本、若干思いを 込めていた書込が読みづらく本屋にも出かけたのですが見つかりませんでした。これだ けの本が出版される時代ですので不思議に思いました。私たちの貴重な財産ですので再 販していただけたらと存じます。時空を越えていますのであしからず。わたくしの結論 は一つの人しかんいていないと云うのが結論です。タットーは倭の心です。みなさまが 信じる日の元、日本とは違う倭国の歴史を再現しました。

 以下の著作者の著述について参考に致しましたのでここにお礼をかねて記載しておき ます。日本書紀については岩波文庫。 井沢元彦 李 寧煕 宇治谷孟 梅原 猛 岡田英弘 加治木義博 黒岩重吾 小林恵子 関 裕二 山田宗睦 (あいうえお順。書名敬称略) その他参考にした書籍 「天も地も見たくない」 「笹口小学校卒業文集」

 尚、時効に達しておりますのでご返却の要請御無用で願います。^_^

 語れずに黙したものは読者の心で解けると思います。最高の偽作者、ピエロは常にわ たしのような作者なのかも知れません。  TATTOが中央アジアを経てスイスの別荘に戻っている可能性についてご報告して おきます。亡命した絹姫が面会を要求した東洋人のことが最近暴露されました。ロサン ゼルスのレストランで金くんが亡命させた絹姫と食事している東洋人がTATTOに似 ていますがどうでしょうか。面会が証言の条件なのでCIAは暗号名TATTOを彼女 に会わせたという記事でした。これにより各中立国に広がる広がる宿泊施設、母国軍事 施設の場所、訓練の内容、庶民の生活水準が明らかになりました。  ヘンリーは掲載を阻止できなかったのでその雑誌の日本語版が出る報告に笹口薬師堂 へ来たのではないでしょうか。六角堂の近くに停車していましたが、金髪の女性が子供 を連れて乗っていました。明日香ちゃんには会いませんでした。朝鮮の絹姫は子供を連 れてアメリカから出国を認められ南朝鮮の親戚の所へ行く途中、日本に降り立ち笹口薬 師堂に寄りました。長い談笑がありましたが、仏前には座りませんでした。百女ちゃん の子供の文姫と彼女の子供は仲良しになりました。骨壷にふれた時、明日香さんは蘇我 くんが生きていることを直感したはずです。油断していましたが明日香ちゃんも一度も 手を会わせていませんでした。

 謹んで褒美を堪能し朝を迎えました。  朝、上梓した諸事記録を読みましたと云われました。  語り部はそろそろ姿を消しましょう。ご機嫌よろしゅう。

別記弐(蘇我明日香加筆したる部分)

 小机にてぼくたちの日本書紀に墨をときて次のように加筆する。

 ある年、地震記事略。蘇我の兄が死んだ。諸人は太郎と呼んでいた。山の下で金花郎

 が赤い壷に骨を納める。兄は弟で弟は兄かも知れない。異父兄弟という人もいる。山  ノ下で助けられたのは兄である。以後略。


 ある年、藤原府中が蘇我と誤認されて神田で頭を割られた。骨は笹口寺が引き取った  。一緒にいた人は蘇我太郎という人もいる。


 ある年、スイスのシハタ荘に蘇我が戻り村人に歓迎された。蘇我は金という ものも

 ある。そののち西洋の者に文を託す。使人は次の年春に旅立ったと云う。アスカへの  文のようだ。そののちアスカ、文を受け少女のように華やぐ。  この年、遺骨が越の海に入った。


 蘇我タットーは妃をたてた。蘇我太郎または金花郎またはTATTOという。正后は  明日香という名前でアソカを生んだ。つぎの妃は年上の照子先生で一男一女を生んだ  。次の妃、聖夜は二男子を生んだ。次の妃、刀自子は一男を生んだ。また夫人で越の  夫人乙美は一男を生んだ。次の夫人、美濃祖我の娘、田羅羅は一男子を生んだ。次の  夫人で田羅羅の妹の沙羅羅は一男子を生んだ。次の夫人で芹華は一男二女を生んだ。  次に蘇我太郎は、渟鏡子をめとって一女を生んだ。次にソフィーをいれて一男子を生  んだ。アメリカに住んでいる。次に絹姫は、二男二女を生んだ。南朝鮮に住んでいる  。月日は憎しみを消すだろう。なんとすばらしいことではないか。


 当時国文の女子大生渟鏡子と集めた現代史と筑紫くんの古代史を舎人くんに合体を命

 じた。舎人とは照子先生の長子である。


                                紫戸屋  克緒


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