シロウ・コトミネ&アサシン◆z9JH9su20Q




「――違う」

 少年の予選は、余りに呆気なく終了した。
 全てを忘却させられ、新たに与えられた日常を、半日と要さず偽りと見定めた。
 多くの参加者を著しく突き放した、異常とすら評せる早期突破だ。

 しかし、ある意味では参加者の中でも一際不正な存在である彼ならば、それも当然の帰結なのかもしれない。

 十七年と、六十年。

 二度に渡る生涯の全てを、ただ己が願いの実現だけに殉じて来た魂が、その目標を見失ったというのなら。
 その時、自らの在り方に覚える齟齬は――どれだけ惚けていたとしても、無視することができないほど大きなものに決まっているのだから。

「予想外、でしたね」

 自らの置かれた状況を振り返り、少年はこの事態を招いた聖遺物――養父の形見である、『ゴフェルの木片』へと意識を向ける。

 聖書のノアが如く、神に選ばれる人間となるように、と――あの熱心な神父が、教義に存在しない験担ぎなどという概念を持ち出して譲渡してくれたものだ。受け取った時は心遣いをありがたく思うと同時に、意外に俗な国民性が残っているのかと少年も大層不思議に感じたものだったが。
 死の間際だった養父の真意は、この『方舟』への切符を少年に手渡しておくことだったのだろうと、ようやく理解できた。 
 何年と遅れた真意の解読も、ここに来るまでは木片が『方舟』へ到達する手段だなどということを知らなかったのだから、ある意味仕方のないことだったのかもしれない。地上の聖杯ばかりを追っていた少年は、月の聖杯についての知識は養父にずっと劣っていたのだろう。
 加えて少年の秘めたる願望も、彼には薄々看破されていたらしい、となれば……どうやら今は亡き養父への認識を、改める必要があるようだ。

 ――とはいえ、少年が既に大聖杯そのものを手中に収め、後は残る条件が揃うのを待つばかりという段になって、横から『方舟』へと攫われてしまうという展開は、かの神父をしても誤算であったことだろうが。

「だが――まだ俺の夢は、終わっちゃいない」

 例え手中に収めた大聖杯から切り離され、入念な準備の末に勝利した大戦よりも、遥かに厳しい条件での生存戦(バトルロワイアル)を要求されようと。
 そんなことで、奇跡とまで呼ばれた少年は、挫けない。挫けていられるわけがない。

 何故なら月の聖杯(ムーンセル)は、冬木の大聖杯を超える願望機だ。
 あるいは六十年費やして来ても、まだあの奇跡を前にすれば誤算はありえたかもしれない。しかし、ムーンセルは常に使用者のための最適解を導き出すという、そんな不安すら無用と化す万能の力。

 ならば、この手に収めることができたなら。より少年の大願成就を確実とするのは、この月の聖杯だ。あるいはそのための、神の導きなのかもしれないとすら思えて来る。

 であれば、問題となるのは。そこまで少年が勝ち抜けるか――月より宛てがわれる自身の『つがい』となるサーヴァントが、この戦いで勝利を掴める存在であるか否か、だ。

 少年の期待を一身に浴びながら――月よりの使者は、既に目の前で現界していた。

「問おう――貴様が俺の召喚者か?」
「ええ。シロウ・コトミネと申します」

 赤と黒の僧服に身を包んだ、褐色の肌をした少年――シロウ・コトミネは、眼前に出現した男に頷き、名乗る。
 腕組みしながらシロウと相対し、平坦な声で問答を交わしたのは、戦国武将のような物々しい出で立ちをした“いかにも”な風体の男だった。
『特権』で読み取れる情報と照らし合わせれば、間違いない。この長髪の男はシロウのサーヴァント――アサシンだ。

「――そうか」

 返答を聞き届けたアサシンが、無感動に呟きを漏らした瞬間――シロウは不穏な気配を感じ取る。

 アサシンとの間に結ばれた因果線(ライン)を通じて、シロウから彼へと流れ出す魔力の量がほんの少しだけ、増加していたのだ。
 即ち、サーヴァントとして活動するのに必要な魔力を要求されているということ。アサシンが魔力の行使を迫られる状況にあるということ。徒事ではない。
 何事かと推察しようとするシロウに対し、正面から睨めつけられている男の『目』に、変化が起きる。
 眼球の全体が薄い紫へと色付き、瞳を中心とした波紋模様が多重に走る異形へと、アサシンの双眸が変貌する。
 余りに特異なその目は、ただの奇形などという言葉では片付けられない『何か』であると、見る者に何の予備知識も必要とせずに理解させていた。

「運がなかったな」

 アサシンの発した言葉を訝しんだ、その一瞬の隙に。
 いつの間にか彼の掌が、シロウの頭上に置かれていた。

 次の刹那――まるで肉体と魂魄との接続を乱されたかのような違和感に心身を支配され、シロウは身動き一つ、取ることができなくなった。

 己の身に感じる異物感に、脳裏をまさぐられるような不快感が塗布される。相変わらず心身の自由のならないまま、取り戻したばかりの自分を観察されている――そんな奇妙な直感を覚えながらも、その相手を見返そうとする両目の焦点が合わない。最早五感すら安定せず、この状況を脱するための『宝具』の発動も叶わない事実だけを、辛うじて理解した。

 ただ、彼の頭を鷲掴みにしている人物の腹次第で、次の瞬間の運命が決まる――そんな状況に、最速で予選を勝ち抜いたはずの少年は陥っていた。
 果たして、いつまでこの状況が続くのか――それを推測するための時間感覚すら、抜け落ちていた、そんな中。

「――前言撤回、だな」

 その一声を合図に。万力のように頭蓋を締め上げていた圧力が消失したのを、少年は確かに認識した。
 認識できた、ということは――正常な感覚を取り戻せたのだと理解する間に、シロウの逆立てた白髪の間を、手袋に包まれた男の五指が抜けて、元の位置へと戻って行く。
「気が変わった」
 そうして開けた視界に映ったアサシンは、先程までに比べて幾分、感情を取り戻した表情でシロウを見つめていた。
「俺を利用しようという輩など、この場で殺してさっさと座へ帰るつもりだったが……貴様は特別だ。考えを改めることとしよう」
「……それは僥倖」

 眼前の男――自らのサーヴァントに危うく殺されかけたシロウは、復活した平衡感覚を総動員して何とか踏みとどまった後。憔悴の中、それでも穏やかに返していた。
 アサシンもまた、そんなシロウが愉快で堪らないと言った様子で破顔する。

「ああ、おまえは実に運が良い。後から俺の腹がどう変わろうが、貴様がただの人間であったなら……本来人間道に触れられた時点で、死という結果は因果として成立していたからな」

 何の遠慮もなく、出会い頭から取り返しのつかない行為に及ぼうとしていたのだというサーヴァント――運命共同者からの告白には、さすがのシロウも苦笑を漏らした。

「これはこれは。確かに使い魔として扱われるなど屈辱ではありましょうが……それでもあなたがこうして召喚されている以上、仮令聖杯の獲得とは別だとしても、何か。その二度目の生を使って、成し遂げたいことがあったのでは?」
「三度目だ」
 その兇行が理解できないと尋ねる少年に対し、男はまず短い訂正を口にする。
「願いがない、わけではないが……端的に言えば、既に諦めていた」
 告白される思考が、過去の視点に基づいたものであることを強調する語り口が意図的なものであると、少年も理解できていた。

「……俺が二度の生涯を使い、やっと叶えたと思った願いは偽りだった。俺は奴らの勝手のために踊らされ、世界に混乱と破滅を齎しただけだった」

 触媒こそない召喚であったが、シロウの有する『特権』により、既にこのサーヴァントの真名は把握できている。
 だが、見るからに同郷の出身と思しき姿形をしているこのアサシンの名に、シロウは覚えがなかった。おそらくはシロウと同じく、『方舟』が直接姿を見せたのとは別の時空から馳せ参じた異邦の英霊なのだろう。故に、どんな生前を送って来たのかはわからないが……口ぶりからは随分と凄惨な裏切り、それに対する絶望を経験して来たことが伺えた。
 そんな空虚に満ちた独白を、何故か――他人事だとは思えずに、シロウは痛切な心地で静聴する。

「挙句、死んでも今度はこの『方舟』に囚われ、浅ましい争いで踊らされるというのなら……俺の眠りを妨げた者を殺す方が、よほど有意義に思えたのだ……もう、疲れていたからな」
「……しかし、それを改めたと?」
 シロウの問いかけに、アサシンは頷いた。
「何ということはない。元々は殺すつもりで使った能力が、サーヴァント相手では記憶の読み取りしかできなかったというだけのことだが……」

 ――サーヴァント相手では。

 その一言だけで、記憶を読み取ったというアサシンの説明が、シロウに与える説得力を著しく増大させる。

「その貴様の記憶に、あの悲劇を経てなお夢を諦めない様にあてられたのだろう。もう一度だけ……俺も願いを、諦めたくないと思えた。貴様を主君と仰ぎ、共に聖杯を――真なる月の目を勝ち取りたい、とな」
「……光栄です、アサシン」
 おそらくアサシンの言葉は、本心からのものだと感じられた。だからシロウもまた、彼の主として認められたことに本心からの感謝を述べていた。

 同時に確信する。やはり神は、シロウを赦されるのだと。
 もしも、シロウが神の意に沿わない存在であったために、この手から大聖杯を取り上げられたというのなら。そも、最初のアサシンの兇行で、命を落とすはずだった。それが神に叛きし者に相応しい末路だからだ。
 しかし、結果はただ召喚した場合よりも、よほど強い信頼をこの強力なサーヴァントとの間に築くことができた。
 全ての人間を慈しみ、癒すために月へ至れと後押しするために……この『方舟』に少年を導いたのだと、理解できた。

 アサシンとの出会いは、改めて己の正しさを確信できるものだった。それなら後はただ、迷わず月まで駆け上がるのみ。

「では、マスターとして尋ねたい。私を見て取り戻したという、あなたが聖杯を求める理由。それを教えて戴きたい」

 そして、争奪戦へと真に参加するために。契約のために、シロウは相手をより知ろうと望む。 
「聞いてどうする?」
「もちろん、契約のためですよ。振る舞いを見る限りありえないでしょうが、私の願いと真っ向から衝突しない限りは、あなたの願いにも極力沿わねばと思いまして」
「無駄な気遣いだな」
 シロウの返答を一笑に付した後、しかし真剣な目つきとなったアサシンは、自らの主君に胸の内を明かした。



「俺が月の目に託すのも、貴様と同じ夢さ。天草四郎時貞」
「――あなたが願うのも、全人類の救済か。うちはマダラ」



 対峙する相手の真の名を、既に知悉していた二人の英霊は――願いを共有したその瞬間、初めて同志の名を呼んだ。

 この先彼ら『つがい』で繰り広げる殺戮を、人類最後の悲劇にする決意と共に。



   ◆



 巡り会ったのは、余りに似通った二人の男。
 世の残酷さを知りながらも、まるであどけない少年のように全ての人々の救済を願い、人生を二度までも悲願の成就に捧げた、愚直なまでの理想主義者達。
 出会うはずのなかった彼らの出会いは、しかし紛れもなく――運命と呼ぶべき、必然だった。 




【マスター】シロウ・コトミネ@Fate/Apocrypha
【参加方法】『ゴフェルの木片』による召喚(言峰璃正からの譲渡品)
【マスターとしての願い】人類全ての救済
【weapon】『黒鍵』×不明、とある剣豪の刀(“赤”のキャスターのエンチャントによりCランク宝具相当に強化済み)

【能力・技能】

 本人曰く普通の人間程度の力しかない、が、対戦した“黒”のバーサーカーの評では、聖堂協会の代行者と比較しても図抜けた戦闘力を有している。
 戦闘時に武器とする黒鍵は一度標的に弾かれても、再度標的に襲い掛かるよう術式が組み込まれており、刀身を伸ばし即席の壁を作り出すことも可能と応用性に富む。
 それ以上に特筆すべきは謀略家としての手腕。表では大戦の監督官として、暴走する“赤”のバーサーカーの通過する進路上で起こりうる問題の対処に奔走し、その裏ではアサシンが使役する鳩を通じてルーマニア全域の動向を把握しつつ、戦況に応じて的確にサーヴァントを使いこなし、さらに次の段階へ進むための準備も怠らない。
 自ら前線に立ちながらも空中庭園を操るアサシンへの魔力供給を問題なく行えたことから、魔術師としても高い適性を持つことが伺える。

【ステータス】不明(第三次聖杯戦争のマスターでなければ認識不可能な模様)
【属性】不明
【クラススキル】
真名看破:?
 目視したサーヴァントのクラスと真明を看破できる。例え対象が受肉していようとも有効に機能する。ただし、素性を秘匿するスキルや宝具には妨害を受けてしまう。

【保有スキル】不明

【宝具】
『右腕・悪逆捕食(ライトハンド・イヴィルイーター)』
ランク:???  種別:対人 レンジ:???

 本来、シロウが持っていなかった力だが、宝具が持つ「奇跡の再現」という形で彼の肉体に顕れている。
 戦闘において自身の補助を行う対人宝具であり、シロウが保有する「未来視」などの特殊能力を強化・支援する。

『左腕・天恵基盤(レフトハンド・キサナドゥマトリクス)』
ランク:??? 種別:対人 レンジ:???

 右腕同様、自身を対象とした対人宝具で、シロウの肉体に対する補強・強化を行う。
 この宝具には対象者を「不老」にする効果があり、この効果によって彼は受肉しながらでも半世紀以上の時を耐えることが出来た。


【人物背景】
 本名、天草四郎時貞。『Fate/Apocrypha』における第三次聖杯戦争で、アインツベルン陣営のサーヴァント・ルーラーとして召喚された英霊である。
 本来中立の審判であるべきクラスを参加者として不正に召喚したサーヴァントであるため、ルーラーとしての機能は十分ではなく、また彼はルーラーが本来持っていてはならないはずの『聖杯への願い』を持っていた。
 第三次聖杯戦争終盤、大聖杯に触れたことで受肉。マスターを失ったことでスキルと宝具を除くと並の人間程度の能力しか残らなかったものの生存し、己の願いのためユグドミレニアに奪われた大聖杯を取り戻し、その奇跡を手にすると決意する。
 その後は、第三次聖杯戦争の監督役であった言峰璃正を利用し、偽の身分と大聖杯の行方を探るために聖堂教会での役職を入手、半世紀以上も行動を起こす機会を伺っていた。
 そして大聖杯を秘匿していたユグドミレニアが、魔術協会から離反したのに合わせ、シロウも勃発する聖杯大戦に聖堂教会から派遣された監督役として介入。同時に“赤”のアサシンのマスターとして聖杯を求め参戦する。
 正規のルーラーであり、自身の計画の障害となるジャンヌ・ダルクを警戒しつつも順調に事を進め、両陣営の総力戦の中、アサシンの宝具の力で大聖杯の奪還に成功する。
 さらにセイバー以外の残る五騎の“赤”のサーヴァント達の令呪までも手中に収め、最終的には彼らの協力を取り付けることに成功。後は大聖杯の使用条件を整え、悲願を成就させるのみ、という段階で(ここ独自の設定として)璃正から形見として授かっていた木片の作用で『方舟』に召喚された。


【方針】聖杯戦争を勝ち抜き全人類を救済する。基本的には堅実に進めて行く。ルーラー(ジャンヌ・ダルク)とは今回対立する理由はないはずだが、警戒する。



【クラス】 アサシン
【真名】 うちはマダラ@NARUTO
【人物背景】

 世界の在り様に絶望し、全ての救済を願うもその独善性から数多くの犠牲と混乱を世に齎した伝説の忍。

 まだ忍の隠れ里という概念すらなかった戦乱の時代に、最強と恐れられた忍一族の一つ“うちは一族”でも特別に強いチャクラ(魔力)を持つ者として生まれる。
 一度忍として生まれ落ちれば、幼子も例外なく戦場で命を落としてしまう世の変革を望むが、うちは一族の指導者としての重圧と、弟を失った悲しみにより歪みを抱えるようになる。やがては一族全員が敵対していた千手一族に投降した中でも一人だけで戦いを続け敗れるが、幼少期に友情を育んだ千手の長柱間の説得を経て休戦を受け入れた。
 その後は柱間らと共に木ノ葉隠れの里を創設、しかし里でのうちは一族の扱いに不満を持ち、九尾の妖狐を操って再び柱間と対立するも敗北、死亡したと伝えられていた。
 だが、柱間との戦いで死亡したのは偽装であり、マダラが夢とする『月の目計画』実行のための下準備であった。その戦いで仙人の肉体を持つ柱間の細胞を入手し、歴史の表舞台から姿を消し、さらに計画を進めた後、一度本当に死亡する。
 本来の計画では、マダラの両目を移植した人物の力で自らを蘇生させる手筈だったが、その計画に狂いが生じ、第四次忍界大戦の最中、『穢土転生』の術で現世に復活する。
 この穢土転生の体には術者によって特別なチューニングが施されており、全盛期の肉体でありながら、本来は死の直前に開眼し、実戦に用いたことのなかった輪廻眼を発動できるようになっており、無尽蔵のチャクラに不死身の肉体という穢土転生の特性も併せて、忍連合軍を相手に縦横無尽に暴れまわった。

 計画代行者がその名を騙るだけで世界を巻き込む大戦争を引き起こせるなど、マダラが持つ影響力はその世界において絶大であったと言える。
 平和を渇望するも、世界の仕組みは最早変えようがないと結論し、全ての人間を同じ幻の中に閉じ込めることで、誰もが幸せになれる夢の世界を作り出す“月の目計画”の成就を悲願とする。その実現のためなら、かつて忌避した悲劇をどれほど生み出し、その結果本物の世界がどうなろうとも一切気に留めることのない、ある意味では究極の理想主義者。

 しかしその“月の目計画”が記されていた石碑自体、神話の時代より暗躍し続けた真の黒幕である大筒木カグヤの意志・黒ゼツによって改竄されたものであり、無限月読を成功させた次の瞬間に予想外の裏切りにあって黒ゼツに侵食され、輪廻眼を媒介にカグヤ復活の依代とされてしまい、二度目の生を非業の死という形で終えることとなった。


【ステータス】

筋力C 耐久C 敏捷A+ 魔力A+ 幸運D 宝具A++

【属性】

中立・悪

【クラススキル】

気配遮断:A+
 自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】

忍術:A+
 宝具の域にまでは昇華され得なかったが、歴史に名を刻んだ偉大な忍として研鑽し続けてきた類希なる武芸。気配遮断にも派生する。
 火遁に代表される東洋魔術的な狭義の忍術発動には、詠唱ではなく一定の印を結ぶ必要がある。

魔眼(写輪眼):B+
 写輪眼と言われるうちは一族の特異体質。マダラはその中でも最高位である永遠の万華鏡写輪眼を開眼している。同ランクの幻術、千里眼のスキルにも派生する。
 このスキルによる幻術は精神干渉への耐性を持つスキルの働きを貫通して対象に作用し、一旦術中に掛かってしまった場合は他者に解除されるか、魔眼もしくは対魔力のランク分この幻術による干渉を削減することでのみ抵抗できる。逆に、写輪眼自体が他の魔眼、及び幻惑効果からのマダラへの干渉をランク分阻害・看破する働きも併せ持つ。
 また写輪眼にはチャクラ(魔力)を色で見分ける洞察眼としての役割があり、魔術的な隠蔽・透過を事実上無効化する。
 加えてこのスキルの分析能力により、マダラに再現可能な技術であれば一度見るだけで体術・魔術問わず模倣することが可能となる。
 このスキルとして再現されるのは写輪眼共通の能力に限定されるが、本来は万華鏡写輪眼開眼者はさらなる固有瞳術を持つ。

柱間細胞:B
 忍の祖、あるいは神とも称される六道仙人の肉体を再現するに至った子孫・千手柱間の特殊な細胞。
 霊核以外へのあらゆる傷を自動的に再生する能力を持ち、体力と魔力の回復量まで増大させる。移植しただけのマダラでも切断された部位を押し付けるだけで繋げられるほどの再生力を誇るが、特殊な呪いなどで受けた傷を癒す効果はない。また、自然と一体化することで周囲の状況を感知することができる。
 加えて木遁と呼ばれる特別な忍術の使用を可能としている。木遁は実体を有する特殊な植物を呼び出し操作する術のため、攻撃対象の対魔力スキルに影響を受けない。召喚された植物は接触した対象から強制的に魔力を吸い出して成長する性質を持ち、さらに幻想種やその属性を有する相手には追加で強制的な鎮静の効果も発揮する。
 中でも特記すべきは、本体と相互にリアルタイムで知覚を共有できる分身を生み出す木遁分身の術であり、分身は本体から分割された魔力量に応じて一部の宝具やスキルの使用も可能とする。特に純粋な身体能力に関しては本体も分身も劣化しないため、直接戦闘・諜報戦の双方において非常に有用な性能を発揮する。分身がマダラの意図以外の要因で解除された場合は供給した魔力が消費される以外に本体への影響はないが、逆に分身を本体が死亡した場合の代替えとすることは不可能である。

カリスマ:D
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。一族の長であり、子孫がその名を騙るだけで第四次忍界大戦を余儀なくさせたほどの存在ではあるが、生前には率いていた一族全員に見捨てられたことから指導者の求心力としては十分とは言えないランクとなっている。

戦闘続行:A
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。
 不死身を誇った穢土転生時代や十尾の人柱力時代に限らず、柱間細胞の影響や性格もあって常から往生際が悪い。


【宝具】

『輪廻眼(りんねがん)』
ランク:A++  種別:対人(自身) レンジ:-

 スキル魔眼(写輪眼)封印時にのみ発動可能。死の直前にうちはマダラが開眼した、忍界中最も崇高にして最強の瞳術。
 あらゆる結界を看破し、チャクラ(魔力)の五大属性全ての性質変化を操ることが可能で、さらに輪廻眼共通の七つの異能と各開眼者専用の瞳術を操れる。
 但し今回はアサシンとしての現界であるため、第四次忍界大戦において最も多用した餓鬼道と、アサシンに適した能力である人間道、マダラ固有の瞳術である輪墓の三種類のみが宝具として再現可能となっている。
 各能力の詳細は以下のようになっており、これらは魔力量次第では複数を同時に発動することも可能である。

『輪墓』:別次元にマダラの影(分身体)を出現させる能力。この影は輪廻眼以外では視認できず、宝具もしくは陰と陽の力を操れる者以外からの攻撃を無効化する。影は輪墓時空からこちら側へ自由に物理干渉することができるが、本体と同じ身体能力での徒手空拳以外の能力は持たない。
 また攻撃を受ける側の防御スキル・宝具は有効であり、高ランクの直感や心眼等のスキルでもある程度の感知が可能となっているため、影単独ではサーヴァント相手には補助的な使い方しかできないものの、マスター狙いの攻撃としてはマダラの豊富な能力の中でも最高の暗殺性能を誇っている。
 但し影の行動には制限時間が存在し、限界を迎えると本体に戻り、再発動までのインターバルを必要とする。
 輪廻眼の能力中、唯一魔力量に関わらず木遁分身のマダラには使用不可能な術であり、同時に作り出せる影の数も一体のみとなっている。

『餓鬼道』:封術吸印という術により、強固な物質性を持たないあらゆる魔力(チャクラ)を、無効化・吸収する。魔術に限らず、宝具の解放によって放たれた攻性魔力をも、輪廻眼と同じA++ランクまでは完全に無効化・吸収する。さらに直接接触さえすれば、その時対象が体内に収めている魔力をも強制的に吸い出すことも可能である。
 令呪を含む契約や呪い、及び既に完了した魔力の効果を無効化することはできず、また無効化できるのはあくまで封術吸印が発動している間のみである。

『人間道』:対象の頭部を掴むことで、体の動きを封じた上で瞬時に記憶や情報を読み取ることができ、最終的に相手の魂を引き抜き即死させる能力。この霊魂と肉体の分離は強制効果のため、情報取得のみが目的で殺害を望まない場合でも、使用した以上は相手を死に追いやってしまう。また頭部以外に触れた場合は相手の魔力量によって抵抗されてしまう上、相手から記憶を読み取ることはできない。
 ただしサーヴァント相手に使用した場合、魂を引き剥がす効果は例え対象が受肉していようと完全に無効化されるため、これ単独での殺傷力は発揮し得ない。


『須佐能乎(スサノオ)』
ランク:B~A+ 種別:対軍 レンジ:1~50 最大補足:500人

 万華鏡写輪眼開眼者の中でも、限られた者だけが発現する能力。
 術者を中心に展開される、チャクラ(魔力)で作られた半透明な異形の巨人。骸骨状の骨組みから、山より巨大な烏天狗を模した姿(完成体)にまで強靭さを増しつつ変化する。魔力の消費を抑え、解放までの時間を大幅に短縮した一部分のみ、及びマスター等の他者を巻き込んでの展開も可能。
 形態によってランクが変化し、部分展開から骨格までの形態ではBランク、多頭多腕の巨人形態でAランク、完成体でA+ランクに相当する。それぞれの形態は太刀や投擲武器となる勾玉等でランク相応の物理的攻撃力を発揮するだけでなく、宝具換算で一ランク下の数値分、敵からの魔術及び物理攻撃の威力を減殺する鎧として機能する。
 この宝具はあくまでも物質性を得た魔力の衣であるため、例え破壊されたとしても必要量の魔力さえあれば即座に再展開を可能とするが、逆を言えば宝具の魔術的性質を打ち払う類の能力には無力であり、封印術以外の呪いに対しても耐性を持たない。ただし、物質性を持つために攻撃を受ける側の対魔力でダメージを軽減することはできない。
 また、ランクを上げるごとに魔力消費の量は幾何級数的に増大し、特に完成体の展開は外部から新たに魔力を補充しない限り、精々一度が限度である。
 起源は写輪眼にありながら、仮に両目を喪失した状態でも問題なく発動可能。ただし、展開中は輪廻眼の瞳術は解放はできない(目が輪廻眼の状態であることは問題ない)。


『現歪曲す夢幻の瞳(イザナギ)』
ランク:B  種別:対人(自身) レンジ:-

『写輪眼』の固有瞳術の中でも、禁術とされる究極の幻術。
 他者ではなく自身に作用させ、不利な事象を“夢”、有利な事象を“現実”に変える力を持つ。通常の幻術とは異なり現実の事象にも効果を及ぼすため、自身を対象とした因果操作と呼ぶのがより正確。マダラは時間差で発動させることもでき、死後暫くしてから致命傷を負ったという事実を改竄し蘇生したこともある。
 六道仙人が十尾から尾獣を作る際に使用した『陰陽遁』、即ち精神エネルギーによって無から有を生む『陰遁』と身体エネルギーによって形に命を与える『陽遁』による『万物創造』の原理を応用した術で、神霊の揮う『権能』一歩手前の領域にある宝具。
 その強大な力の代償として術を放った写輪眼は光を失い、二度と開かず失明する。当然、同じ目に宿る輪廻眼の力も失われてしまう。


【サーヴァントの願い】
 この世の因果を断ち切り、全ての人々を憎しみの連鎖、苦しみ、空しさから切り離し、地獄のような世界から救済すること。そのために世界を観測し、改変し得る究極の魔眼として、“真なる月の目(ムーンセル)”を手に入れる。


【基本戦術、方針、運用法】

 憎しみの連鎖を断ちたいという願いに反して、マダラ自身は戦闘を好む性質が強く、後押しするかのように『須佐能乎』の性能は三騎士に比肩する白兵能力を彼に付与している。
 そのため、マダラ自身はアサシンのクラスでありながら正面から己の力を誇示する戦いを好むが、加減せず暴れ回るには召喚直後の状態では魔力が足りないため、序盤はNPCやマスター狙いの『人間道』で情報収集及び魂食い、『餓鬼道』で他のサーヴァントを弱体化させる、もしくは撃破しつつ魔力を蓄えることを目的として行動するのが基本方針となる。

 同時に、木遁による分身に斥候させての諜報戦も展開できる。無論、これら分身も気配遮断を持つため、場合によっては分身の奇襲だけで敵を仕留めてしまえることも考えられ、逆に分身が返り討ちにあっても既に脱落したと見せかけることで油断を誘うということもできる。

 またマダラの眼鏡に適う敵サーヴァントとの直接対決にもつれ込んだとしても、さすがに本来の目的を忘れてしまうことはないため、マスターの指示さえあれば敵マスターを直接狙うことに頓着はない。むしろ本体が陽動となる分、気配遮断以上に感知され難い『輪墓』による暗殺成功率が増すため、最初の奇襲に失敗してもよほど危険な相手でもない限りは望み通り正面から戦わせてあげるのが好ましいだろう。

 特筆すべきは写輪眼、及び柱間細胞による仙人感知で、敵の持つ気配遮断やそれに類似するスキルの効果を大幅に軽減することができる点である。そのためクラスに似つかわしくない直接戦闘力の高さと合わせて、他のアサシンに対して基本的には有利に立ち回ることができる。
 また、何らかの有力な武器を入手できた際には、その系統の武器を扱うサーヴァントの戦闘を目撃することさえできれば写輪眼で技術を盗んでおくことができるため、魔力の貯蓄とは別の方向でマダラを強化することも可能となる。

 ここまで強みばかりを書いてきたが、事実上対魔力の互換となる能力はあれど呪いの類への耐性は皆無で、また何らかの手段で須佐能乎を無効化できる相手には一気に主戦力を欠いてしまうなど(本来有利なはずのアサシンのサーヴァントも含む)天敵が存在しないわけではない。いざと言う時には『現歪曲す夢幻の瞳(イザナギ)』による、事実上の蘇生ストックが存在するものの、引き換えにスキルである魔眼(写輪眼)と宝具である『輪廻眼』を同時に一つずつ失ってしまうという大きなデメリットを背負っている。

 必勝を期するのであればやはりアサシンとしての諜報能力を十全に活用し、決戦前に敵対者を見極める運用が必要不可欠となる。