発覚 ◆/D9m1nBjFU






―――全くもって情けないことに。



―――俺という人間はこうなる事態を毛ほども想像していなかったらしい。





  ◆   ◆   ◆




チクタクチクタク、と時計が秒針を刻む音が聞こえてくる。
朝陽が昇りはじめ、誰もが今日の仕事の、学生であれば登校の準備をしはじめてもおかしくない時間帯だ。
もっともテンカワ・アキトにとってはそういった喧騒は指名手配となった今もそれ以前も関係のないことだった。
NPC時代は食堂を休業にしていたし、犯罪者として追われる身となった今は言うまでもない。

そしてこれからは過去の思い出に浸るようなこともない。
そのために方舟におけるアキトの過去の象徴とも言える少女、東風谷早苗を殺す。
そうして初めて己は失うもののない一匹の修羅として聖杯戦争を勝ち抜く資格を得る。言わば通過儀礼だ。

アキトを保護している同盟者、HALの情報網を通じて早苗の居場所は既に掴んでいる。
コンディションには些かの不安もあるが、テロリストであるアキトは常に万全の態勢でのみ臨めるほど戦争というものが甘くないことを知っている。
武装。もとよりヤクザの事務所から盗んできた銃があったがここにきてHALから予想外の武器の供給があった。
サブマシンガン・MAC10にアサルトライフル・AK47がそれぞれ予備弾倉つきで一丁ずつ、それに手榴弾が三つ。配下と思われるNPCを介して届けられていた。
HALにメールで尋ねると、どうやら奴は予選の頃から来るべき時に備えて銃火器の密輸を配下にさせていたらしく、アキトがヤクザから盗んだ銃も元々はHALが仕入れたものだった。
手付金のつもりかは知らないが寄越すというのなら有難く使わせてもらうまでの話だ。



―――と、ここまで来たところで極めて現実的な問題がアキトの前に立ち塞がっていた。



『続いてのニュースです。昨夜未明、B-9で美遊・エーデルフェルトさんと思われる十歳の女の子が銃撃された事件について、警視庁はテンカワ・アキト容疑者を指名手配とする方針を明らかにしました。
テンカワ容疑者は現在も逃走を続けており、警察が今も厳戒態勢を敷いて捜査にあたると同時に、近隣住民へ不用意な外出を控えるよう呼び掛けております』

テレビから流れるニュース番組では新都エリアを厳重に捜査する刑事たちの雄姿が映されている。
これこそがアキトの障害として在る警察NPCという存在だった。
HALの調べでは早苗は現在C-9にあるマンション、つまり彼女の自宅にいるという。住人の中にマンションに戻る早苗を目撃したHALの配下がいたのだ。
マンションというだけでも即座に突入するのは躊躇われる場所だが問題はそれだけに留まらない。
C-9と言えば事件の起きたB-9にほど近いエリアであり、それ故警察NPCたちが多数動員され血眼になってアキトの行方を追っている。
アキトの現在地は新都中心部の喧騒からやや離れたD-8、物理的な距離はさほどでもないがやはり指名手配という身分が大幅に動きを制限してくる。
はっきりと言って警察が大勢いる状況を何とかしない限り早苗に接近するのはおよそ不可能に近い。


……が、HALにはこの状況を打破する用意があるのだという。
しかしそのためには今少し時間がかかるらしく、故にアキトはこの家の家主が使っているパソコンを通してHALとメールで会話することになっていた。


『何の用だ?走狗になる気はないと言ったはずだが?』
『そう構える必要はない。君の邪魔をするつもりもね。
今のうちに同盟者として情報交換をしておきたいと思ったまでだ』


情報交換。確かに同盟を結んだはいいがそういったことはまだしていない。
確かに期せずして待ちに徹するしかない時間が生じた以上情報交換に使うのも一つの手ではあるか。
もっともHALをどこまで信用するかという問題は付随するが。


『良いだろう、付き合ってやる。
俺が見たマスターとサーヴァントの特徴を送るから少し待て』


覚えている限りの参加者たちの情報をまとめてHALに送信する。
奴の飼い犬同然の立場である現状、慣れていることとはいえ思うこともある。
とはいえ既に隠れ家に情報、武器を提供されている以上こちらも情報程度は送らなければ同盟の体裁を保てない。
当然アンデルセンや早苗の情報も送ってある。こうなった以上彼らとの同盟など消えたも同然だからだ。


『キレイなるマスターとそのサーヴァント、セイバーは厄介ではあるがサーヴァント間の相性で優位に立てるのならば彼らの相手は君に頼みたい。
私はキレイを君に近付けないよう最大限バックアップさせてもらう』


最初に遭遇した主従、キレイとセイバー。
サーヴァント同士の戦闘であればまず負けはないがマスターの戦闘力が厄介極まる。
銃弾を平然と避ける身体能力はアキトに対処できるものではない。
HALから新たに送られた装備を使ってもアキト単独ではまず勝ち目がないだろう。
そうなるとHALの言う通り奴からの支援を受けてキレイをアキトに接近させないよう立ち回る他ない。


『そして美遊・エーデルフェルトと高い再生能力を持つバーサーカー。
優先的に対策すべきは君を陥れた彼女たちだろう。能力や行動にも不可解な点がある』


やはりと言うべきか、HALも美遊主従を危険視しているようだった。アキトにとってもそれは同じだ。
早苗を決着を着けるべき相手とするなら美遊は対策を講じておくべき相手だ。
一度は奪い、そして奪還されたステッキが関わっていると思しき魔力供給能力とそれに支えられたバーサーカーの再生能力に任せた正攻法。
さらには先ほどアキトを罠にかけた際に見せた銃弾の直撃をものともしないふざけた衣装にバーサーカーだけでなく美遊自身も持っていた飛行能力、そしてアキトの居場所を的確に突き止めた探知術。
美遊の攻撃面での性能は不明だが、何かしらはあると想定しておいた方が良い。
アキトには結局何なのかわからなかった、剣士が描かれたカードにしても持ち主である美遊なら十全に扱えるのだろう。

認めるのは少々苦々しいが、美遊とバーサーカーというコンビはおよそアキトとガッツの上位互換と言えた。
サーヴァント戦では美遊のバーサーカーに対して決め手を欠く上に自分では美遊ほどのバックアップができない。
昨日の戦いではその地力の差を埋め合わせるべく隙を突いてボソンジャンプを使い美遊を取り押さえた。
そこまでは良かったが取り押さえた後の対処を致命的に誤った結果、後に逆襲に転じた美遊に嵌められ追われる身になった。
仮に手元にチューリップクリスタルが残っていたとしても二度と美遊には通用しまい。実際アキトを陥れた時の美遊はボソンジャンプへの対策を打っていた。
おまけに最低でも拳銃弾ならば確実に防げるボディアーマーめいた衣装を纏っているときた。
対策もなくもう一度彼女らと相対すれば確実にアキトとガッツは殺されるだろう。


『美遊の行方は追えていないのか?お前のサーヴァントはアサシンあたりだろう?
そうでなければバーサーカーを従える俺に同盟を打診するはずがない』
『流石にその程度は察しがついていたか。隠し立てしようと思っていたわけではないが確かに私のサーヴァントのクラスはアサシンだ。
そして残念ながら美遊・エーデルフェルトの行方に関してはまだ掴めていない。主従揃って空を自在に飛ばれてはこちらの情報網でも追いきれない』


仕方ないことではある。何が起きても不思議ではない聖杯戦争といえども、まさかマスターとサーヴァントが揃って空を飛ぶなど予め念頭に入れておけるものではない。



『所在が分からない以上詰めるべきは他の部分だ。
君は彼女について探知能力を持っていると言ったが、私はこの可能性は低いと見ている』
『何故だ?』
『あくまで君が齎した情報を基にした判断だが、ただ君の位置を探ったにしては行動が的確すぎる。
君の不在の隙を突いて天河食堂に侵入し、恐らくは内部を物色して身分証を探し出し、そこにあることを知っていたかのように君が置いていったステッキとカードを奪い返した。
君の銃撃を敢えて誘ったかのような行動も然り。彼女は君が銃器を補充し残弾が十分にあることを予め知っていたのではないか?』
『つまり美遊と別れてからの俺の行動が全て筒抜けになっていたとでも?』
『可能性の一つとしては考慮しておくべきだろう。
恐らく彼女は魔術側の人間。どのような手管を使うか推し量ることは難しい。
だがそれを差し引いても彼女の行動には不可解な点がある』


不可解な点、とは何か。アキトには咄嗟に思いつかなかった。
考えているうちにHALから矢継ぎ早に新たなメールが届いた。


『最初は堂々と正攻法で戦いを挑み、敗れた後は徹底した搦め手で君を社会的に抹殺しようとした。
私はこの心理的な動きに違和感を覚えた』
『それほど不自然なのか?正面から戦って負けたから戦略を切り替えただけだろう』
『年齢の割に切り替えが上手すぎる。それに君の不在の間にステッキとカードを取り戻していたのならもう一度決戦を挑む手もあったはずだ。
実際に彼女は全力を投じれば最低でも銃で武装した君とも渡り合えるだけの力を持っていたにも関わらず策の完遂にのみ専念した。
思考様式が別人のそれに切り替わったかのような印象を受ける。あるいは何者かの指示を受けたか』
『彼女が他のマスターの指示を受けて行動したということか?』
『いや、その可能性は低い。サーヴァントが離れた状況下で他のマスターと接触していたなら殺されている可能性の方が高い。
私が憂慮するのは美遊・エーデルフェルトが方舟外部との通信手段を持っている可能性だ』


果たしてそんなことが可能なのか、アキトとしては首を傾げざるを得ない。
何しろ今のアキトはラピスとの接続を絶たれている。
魔術師といえど方舟のセキュリティを掻い潜って外部と通信するなど可能なのか?


『後でデータを送るがこちらでは既に外部から演算装置のバックアップを受けているマスターを特定している。
魔術的なアプローチによって同等ないし準じるバックアップを得た可能性は否定できるものではない。
とはいえ全ては可能性だ。今は頭に置いておくだけで構わない。
それに、今しがた準備が終わったところだ。これで警察の目に留まるリスクは下がるはずだ』




  ◆   ◆   ◆




空が白んでくる時間帯になっても警察官の仕事に終わりはない。
銃器を所持したまま逃走を続ける凶悪犯、テンカワ・アキトを追う刑事たちは強い使命感を胸に捜査を続けていた。
署の方針としては本来ならテンカワ・アキトの追跡に人員をフルに割きたかったのだがそうもいかない事情があった。
深夜の住宅街に突然響いた少女の悲鳴と銃声は近隣住民の不安を煽るには十分過ぎた。
それ故現場検証に加えて、住民の不安を抑えつつ聞き込みを行うため少なからぬ数の刑事が事件現場である天河食堂とその周辺に駆り出されていた。

「天河食堂の主人とはそれなりに付き合いがありますが、とてもあんなことをする人だとは思えませんでした。
奥さんを亡くして自分も障害を負って、それでも店を開けるためにリハビリを頑張ってきた真面目な人ですよ」
「なるほど…わかりました。ご協力感謝します」


現在キッチン・タムラのオーナーシェフに聞き込みを行っている刑事も聞き込みに動員された者の一人だった。
事件発生の報せを受け、何故痛むのか心当たりのない後頭部をさすりながら現場にやって来ていた。

小学生女児に性的暴行を働いたと見られ、さらに拳銃を持って逃走している凶悪犯は近所では好青年として通っていたようだった。
とはいえ検挙された犯罪者が普段は良い人として通っている事例など刑事はこれまで何件も見てきているのだが。
しかし気になるのがこのタムラのシェフを含めた複数の人間からテンカワ・アキトが五感に障害を負って通院していたという証言があることだ。
まだ病院に裏は取れていないが、事実だとすればそんな人間がどうやって女児誘拐に加え銃器を手に入れさらに今なお警察の捜査から逃げ果せているのだ?

「そういえば…昨日の夕方に警察の服を着た銀髪の綺麗な子が春紀ちゃんたちと一緒にうちに来ましたね。
他にも春紀ちゃんより少し年下っぽい中学生ぐらいの赤毛の女の子や怖そうなお兄さん、小学校低学年くらいの小さい子も一緒だったかなあ……。
それで、料理を作ってたんで直接見たわけじゃありませんが、その子の声でテンカワさんについて春紀ちゃんに尋ねてたのを覚えてますよ。
ああ、春紀ちゃんっていうのは近所に住んでる子のことなんですけどね」
(ホシノ警視か……事件の前からテンカワをマークしてたってことか?流石だな)

店主の証言をNPCらしい大雑把さで解釈しながら刑事は次の聞き込み先へ向かった。
裁定者サイドの意識操作もあってホシノ・ルリは顔に見合わず現場主義、気まぐれに事件を追っては立ち去る、文字通りの妖精警視と専らの評判であった。



数件の聞き込みを終えて刑事は一息ついていた。
もっとも休憩する暇などないので本当に一息ついただけなのだが。
やはりテンカワ・アキトについては近隣住民の中では概ね「真面目な好青年で、妻を亡くして身体に障害を負っている」という評価だったようだ。
また直接関係はない話だが天河食堂にほど近い位置にある喫茶店の店主からホシノ・ルリらしき人物が薄紫色の頭髪の幼女と共に20時半から約三時間滞在していたという証言があった。
その幼女について刑事には一つ思い当たる節があった。
恐らくルリが警察署の方に調査を依頼していたという身元不明の子どもだろう。
署や近場の交番に預けなかったことが気にならないでもなかったが、まあ他の人員の誰よりも年齢の近いルリの方が接しやすかったということだろう。
NPCらしく、さして気に留めず仕事を続けようとしていた刑事のところへテンションの低い別の刑事が現れた。

「悪い堂島さん、遅くなった」
「どうした笹塚?現場に遅れるなんてお前らしくもない」
「……署から出ようとしたところにエーデルフェルトの当主が怒鳴り込んできたもんでその対応に時間を取られた」
「ああ、あのお嬢さんか……。そいつは災難だったな」

堂島と呼ばれた刑事は地元の名士として良くも悪くも有名な、エーデルフェルトの当主の対応を押しつけられた同僚に心底から同情した。
住民の目撃情報からテンカワ・アキトに銃撃された女児は昨日の朝方から行方不明になっていた美遊・エーデルフェルトと見られており、その家の当主も独自に美遊を捜索していたらしい。
美遊は事件当初は生存を絶望視されていたが、現場から彼女の血痕が見つからなかったこと、住民から「銃撃された美遊が立ち上がって逃げた」という目撃情報が寄せられたこともあって今は懸命の捜索態勢が敷かれていた。
恐らくテンカワ・アキトの撃った銃弾が運良く命中しなかったのだろう、というのが警察の見解だった。
とはいえ当主の怒りももっともだろう。警察の威信にかけても犯人を逮捕し行方不明の少女を保護しなければ。

「で、その前に金庫持ってうろついてた藤村組の連中を見つけて職質しようとしたら逃げようとしたんで捕まえた。
取り調べで全部吐いたよ。奴らCZ75Bにデザートイーグルを盗まれたんだと」
「CZ75Bか……現場から出た線条痕と一致するな。
となると銃の出どころは藤村組ってことか」
「ただ気にかかるのが盗まれた銃が入ってたっていう金庫が有り得ない壊され方をしてたことだ。
道具を使ったにしてもあんな壊れ方は有り得ない」
「共犯者がいたのかもしれないな……。
近所の住民の話じゃテンカワは身体を悪くしていて通院もしていたらしい。
カルテの確認はこれからだが複数の証言がある以上ほぼ間違いはないだろう。
障害のある料理店の店主がエーデルフェルトの養子を誘拐してヤクザの事務所から銃を盗み出すなんて単独でできるもんじゃない」


堂島は考える。
美遊・エーデルフェルトに発砲し現場から逃走したのは目撃情報やテンカワ・アキトが一人暮らしであることを踏まえればほぼ確実にアキトで間違いない。
しかしそこに至るまでには共犯者の存在があったように思えてならない。
警察学校での訓練を潜り抜けたはずの警察官数名が殺傷されたことも含めると共犯者は意外な大物かもしれない。

「警視はここまで予期して予め店の前に張り込んでたのかもな」
「ん?警視が何だって?」
「?…藤村組の連中を見つけたのも警視の指示なんじゃないのか?」
「いや、この件に関して警視からは何の指示も受けてないが……どうしてそんなことを?」
「………何だって?」



同僚の発言によって、流れが変わった。
ホシノ・ルリ警視は事件が起こる可能性を予期して天河食堂近辺に張り込んでいたのではないのか?
藤村組事務所からの銃の窃盗と事件に使われた事実をルリが今も把握していないとすれば、彼女の輝かしい経歴に似合わぬ失態だ。
……もしや彼女の行動には何か違う意図や理由があったとでもいうのだろうか?

「……笹塚、お前さっきまで署にいたんだよな?
警視か誰かが例の身元不明の少女を預けに来なかったか?もしくは親御さんが見つかったとか」
「いや、そんな話は全く。……そういえば樋口のやつがそのことでぼやいてたな。
調べさせるだけ調べさせておいて一言も進展の報告がないのはいくら階級が高いからってどうなんだーとか」
「何だと!?」

ルリからは件の身元不明の少女について、堂島たち現場の刑事たちに何の報告もない。
そもそも彼女が夜も遅い時間帯に件の少女と共に喫茶店にいたということ自体アキトが起こした事件の聞き込みで偶然わかったことだ。
やむを得ない事情があって一時的に一緒にいたのだとばかり思っていたが、日を跨いでも署や交番に預けず両親が見つかったかどうかの報告さえないとなれば話は変わってくる。
警察機構に属する人間の取る行動としては、NPCといえど流せないほどに不審だった。

「堂島さん、さっきからどうした?」
「ああ、実はな……」

同僚、笹塚の問いに歯切れ悪く先ほどの聞き込みで得た情報を話す堂島。
話を聞くうちに普段あまり表情の変わらない笹塚も些か深刻に考え込む素振りを見せた。

「警視がそんなことを、ね……。
確かに臭うな。少なくともテンカワが事件を起こすことを予期してたって線は薄そうだ」
「ああ、恐らく警視の行動とテンカワの事件は直接は繋がってない。
だとしたら何だって子供連れでこんなところをうろつきながら、テンカワについて住人に聞いてたのかって話だ」

つい今しがたまでは信じきっていたホシノ・ルリ警視。
その評価が二人の刑事の中で少しずつ揺らぎ始めていた。
そこへ別の刑事がおずおずといった様子で堂島と笹塚に近付いてきた。

「あのー……実はさっき孤児院から署の方に目撃情報が寄せられたそうなんですが……。
何でも深夜の少し前にホシノ警視らしき人物が六歳前後の女の子を連れて現れ、『ここを襲撃すると犯行予告がありました。子供たちとこの子を連れて避難してください』と言われたそうです。
それから孤児院に入っていくジナコ・カリギリの姿を見たとも話しているらしく、正直信憑性に欠ける話だとは思ったのですが一応堂島さんの耳に入れておこうかと……」
「……その話、本当か?」

刑事が持ってきた話は堂島と笹塚にとって初耳だった。
恐らくそれ単体ではあまりにも突拍子がないため信憑性に欠けると判断され、今までこちらに入ってこなかったのだろう。
実際先ほどまでの堂島なら信用しなかっただろう。だが今は違う。
何の意図で行動していたのか些か不透明になってきた警視に関わる市民の目撃情報だ。最早聞き逃すべきではない。

「はい、ただその預けられた子供というのがいつの間にか抜け出してしまい行方がわからなくなったそうで……。
大きな物音がした後警視と孤児院の院長であるアンデルセンという神父が未だに戻ってこないらしく、かなり困惑しているそうです」
「何だそりゃ、どういうことだ?」

何もかもが寝耳に水だった。
その話が事実ならルリは何らかの事件性を確信して孤児院に向かったのだろうが、犯行予告とやらが自分たちに一切知らされていないのは何故だ。
事件性があるとわかっていながら署や現場への報告もなく、警官を連れて行くこともせず代わりに件の少女を連れて行く?
常識的に考えて、せめて少女だけでも警察署なり交番なりの安全な場所に預けてから行くべきであるにも関わらず?
その上現場に現れたというジナコのことすらこちらに何も伝えないだと?
有り得ない、警察機構に属する者としてそのような行為は断じて有り得ないことだ。




「少なくとも警視に俺たちに何かを隠したいって意図があったのは間違いなさそうだ。
これだけの独断行動があって報告がない以上、故意でないってことはない」
「……おい笹塚、お前自分が何言ってるのかわかってんのか?」

煙草を燻らせながら不穏な言葉を放つ笹塚を堂島が窘める。
確かに気持ちはわかる。多くの捜査情報を隠蔽し、年端もいかない少女を危険が予測される場所に連れ回すなどルリには不審な行動が多すぎる。
だがそれでも彼女はこちら側の、警察組織の一員だ。身内を疑うような発言はさすがに聞き逃せない。
堂島に睨まれた笹塚はと言うと、普段通りの気怠げな顔のままだった。

「堂島さんこそわかってるはずだ。
確かに彼女はいくつもの事件を解決に導いた天才なんだろう。
その実績を疑うわけじゃないが……逆に言えば俺たちは彼女についてその輝かしい経歴しか知らないってことだ。
昔からここで一緒にやってきた仲間ってわけじゃない」

笹塚の反論に堂島は咄嗟に言葉を紡げない。
確かにそうなのだ。自分たちが知るホシノ・ルリ警視とは経歴に載っていることが全てだ。
その人となりについて確信を持って述べられることなど何一つとしてない。

「加えて昨日警視が着任したのとタイミングを同じくして事件に次ぐ事件ときた。
もちろんその全てに彼女が関与しているなんて馬鹿なことは考えちゃいないが、少なくとも昨日の時点で彼女は現場から上がった情報の全てを知り得る立場にいた。
その上で様々な指示を飛ばし、自分は不都合な情報を隠蔽しようとした。まずこれは事実だろ?」

これだけ怪しい情報が上がれば少なからずルリへの見方も変わる。
彼女の下に現場からのあらゆる情報が集まるということは、その気になれば都合の良いように指示を送ることも可能だったとも言える。
無論そんな証拠はどこにもない。だが実際にルリが一部の情報を隠蔽していたことがわかった以上可能性の一つとして疑わないわけにはいかない。
疑うことこそが刑事の仕事であり本分だからだ。

「……引っかかってたことはあったんだ」

バツが悪そうに黙っていた堂島が重苦しく口を開いた。
言ってしまえば取り返しのつかない領域に足を踏み入れてしまうのではないか。そう自問自答しながら絞り出した言葉だった。

「D-6の洋館で起きた火事に警視がいち早く気づいて消防に通報したらしいってことなんだが……。
あそこは地図にも載ってない幽霊屋敷で昔からここに住んでる土地勘のある人間でもない限りまず見つけられないはずだ。
最初に聞いた時はてっきり警視がこの町に赴任するにあたって相当念入りに下調べしてきたんだろうとばかり思ってたが………」
「今となってはその下調べとやらにも別の意味があったのかもな」
「それにさっきはああ言ったが、テンカワの件にも奴単独の犯行とするには腑に落ちない点が多い。
奴は車も持ってないし、身体に障害を抱えてるって証言がある。美遊・エーデルフェルトに悲鳴を出されるまで住民に目撃されないほど緻密な犯行が可能だったとは思えん。
そこの問題を解消したとしても、だ。養子とはいえ名家のエーデルフェルトの令嬢なんて容易く誘拐できる相手じゃない。
身代金目的の誘拐をやるにしたってさすがに相手が悪い。
だがもし……もし警察内部の人間が共犯者であるとすれば、美遊・エーデルフェルトの拉致・監禁も不可能じゃなくなる」



ホシノ・ルリとテンカワ・アキトの二人には接点らしい接点はない。それが堂島の考える一つの前提だったが、もしそうでないとすれば。
二人が堂島たちや地元住人ですら知らないところで何らかの接点を持っていたとすれば、アキトの犯行は不可能事ではなくなるし、ルリの不審な行動のいくつかにも説明がつく。
サイバー犯罪の専門家であるルリなら直接・間接を問わずアキトに対して様々な支援を行えただろう。
実際ルリが出した指示によって捜査員たちは誰一人アキトをマークすることなく、犯行の予兆や痕跡を事件発生まで見出すことができなかったのだから。


……堂島としてはあまり考えたくないことだが、ルリは警視の階級にあるエリートとはいえ年齢的にはまだまだ多感な年頃の未成年の少女だ。
この町に赴任する前にアキトに誑かされた可能性さえ事ここに至っては完全には否定しきれない。
洋館炎上の件にしても、第一発見者がルリというのは何とも怪しいものだ。
この町を襲う一連の事件の数々と何の関係もない幽霊屋敷に何の用があったというのか。火事ということは何らかの物的証拠の隠蔽を試みたのではないか?

「身内を疑うなんてやってられんが、こうなると昨日の警視の足取りを徹底的に洗う必要があるな」
「捜査本部に報告しないとな。銃を持ってるテンカワの追跡ももちろん大事だが内側に犯人に通じてる人間がいるかもしれないんじゃ捜査が立ち行かない。
幸いと言っちゃ失礼だが警視はここじゃ外様で明確な支持基盤はない。上の方の政治とやらで疑惑を握り潰すなんて可能性は低いだろ」




  ◆   ◆   ◆




こうして「警視の妖精」と呼ばれたホシノ・ルリは一転、一部警察NPCの間で疑惑の人となった。
裁定者サイドによるNPCへの意識操作があったにも関わらず何故こうも急に事態が変化したのか。
その要因を大雑把に、一言で言ってしまえば「間が悪かった」のだ。


刑事たちが疑念を抱いたようにホシノ・ルリが宮内れんげを連れたまま行動し続けたことは確かに警察の一員として問題があった。
普通の役職(ロール)を割り当てられたマスターであれば問題ない行為であっても、警察の制服を着ている以上その人間の行動には普通以上の規範が求められる。
とはいえ本来ならルリとれんげの行動の足跡は警察NPCに露見しないはずだった。
そんなことがあったとしてもせいぜい断片的な情報が上がる程度で、「信憑性に欠ける」の一言とともに切り捨てられ埋もれていくはずだった。
そうはならなかった原因はルリの行動に起因するものではなく、ある不幸な偶然にあった。

ルリがれんげを伴って孤児院に出向いてから少し経った頃、ルリがマークしていた天河食堂で事件が起こった。
言うまでもなくマジカルサファイアと合流した美遊がアキトを陥れるために起こした事件だ。
ただの通り魔程度ならまだしも銃を使った凶悪犯罪となれば事件現場とその付近に多数の警官が動員されるのは自明の理。
そしてある程度時間が経ち、近隣住民の動揺が落ち着いてくれば警察による聞き込みが行われることもまた自明だった。
これにより天河食堂付近で行動していたルリの足跡が警察NPCに拾われることとなり、さらに本来無関係であるはずのアキトを探すルリの行動とアキトが陥れられた事件が一本の線で結ばれてしまった。

さらに悪いことにルリは予選を経験しておらず、その辻褄合わせとして「本選開始と同日に赴任した警視」の役割(ロール)を割り振られた。
つまり日常を過ごすと同時に培われるNPCたちとの交流や絆が存在しないということ。
故に一度でも強く疑われればそれで終わりという脆さも孕んでいた。


  ◆   ◆   ◆




「戻ったぞ、ますたあ」

錯刃大学にある研究室に男の声が一つ。
アサシンのサーヴァント、甲賀弦之介が性技のライダーを仕留め主の下に戻って来ていた。

「ライダーは仕留めた。だが彼奴のますたあの姿が見えぬ。
恐らくあのライダーに見切りをつけ別の英霊と契約を結んだのであろう」

己がサーヴァントの報告を受け、弦之介のマスター、電人HALは即座に裏の空間―――禍津冬木市へとアクセスし情報を精査する。
あの空間を認識し、この研究室の工房を形成した時点で何時でも禍津冬木市の情報を調べられる仕組みを作り上げていたのだ。
その手腕によってHALは禍津冬木市で起きた破壊の痕跡を数秒と経たずに見つけた。
とある巨大な情報圧、霊基の消滅をも。

「いや……そうではないな。
彼のライダーのマスターである魔神皇はサーヴァントの消滅に従ってアークセルに消去されたようだ。
あの空間からの退去ではなく電脳死だ。ログから閲覧できる情報からしてもそれは間違いない。
どのような経過を経てそうなったかまでは確認できない以上推測する他ないが」
「ライダーがこちら側に戻って来ていたこともそうだが、何とも面妖なことだ」
「………そういえば」


またも思い出す。
テンカワ・アキトが口にしていた「もう一人の自分」なる存在。
あの魔神皇ももう一人の彼に出くわし、恐らくは戦闘行為を含めた過程を経て電脳死を遂げたのだろうか。
もう一人の魔神皇などという存在があったのであれば、彼ほどのマスターが斃れるのも無理からぬ話ではあるが。
しかし、もしそうであれば。HALのような例外存在でない限りマスターが禍津冬木市に踏み入れば「もう一人の自分」とやらが出現するということになるのか?
データの不足した仮説に過ぎないが、機会があれば他のマスターを禍津冬木市に誘い込み経過を観察するすべきかもしれない。

「………いや」

と、そこまで考えたところでHALは一度ここまでの思考を凍結することにした。
どうあれ魔神皇と性技のライダーは脱落した。であれば彼らについて長々と考え時間を費やすのは得策ではない。
今は生きている強敵たちへの対処こそを第一とするべき時だ。

「アサシン、ホシノ・ルリの地盤を切り崩す目途が立った。
戻ってきて早々すまないが新たな仕事を頼むことになるだろう」

そう言ってHALはB-9で捜査をしていた刑事たちがルリに疑念を抱いたことを語った。
何故それをHALが知っているのか?問うまでもない。天河食堂周辺の聞き込みに当たっていた刑事たちの中にHALの配下がいたからだ。



「―――つまり、ホシノ・ルリはマスターとしての活動に傾倒しすぎた。
その結果として日常における立ち回りに隙が生じた、ということだ」

警察NPCの動向を一通り弦之介へ説明し強敵ホシノ・ルリをそう評した。
聖杯戦争である以上現実逃避し自らの役割(ロール)にのみ没頭するのは論外だが、さりとて日常を度外視しすぎても綻びが生じ破滅に繋がり得る。
違反行為を犯したB-4のキャスターのマスターがそうであったように。

「彼女はマスターとしては強敵だが、警察に属する者としては少々迂闊だったと言える。
恐らく元の世界でも日本で言うところの飛び級制度のようなシステムで何らかの公職、それも高い地位にいたのだろう。
しかしそういった若き天才は得てして得意分野に特化する分社会的な経験が不足しやすい。年齢からすれば彼女もそういった手合いなのだろう」



結論から先に述べれば、警察NPCのルリへの急速な嫌疑の浸透・拡大にはHALも一枚噛んでいた。
電子ドラッグで洗脳した刑事からある程度の捜査情報は送られていたし、そもそもがルリを孤児院に誘導したのはHAL自身だ。
タイミングを見計らって配下の刑事を孤児院に派遣しルリがそこにれんげと共に来ていたという証言を取っておいたのだ。
聖杯戦争とは情報戦。警察官として不適切な行動の記録・証言を取っておけばいずれ有用に使えると判断してのことだ。

とはいえこうも早く有効活用できたのは幸運が味方した部分が大きい。
ルリがB-9の喫茶店を離れてから少し遅れて美遊・エーデルフェルトが起こした冤罪事件によって天河食堂周辺に警察の手が入った。
さらに電子ドラッグに支配されていない、正常なNPCが現場周辺の聞き込み捜査という正当な手段によってルリへの疑念を抱いた。
HALの見立てではルリの不審な行動に気づいた刑事は警察NPC全体でも比較的に能力が高かったのだろう。NPCといえど個性や性能は全て均一というわけではなく、能力に劣る者もいれば優れた者もいる。
HALといえどこれだけの幸運が重ならなければルーラーにNPCを支配している事実を察知させないという制約下でルリを社会的に追い込むことは無理だった。
確かにルリは警察として不審を抱かれるに足る行動を取ってはいたが、HALが知る他の多くのマスターと比べて極端に迂闊な行動を取っていたわけではないのだから。
HALはルリに疑念を抱き始めた警察NPCの背中をほんの少し押しただけに過ぎない。


そしてこの後ルリが取るであろう行動についてHALは予測を立てていた。最初から注目していただけに彼女に関するデータは揃っているからだ。
まず第一に彼女は宮内れんげと行動を共にしていた。警察として不審な行動を取ってでもれんげを手元に置いていたのはそこに利益や有用性を見出したためであろう。
第二に彼女は自身に与えられた権限を利用することに積極的だ。市内の情報の多くを集められる役職にいるのだからこれは当然ではある。
つまり彼女は警視という立場に価値を見出している。突くべきはそこだ。

既に電子ドラッグの支配下にある警察NPCをホシノ・ルリの自宅付近、検問が設置された冬木大橋の両側に固めさせている。
恐らく次にルリが取る行動は宮内れんげの所在を確認することだ。
その上で最も確実性が高くリスクが小さいのはルーラー、監督役が拠点にしているD-5の教会を訪ねることだ。
彼女は可能な限り戦闘を避けようとする傾向にあるため最初に向かう先はそこだと見て間違いない。
故に教会に辿り着く前に彼女の自宅近辺か交通の要所である大橋の検問で彼女を捕らえる。
堂々と警察の制服を着て行動する彼女のことだ。大橋を避けて別の移動手段で川を渡ったり変装をするという線は薄い。

そして警察官に警察署までの同行を求められた場合ルリがどう動くかを予想することは難しくない。
警察NPCへの殺傷行為は直ちに監督役の沙汰が及ぶ可能性がある以上暴力による排除はまず有り得ない。
また彼女にしてみればれんげの件はともかくアキトと共謀したという嫌疑など事実無根の疑いだ。
キッチンタムラでアキトのことを調べていた件にしても大方独自の情報網で早期にアキトがマスターだと知っていただけの話だろう。
であれば彼女は自身の手腕によって、正攻法で捜査員たちの矛盾を突き自らの冤罪を証明しようと考える。実際それが可能なだけの頭脳の持ち主だ。
警察から逃亡することにより社会的地位を失うことと天秤にかければ、自ら疑いを晴らすため敢えて警察署に同行する可能性が高い。
その時こそが最大の好機だ。それにこの手段であれば確実にシオンとも分断できる。

「警察署という公的なスペースではホシノ・ルリは自身のサーヴァントを常時実体化させておくような真似はできない。疑われている状況ならば尚更だ。
加えて、彼女は女性でサーヴァントは男性。一般心理としてどこにでも侍らせておく、とはいかない。霊体化させるとしても、だ。
サーヴァントが霊体化を解き実体化するには僅かながら確実なタイムラグがあることはわかっている。
つまり、屋内という限られたスペースにあって実体化を保ったまま気配を消せる君の独壇場ということだ」
「なるほどな。つまりホシノ・ルリを暗殺せよ、と?」
「そうだ。既に彼女を泳がせる段階は過ぎた。
現時点では彼女たちの持つ情報では我々が持つ優位性を崩すには足りない……が、近い未来に崩される可能性を否定することもまたできない。
ホシノ・ルリとシオン・エルトナムは共に聖杯戦争からの脱出を目論んでいる、ということだったな?」
「然り。確かにこの耳で聞き届けた」

弦之介は超高ランクの気配遮断を持つ熟練のアサシンだ。
周囲に張り巡らされた糸によって強襲を仕掛けることは叶わずとも彼女らの会話に聞き耳を立てられる位置を確保する程度のことは出来ていた。
そうでなければルリとシオンが同盟を組んだと確信を持ってHALに報告することなどできはしない。

「聖杯戦争への反抗を掲げる本多・正純。脱出を目的とするホシノ・ルリとシオン・エルトナム。
加え、つい先ほどテンカワ・アキトから東風谷早苗もまた聖杯戦争を否定するスタンスであるという情報もあった。
どうやら私が想定していた以上に聖杯戦争のルールに従わない参加者は多いらしい。
これ以上見に徹していては彼女らの合流、ひいては聖杯戦争そのものの瓦解を目的とした一大勢力の結成という事態を招く恐れがある。
故にこそ、彼女らが結びつく前に、こちらの情報アドバンテージが機能しているうちに各個撃破しなければならない」


本多・正純だけならさしたる脅威ではなかった。
だがそこに聖杯戦争に対して否定的な陣営が三組も加わるなどということになればその影響は甚大だ。
四組以上もの大同盟などを組まれ、聖杯戦争の打破を喧伝でもされようものなら聖杯獲得を狙うマスターたちであっても考えを変えないと断言することは難しい。
明らかに勝ち目のない集団に挑むぐらいならその集団の軍門に下り元の世界への帰還を優先する思考に至るマスターは必ず出てくる。
そうなれば如何に電脳世界で強力無比な力を誇るHALでも手がつけられない。
そんな最悪の状況に陥る前にこれまで手に入れた情報をフルに活用し、積極策を以ってホシノ・ルリらを早期に撃滅しなければならない。
幸いアキトは早苗を排除するつもりのようだ。支援しつつこのまま好きにやらせるのが得策だろう。

「君には先に警察署に向かい、そこで網を張りホシノ・ルリを暗殺してもらいたい」
「それは構わぬが、少々ばかり皮算用が過ぎるのではないか?
如何に我らに地の利があると言えどあちらの英霊次第では失敗に終わるやもしれぬ」

弦之介が懸念するのはルリのサーヴァントの能力だ。
無論、サーヴァント戦に移行する前に一撃でルリを暗殺してみせるという自負はあるが、それとは別に戦争には相手がいるもの。
思わぬスキルないし宝具によって目論見が外れないとも限らない。

「確かに君の言う通り、どれほど事前に策を整えようと不測の事態は常に起こり得る。
しかし今回に関しては失敗したとしても容易にリカバリーできる。
そもそも彼女は現在事件の容疑者になりつつある。これまでならばいざ知らず、警察から不審を抱かれた状況で謎の襲撃事件が起こればまず彼女の方が注目される。
まして君のスキルならば最悪ホシノ・ルリを取り逃がし目撃者が出たとしてもその記憶は一切残らない。
後は社会的に彼女を追い詰めていく方策に切り替えれば良い」

それに、HALと弦之介の力でルリを暗殺するにあたって今以上に良い条件を揃える機会は来ない可能性が高い。
何しろルリとシオンは既に電子ドラッグによりNPCを支配する存在を把握している。
時間が経てばHALの手が警察内部にまで伸びていることにも必ず気づく。
そこまで考え至る前に警察に嫌疑を掛けられた事実を突きつけ彼女の思考を電子ドラッグから逸らし、かつ警察署で暗殺する必要がある。

そしてホシノ・ルリに関する情報は今しがたアキトに送信した。
これからHALが行う暗殺計画を除いた、HALが知り得る限りのルリの能力やサーヴァントの特徴、ルリの住所とシオンとルリの同盟についても知らせている。
弦之介が懸念する通り、万全を期してもルリの暗殺に失敗する可能性はある。そうなればアキトと合力して改めてルリを仕留めなければならない。
故にHAL、アキトの同盟間の駆け引きを抜きにしてこの情報共有は必須と言えた。

「ともあれ準備は整った。人員の再配置とホシノ・ルリの捜査のためにB-9周辺の警察はその数を減じている。
これならば彼も警察の目を掻い潜って動けるだろう。
成功は確実とは言えないまでも、打てる限りの手は打った。後は成功させるのみだ」

気づけば弦之介は既にいなくなっていた。警察署へと向かったのだろう。
ここまで手筈を進めた以上後は弦之介とアキトがそれぞれ首尾よくルリと早苗を仕留めることを期待するのみだ。
となれば思考するべきは他のまだ見ぬマスターについてだ。

アキトから聞いた美遊・エーデルフェルトについては、現状では対策を用意する必要はあるが積極的に敵対する必要もその余裕もない。
確かに高い戦闘力を持つバーサーカーに潤沢な魔力提供が出来るマスターの組み合わせは戦力的に見て厄介だ。
また通常なら致命傷になるダメージからも再生するという異能は、弦之介の瞳術と比較的に相性が悪いと言える。
加えてサーヴァントのみならずマスター自身も飛行能力を有し、行動パターンも不明瞭な点がある。
アキトにも伝えたことだがもし彼女が方舟の外の何者かの指示を受けているとしたら、ホシノ・ルリとはまた違うベクトルの脅威になり得る。
だが現時点で明確にHALと敵対しているわけでもない以上、わざわざこちらから仕掛ける必要性はない。
今はホシノ・ルリや本多・正純など聖杯戦争に対し否定的な勢力を各個撃破することが至上命題でこの上美遊まで敵に回しているほど余裕はない。


「…とはいえ出来ることがないというわけでもない、か」

如何なる理由か美遊は小学生という役割(ロール)を放棄して単独行動を取っている。昨日エーデルフェルト家から警察に捜索願いが出されていたことからも明らかだ。
だがアキトとは意味合いが違うがテレビで素顔が晒された女子小学生が目立たず動き続けることは難しいと思われる。空を飛べるといっても限界はあるはずだ。
その上で現在目撃情報が入ってこないということは人目につかない場所に潜伏していると考えられる。
潜伏場所を探るのであればHALにもある程度の検討がつけられる。
比較的警察が少ない深山町、大きな森があるD-1、命蓮寺があるC-1周辺、あとは田園地帯や廃屋が多いA-1からA-4までの北部エリアあたりが有力候補か。
配下のNPCに探らせつつ、独自に美遊を探しているらしいエーデルフェルトの当主にもリークしておくか。
もっとも釣り出して位置を捕捉できれば御の字程度のささやかな策だ。別段期待はしない。

次に同じくアキトから聞いたキレイなるマスターとセイバーのサーヴァント。
戦力として特筆するほどの情報はないが、気になるのは調べたところ月海原学園に「言峰綺礼」という青年が勤務しているという情報だ。
男性で「キレイ」などという名前がそうあるとも思えない。
あの火薬庫と化した学園にいるマスターとなればそれだけで注意が必要だ。

「……ほう」

ちょうどシオン・エルトナムについて思考を巡らせた瞬間、配下からシオンの目撃情報が入ってきた。
ホシノ・ルリと同盟を組んだ、糸を操るサーヴァントを従える才女にして電子ドラッグに気づいた強敵。
その彼女が一人で大橋を渡って深山町へと入っていったという。恐らく普通の学生を装い学園に登校するためだ。
好都合だ。まさかこちらが何をするでもなく勝手にホシノ・ルリと別行動を取ってくれるとは。
とはいえその分学園の状況に気を配る必要性が増したともいえる。どうあれ油断は厳禁だ。



―――けれど、油断はしていないという思考そのものが油断である可能性に、電人HALはまだ気づいていなかったのだ。




  ◆   ◆   ◆






HALは知らなかった。
同盟を組んだテンカワ・アキトと今まさに抹殺せんとしているホシノ・ルリ、両者の関係を知らなかった。
同じ世界から方舟に招かれた家族に等しい間柄であるとは知らなかったのだ。

HALは元の世界における職業がある程度方舟における身分と関連していると考察していた。
例えば大学教授である春川の身分がHALの役割(ロール)としてそのまま割り振られていたこと。
元の世界で名前を春川とHALが名前を認知していた一部の人物がそのままの職業でNPCとして過ごしていたことも判断材料となっていた。
だからこそ異例の若さで警視の職にいるルリと小さな料理店の店長であるアキトに接点を見出さなかった。
ルリが天河食堂周辺を嗅ぎまわっていたことも、彼女がいち早くアキトをマスターと特定したとしか判断できなかった。

あるいはアキトの動向にもっと注意を払っていれば、それこそ弦之介を派遣してアキトを探らせていれば。
HALからルリに関する情報を送られてきた時のアキトの表情を確認できたであろうに。





  ◆   ◆   ◆





聖杯戦争とはある意味非常に公平な殺し合いだ。テンカワ・アキトはそう考えてきた。
確かにゴフェルの木片を手にしただけで無作為にマスターとして選出されるその経緯は理不尽であるかもしれない。
しかし逆に言えば全てのマスターが同じ方法で方舟に呼ばれているのは公平、平等と取れなくもない。悪平等とも言うのだろうが。
サーヴァントと令呪にしてもそうだ。性能やクラス等個性に違いはあっても全てのマスターに令呪とサーヴァントが配されるという点では最低限の公平性は確保されている。
だからこそアキトは聖杯戦争という殺し合いにも納得していた。少なくともマスターの誰にとってもスタートラインは同じなのだから。

聖杯戦争には戦いの結果としての死はあっても無人兵器による一方的な虐殺も悪辣なテロ行為もない。
虐殺同然に殺されるマスターがいたとしても、言っては何だがそれは与えられた武器を満足に扱えなかった当人の不備でしかない。
願いがある、あるいは死ねない理由があるのは誰でも同じ。早苗のような戦いを止めるという願いでさえある種のエゴに過ぎない。
誰もがマスターの一人としてサーヴァントと共に最後の一組を目指して戦い抜く。火星の後継者相手に暗闘を繰り返していた頃よりよほど上等な戦いだった。
……ここまでの経緯こそは情けない限りではあったが。

勝ち残り、ユリカを救う。そして火星の後継者を殲滅する。
願いを叶えたいという一点については一度もブレたことはないと自認している。
もう一人の自分。復讐に身を窶しても残り続けていた「自分らしさ」さえも切り捨てて、ただ一つの地点へと走り続けようとしていた。



だからだろうか。敢えて置き去りにした大切なものが、己の願いと反対側の天秤に載せられていたことに気づかなかったのは。



その文字列の羅列と顔写真の画像を見た時の自分は一体どんな顔をしていたかわからない。少なくとも人に見せられるような顔ではなかっただろう。
HALの配下らしいNPCが同じ部屋にいないタイミングで助かった。

ホシノ・ルリ。彼女がアキトと同じくマスターになっていたなど悪辣な偶然にもほどがある。
しかも裏の空間では無敵に近い力を持つHALから随分と警戒されているようだった。やけに詳しくルリの危険性を説くHALのメールからそれは容易に読み取れる。
つまり彼女は今HALに命を狙われている。ハンマーで頭を横殴りにされた気分だ。

大切なものを取り戻したいと願った。相手が火星の後継者どもから自分以外のマスターに代わっただけだと思っていた。
だがそうではなかった、なかったのだ。
最後に生き残るのはただ一組。他のマスターとサーヴァント全てを殺さなければ聖杯に辿り着くことも生還することもない。
アキトとルリが同時に生き残ることは、ない。

聖杯戦争に勝ってユリカを救うということはルリを殺すということで。
ルリを助けるということはユリカの救出と火星の後継者への復讐、己の命を諦めるということ。
吐き気がするような二者択一。これが聖杯戦争を良しとした報いだというのならこんなに効果的な罰もない。



―――嗚呼、全くもって情けないことに。



―――俺という人間はこうなる事態を毛ほども想像していなかったらしい。





【C-6/錯刃大学・春川研究室/二日目・早朝】


【電人HAL@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]『コードキャスト:電子ドラッグ』
[道具] 研究室のパソコン、洗脳済みの人間が多数(主に大学の人間)
[所持金] 豊富
[思考・状況]
基本:勝利し、聖杯を得る。
 1.ホシノ・ルリを警察署に向かわせ排除する。
 2.潜伏しつつ情報収集。この禍津冬木市は特に調べ上げる
 3.ルーラーを含む、他の参加者の情報の収集。特にB-4、B-10。
 4.他者との同盟,あるいはサーヴァントの同時契約を視野に入れる。
 5.テンカワ・アキトを利用して 東風谷早苗を排除させる。
 6. 聖杯戦争に対し否定的な主従を各個撃破し一大勢力の形成を阻止する。
[備考]
※洗脳した大学の人間を、不自然で無い程度の数、外部に出して偵察させています。
※大学の人間の他に、一部外部の人間も洗脳しています。(例:C-6の病院に洗脳済みの人間が多数潜伏中)
※ジナコの住所、プロフィール、容姿などを入手済み。別垢や他串を使い、情報を流布しています。
※他人になりすます能力の使い手(ベルク・カッツェ)を警戒しており、現在数人のNPCを通じて監視しています。
 また、彼はルーラーによって行動を制限されているのではないかと推察しています。
※サーヴァントに電子ドラッグを使ったら、どのようになるのかを他人になりすます者(カッツェ)を通じて観察しています。
 →カッツェの性質から、彼は電子ドラックによる変化は起こらないと判断しました。
  一応NPCを同行させていますが、場合によっては切り捨てる事を視野に入れています。
※ヤクザを利用して武器の密輸入を行っています。テンカワ・アキトが強奪したのはそれの一部です。
※コトダマ空間において、HALは“電霊”(援護プログラム)を使えます
※自分の研究室を"工房"に改造しました。この空間内なら限定的にコトダマ空間内での法則を使えます。
※テンカワ・アキトと協力関係を結びました。適当な配下のNPCの家に匿っています。また密輸した銃火器を供与しました。
※テンカワ・アキトとホシノ・ルリが知り合いであることに気づいていません。
※アキトから美遊、早苗、言峰、アンデルセンの情報を聞きました。
※D-1、C-1、A-1からA-4を配下のNPCに探らせていますがあまり力を入れていません。またエーデルフェルト家に目撃情報と称してリークしました。

【アサシン(甲賀弦之介)@バジリスク ~甲賀忍法帖~】
[状態]:健康
[装備]:忍者刀
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:勝利し、聖杯を得る。
 0.警察署に赴きホシノ・ルリを待ち伏せする。
 1.HALの戦略に従う。
 2.自分たちの脅威となる組は、ルーラーによる抑止が機能するうちに討ち取っておきたい。
 3.狂想のバーサーカー(デッドプール)への警戒。
 4.戦争を起こす者への嫌悪感と怒り。
[備考]
※紅のランサーたち(岸波白野、エリザベート)と赤黒のアサシンたち(足立透、ニンジャスレイヤー)の戦いの前半戦を確認しました。
※狂想のバーサーカー(デッドプール)と交戦し、その能力を確認しました。またそれにより、狂想のバーサーカーを自身の天敵であると判断しました。
※アーチャー(エミヤ)の外見、戦闘を確認済み。



[共通備考]
※『ルーラーの能力』『聖杯戦争のルール』に関して情報を集め、ルーラーを排除することを選択肢の一つとして考えています。
 囮や欺瞞の可能性を考慮しつつも、ルーラーは監視役としては能力不足だと分析しています。
※ルーラーの排除は一旦保留していますが、情報収集は継続しています。
 また、ルーラーに関して以下の三つの可能性を挙げています。
 1.ルーラーは各陣営が所持している令呪の数を把握している。
 2.ルーラーの持つ令呪は通常の令呪よりも強固なものである 。
 3.方舟は聖杯戦争の行く末を全て知っており、あえてルーラーに余計な行動をさせないよう縛っている。
※ビルが崩壊するほどの戦闘があり、それにルーラーが介入したことを知っています。ルーラー以外の戦闘の当事者が誰なのかは把握していません。
※性行為を攻撃としてくるサーヴァントが存在することを認識しました。房中術や性技に長けた英霊だと考えています。
※鏡子により洗脳が解かれたNPCが数人外部に出ています。洗脳時の記憶はありませんが、『洗脳時の記憶が無い』ことはわかります。
※ヴォルデモートが大学、病院に放った蛇の使い魔を始末しました。スキル:情報抹消があるので、弦之介の情報を得るのは困難でしょう。
※B-10のジナコ宅の周辺に刑事のNPCを三人ほど設置しており、彼等の報告によりジナコとランサー(ヴラド3世)が交わした内容を把握しました。
※ランサー(ヴラド3世)が『宗教』『風評被害』『アーカード』に関連する英霊であると推測しています。
※ランサー(ヴラド3世)の情報により『アーカード』の存在に確証を持ちました。彼のパラメータとスキル、生前の伝承を把握済みです。
※検索機能を利用する事で『他人になりすます能力のサーヴァント』の真名(ベルク・カッツェ)を入手しました。



【D-8/(HAL配下の家)二日目・早朝】


【テンカワ・アキト@劇場版機動戦艦ナデシコ-Theprinceofdarkness-】
[状態]疲労(中)魔力消費(大)、左腕刺し傷(治療済み)、左腿刺し傷(治療済み)、胸部打撲
[令呪]残り二画
[装備]CZ75B(銃弾残り5発)、CZ75B(銃弾残り16発)、バイザー、マント
[道具]背負い袋(デザートイーグル(銃弾残り8発))、MAC10(マガジン2つ分の残弾)、AK47(マガジン2つ分の残弾)、手榴弾×3
[所持金]貧困
[思考・状況]
基本行動方針:???
0.ルリちゃんを――――――?
1.早苗を―――――― ?
2.五感の異常及び目立つ全身のナノマシンの発光を隠す黒衣も含め、戦うのはできれば夜にしたいが、キレイなどに居場所を察されることも視野に入れる。
3.利用されてると分かっていてもHALに協力する――――――?
[備考]
※セイバー(オルステッド)のパラメーターを確認済み。宝具『魔王、山を往く(ブライオン)』を目視済み。
※演算ユニットの存在を確認済み。この聖杯戦争に限り、ボソンジャンプは非ジャンパーを巻き込むことがなく、ランダムジャンプも起きない。
ただし霊体化した自分のサーヴァントだけ同行させることが可能。実体化している時は置いてけぼりになる。
※ボソンジャンプの制限に関する話から、時間を操る敵の存在を警戒。
※割り当てられた家である小さな食堂はNPC時代から休業中。
※寒河江春紀とはNPC時代から会ったら軽く雑談する程度の仲でした。
※D-9墓地にミスマル・ユリカの墓があります。
※アンデルセン、早苗陣営と同盟を組みました。詳しい内容は後続にお任せします。
※美遊が優れた探知能力の使い手であると認識しました。
→HALとの情報交換でいくらか認識を改めました。
※児童誘拐、銃刀法違反、殺人、公務執行妨害等の容疑で警察に追われています。
 今後指名手配に発展する可能性もあります。
※HALと協力関係を結びました。適当な配下のNPCの家に匿われています。またHALが密輸した銃火器を供与されました。
※HALからホシノ・ルリとライダー(キリコ)に関する情報を得ました。
少なくともルリの住所の情報は含まれています。


【バーサーカー(ガッツ)@ベルセルク】
[状態]ダメージ(中)
[装備]『ドラゴンころし』『狂戦士の甲冑』
[道具]義手砲。連射式ボウガン。投げナイフ。炸裂弾。
[所持金]無し。
[思考・状況]
基本行動方針:戦う。
1.戦う。
[備考]
※警官NPCを殺害した際、姿を他のNPCもしくは参加者に目撃されたかもしれません。


[全体備考]
※冬木大橋の両側に検問が設置されています。
警察にマークされている人物は呼び止められます。
※天河食堂周辺の聞き込み捜査とHALの介入により一部の警察NPCがホシノ・ルリに対し疑念を抱きました。
その場にルリが居合わせなかったため疑惑の払拭判定に失敗、ルリの足跡の捜査が行われ自宅付近に警察NPCが派遣されます。
この疑惑は払拭が為されるまで時間の経過とともに拡大し続けます。
※B-9の厳戒態勢は維持されていますが、美遊・エーデルフェルトの捜索とルリの捜査のために人員の再配置が行われたため一時的にこのエリア周辺の捜査員の数が減少しています。



BACK NEXT
168a:if - a king of loneliness 投下順
168a:if - a king of loneliness 時系列順

BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT
165:The DAWN テンカワアキト&バーサーカー(ガッツ
168b:if - a fool of loneliness アサシン(甲賀弦之介

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2019年07月07日 21:13