旅立てタットー

 タットーが旅立った。

2015年1月27日 15時から19時15分の間。

最後に見たのは、14時30分。

玄関右の植木の陰から君はいつもの顔を出した。

そして、こんな寒い日にわざわざ脱走した。

君は二度ともどらないだろう。

今度ばかしはぼくも君をさがさないことにした。

いつもいってたように。

出会い

 彼との最初は、2013年夏だと思う。

死刑を待って一号室にいた。

君の主人は、君を引き取りに二度と現れなかった。

さもあらん。君は「巣」に戻る本能を持っていなかったからだ。

君を引き取り、ぼくは真夏、町中を2時間以上歩き、埠頭へやってきた。

君は、途中、結婚式場でヘタり二度と動こうとはしなかった。

地獄の戦い

 獣との戦いで一睡もできなかったな。

君は獣を最低でも6頭はしとめた。死骸は宙を舞い君は誇らしげだった。

君が北にいるときは、ぼくは南にいなければならなかった。

二人が、同じところにいることはできなかった。

それは悪いと思っている。

二人は鳥の命をたくさん守った。

まるで戦友のようだった。

野犬の襲撃もあった。一気に5羽もやられ、大方は傷だらけになって死んでいった。

さすがの君も無力で、鳥たちが食い殺される横で君はのんびり寝そべっていた。

その中には、20羽の雛を返して、体力の回復をしてくつろいでいた雌鳥もいた。

大怪我を信じられないといった顔で、翌日一人であの世へ旅たった。

白い羽を持った彼女は、君も知ってのとおりいま山桜の木の下に眠っている。

得意技はタヌキの噛み殺しだった。

タヌキも油断というか、完全に農園主をなめてたからフラリと地所に入ってくる。

君のすぐうしろのサクから入ったのだろう。いつぞや足もとに死骸が転がっていた。

タヌキを加え、宙にむかってブラブラとまわさて絶命させていた。

まったく男前に見えたわけだ。

こんなそんなで5,6頭は仕留めたわけだ。

もう大丈夫と思っても被害は続き・・・いったい何頭いるのかと。

たぶん、20数頭いるはずだと指摘され二人で頭をかかえて悩んだものだ。

脱走につぐ脱走<--このあたり書き換えすべき-->

 何度脱走しただろう。君は。ほとほとぼくは疲れた。

頭を下げ、君をもらい下げてもその日からまた君は脱走をはかる。

そんなに面倒を見なかった覚えはないが、君は、家に戻るという

回路が頭になかった。

前のめりで常にぼくの先を歩き続ける君の姿は嫌いだった。

ひとりで歩いているわけでもないのに、君はぼくをひっぱり倒しても

自分の求めるところへ行こうとした。

ぼくなんか、右指を三本も折ってしまい、障害者に格落ちした。

君を恨むことはなく、病院を抜け出して、君に食事を運んだ。

なぜか、中年主婦の家にいつも駆け込み、君はつながれていた。

そのたびに連絡があり豪華なお礼を中年役人のところへもっていかなければならな

かった。

ある時は、行くのが遅くなり、腹を立てた中年は役所に訴え、君は役所に送還され多

大の食事代と保管料を請求された。

旅立てタットー

 さようなら、タットー、どこかでいつまでもお元気で・・・

 もうあうこともない。

 ぼくと一緒でも君の夢をかなえてあげることはできないだろうから・・・

 わかれに乾杯。

最初の飼い主は「北」にいるはずだ。

ふりかえらずに北へ向って走れ。

自転車もおいつかず車もおいつかず、君が全身で四つの足を交互に繰り出せば

とてつもないスピードが出ることをぼくは知っている。

その足で行きたい所へ行って君のこれからの幸せをつかんでくれ。

追加編集

 コンビニの水道栓の横に腰掛けて、100円で買ったメロンパンを半分にして、片方をパクっと口にほおばり、片方を

食べないで残して、横をふっと見る疲れきった男がいたら、それは多分、元の飼い主に違いない。


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