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蒼銀のフラグメンツ ◆Ee.E0P6Y2U


まとまらない思考。
断続的に明滅する記憶。

思えば思うほど、目の前の現実が歪んでいく。

それは例えるなら、既に見知っている本をさかしまにぱらぱらとめくったときのような、不思議な感覚。

結果からさかのぼって原因を眺めていくようなものだ。
シーンとシーンの間に何ら連続性はない。
けれども私は知っている。

一つ一つの断章/フラグメンツが、どこで繋がり、最後にはどこに収束するのか。

イマという知覚の欠片を繋ぎ合わせたところで、
浮かび上がるのはきっと何の変哲のない、けれどもとびっきりグロテスクな現実なのだ。



_act4



殺してしまえ。
ああ、何もかもだ。
その腕を引きちぎり、胸を切り裂き、頭蓋を貫いてしまえ。
そして死ね。真っ赤な血をまき散らして、無様に散ってしまえばいい。

――そんなささやきが聞こえる。


耳障りな声だ、と思う。
誰だ、こんなところでわめいているのは。
うるさくて集中できない。けれども耳をふさぐ訳にもいかない。
だって今は――戦場の真っただ中だから。

「……やはり不調か」

銀髪の髪が舞う。
月にきらめく銀のランサーは、ミカサを守るように立つ。
その瞳は自らの獲物――ドラム式の弾倉が特徴的な長銃に注がれている。

「どうやら――この戦場は既に敵の陣地、という訳だ」
「そのようだな。あのキャスターもよくやるものだ」

ランサーに同調したのは、まさに今刃を交えている敵自身だ。
黄金の剣を扱う彼は、どこか皮肉気に笑みを浮かべながらグラウンドに立っている。

この戦場、とランサーは言った。
ああそうだ、と彼女は思う。

だだっ広いグラウンドも、あそこにそびえたつ校舎も、もうしばらくすれば人で溢れかえる門も――

――全部、戦場だ。

ミカサは胸に渦巻く苛立ちを押さえる。
そして冷静に辺りを眺めた。
今の自分は兵士だ。この場で余分なセンチメンタリズムは不要だ。
故に努めて静かに、鋭く状況を観察する。

辺りに感じられる気配は三つ。
二つはセイバーとランサー。彼らは夜の学園にて相対し、その剣と銃を交えている。
そしてもう一つは――

“どうも妙だな”

耳元で、ささやき声がした。
はっ、としてミカサは視線を向ける。しかしそこには何もいない。
何もない虚空の中、ブウン、という翅音がかすかに聞こえるのみ。

“お前のランサーの武器がうまく動作していない。
 これはおそらく裏にあのサーヴァントがいることが原因だろう。
 陣地作成により、特定の武器の動きが鈍るような空間を作り上げている、という訳か”

誰もいない筈の場所から分析するような声が響く。
ミカサは知っている。それは――蟲の声だということを。
そしてこの蟲は今は自分の味方だ。
こちらを援護し、補助してくれる存在。
しかしその事実自体が、ミカサにはまた苛立たしかった。


不意にランサー、セルベリアがミカサへと声をかけてきた。
セイバーとの交戦しつつ、背中越しに彼女は語る。

「どうやらこの戦場において銃火器は動作不良を起こすようだ」
「なら――槍を抜いて」

躊躇わらずミカサはそう口にした。
目の前の敵はセイバー。そしてここは敵陣のど真ん中。
手加減していられる相手ではない。そしてこちらには――不愉快だが――あの蟲の援護もある。
その旨を伝えるとランサーは一言「了解した」と応えてくれた。

そして――彼女は蒼銀を身に纏った。
髪が、手が、胸が、胴が、足が、すべて銀に塗り固められる。
相反するようにその瞳は真っ赤に染まっていた。

――戦場の戦乙女/ディ・ワルキューレ・アインズ・シュラハトフェルト

ああ、その様のなんと美しいことか。
ミカサは純粋なる兵士の顕現に見惚れていた。
その瞬間だけは、あのささやきも聞こえてはこない。

「美しくも、醜い光だな。
 お前はきっとその光が嫌いでたまらないのだろう」

だが敵は、黄金の剣士はその光をそう評した。
彼にはきっと何かが見えているのだろう。ランサーの銀光に秘められた、別の何かを。

「――黙れ」
「そうだな、お前は兵士だ。
 その光に込められた想いが“愛憎”である限りは決して魔王には堕ちない」

そう語り、セイバーもまた剣を抜いた。

真夜中のグラウンド。誰もいない校舎。
馬鹿みたいに輝かく月の明かりの下、
黄金/きんのセイバーと蒼銀/ぎんのランサーは激突した――



_act2




真祖に通じる名を持つ死徒。
凛然と佇む聖騎士。
蟲の魔術師。
精悍な顔つきをした戦士。
黒い兜纏う狂った剣士。

この聖杯戦争で出会い、あるいは耳にしたサーヴァントたち。
もしかすると何騎かは既に脱落しているのかもしれない。

――夜の学園はぞっとするほど静かだ。

月明かりを受け、リノリウムが鈍く光っている。
時節カーテンが風を受け揺れ動く。たったそれだけのはずなのに、不気味だ。
どうやら昼間に何か騒ぎがあったらしく、図書館は散らかっていた。
最低限の片づけはなされているが、割れた窓ガラスはそのままで、夜風が流れ込んでいた。

そんな場所で言峰綺礼は黙々と作業をしている。
ぼうっ、と浮かび上がる液晶画面に数々の情報が浮かんでは消えていく。

図書館内の検索施設とは、要するにパソコンだ。
彼は決してこうした機器に強いわけではないが、しかし彼の師とは違い、全く使えないという訳ではない。
触る縁がそう多くなかっただけで、別に忌避感はないのだ。
だから黙々と作業をする。手に入れた情報を精査しながら。

『セイバー、あのキャスターは?』
『いない。どうやら“仕込み”にいそしんでいるようだ』
『仕込み?』
『ああ、詳しくは分からないが、明日以降への布石だろう。
 黒く、濃く、蛇のように執念深い魔術の気配をそこかしこに感じる』

陣地作成、という訳か。
言峰は例のサーヴァントのことを思い出す。
その存在は未だ謎に包まれている。しかしあの英霊はどうやらこの学園に根を張り、勢力を伸ばそうとしている。

いわばこの学園自体を工房にしようとしている訳だ。
そして奴はそれを可能にする力量と――おそらくは社会的地位を確保している。

『あのマダンバシという生徒や例の男の情報も渡す算段がある、ということだが』

セイバーからの念話に言峰は押し黙る。
情報は多いほど良い。しかし――やはりあのキャスターは危険だ。
理性は言う。ありとあらゆる意味で、あれを隣に置くのは多大な危険を伴う、と。

『……情報が手に入れられる限りは、あのキャスターと通じよう。
 この聖杯戦争の全容を私たちはまだ把握していない』

しかし言峰はあくまで今の状況の維持、キャスター陣営との事実上の共同戦線を選んだ。

『…………』

セイバーはそれに対して何も言わない。
ただ視線を感じる。その視線に何が込められているのか、言峰は分かったうえで口にはしなかった。
会話を打ち切り、黙々と言峰は情報を集める。

今日手に入れたすべての情報の精査。
彼は冷静にことを進めていたが、彼の調査にはひとつ、欠けているものがあった。

蛇のごとく執念深き闇の魔術師。

最も警戒していたはずのそのサーヴァントの情報だけは、ふしぎと調べる気になれなかった。
そして彼はその事実を認識できていなかった。







『賊が紛れ込んでいるな』

それからしばらくして――その声は響いた。
しかし言峰は振り返らない。振り返ったところで、恐らくそこには誰もいないからだ。

『綺礼よ、俺様の城に二匹ほど下賤な者が紛れ込んでいる。
 低劣な蟲と愚かなマグルの組み合わせだ』
「それを私に露払いしろ、と? お前の手足となって」

突き放すような物言いであったが、しかしキャスターは特に気を悪くした風もなく、むしろどこか愉しげに、

『そうは言わん。俺様も最大限協力してやろう』

――おそらく、結界か何かを“仕込んで”おいたのだろう。

少なくともこの学園で戦う限り、自分たちが有利に戦える、という訳だ。
これもまた奴が提示してきた餌だろう。
とはいえ条件としては悪くない。この場に来た以上、元よりリスクは承知だ。

「セイバー」

僅かな思考の末、言峰は己の英霊に語り掛ける。
それだけセイバーはこちらの意を察してくれたのか、静かにその気配が去っていった。

――キャスターがどこかで嗤った気がした。




_act5






蒼銀の槍がセイバーへと迫りくる。
月光と同じ色をしたその閃光は、かすっただけでこの身を焼くだろう。

――その様はまるで死神か。

その青白い髪、紅い瞳を見て、オルステッドが想起したのはブリュンヒルデの名だった。
『ヴォルスンガ・サガ』などに登場する、悲恋に貫かれた戦乙女。
英霊の知識として与えられた物語の知識の欠片が彼の脳裏に過る。
その愛憎混じった様も併せて、この女兵士がブリュンヒルデであったもおかしくない。

――いや。

その閃光の槍を巧みに受け流しながら、セイバーは首を振る。
当初このランサーは特徴的な銃火器を使っていた。
その習熟度からして、生前から使い続けていた獲物だろう。

と、なればたとえあれがブリュンヒルデだったとしても『ヴォルスンガ・サガ』や『ニーベルンゲンの指輪』に登場するそれとは別者だろう。
どこか別の事象として存在する、似て非なる物語を出典とするに違いない。

――そして、あのキャスターの結界とはこういうことか。

同時にキャスター、この場へといざなった仮初の協力者の言葉を思い出す。
何か支援するような言葉だったが、それがあの銃火器の不調へとつながったのだ。
どういう理屈かは知らないが、あれは神秘の低い兵器を故障させるようだ。
近代の英霊にとってはやりづらい相手だろう。逆にセイバーのような英霊にとっては何の問題にもならない。
そして同時にこの支援が効いている、ということは、あのキャスターは低ランクの対魔力ならば容易に貫けるほどの魔術が使える、ということか。
返すも返すも敵にしたくはない。今は味方であるが、油断はできない。

「……っ」

不意に少女の――敵のマスターの声が漏れた。
冷静にランサーの姿を分析していたセイバーは、今度は敵のマスターへと目を向ける。
鋭い目をした少女。見覚えはないが、おそらくこの学園の生徒だろう。

あのマスターからは魔力の気配は感じられない。
しかし目の前のランサーの莫大な魔力を放っている。
そこに負荷は免れないだろう。しかし――こうして戦えている。

そのことから向こうにも誰かしら支援役がいるのだろうと推測する。
そして、恐らくはそれは――

“そのあたりにしておけ、ランサー”

――不意にグラウンドに声が響き渡った。

ぴたり、と敵のマスターの動きが止まる。
刃を交わしていた二騎に割って入るようにして、新たな一騎が姿を現していた。
その姿を見たセイバーは彼女に呼びかけるべく口を開いた。

「やはり、生きていたようだな」

そこにいたのは――蟲だった。
橙色のローブを身に纏ったうら若い女性が、闇の中より、ぬう、と浮かび上がっていた。
そこより発せられる濃密な“憎悪”を舌で転がすようにして、セイバーはその存在を感じ取っていた。


「無論だ、黄金のセイバーよ。
 言っただろう? また来よう、と」

そう語る者こそ、昼間の学園において暗躍を見せていた蟲のキャスターだ。
あの戦闘において、最後にその身を爆散させていた彼女は、しかし当然のように夜の学園に現れている。
特徴的な能力を持つこのサーヴァントに関していえば、目や耳よりも、この色濃くも人間らしい“憎悪”の方がよほど信じられる。

「やはりランサーの裏にいたのは、お前か」
「そういうお前もどうやら背後に協力者を得たようだが」

言葉を交わしつつ、キャスターはランサーの前に立つ。
そしてその向こうにいる少女をちらりと振り向きながら、

「どいて、私は貴方の指図は受けない」
「そうだ。だがお前は今少し冷静さを欠いているようだ。
 せっかく渡した魔力を無駄遣いされても困るからな――協力者よ」

そううそぶくキャスターを少女はキッと睨み返すが、しかし冷静さを欠いている訳ではないようだ。
彼女はセイバーのことと、そして陣地が張られた学園を見て、しばし逡巡の様を見せた。
少なくとも彼女らがここで闘うことは下策だと判断できているようだ。

悪くない頭をしている。敵ながらセイバーは内心で少女を評価していた。
とはいえ同時に――無垢であり、無知であるとも、感じ取っていた。

「敵はこの学園に陣地を構え、そして手練れの門番まで用意した。
 中々に硬い構えだ。このような遭遇戦でどうにかできるほど、ヤワではあるまい」
「…………」
「ならば準備をするまでだ。敵がこの学園に城を築くというのならば、それを崩せるような毒を用意するまでのことだ」

キャスターがささやく中、ランサーは何も言わなかった。
われ関せず、という風で、その鋭くも冷たいまなざしをこちらに投げかけている。
彼女は口を出す気はないようだ。あくまで決定するのはマスター、という関係を敷いているらしい。
とはいえそこに弛緩の様子はない。セイバーがひとたび行動を起こせば、即座に反応し迎撃するだろう。

「――して」
「了解した」

そうしていると、彼女は最低限の会話ののち、撤退の構えを見せた。
ランサーが殿となり、少女が学園の外へと出ていく。
引き際、撤退のタイミングを見極めることの重要性を彼女は知っているようだ。

「行くがいい」
「追ってはこないのか?」
「私はあくまで学園の中にいる敵を排除しろ、という命を受けただけのことだ。
 それ以上のことは我がマスターは求めていない。そう判断している」

詭弁だ。そう思いつつもセイバーはランサーたちを追撃はしなかった。
恐らく学園の中を出ればあの結界の効果も消えるだろうし、何よりもう一騎のキャスターの意のままに動くことは御免だった。

綺礼もまた恐らくそのことを把握しているはずだ。
あのサーヴァントとは一時的に協力しているが、同時に誰よりも警戒しなくてはならない。

――キレイ、貴方はわかっているはずだ

あのサーヴァントの邪悪さと、それに己が惹かれ始めていることを。
そのうえで、セイバーは彼を試す。
言峰綺礼という人間の天秤が、果たしてどちらに傾くのかを。

――明日が、ひとつの転機か。学園にとっても、聖杯戦争にとっても……

セイバーはそうして闇夜に消える少女たちの背中を見送った。
だがこの学園に、この街に浮かび上がる“憎悪”の欠片が、次なる戦いの予感を与えていた。


_act3




「……来たか」

夜、時計の針がちょうど12を指す頃に、キャスターは現れた。
昼間は人でごった返すその場所も、今ではひどく静かだ。
学園前の交差点の近くに、ぼう、と照明がついていた。
電柱の下だけを鈍く照らすその光は、深まった夜においてはひどく心細い明かりだ。

そんなか細い光の下に、立っていた蟲のキャスターはこちらの姿を見るなり顔を上げた。

「夜の12時……定刻通りだな」
「そうだな、我が協力者よ」

露悪的に笑うキャスターを、ミカサはひどくいらだたたしい面持ちで見上げた。
ぐっ、と懐に忍ばせたナイフを握りしめる。
ああ厭だ、目の前のコイツが、このささやき声が、何もかもが不快だ。

――…………

ランサーはそんな様子のミカサを見ても何も言わない。
ただ冷静に、こちらを眺めている。
彼女の静けさは救いだ。その見定めるような視線が、自分を落ち着けてくれる。

「――さて、まずは昼間の戦闘ごくろうだった。
 一陣営を撃破できたうえ、こちらも多くの情報が手に入った」
「……そう」

絞り出すようにミカサは声を出す。
自分が何に腹を立てているのか、分からないままにこの蟲と言葉を交わす。

「こちらは力を示した。情報通りに敵を襲い、間違いなく殺した」

黒いおさげの少女の顔が、脳裏に過った。

「だから今度はそちらの番。情報と、補給を。
 私が貴方に求めるのはそれだけ」
「ふふふ……そうだな」

そう告げると、キャスターは何かをこちらに放り投げてきた。
ぱし、とミカサは受け取る。水の入ったペットボトルであった。

「それはこちらで作成したアイテムだ。飲むことで魔力を補給できる」

ミカサはじっとそのボトルを見つめる。
今はマスターの魂喰いでギリギリ持っているが、自分たちにとって魔力は死活問題だ。
そういう意味でこのアイテムは非常に有用だ――苛立たしいことに。

「その形状ならば学園内で使用しても怪しまれないだろう」
「……私はもう学校には行かない」

今日の騒ぎを考えれば、登校したところで問い詰められるのは想像に難くない。
それに――どんな顔をして、あの場所に舞い戻れというのか。
そう思っての言葉だったが、キャスターはきっぱりと、

「いや明日も学園に行ってもらう。明日――我々は攻勢をかける」

そう言ってのけた。
そして静まりかえる夜の校舎を一瞥し、

「この学園には多くの闇がある。
 特にこの学園に陣地作成し、己の城と変えようとしているサーヴァントが確認された。
 放っておけば、この学園の生徒すべてが奴の走狗となりかねない」
「……すべてが」

一瞬、昼間決別したはずのクラスメイトたちの顔が、教室の風景が明滅した。

「ああ、どうやら奴にはそれだけの力がある――そして、その他の情報もお前に与えよう」

そうしてキャスターは語りだす。
この聖杯戦争でこれまでに遭遇したサーヴァントのことを、情報を。
今回も彼女が伝える情報はどれも有用であり、無視できないものであった。

「シャア・アズナブルのサーヴァント同盟」
「そしてどうやら奴らも同盟を組んでいるようだ。
 この聖杯戦争においても、徐々に我々のような同盟勢力ができつつある」

想定できる話だった。
こうした戦いにおいて、チームを組むことの有用性は疑うべくもない。
そして――あの朝の海で出会った男もまた、誰かと手を組んだのだ。

「…………」

同時にミカサは思う。
忌々しいが――自分たちはこの同盟を破棄するわけにはいかない、と。
もうしばらくは、このキャスターが持ってくる魔力と情報を頼る必要がある。
そうでなければ、自分たちはこれから苛烈になってくる戦いを乗り越えられない。

「――さて」

そこまでいくとキャスターは、言葉を切った。

「明日の話だ。お前にはこの学園を襲ってもらう」

ミカサは何も言わなかった。

「算段はこれから話すが、奴が学園を手中に入れる前に、どうにかして牙城を崩す。
 そのためにも、この学園を強襲する。
 そして今夜はその前哨戦として、少し学園に侵入してもらう。
 何が仕込まれているのか、軽く調べるだけだ。本命は明日だ」

淡々と彼女は学園強襲の算段を告げていく。
ミカサはただ懐に忍ばせたナイフを汗ばむ掌で握りしめた。

「――なにか異論はあるか?」

一通り語った彼女は、ミカサにそう尋ねてきた。
ない、と彼女は首を振った。
そうだ。自分たちは勝つ。たとえ血を流そうとも、決してこの願いは揺るがない。

「そうか、同意を得られてよかった」

そうキャスターは漏らした。
あくまで自分たちは対等である、という風にだ。
そう――忌々しいが――このサーヴァントは決してこちらを軽んじてはこない。
寧ろミカサを高く買っている節さえこの蟲は見せているのだ。

「……しかし、今夜はどうした」

そこでふとキャスターが問いかけてきた。
いつも不敵な彼女にしては珍しく、どこか訝し気な口調だ。
その視線の先には――ミカサの荷物が詰め込まれたスポルディングバッグがあった。

「私はもう、あの家には戻らない」

最低限の着替え、食料、ナイフ、立体起動装置、スナップブレード、ガスボンベ……
そこにはミカサのすべてが詰まっていた。
生きるために必要なすべてのものがあそこにある。

それ以外のものは何も、ない。


_act1




あの人の■■を見たのは、帰り道でのことだった。
もしかするとそれは偶然だったのかもしれない。

だってサーヴァントに魂喰いされたNPCの死体は残らないはずだ。
多少のタイムラグはあれど、放っておけば消える――そう思っていた。
しかし、あの人の■■は残っていた。

どうして残っていたのか。
それとも消える間際にたまたま自分が行き遭うことができたのか。

それとも何か別の理由が、NPCのシステムに何か秘密が隠されているのか。

本当はそれを確かめるべく、あの人の■■をじっと見ているべきだったのかもしれない。
ああ――本当に、それが正解だった。
これが聖杯戦争というもののはずだ。

あのクラスメイトも、あのおさげの少女も、蟲も、あの乙哉という生徒も、家で待っているはずだったあの人も――

――すべて喰らってでも私は生きなくてはならない。

あの海への憧憬を感じたときから、その覚悟は既に決めている。

その覚悟を思い出したとき、彼女のグロテスクで唯一無二の断章/フラグメンツは完成した。



【C-3/月海原学園/二日目 未明】
※学園にはホグワーツと同じく“マグルの機械が故障する魔術”が仕込まれており、ヴォルデモートが自由に動作させることができます。
 これをレジストするには一定ランク以上の対魔力が必要になります

【ミカサ・アッカーマン@進撃の巨人】
[状態]:片腕に銃痕(応急処置済み)
[令呪]:残り三画
[装備]:魔法の聖水
[道具]:シャアのハンカチ身体に仕込んだナイフ
    立体起動装置、スナップブレード、予備のガスボンベ(複数)
[所持金]:普通の学生程度
[思考・状況]
基本行動方針:いかなる方法を使っても願いを叶える。
1.日常は切り捨てた。
2.家に帰り装備を取り、新たな拠点を用意する。
3.額の広い教師(ケイネス)にも接触する。
4.シャアに対する動揺。調査をしたい。
5.蟲のキャスターと組みつつも警戒。
6.――――
[備考]
※シャア・アズナブルをマスターであると認識しました。
※中等部に在籍しています。
※校門の蟲の一方に気付きました。
※キャスター(シアン)のパラメーターを確認済み。
※蟲のキャスター(シアン)と同盟を結びました。今夜十二時に、学園の校舎裏に来るという情報を得ました。
※シオンの姿、およびジョセフの姿とパラメータを確認。
※杏子の姿とパラメータを確認。
※黒髪の若い教師(NPC、ヴォルデモートが洗脳済み)を確認。現時点ではマスターだと考えています。

【ランサー(セルベリア・ブレス)@戦場のヴァルキュリア】
[状態]:魔力充填(微消費)
[装備]:Ruhm
[道具]:ヴァルキュリアの盾、ヴァルキュリアの槍
[思考・状況]
基本行動方針:『物』としてマスターに扱われる。
1.ミカサ・アッカーマンの護衛。
[備考]
※暁美ほむらを魂喰いしました。短時間ならば問題なくヴァルキュリア人として覚醒できます。
※黒髪の若い教師(NPC、ヴォルデモートが洗脳済み)を確認。現時点ではマスターだと考えています。


【キャスター(シアン・シンジョーネ)@パワプロクンポケット12】
[状態]:健康、残り総数:約261万匹(山小屋:251万匹、学園:10万匹)
[装備]:橙衣
[道具]:学生服
[思考・状況]
基本行動方針:マナラインの掌握及び宝具の完成。
0.十二時に間に合うよう、学園に向かう。
1.学園を中心に暗躍する。
2.桜に対して誠意ある行動を取り、優勝の妨げにならないよう信頼関係を築く。
3.今夜十二時にもう一度学園の校舎裏に行く。
4.黄金のセイバー(オルステッド)を警戒。
5.発見した洞窟の状態次第では、浮遊城の作成は洞窟内部の霊脈で行う。
6.洞窟を使うのに必要であれば、白蓮と交渉する。
[備考]
※工房をC-1に作成しました。用途は魔力を集めるだけです。
※工房にある程度魔力が溜まったため、蟲の制御可能範囲が広がりました。
※『方舟』の『行き止まり』を確認しました。
※命蓮寺に偵察用の蟲を放ちました。現在は発見した洞窟を調査中です。
 →聖白蓮らが命蓮寺に帰ってきたため、調査を中止しています。不在の機会を伺うか、交渉も視野に入れています。
※命蓮寺周辺の山中に、地下へと通じる洞窟を発見しました。
※学園のマスターとして、ほむら、ミカサ、シオン、ケイネスの情報を得ました。
 また関係するサーヴァントとして、アーチャー?(悪魔ほむら)、ランサー(セルベリア)、シオンのサーヴァント(ジョセフ)、セイバー(オルステッド)、キャスター(ヴォルデモート)を確認しました。
※ミカサとランサー(セルベリア)と同盟を結びました。
※ランサー(セルべリア)の戦いを監視していました。
※アーチャー(雷)とリップヴァーンの戦闘を監視していました。
※間桐桜から、教会に訪れたマスター達の事を聞きました。
※小屋周辺の蟲の一匹に、シオンのエーテライトが刺さっています。その事にシアンは気付いていません。
※【D-5】教会に監視用の蟲が配置されました。
※学園に向かう十万の蟲に、現在は意識を置いています。
※C-3の学園に潜伏していた十万の蟲の内、九万匹は焼かれ、残りの一万匹は学園から一先ず撤退しています。
 →撤退した蟲はC-1の小屋で合流しました。

【言峰綺礼@Fate/zero】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]黒鍵
[道具]変幻自在手帳、携帯端末機
[所持金]質素
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.???
1.キャスター(ヴォルデモート)を利用し、死徒アーカードに対処する。
2.黒衣の男とそのバーサーカーには近づかない。
3.検索施設を使って、サーヴァントの情報を得る。
4.トオサカトキオミと接触する手段を考える。
5.真玉橋やシオンの住所を突き止め、可能なら夜襲するが、無理はしない。
6.この聖杯戦争に自分が招かれた意味とは、何か―――?
7.憎悪の蟲に対しては慎重に対応。
[備考]
※設定された役割は『月海原学園内の購買部の店員』。
※バーサーカー(ガッツ)、セイバー(ロト)のパラメーターを確認済み。宝具『ドラゴンころし』『狂戦士の甲冑』を目視済み。
※『月を望む聖杯戦争』が『冬木の聖杯戦争』を何らかの参考にした可能性を考えています。
※聖陣営と同盟を結びました。内容は今の所、休戦協定と情報の共有のみです。
 聖側からは霊地や戦力の提供も提示されてるが突っぱねてます。
※学園の校門に設置された蟲がサーヴァントであるという推論を聞きました。
 彼自身は蟲を目視していません。
※トオサカトキオミが暗示を掛けた男達の携帯電話の番号を入手しています。
→彼らに中等部で爆発事故が起こったこと、中等部が休講になったこと、真玉橋という男子生徒が騒ぎの前後に見えなくなったことを伝えました。
※真玉橋がマスターだと認識しました。
※寺の地下に大空洞がある可能性とそこに蟲の主(シアン)がいる可能性を考えています。
※キャスター(ヴォルデモート)陣営と同盟を結びました。
 アーカードへの対処を優先事項とし、マスターやサーヴァントについての情報を共有しています。



【セイバー(オルステッド)@LIVEALIVE】
[状態]通常戦闘に支障なし
[装備]『魔王、山を往く(ブライオン)』
[道具]特になし。
[所持金]無し。
[思考・状況]
基本行動方針:綺礼の指示に従い、綺礼が己の中の魔王に打ち勝てるか見届ける。
1.綺礼の指示に従う。
2.「勇者の典型であり極地の者」のセイバー(ロト)に強い興味。
3.憎悪を抱く蟲(シアン)に強い興味。
[備考]
※半径300m以内に存在する『憎悪』を宝具『憎悪の名を持つ魔王(オディオ)』にて感知している。
※アキト、シアンの『憎悪』を特定済み。
※勇者にして魔王という出自から、ロトの正体をほぼ把握しています。
※生前に起きた出来事、自身が行った行為は、自身の中で全て決着を付けています。その為、『過去を改修する』『アリシア姫の汚名を雪ぐ』『真実を探求する』『ルクレチアの民を蘇らせる』などの願いを聖杯に望む気はありません。
※B-4におけるルール違反の犯人はキャスターかアサシンだと予想しています。が、単なる予想なので他のクラスの可能性も十分に考えています。
※真玉橋の救われぬ乳への『悲しみ』を感知しました。
※ヴォルデモートの悪意を認識しました。ただし気配遮断している場合捉えるのは難しいです。


【ケイネス・エルメロイ・アーチボルト@Fate/Zero】
[状態]睡眠、健康、ただし〈服従の呪文〉にかかっている
[令呪]残り3画
[装備]月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)、盾の指輪
[道具]地図、自動筆記四色ボールペン
[所持金]教師としての収入、クラス担任のため他の教師よりは気持ち多め?
[思考・状況]
基本行動方針:我が君の御心のままに
0.仮眠中。零時には目覚めるよう自己暗示済み。
1.起きたらキャスターの指示に従い、合流する。
2.他のマスターに疑われるのを防ぐため、引き続き教師として振る舞う
3.教師としての立場を利用し、多くの生徒や教師と接触、情報収集や〈服従の呪文〉による支配を行う
[備考]
※〈服従の呪文〉による洗脳が解ける様子はまだありません。
※C-3、月海原学園歩いて5分ほどの一軒家に住んでいることになっていますが、拠点はD-3の館にするつもりです。変化がないように見せるため登下校先はこの家にするつもりです。
※シオンのクラスを担当しています。
※ジナコ(カッツェ)が起こした暴行事件を把握しました。
※B-4近辺の中華料理店に麻婆豆腐を注文しました。
→配達してきた店員の記憶を覗き、ルーラーがB-4で調査をしていたのを確認。改めて〈服従の呪文〉をかけ、B-4に戻しています。
※マスター候補の個人情報をいくつかメモしました。少なくともジナコ、シオン、美遊のものは写してあります。


【キャスター(ヴォルデモート)@ハリーポッターシリーズ】
[状態]健康、魔力消費(中)
[装備]イチイの木に不死鳥の尾羽の芯の杖
[道具]盾の指輪(破損)、箒、変幻自在手帳
[所持金]ケイネスの所持金に準拠
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯をとる
1.綺礼と協力し、アーカードに対処する。
2.綺礼を通じてカレンを利用できないか考える。
3.シオンからの連絡に期待はするが、アーチャーには警戒。
4.ケイネスが起きたら一応合流して面通しくらいはする。
5.〈服従の呪文〉により手駒を増やし勝利を狙う。
6.ケイネスの近くにつき、状況に応じて様々な術を行使する。
7.ただし積極的な戦闘をするつもりはなくいざとなったら〈姿くらまし〉で主従共々館に逃げ込む
8.戦況が進んできたら工房に手を加え、もっと排他的なものにしたい


[備考]
※D-3にリドルの館@ハリーポッターシリーズがあり、そこを工房(未完成)にしました。一晩かけて捜査した結果魔術的なアイテムは一切ないことが分かっています。
 また防衛呪文の効果により夕方の時点で何者か(早苗およびアシタカ)が接近したことを把握、警戒しています。
※教会、錯刃大学、病院、図書館、学園内に使い魔の蛇を向かわせました。検索施設は重点的に見張っています。
 この使い魔を通じて錯刃大学での鏡子の行為を視認しました。
 また教会を早苗が訪れたこと、彼女が厭戦的であることを把握しました。
 病院、大学、学園図書室の使い魔は殺されました。そのことを把握しています。
 使い魔との感覚共有可能な距離は月海原学園から大学のあたりまでです。
→現在学園と教会とルーラーの近くに監視を残し、他は図書館と暴動の起きているところを探らせ、アーカードとついでに搬入業者を探しています。
※ジナコ(カッツェ)が起こした暴行事件を把握しました。
※洗脳した教師にここ数日欠席した生徒や職員の情報提供をさせています。
→小当部の出欠状況を把握(美遊、凛含む)、加えてジナコ、白野、狭間の欠席を確認。学園は忙しく、これ以上の情報提供は別の手段を講じる必要があるでしょう。
→新たに真玉橋、間桐桜について調べさせています。上記の欠席者の個人情報も入ってくるでしょう。
※資料室にある生徒名簿を確認、何者かがシオンなどの情報を調べたと推察しています。
※生徒名簿のシオン、および適当に他の数名の個人情報を焼印で焦がし解読不能にしました。
※NPCの教師に〈服従の呪文〉をかけ、さらにスキル:変化により憑りつくことでマスターに見せかけていました。
 この教師がシオンから連絡を受けた場合、他の洗脳しているNPC数人にも連絡がいきヴォルデモートに伝わるようにしています。
※シオンの姿、ジョセフの姿を確認。〈開心術〉により願いとクラスも確認。
※ミカサの姿、セルベリアの姿を確認。〈開心術〉によりクラスとミカサが非魔法族であることも確認。
 ケイネスの名を知っていたこと、暁美ほむらの名に反応を見せたことから蟲(シアン)の協力者と判断。
※言峰の姿、オルステッドの姿を確認。〈開心術〉によりクラスと言峰の本性も確認。
※魔王、山を往く(ブライオン)の外観と効果の一部を確認。スキル:芸術審美により真名看破には至らないが、オルステッドが勇者であると確信。
※ケイネスに真名を教えていません。
※カレンはヴォルデモートの真名を知らないと推察しています。
※図書館に放った蛇を通じてロトとアーカードの戦闘を目撃しました。
 それとジナコの暴行事件から得た情報によりほぼ真名を確信しています。
※言峰陣営と同盟を結びました。
 アーカードへの対処を優先事項とし、マスターやサーヴァントについての情報を共有しています。
 それによりいったん勇者ロトへの対処は後回しにするつもりです




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150:生きろ、そなたは美しい ミカサ・アッカーマン&ランサー(セルベリア・ブレス