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藤村大河&アーチャー ◆FFa.GfzI16




――――何かを忘れている気がする。


――――とても大事な、忘れてはいけないことを。


「ほらー、時間がきてるよー!さっさと席につく!」

いつものように、ざわついた教室を一喝するようによく通る声を出す。
ざわめきは完全に消えることはないが、生徒は皆素直に席へとつく。
それを眺めた藤村大河は、うむ、と満足そうに頷いてみせる。
心の何処かに違和感を残したまま。

「ドーモ、藤村大河です。
 えー、今日は事情があって欠席の葛木先生に変わって、倫理の授業を担当します」

ざわつく教室。
大河の担当は英語、同じ文系と言ってしまえば同じ文系だが専門外であることに違いはない。
はいはいー、と大河は軽く手を叩いてそのざわつきを鎮めようとする。
自身の心の中にあるざわつきは消えなかった。
それでも生徒の手前、平然を保つ。

「正直、倫理の教え方なんか知らん!」」
「え、えー……」

教室中から困惑の声が上がる。
同時に困惑した表情の生徒へと向かって、大河は楽観的に笑ってみせた。

「大丈夫大丈夫、倫理はわかんないけど勉強の仕方なんて根本は一緒なんだから」

それじゃ、教科書を開いてー。
そう言って大河もまた教科書を開き、授業を開始していく。
大河自身が手探りではあるが、持ち前のコミュニケーション能力で生徒の集中力を持続させていく。

(おっ……これは倫理の、お姉ちゃん万能なんじゃないの?)

手応えを感じて、笑みを深める。
しかし、その内容が倫理というよりも道徳とフリートークへと変わっていくのに、そう長い時間は必要としなかった。




静寂さに包まれる弓道場。
藤村大河は部の監督を優秀な部長に任せて、ぼんやりと部員たちが活動を続ける姿を見ていた。
皆、一様に真剣な瞳をしている。
そんな中で気の緩んだ自分が居ることが、少しだけ恥ずかしくなる。
そうだ、神聖な道場の中で何を、こんな緩んだ気持ちで居るのだ。
大河は目を強く瞑り、天井を眺める。
そして、勢い良く立ち上がった。

「ごめーん、ちょっと資料取ってくるから、今日はお願いね~」
「あ、はい」

弓道部部長は顧問の言葉に頷き、大河の背を見送った。
大河は度々振り返って手を合わせながら弓道場を出る。
外はすでに夕焼けの色に染まっていた。
なぜか、涙腺が緩んだ。

「……んー、ノスタルジー?」

そんな唐突な感傷に対して、大河は笑って見せながら――――

ノスタルジー?

――――ふと、その言葉にピタリと脚を止めた。

ノスタルジー。
英語教師である大河はその単語の和訳を頭に浮かべる。
郷愁、望郷、懐古、追憶。
全て、『そこ』ではない『ここ』から『そこ』を懐かしむ意味だ。
ならば、大河は何を懐かしんでいる。
土地だろうか。
いや、しかし、大河は生まれてからずっと『▼▼』の地を離れたことがない。
ならば、時代だろうか。
かつてあったはずの高校時代を懐かしんで、急な感傷に襲われたのだろうか。

「……私も歳かなぁ。なんか怖っ」

笑いながら、止めた脚を動かした。
記憶に障害など、今までなかった。
だから、これからもない。
藤村大河は単純な人間であり、同時に単純さが生むものが彼女の美徳であった。

「■■、お姉ちゃんを娶ってよー」

記憶に無いはずの弟へと向けた自身が発した言葉に、大河は不自然なほどに気づいていなかった。




「それでは藤村先生、当直、お願いします」
「はーい、お疲れ様でした」

同僚の教師を見送り、大河は目の前の資料を見つめる。
少し溜まっている。
ため息が出るほど多いわけではないが、簡単に終わりそうはない。
大河は自前の水筒からお茶を取り出し、校内で見つかった取得物が詰め込まれた棚を眺めた。
意味は無い。
本当に意味が無い。
ただ、身体が勝手に動いた。
そこに疑問は抱かなかった。
もとより、藤村大河という女には、考えるよりも先に体が動く事が多かったからだ。

「学校にエロ本を持ってくるなっつーの」

取得物が置かれた棚を漁りながら大河はつぶやく。
第一、こんなものを「落としたから返してください」なんて言いに来る生徒が居るわけがない。
このボン、キュ、ボンとして官能的に見つめてくるお姉さんはこれからはこの暗い棚の主となるわけだ。

――――取りにこない取得物。

大河のノイズが走る。
同時に、右手に電流が走ったような痺れと痛みが起こった。
右手を見る。
薄い、薄い、痣が見える。

「……?」

どうしようもない不安に襲われ、外を眺めた。
外は暗い、暗闇の中だ。
置いて行かれたような、そんな心寂しい想いになる。
こんな仕事をしていれば別れは多くついてくる。
時には母校を尋ねる卒業生も居るが、訪れない卒業生の方がずっと多い。
世界から置いてけぼりをくらっているような気持ちになった。

だからこそ、普段一緒に居る士■だけは――――

「…………あ」

その瞬間だった。
右手に激しい痛みが走り、切り裂かれたような熱さを感じる。
同時に脳がオーバーヒートするかのごとくフル回転を始める。


衛宮士郎と間桐桜の居る食卓。

大げさな豪邸である藤村組。

冬木市に存在する穂群原学園。

校舎に放置された木片。

回収する自分。

取得物ボックスの主となる木片。

いつものように眺める自分。

手に取る自分。

消える、自分。


「ああああああああああああああ!!!
 何してんだ私ぃぃぃぃぃぃ!!?」


この瞬間、藤村大河は記憶を、取り戻した。
聖杯戦争への参加権を得たのだ。

それは、つまり。
サーヴァントが召喚されることと同意である。
職員室に突然現れた影。

「……ふむ」

色素を失った白髪。
日本人のそれとは思えない赤銅の肌。
「どう機能するか」よりも「どのような地獄を経て創りあげたのか」と疑問を思えるほどの引き締まった肉体。
赤い外套を纏い、黒いインナースーツを着、シニカルな笑みを浮かべている。

大河よりも頭一つは背の高いその男――――アーチャーのサーヴァント。
一瞬だけ値踏みをするように大河を見た視線が疑問に変わり、次に驚愕に変わった。
しかし、そんな一瞬の感情など存在していなかったのではないかと思うような瞳へと変化する。
摩耗しきって奇妙な色を見せる鉄のような瞳だった。

「此度の聖杯戦争においてアーチャーのクラスにて現界した。
 まずは形式的に問おう。貴方が私の――――」
「……士郎?」

アーチャーの言葉を打ち切る、大河の言葉。
アーチャーのサーヴァント、エミヤシロウは、シニカルに笑った。
喉が、かすかに動いていた。




「ごめんなさいねー、妙なことを言って」

気楽に笑いながら、大河は缶コーヒーを差し出す。
霊体であるサーヴァントに缶コーヒーなど、とアーチャーは笑った。
しかし、断ることはなく口にする。

「いや、全然似てないんだけどね。外見はもちろん雰囲気も、声も、全部違うの」
「なに、記憶の混同だろう。ここは少々特殊なようだからな」

アーチャーは缶コーヒーを口にしながら壁にもたれかかる。
確かに、衛宮士郎とエミヤシロウを結びつけるは難しい。
一瞬の勘違いとしか思えないそれを、大河は恥ずかしそうに笑った。

「それにしても、聖杯戦争ねぇ……」
「どうする、私はマスターの命に従うだけだが」

大河は考える。
聖杯戦争とは、すなわち殺し合い。
相手を踏みにじって願いを叶える。
悪意の戦いになるであろうことは、大河にだって想像がついた。
そして、『記憶を取り戻した人物』が参加者ということは、月見原学園での生徒もまた参加者かもしれない。
得体のしれない不快感がこみ上げる。
そして、大河にそれを飲み込むほどの冷静さはまだ取り戻していなかった。

「今から考える。だから、あんまり遠くに行かないでね。
 寂しすぎて、死んでしまうわ~」

途中から誤魔化すように、懐かしい歌を歌ってみせる大河。
音調も糞もない。
アーチャーは笑うだけだ。

「これは、妙な事を言うマスターだ。
 弓兵の専門は狙撃。
 周囲の状況を把握していなければ、十分なパフォーマンスを披露することは出来ないぞ」
「なんだか、嫌なの。遠くに行かれるのって、なんか苦手」

大河は力なく笑った。
アーチャーもまたシニカルに笑った。
大河は、不思議なことに、それを不快に思わなかった。
馬鹿にされているようには、思えなかった。

「どこか、どこか遠くに行っちゃいそうで」
「らしくないな」
「え?」

初対面のアーチャーの言葉に、大河は疑問の言葉を上げる。
まるで、初めから大河のことを知っているかのような口ぶり。
アーチャーは顔色一つ変えずに言葉を続けた。

「――――マスターは、そういうふうに見えなかっただけだ。
 物事を深く考えず、ネガティブに受け止めず、素直に喜ぶ性質のように思えてな」
「こういう仕事やってるとさぁ、みんな私を置き去りにしちゃうのよねー。
 いや、明確な目的を持ってどこかに行くのはハッピーだけどさぁ、ハッピーだけどさぁ……!
 なんか、寂しいじゃない!」

誤魔化すようなアーチャーの言葉に、大河もまた誤魔化すように笑ってみせた。
そして、言葉をまくし立てる。

「士郎だって、いつか遠くに行っちゃう。
 当たり前だけど、きっとそうなんだろうね。
 お姉ちゃん、哀しいわぁ」
「止めればいい、まだ未熟者だからマスターの監督から逃れるなど十年早い、と。
 ……そういえばガキなど一発だ」
「止まらないよ、止めたくもないし。
 それに……きっと、私も士郎も後悔するだろうし。
 不幸な人が居るなんて当たり前のことに耐えられない人も居るからね」

そう言って外を眺める。
夜空は見ていない。
衛宮士郎を見て、その奥にまた衛宮切嗣を見ていた。

「馬鹿な男の話か?」
「可愛い弟と、大好きだった人の話」

大河は弱く笑ってみせる。
それを見て、アーチャーは皮肉げに笑った。
大河を笑うのではなく、遠い誰かを嘲笑うように。


【CLASS】
アーチャー
【真名】
エミヤシロウ@Fate/Stay Nighy
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力C 幸運D 宝具??

【属性】
中庸・中立

【クラススキル】
対魔力:E
無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
心眼(真):C
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

千里眼:D
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

魔術:D
このランクは、基礎的な魔術を一通り修得していることを表す。
エミヤは特に道具の本質を一時的に増幅する「強化」、物質の構造を把握し、一時的に複製する「投影」を得意とする。

【宝具】
『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』
ランク:E~A++ 種別:??? レンジ:??? 最大補足:???
錬鉄の固有結界。本来は魔術であり宝具ではないが、英霊エミヤの象徴ということで宝具扱いになっている。
結界内には、あらゆる「剣を形成する要素」が満たされており、目視した刀剣を結界内に登録し複製、荒野に突き立つ無数の剣の一振りとして貯蔵する。
ただし、複製品の能力は本来のものよりランクが一つ落ちる。
神造兵装の複製は不可能。
守護者として世界と契約しているため、固有結界にかかる負荷は非常に少ない。
【weapon】
投影魔術により投影した武器を使用する。
【人物背景】
とある未来の世界で死すべき百人を救うために世界と契約した衛宮士郎その人である。
全てを救うという理想を追い求め続け、限界にぶつかった彼は。
「英霊になれば、きっと全てを救えるはず」
と世界と契約を交わし、その百人を救った。
だが、理想を追い続けたその生涯は最後まで報われることなく、自分が助けた相手からの裏切りによって命を落とす。
それでもなお、誰一人恨むことはなかったが、その後に待ち受けていたのは「霊長の守護者」という残酷な現実であった。
死後、彼に与えられた役割は霊長の守護者として、拒絶不可能な虐殺に身を投じることだった。
さらにその過程で人の暗黒面をまざまざと見せ付けられ、その結果信念は磨耗し、かつての理想に絶望することとなる。

【サーヴァントとしての願い】
不明。

【基本戦術、方針、運用法】
無限の剣製によって投影した武器での戦闘、もしくはその投影宝具を矢にしての狙撃。
狙撃に関しては英雄と呼ぶにふさわしい腕前であるため、基本は単独行動による偵察からの遠距離からの狙撃という戦法を取ることになる。

【マスター】
藤村大河@Fate/Stay Night
【参加方法】
校内に放置されていた木片を回収の後、一時的に預かっていたら参加資格を手に入れてしまうことになった。
【マスターとしての願い】
願いだけならば漠然としたものを多く持っているが、聖杯戦争には否定的。
【weapon】
竹刀
【能力・技能】
剣道五段、運動神経抜群。
幸運はパラメータにするとEXになるらしい。
【人物背景】
深山町に本拠を据える藤村組の組長・藤村雷画の孫娘。
両親のいない衛宮士郎の保護者で、衛宮邸には時折様子を見に来る……とのことだが作中ではほぼ入り浸りである。
衛宮家とは切嗣が生きていた頃からの付き合いで、当時は切嗣目当てで衛宮邸に遊びに来ては士郎と喧嘩していたらしい。
かつて衛宮邸に通い始めた頃は暗い性格であった桜に影響を与え、笑顔を取り戻した。
士郎や桜にとって姉のような人物であり、衛宮邸住人では最年長ではあるが、最近では飢えたトラ扱いされている面もある。

【方針】
聖杯戦争から帰る。
あるいは、生徒を守る。