北朝はるかなり -わが友、金正日に捧ぐ

[登場人物]
高英姫:金正日 妻、アユミ 1950/06/16(現在&age(1950,6,16);)生 T164
金春男:北朝鮮帰国者、その後諜報員 T181
佐藤一郎:金春男の日本での同級生 その後日本側協力者 T179~してその正体は?
横溝めぐみ: 少女の時代に北朝鮮に拉致されたという日本人 79冬-84夏(5年間) 行動不明
  • 金正日との結婚直前のマユミ

序章 -1962年

 少年が走っている・息もたえだえに・・・

転倒する、くるぶしから血、こぶしでぬぐう、さらに走る・・・

田を抜け、砂利道を超え、橋を渡り、犬も追いかけてくる、松林を抜ける、海岸線を

走る、砂が舞う、北風が髪をなぶる・・・

やがて少年の背丈の倍はある金網にぶつかる。全長1キロ・・・丘の上、背後は日本海。

少年は金網に手をかけ、全身の力をこめてゆする。

「おーーい、きん、金くーーん、春男、はるおーー!!」

犬が吠える。金網の向こうの薄汚れた大人たちが仕事をやめてふと、金網の

向こうの「日本」を除く。

めんどうなことにならなければいいが・・・

みな、元の作業に戻る・・・

泥だらけで塀の中で遊んでいた10歳の「アユミ」がヒロシを見つけ、金網に

ちかづいてくる。白い木綿のパンツをこっちに向けて泥んこ遊びをしていた少女がカ

マボコ兵舎の

前にいた。

「あっ、アユミ、はるおにあいたいんじゃ・・・」

「ハルオに用があるの?今、さがしてくるから、ちょっとまっていなんしゃい・・・」

額に泥をつけたマユミは大きた目をヒロシに向けて、ほほ笑んだ。「あっ、

血・・・」金網の隙間から小さな手をだして、傷口をなでる、少女の手に血、そっと

舐める、白い歯に赤い色「そけんなもん、どうでもよかっ、ハルオはどこさね」

ハルオと佐藤一郎は小学校3年生、三か月だけの同級生だ。それが今年、家族ととも

に北朝鮮に帰国することになった。その船が2,3日中に出港すると聞いて、彼は学

校を飛び出して帰還予定の朝鮮人が隔離されている施設にやってきたのだ。

アユミもハルオ同様、船に乗り込むため、この街に大阪の豊橋というところから

やってきて、待機していた。収容所に入るまで普通の日本人の小学校にいれられてい

たから三人はそこで知り合ったのだ。

アユミがキン・ハルオを連れてきた。お互い異性を気にする年なので、何食わぬ顔で

ケートの向こうから離れて歩いてきた。

「イチロー、来るころだと「ほ」もった・・・ぽくは、明日船にのり、祖国にかえ

る、おまえのことはいっしょう、わすれない、いや、「ぜたい」にまたあいにくる」

「いやだ、おれも一緒につれていけ、おれはこの国がいやになった、かあさんもとお

さんも死んでしまったし、おじさんの家じゃあ、いとこにいじめられるから、お前

と一緒に、おれも朝鮮にいくことにした」とアユミの方を見た。見つめられたアマミ

はドッキツとして目をふせた。

「おまえは、あゆみが好きなのか、あゆみが好きだからちょうせんにわたりたという

のか・・・」

「・・・」

「あゆみは、まだツルツルだ」イチローはなにがツルツルなのかと目を丸くした。

「豊橋にいたときは、あゆみは、まだつるつるだ、まだ結婚できない、おれはよく

知っているんだ、一緒に遊んでいたから・・・、あゆみのマンジョはまだ嫁にはいけ

ない、だから、お前がいくらあゆみが好きでもケコンできない・・・オムニが毛のな

い女は子が産めないとゆうとった」

金はあゆみと「お医者さんごっこ」をしょっちゅうしていたといっているのだ。

「そげぇなこと、内緒にしてとようてたのに・・・」あゆみは、キンのスネを蹴とば

し肩を手でつかんでイヤイヤをして、恥ずかしそうに奥の家の方に走り去った。

「まだ、つるつるか?」意表をつかれた質問にキンはたじろいだ。少し経つと、「気に

なるか?」「ああ」とイチローは真剣そのもの。「なら、イチロー、中に入って今日は

泊まっていけ・・・あゆみが風呂に入るときにまんじょがいくらでも見れる」

中に入れ、そう、秘密の場所からこの収容所の中に入れるのである。

東埠頭あはれ

少年は金網のゲートに沿って100メーターも入っている。内側からは金がやや遅れて

内径をおいかける。

あった。

外側はガケで土がそげ落ちている川にふくまれる。中はサザンカの白い花が金網が破

れているところをカモフラージュしていた。子供が一人やっと入れる隙間だ。

北の鉄塔の衛兵がこちらに背を向けて内陸に目を向けた一瞬のスキにイチローは

キャンプ地、異国のエリアに滑り込んだ。

中古の兵舎と兵舎の間にロープをのぐらせて、下着など衣服をほしている。

水回りにはタライ、バケツ・・・共同浴槽はまわりをムシロでおおわれて

風でまいあがる、スノコが乱雑に丸いプールのような浴槽をかこんでいる。

男湯、女湯というハングルの板が入口の杭にぶら下がっているが、カタカタと

舞い上がりどっちが入ってもとがめられないようになっていた。

彼らにすれば、ここは船に乗り込むまでの仮の宿で、造作とか衛生などに気を

くばる必要はないのだ。三泊四日で地上の楽園シャングリラに到着すればこのような

不潔な強制収容所のことなど思い出す必要もないのだ。

1961年5月の第57帰国船の名簿が発表された。

金もあゆみの家族も入っている。チョンジン行きの船に乗る前に衣服の点検、

それに風呂にはいっておこうという家族が男女入り乱れて夕闇が迫る前から

広場に集まりだした。

憲兵のような服装の役人があらわれ、あゆみの家族を隔離して、違う列に並べた。

「あゆみの父ちゃんは、おれたちと違い退去退去モンだから、風呂がちがうん

じゃ・・・日本人の世話役が入る風呂に案内されるんじゃ、かえって好都合、除き安

い・・・」

ドラムカンの影から二人の少年は母親に石鹸とガンガンと明日の余所行きの下着を

もたせられたあゆみ姉妹の姿を確認した。

「イチ、あゆみとを見せてやるけん、メンコ10個よこせ・・・」

「10個は高いぞ・・・」抗議する。

「バカ、明日で最後の別れじゃないか、センベツじゃ、それに・・・」

「それに・・・なんじゃ」

「あゆみの妹のも見せてやるけん、もうはえとるぞ・・・」

「はえとる・・・」ゴクンとイチローはつばを飲み込みメンコをポケットから

10個取り出し金に差し出した。

大阪 -1973年 23歳

イチローはあいりん地区の近くで働いていた。外車専門の修理工場である。もともと

手先が器用なので修理はメキメキ上達、社長は大阪市で外車の販売会社を立ち上げ

修理部門はさっさとイチローにまかせてしまっている。

300坪つらいの工場敷地は東に侵入レーンがあり、工場は二階建てで西にあった。

工場の弐階は宿泊施設があり、独身のイチローはここで寝起きしていた。

工場の裏は先代のつくった鉄骨増築で工場よりあかぬけている。弐階ふきぬけで、

机は四台かたまり奥に配置され先代のいう「秘書」は三名いて赤・白・黄色、青色と

好きな机に座り、ハングル・キーボードを叩いている。

工員は一級整備士が1名、二級がイチローを含めて3名いるが、一級は休みがちで

どこか時々旅行してくるからアテにはならない。

東北里第三号招待所 -1981年夏-1983年/03月

横溝めぐみ 金賢姫 金淑姫

東京・銀座 -2000年

エピローグ -2004年

スイス国際空港 貴賓室

追記

  • 藤本健二 2012年6月16日に金正恩より招待を受け、7月18日に「10年前の約束を守れ」というメッセージを受け[9]、2012年7月21日〜8月4日には11年ぶりに北朝鮮を訪問するなど、正恩が北朝鮮トップとなった今でも縁は切れていない[10]。7月22日に金正恩・李雪主・金汝貞らと面会。訪問の直前、7月6日に息子が心臓発作で死亡したことを、7月23日に家族と面会した際に聞く。
  • 金正雲母