葛葉紘汰&ライダー ◆yrNk0ku7hA


葛葉紘汰が記憶を取り戻すきっかけとなったのは、その手で一人を殺めた事であった。
ただ、それは本人も一切意図しておらず、あくまでも自衛の範疇であると言えなくもない。
それでも人を守りたいという気持ちの強い葛葉紘汰にとって、これはあまりにも心苦しい物となっていた。

そもそもの発端は、今目の前でデリートされかかっている男によるものだ。
彼は唐突に、階段を降りようとした紘汰の背中を思い切り蹴りつけたのだ。
続けて備え付けの消火器を持ち上げ、紘汰と共に居た者を殴り始めた。

男は狂っていた――というより、記憶を取り戻しかけていたのだ。
湧き上がる攻撃衝動が、その記憶を確実なものとなると確信したのである。
それが本来の彼のアイデンティティだったのだろう。
だからこの場で紘汰が被害に遭ったのは、偶然そこに居たからに過ぎない。

――早く逃げろッ! 俺がこいつを止める!

全てを忘れて月海原学園の平和な生活に浸っていた紘汰だが、その正義感は変わらない。
すぐさま起き上がり、暴れる男へと果敢に掴みかかった。

……その時、既に紘汰はどこか違和感を感じていた。
階段から落ちた時、どうしてあんなにも綺麗に受け身を取れたのか。
どうして自分の体は、こんなにも軽やかに動けるのだろうか。
何よりも今まで生きていて、その事に気付かなかったのは何故なんだろう、と。

疑念をじっくりと考えている暇など無い。
自分の肉体について把握しないまま、全力で事態の沈静を図ろうとした。
あくまでも彼は止めようとしたつもりだったのだ。

――えっ?

紘汰の放った飛び蹴りは、暴漢の顔面をいとも簡単に陥没させた。
そう、それは本来の彼が『インベス』という怪物に対して振るっていた力。
力の加減が出来ないまま、がむしゃらに放たれる腕力は凶器と何一つ違わない。
暴漢はまるでゲームのように盛大に吹っ飛び、廊下の窓ガラスを粉砕してグラウンドへと叩きつけられていた。

さらにそのキックの感覚は、紘汰に強い既視感を与えた。
自分のこのパワーがどこで培われたモノなのか、自分は何に対してこの蹴りをぶつけていたのか。
……俺は元々、誰かと戦っていたんじゃないか?

しばしの苦悩の後、彼は本来の自己を取り戻す結果となった。
皮肉にも、目の前の暴漢のやろうとした事と同じ方法で。


 ◆


「俺はっ、ま、また、取り返しのつかない事をっ……。
 どっ、どうしてこうっ……こうなるんだっ……クソッ……!」

動くことの無くなった相手に対し、紘汰はただ涙を流していた。
強い自責の念が彼の心臓をきつく締めあげていた。
無論、この世界のルールはわかっている――いや、理解させられている。
万物の望みを叶える聖杯を手にするために、幾人もの他者が犠牲にならなくてはいけない事を。

しかし、この戦いへの参加は、彼自身の望んだ事ではなかった。
ただ彼の自覚の無い内にゴフェルの木片は手の内にあり、有無を言わさずにこの場所へと誘われたのだ。

当初、幾人もの犠牲が出る聖杯戦争のルールに、紘汰は反発していた。
その抵抗も虚しく、彼は記憶を奪われて平凡な学園生活に放り込まれた。
そして、その果てがこの有り様。

「また俺は、誰かを犠牲にすることで生かされてしまった……。
 インベスになった裕也を、この手で殺してしまった時と同じように……」

確かに、あのままでは自分は殺されていたかもしれない。
あの蹴りを放たなければ、何も思い出す事なくこの架空の世界に埋もれてしまっていたかもしれない。
それでも、どうして誰かが死ななければならなかったのか、悲しくて仕方がなかった。

「奇遇だな。僕も悪魔化した友人を殺害した身だ」

ハッ、と反射的に振り返る。
いつのまにか、紘汰の背後には一人の男が立っていた。
変わった形状の青い制服を纏い、ヘルメットのような髪を後頭部で束ねた髪型をしている。
腰には物騒な長い刀が差してあり、肘から手の先までは妙な機械を着けている。

「アンタは……。もしかして、アンタが俺のサーヴァントなのか?」
「そうだ。ライダーのクラスにより召喚に応じた。
 その令呪がある限り、君と僕は契約関係にある。今後ともよろしく頼む」
「あ……あぁ、俺は葛葉紘汰。よろしく」

紘汰が手を差し伸べ、ライダーはそれに応じて握手を交わす。

その時、暴漢のアバターは解体を始めた。
凄惨な姿は瞬く間に黒く染まり、それはまるでウジ虫のように電子の肉を溶かしていく。
……それほどの時間を待つ事なく、デリートは終わっていた。

苦虫を噛み潰したような顔をして、紘汰は地面を強く蹴りつけた。

「マスター、何をそこまで気に病んでいる。
 ここへ誘われたからには、他の者を手にかける覚悟はあるはずだろう」
「違う。俺は望んでここに来たわけじゃない!
 俺は本当は、自分の街を守ろうとしていたのに……気が付いたらこんなところに」

いつもそうだ、と紘汰は毒づいた。
自分の知らない場所で、一部の決定者によって物事は勝手に決められる。
そしてある時、何も知らない人々を巻き込む。その人々の事情なんてお構いなしに、だ。
かのユグドラシルコーポレーションも、地球の危機に際しても市民にその事実を隠蔽していた。
もし事態がまずくなれば、スカラーシステムを用いて街ごと焼き払うつもりだったのだ。
それが例え人々のパニックを防ぐため、人類を救うためであれ、何も知らないままに犠牲になる人間を何だと思っているのか。

それを紘汰は許せなかった。
だから彼はユグドラシルに楯突いて、スカラーシステムを破壊した。

現在の彼は、ヘルヘイムの森を支配する種族「オーバーロード」が街へ侵攻してきた事を受け、彼らとの戦いに身を投じている。
最強の力である極アームズを手にし、かつては何度もぶつかり合った者達と共闘しながら防衛戦を行っていた。

「俺は早く沢芽市に戻らなくちゃいけない。
 こんなところで時間を無駄にしていたら、その間にみんなやられちまうかもしれない……!」
「あいにくだがマスター、ここに来てしまったからには簡単には帰れるとは思えないな。
 ここは君の暮らしていた現実世界ではない。聖杯の創りだした虚構の世界なのだから」
「そんな……。なら俺はもう、何も出来ないのか……!?
 人類の危機だと言うのに、黙って見ているだけしか出来ないのかよ!?」
「それは違うな。捉え方を変えるんだ、君に出来る事が変わったのだ、と」
「……どういう事だ」
「この戦いを勝ち抜いて聖杯を手にすれば、全て解決する事が出来るはずだ」

万物の願望を叶える魔力を持つ"聖杯"。
その力を使えば、世界を危機から救い出す事も容易いだろう、と。
言わば紘汰に「オーバーロードに真っ向から挑む」以外の手段を与えられた事を意味する。

「でも……」
「世界を救うために、この聖杯戦争の参加者を犠牲にすることに納得がいかない……と、そう言いたいんだな?」
「わかるのか?」
「マスターとサーヴァントは多くの共通点がある。
 ゆえに、僕も君と似たような経験をした」
「じゃあさっきの"悪魔化した友人を殺害した"って言うのも、俺とアンタの共通点なのか」
「他にもあるだろうが、その一つに間違い無い」

もちろん状況に多少の差異はある、と言った。
紘汰はそれが友人だと知らないで手にかけたが、ライダーは友人自身の口から「お前の手でとどめを刺してくれ」と言われたらしい。

「ならばマスター、犠牲を出したくないのであれば、一体どうすればいいと思う?」
「そりゃあ……他の参加者を説得して、聖杯戦争を止めてしまえば……」
「本当にそれが出来ると思ってるのか?」
「……いや、無理だった」

どれだけ必死に説得しようとも耳を貸す事無く、容赦なく襲ってくる者は居る。
そのことを紘汰はオーバーロードと、一度は和解したユグドラシル幹部"貴虎"に思い知らされた。
この聖杯戦争でもきっと同じ。
願いを叶えるために、戦う決意を鈍らせない者も居るに違いない。

「俺が口下手なだけかもしれないけどな」
「かもしれないな」
「でもそれで途方に暮れていた時、俺はある男から言われたんだ。
 "お前自身がオーバーロードになればいい。
 戦いに勝ち抜いて黄金の果実を手にすれば、世界を救う事も滅ぼす事も自由出来る"……って」
「オーバーロード達を力で屈服させ、彼らの王として君臨する。ふむ、実にシンプルなやり方だ」
「それしか方法が無いのかもしれない。だから……」

紘汰のその口調には、どこか諦めのようなものが見受けられた。
本当であればもっと平穏な解決を図りたかった。戦う必要が無ければ、それが望ましかった。
だがしかし今の彼には、他の打開策なんて思い浮かばない。

「君はその方法に、あまり納得していないようだな」
「まぁな……」
「ならば聖杯を取るという選択肢が出来た事はラッキーだと思わないか?
 オーバーロードを全て追い払い、失った友を蘇らせ、君の生活に平和をもたらすことも可能だろう」
「でも、そのために他の参加者を殺さなくちゃいけないなんて……」
「そうか。なら聖杯戦争を放棄する、それがダメなら聖杯戦争自体を破壊しなくてはいけない。
 そうして元の世界へと戻れば、君は正史を辿ることが出来る」
「……どちらにせよ戦わなくちゃいけないんだよなぁ……。
 だったら聖杯を取ったほうが確実に平和になるんじゃ……いや、でも誰かを殺すだなんて……」
「犠牲はどちらにせよ避けられないさ。
 人類の敵であるオーバーロードが死ぬか、聖杯を狙う我々の競合者が死ぬか」

紘汰は一人、ぶつぶつと呟きながら悩む。
自分の選択によって人類の命運が決まる、そう考えると容易に判断を下すことは出来なかった。



「問おう。聖杯戦争を勝ち抜き、絶大なる聖杯の力によって元の世界に平穏をもたらすのか。
 それとも君は、聖杯戦争そのものを破壊し、元の世界にてオーバーロードの王を目指すのか」



「……あぁーもう! 俺は一体どうしたらいいんだ……ッ!?」
「まだ時間はある、ゆっくりと悩んでいい。悩める事は、一本道を辿るだけよりも恵まれているのだから。
 君の世界を救うためにどんな選択肢を取るのか、君自身の自由だ。
 僕は君のサーヴァントとして、……"東のミカド国のサムライ"として最大限協力しよう」


 ◆

【クラス】ライダー
【真名】東のミカド国のサムライ(主人公)@真・女神転生Ⅳ
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷A 魔力A+ 幸運C 宝具A
【属性】
中立・善 

【クラススキル】
騎乗:B
騎兵のクラスに付与された能力。
宝具に鳥船の比礼を持つために、ライダーの適正があると判断される。

対魔力:D
騎兵のクラスに付与された能力。
本来は破魔属性魔法に限り無効化出来る程度の抵抗力だが、これにより四大属性に軽減効果が付く。


【保有スキル】
ニヤリ:A
相手に大きな痛手を与える、相手の攻撃を無効化する等、こちらに有利が回ると発動する能力。
自身の身体能力が一時的に急上昇し、反撃を許さぬまま追撃を行う事が可能。

話術:B
言論にて人を動かせる才。
交渉技術に長け、対価を支払う事で取引や契約、停戦など様々な事を行える。
また、ごまかす事で相手に対価を支払ったと錯覚させる事すらも可能な技量を持つ。

矢避けの加護:EX
戦闘時に着用する『デモニカスーツ』に付与される特殊効果。
銃、矢による攻撃に限り完全に無効化する。


【宝具】
『鳥船の比礼』
ランク:C 種別:対軍宝具
八咫鏡、八尺瓊勾玉、天叢雲剣の三種の神器を捧げることで復活した天津神アマテラスから授かった宝具。
広い場所でアメノトリフネの術を用いることで、空を自由に飛べる船を呼び寄せる事が出来る。
空を飛べるために活用法はいくらでもあるが、これ自体が攻撃性能を備えているわけではない。

『侍の証たる魔法の篭手(ガントレット)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:一人
東のミカド国を守護するサムライ衆に与えられる宝具。
バロウズをOSとして、悪魔召喚プログラム、ナビゲーション、能力の向上等の様々な機能を備えている。
そのためにこれを装備している事で下記のスキルを保有することとなる。
◆悪魔との契約:C
自分のレベルよりも低い悪魔の召喚、人外との意思疎通(Dリンガル)、悪魔合体などを可能とする機能。
彼の悪魔は人間に使役される程に格落ちした存在であるため、聖杯戦争にて召喚される英霊のそれよりも能力的に大きく劣る。
『悪魔全書』より、東京に蔓延る下級悪魔から必殺の霊的国防兵器に至るまで、旅の中で契約した実に多種多様な悪魔を召喚可能。
ただし、それ相応の対価を支払う必要があるため、際限なく呼び起こせるわけではない。
◆ウィスパーイベント:B
使役する悪魔が持つ魔法、技を自身に継承する機能。
生前の彼は武器による攻撃より、悪魔から習得した魔法を主力として戦っていた。
◆情報分析:B
対象をアナライズする機能。
保有するスキルや、弱点を見極めて、自身がより優位に立てる策略を練ることが可能となる。
情報を隠蔽するスキルや宝具に関しても有効だが、そのレベルに応じた時間を要する。


【weapon】
『アキュラの剣』
大悪魔ベルゼブブを打ち破った後、召喚者であるアハズヤミカド王の鎧から出てきた剣。
初代ミカド国の王アキュラに関係があると思われるが、特に説明が無い。
とりあえず強い武器なので使っている。人間なんてそんなものだ。

【人物背景】
ガントレットによって東のミカド国の国防組織サムライ衆に選ばれた青年。
国の異変に際し、悪魔の巣窟であるナラクの奥深く、ケガレビトと呼ばれる者達の里へと向かう任務を携わる。
ヨナタン、ワルター、イザボーと共にその地、東京を調査しつつクエストもこなしながら旅をしていた。
その最中、東京の頂点に立つ組織「阿修羅会」と、それに反発する組織「ガイア教団」のいざこざに巻き込まれる。
彼らに突きつけられる問題。東京に変革をもたらすか、それとも現状を維持し続けるか。
途方に暮れる彼らがミカド国へ戻ると、神話の神々が新たな国の指導者として君臨していた。
彼らに従ってクーデターを行ったガイア教団のリリスを殺害するか、それとも東京に変革をもたらすために彼女の下につくか……。

――人々は彼の事を「掴みどころのない奴」と噂した。

やがて、彼は"現状の維持と破壊の両方を望む"事を選択した。
白き空間から戻った彼はイザボーに、神と悪魔の全面戦争が始まる事を聞かされる。
彼はそれを止めるためにマサカドを復活させ、『東京の希望』となり、神と悪魔の両方を打ち破った。
そうして東のミカド国の民と、東京の民が共存する世界を作り上げた。


【サーヴァントとしての願い】
掴みどころのない彼が、果たして何を望んでいるのかは察するところに無い。
自分が選んだ世界の選択肢に不満があり、全てをやり直したいのかもしれない。
もしくは、自らが手にかけた友人――ヨナタンとワルター――を元に戻したいのかもしれない。

ただ、同じく世界の命運を左右する選択肢を与えられた紘汰に何か思う所があるようだ。
彼を導いて、その命運を見届ける事も、彼の望みである可能性として考えられるだろう。


【基本戦術、方針、運用法】
ガントレットをフル活用し、相手の弱点を見極めて多種多様な魔法攻撃を打ち込むのが主な戦法。
常に優勢を保つことでニヤニヤと笑いながら、その決して高くはない耐久力を補うように立ちまわる。
また、コストを支払う事で悪魔召喚も行えるため、集団で攻める事も可能。
交渉技術にも優れているため、場合によっては協力者を作ったり停戦を持ちかけたりも出来る。
必要となるコストは、当然マスターである紘汰がアルバイトをして稼ぐ必要があるだろう。
「マジかよ……」


 ◆

【マスター】
葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武
【参加方法】
「何だろうコレ」などと呟きながら、何の気無しにどこかで木片を拾った。
【マスターとしての願い】
沢目市を、そして人類を危機から救う。

【weapon】
戦極ドライバー
ユグドラシルコーポレーションによって作られた変身ベルト。
最初に装着した者のみが使用出来る仕様となっているため、紘汰のベルトは紘汰にしか使えない。
ロックシードをはめ込むことで、それに応じたアーマードライダーへと変身することが出来る。
仮面ライダー鎧武に変身すればランクB相当の戦闘能力を得ることが可能。
しかしあくまでも通常兵器の域を出ないために、サーヴァントの霊体にダメージを追わせる事は出来ない。
ただし、ロックシードのエネルギーをサーヴァントに供給する事は可能である。

【能力・技能】
ユグドラシルに執拗に狙われた結果、驚異的な身体能力と戦闘センスを手にしている。
変身せずとも雑魚インベス相手なら引けをとらない程度の強さ。

【人物背景】
正義感の強い青年。フリーターであり、ビートライダーズ「チーム鎧武」のリーダー。
戦極ドライバーを手にした時を堺に、稀有な運命へと飲み込まれていく。
当初、手にした力をどうするのかに悩んでいたが、彼はそれを誰かのために役立てようと考えた。
チームの用心棒として活躍する中、ユグドラシルコーポレーションの思惑を知る。
少数の人類を救うために、多くの者を見捨てるという判断……それに紘汰は憤慨した。
だがそれと共に、怪物と化した友人を自分が倒していたという事実を知る。
――友人の犠牲によって、自分たちは生かされていた。
そのことに絶望する紘汰に対し、ユグドラシルの関係者であるDJサガラはこう言った。
――希望の対価に犠牲を要求する世界のルールなんてぶち壊せ、と。
紘汰はユグドラシル社のスカラーシステム(街を焼き払う事で証拠隠滅を図る装置)を破壊。
だが、人類の危機は迫る。新たな敵オーバーロードを前に、またしても紘汰は苦悩する事となる。
犠牲無く世界を救う道を模索しながら、彼はまた戦いに身を投じる。

【方針】
優勝を目指すのか、聖杯を放棄するのかを決めかねている。
基本的に誰かが死ぬ事を良しとしないため、誰かが困っていれば手を差し伸べる。