とある村に伝わるおとぎばなし。

昔、ある村にピーカフという耳のとがった赤い目をした少年がいました
その目と耳のせいで、村の子供たちからいじめられていたピーカフは、ここはぼくの家じゃない。ぼくのほんとの親じゃないと思いました

ピーカフはある夜黙って家を抜け出し、妖精の住む森へ出掛けました
そこで赤い目と、とんがり耳の妖精を見つけたピーカフは、自分の仲間を見つけたと喜びました
しかし妖精たちは、ピーカフは仲間ではないと言いました

「昔、人間の男女が病気で死にかけた赤ん坊を連れてきたことがあり、助けてくれと願ったんだ
その願いを聞き入れ、僕らは赤ん坊を助けた
無事に赤ん坊は救われたんだけど、その赤ん坊の姿は半分僕らに似たものになってしまったんだ
それでも男と女は涙を流して喜んだよ
この子が生きてさえいてくれればと……」

その話を聞いたピーカフは、泣きながらもと来た道をひた走りました
しかし、不思議なことに森で一晩過ごしただけなのに、村では100年もの歳月が流れてしまっていました
誰ひとり知る者のいなくなってしまった村と、人間の住むことの許されない妖精の森との狭間の小さな丘で、仲間はずれのピーカフは泣き続けました
赤い目をもっと赤く腫らして……


某日、天気予報曰く洗濯物を干すに良し。
しかし、実際の空模様はといえば太陽を拒むようにどこまでもどこまでも、切れ間なく雲が続いている。
いっそのこと降ればいいのに、そう思うが雲は雨雲の黒色を覗かせること無く、どこまでもどこまでも、空は白色に覆われている。
その光景が、ロシーヌに霧の谷を思わせる。

かと言って、子どもたちが遊ぶには関係ない。
青空が見えなくても、いやいっそ雨が降ってしまっても、この小公園から子どもたちが消えることはないのだろう。
備え付けのベンチに腰掛けて、子どもたちが遊ぶ様子をロシーヌはじつと見ていた。

くう、と腹の音が鳴った。
既に12時を回っているのだろうが、ロシーヌには時計の読み方はわからない。
そもそも、ロシーヌがいた場所に時計などというものは存在しなかった。

「もう、お昼よ」
そう呼びかける女性の声に顔を上げ、そして自嘲の笑みを浮かべた。
誰かの母親だろう、決して自分の母親ではないことなど解りきっている。
昼食が出来たので、子どもを呼びに来たのだ。
「まだあそぶー」
「お腹すいてるでしょ?」

優しい声がする、どことなく己の母親に似ているような気がした。

――あなた、もうやめて下さい……!!

「……ッ!」
忌まわしい記憶が、蘇る。

「キャスター」
「どうしたの、おねえちゃん?」
ロシーヌが誰も存在しない空に向けて語りかけたのは、寂しさ故に想像上の友人に話しかけたわけではない。
ああ、何たる不思議だろうか。ロシーヌが言葉を出せば、それにしっかりと返す少女の声がある。
ただ、その姿はどこにも見えない。隠れているわけではない、しかし、そこにいる。
そう、ロシーヌに返事をしていたのは霊体となり周囲に見を潜ませたサーヴァントである。
そう、このあどけない少女――ロシーヌこそ、聖杯に願いをかけるマスターの一人であった。

「……私達の国に、あんなのはいらない」
「じゃあ、殺しちゃおうか」
果たして、死ぬ前に母は気づけただろうか。
己が手をつないだ子の頭が、割りそこねた玉子の様に頭蓋の破片と脳髄が入り乱れるのを、
それと同時に、己の心臓が在らざるべき場所に――すなわち、体内を離れ、キャスターの手に握られるのを。
残りの子は4人親は3人、キャスターが遊ばなければ、殺戮はすぐに終わる。
しかし、きっと遊ぶだろう。そういう少女だ、キャスターは。

血と臓物が散乱した死の海の上で揺蕩う少女――ああ、青のワンピースが血で濡れている。
そうだ、キャスターとの共通点は少女であることぐらいだと思っていたが、彼女も私も服がドロドロになることなんて気にしないんだ。
ぐちゃり、ぐちゃりと、粘ついた鈍い音が辺りに響く。

「もっと!もっとよ!キャスター!!こんなもの私達の国にはいらない!!」
ロシーヌは靴を脱ぎ、素足のままで死の海の中をくるくると駆け回った。

「あは、あははははははははははははははははは!!!!!!!!」
青空は見えない、でも悪くはない気分だ。
どこまでも、どこまでも、空に笑い声が吸い込まれていく。


――ここが、私の楽園だ。



刻まれた痣の数だけ、投げかけられた暴言の分だけ、ロシーヌは家から逃げ出したいと思っていました。
昔、彼女の母親は戦争中に強姦されました。
彼女の父親はいつも疑いました、お前はオレの子か?
当然、わかるわけがありません。

だから疑いの数だけ、彼はロシーヌを殴り、妻を殴り、暴言を浴びせました。
家に帰りたくないなどと彼女は決して口に出しませんでしたが、そう思って彼女は日が暮れかけるまで友達と遊び続けました。
彼女はピーカフの物語を自分と重ねあわせました、しかし彼女だけはピーカフの本当の物語を知っていて、それを友達に教えてあげるのです。

ピーカフは本当は妖精の子で、今でも妖精の国でお父さんとお母さんと幸せに暮らしているのだと、そしてこう続けるのです。

私もピーカフとおんなじ、ほんとは妖精の国の住人なのよ、と。
ロシーヌは真顔で感心する友達を見ておかしそうに笑いました、まるで無理してはしゃぐように。

そして、ある激しい雨の夜にロシーヌは決心しました。
家を抜けだして、妖精の国へ行こうと。
友だちにだけ別れを告げて、彼女は旅立ちました。
大切な宝物――人の顔のような卵みたいな石と、どこか不思議な木片を持って。

そして、妖精の言い伝えが伝わる霧の谷へと、彼女は行きました。


妖精は現れませんでした。
彼女だって、本当は妖精を信じていたわけじゃありません、だけど逃げ出したかったのです。

そして、彼女は何日も何日も待ち続けて――





――妖精はいたのか!?霧の谷に妖精はいたのか!?
――それともあてつけか!? 血のつながらんオレへのあてつけなのか!?

――あなたもうやめて下さい……!!
――うるさい!!

迎えに来た父が暴力を振るい、ロシーヌと母が殴られる。

何も変わりませんでした。
自分の家だろうと、霧の谷だろうと、何も変わりませんでした。




――だめだよ
――霧の谷にこんなのあっちゃだめだよ



――いらない
――こんなの いらない
――消えてよ
――全部 消えて なくなれ




だから、彼女はここへ来たのです。
妖精の国を 探して。


「あなたが私のおともだち【マスター】ね!」
記憶が戻らぬままに埋没してしまった方が、ロシーヌは幸せでいられたはずである。
それでも彼女の記憶が戻ってしまったのは――果たして、何の加護か。
召喚されたキャスターは両手でスカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げ、
左足を斜め後ろの内側に引き、もう右足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたまま軽く礼をした。
「ええ、そうよ……私とキャスターは友達よ」
「やったー!」
「ね、キャスター。
アナタだけに私の秘密を教えてあげる、私本当は……妖精の国の住民なのよ?」
「そうなんだー」
屈託なく笑うキャスターの笑みに、ロシーヌも自然な笑顔を返した。
「じゃあ、私のひみつも教えてあげる!私のともだちは……」
そう言って、キャスターは先程までロシーヌと家族だった人間達を蟻を踏み潰すように殺した。
「みんな死んでるの!」
「……とってもいいわ!」
その光景を見たロシーヌは口を三日月のようにして笑った。
もうそこに、家を怯えるロシーヌという少女はいない。
妖精の国の幻想が失われるとともに――あるいは、偽りの家族の命と共に消え去ってしまった。
「でも、それだと私も死なないといけないんじゃない?」
「ん……大丈夫、死ぬまで待ってあげるから、だから早く死んでね」
キャスターの言葉に対し、ロシーヌは肯定するでもなく否定するでもなく、ただ曖昧な笑みを浮かべた。
「ふふふ……私の願いを知っても、早く死んでなんて言えるかしら?」
「何がほしいの?」
「飢えることも凍えることもない、なんにも怯えなくていい、私達の永遠の国【ネバーランド】!!
大人は決して入ることが出来ない子どもたちだけの国を創るの、もちろんキャスター、アナタも一緒よ!」
「とっても素敵!」
「ねっ、そうでしょう!」
そう言って、2人は訳もなく楽しくなって飛び跳ねた。
辺りに肉片が飛び散るのも構わず、足裏が汚れるのも構わず、ぴょんぴょんぴょんぴょんと跳び続けていた。

そんな二人の様子を、ただロシーヌの懐に収められた宝物だけが――ベヘリットだけが見ていた。

【クラス】キャスター
【真名】アリス
【出典】デビルサバイバー2
【性別】女性
【属性】中立・悪

【パラメーター】
筋力:D 耐久:E 敏捷:D 魔力:A 幸運:E 宝具:EX

【クラススキル】
陣地作成:E
道具作成:E

【保有スキル】
魔王の寵愛:Ex
魔王ベリアルに受けた寵愛、この愛を失えば宝具『無垢な魂の行方』は発動しない

堕天使の寵愛:Ex
堕天使ネビロスに受けた寵愛、この愛を失えば『無垢な魂の行方』は発動しない

精神汚染:D
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。
このスキルを所有している人物は、目の前で残虐な行為が行われていても平然としている、もしくは猟奇殺人などの残虐行為を率先して行う。

異界の住人:A
再行動を行うことが出来るスキル。

至高の魔銃:A
魔術を介さない攻撃に万能属性を付与するスキル。

封技追加:E
魔術を介さない攻撃で相手にダメージを与えた際、判定を行う。
判定に成功した場合、相手の宝具使用を2~3ターンの間、禁止する。

【宝具】
『無垢な魂の行方(アリス・イン・ワンダーランド)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:1000人
彼女の魂を求め、永遠の放浪を続ける魔王ベリアル及び堕天使ネビロス、そしてその配下たる無数の悪魔をサーヴァントとして現界させ、
かつて彼女が魔人となる以前に彼らとともにすごした六本木の街を固有結界として再現する。
キャスターの死亡、あるいは魔力が枯渇するまでベリアルとネビロスは何度でも蘇生し、敵を襲う。
当然であるが、魔王及び上位堕天使を召喚するため何も考えずに発動しようものなら死ぬ。

『死んでくれる?(ダイ・フォー・ミー?)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:3人
どこまでも純粋な望みの結晶、拒否権なく押し付けられる死。
相手の肉体及び、魔力に大ダメージを与える万能属性の詠唱。
本来ならば、特定の防御属性を持たぬ限り逃れられぬ死を与える魔術であるが、
サーヴァントとして召喚されたためにその威力は減少している。

【weapon】
ライフドレイン:相手の体力を吸収する万能属性の魔術

【人物背景】
デモノイド→屍鬼→魔人→屍鬼

【サーヴァントとしての願い】
キャスターの願いに沿う、また聖杯とは関係なく友達を作りたい。
良い友だちは死んだ友達だけである、六本木は本当に地獄だぜ。

【基本戦術、方針、運用法】
遠距離からライフドレイン連打。
ロシーヌが使徒に転生することが出来たなら、『死んでくれる?』連打。

【マスター】ロシーヌ@ベルセルク
【参加方法】彼女が集めた宝物の中にゴフェルの木片が混ざっていた
【マスターとしての願い】本当の楽園を創る
【weapon】
ベヘリット
人間の顔の眼や鼻や口といった部位をバラバラに付けた石のようなもの。
持ち主の強い願望に答え、神に等しい力を持つゴッドハンドを召喚する力を持つ。
そこで自身が最も大切としている人間をいけにえに捧げるのと引き換えに、召喚者を強大な力と異形の姿を持つ魔物(使徒と呼ばれる)へと転生させる呪われたアイテム。
普段は無害。

【能力・技能】
ただの子どもだが、運命が噛み合えばベヘリットによって使徒に転生することが出来る。

【人物背景】
妖精の物語を自分の身になぞらえる夢見がちな少女だったが、
それは自分の出生に対する父の疑念からくる家庭内暴力の絶えない家庭からの逃避でもあった。
ある夜発作的に妖精の谷に向かうが、そこで自らの所詮夢に過ぎない空想への諦観にとらわれる。
心配して探しに来た両親を見て思慕の情にかられるが、ロシーヌを案じる母とは対照的に冷たい罵声と暴力を振るう父親を見て絶望した時、聖杯戦争へと辿り着く。