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いいから、みつげ ◆Ee.E0P6Y2U



夜のファミリーレストランに、吸血鬼が一人、魔神が一人、英霊が二人。
目の前にはナポリタン、カプレーゼ、真っ赤なケチャップがついたポテト。

「赤いな」
「……何か言いましたか?」

口元についた赤いケチャップをふき取りながらシオンが聞き返す。
聞き返された狭間は首を振るのみで、答えはしなかった。

先ほど起こった真夜中の接触は奇妙な形で幕を閉じた。
マスターとマスター、それぞれ力ある者が人払いされた場所で出会ったのだ。
にも関わらず、起こったのは戦闘/Battleではなく、交渉/Talkでもなく、逃亡/Escapeですらない。
先ほどの醜態――痴態とは絶対に言いたくないが――を思い出すと、狭間は頭を押さえたくなる。

「ふふん」

ちら、と横を見る。
彼のサーヴァント、ライダーは愉し気にやってきたサラダを取り分けている。
すべては――彼女が原因だ。

彼女の放った宝具を受けたアーチャーと、その効果が伝染したかのような昂ぶりを見せた女と、それとはまた別に取り乱してしまった狭間。
あんなことがあったせいで、自分はファミレスで食事をする羽目になっている。

「あー、それでよォ。アンタたちは、その、なんだ?」

妙に弛緩した雰囲気の下、敵であるアーチャーが問いかけてきた。
「メシ食わない?」を提案してきたのは彼である。
乱れた場の仕切り直し、という訳だ。

「魔神皇、狭間偉出夫だ」

それを受け、狭間は言い放った。
先ほど遮られた名を、圧倒的な強者の威圧感と共に伝えるべく、である。

「ンン~なぁ、マスター。魔神皇って何よ。ニックネームか何か?」
「いえ、学園に居る間、そのような名は聞いたことがありません。
 恐らくは自称ではないでしょうか? それか、ネットのハンドルネームとか」

……だが向こうにその意気は伝わらなかったようだ。

見たところ、この銀髪のマスターはそこそこのサマナーのようだった。
だからこそ、あまりにも愚かすぎてこちらの力を見誤っている、などということもあるまい。
ではなぜ――この度の接敵はこうもうまくいっていないのか。
大学のアサシンや、図書館のアーチャーの時と、彼女らの違いは何か。
それを考えると、すぐさま厭な答えが脳裏を過る。

学校を知っていること。

おそらくは、それだ。
先ほど取り乱してしまった自分を思い出す。
ただ名を知っているだけだった。噂程度で、別段深く知られていた訳ではない。
にも拘わらず、あそこを、あの場所のことを想起させられただけで、自分は取り乱してしまった。


「それで―― 一つ尋ねます」

ようやく場が落ち着いた。
そう思ったのだろうシオンが口を開いた。

「貴方はあの学園のことを知っています。
 ――あの学園に巣くう、大きな影のことを」

少しだけ、目まいがした。

「あそこには確認されただけで5つ以上の陣営が根を張っている。
 その中でも二つの陣営は、脅威です」

シオンの言葉に狭間は何を返しはしなかった。
ただ思う。
この狭間を前にして、脅威、というのだから、まぁ本当にいるのだろう。
あの学園には巨大な力を持ったサーヴァントが。

「狭間……ここはひとつ協力できないでしょうか?
 私はあの学園にいる陣営の情報を提供できます。
 中には宝具やマスターまで特定できているものまで」
「それをあげるから、自分たちの代わりにとっちめて欲しいってこと?」
「もちろん私も戦います。
これは効率の問題です。陣地を構えて力をつけようとしている輩を、早めに討つための」
「あの学園、いまそんなことになってるのね。ふうん……」

黙る狭間と別に、ライダーがシオンの言葉に応えている。
見れば彼女は、戦場と化した学園、の話をどことなく懐かしそうに聞いていた。

「私は明日、再び学園に行こうかと思います」
「へえ、そんな危険な場所に?」
「ノンノン、危険だから行かないってんじゃ駄目だろ。
 危険だから早めに倒すってわけだ。この話、分かるよな?」
「もちろん。そいつら、後になればなるほど強くなるんでしょ?」

答えはしないが、そのことは狭間としても理解できる。
無論他の凡俗がどれだけ入念に準備しようとこの身に勝てるとは思わないが、
しかし放っておいては面倒ごとになりかねない。
そのような相手は前半のうちに片づけておくに限る。
シオンの言う通り、効率の問題である。

「――私は明日の昼には、あの学園にいる“影のサーヴァント”を排除したい。
 まだアレが学園を掌握しきっていない間に、できれば徒党を組んで倒してしまいたいのです。
 あれに長期戦を挑むのは、愚行だ」

彼女は決然と言い放った。
なるほど多少は頭が回るようだ。
何故彼女が明らかに格上である狭間らに接触してきたのか。
それはリスクを承知のうえで、その“影のサーヴァント”とやらを倒すに足る戦力を得るためだろう。
後になればなるほど力をつけるサーヴァントを倒すには、明日の昼がデッドライン。

なればこそ、ここが一つの勝負どころ、と考え、こちらに接触してきたという訳だ。
非常にロジカルで、理解できる。
こちらのうまみも同時に提示しているし、交渉/Talkとしては悪くない切り出し方だ。
それを理解しているのか、ライダーは「どう?」と確認するような視線を送ってきた。


「――断る」

それに対し、狭間は一言でそう切り捨てた。

「……説明が足りませんでしたか?
 あの学園のサーヴァントは」
「私を侮るな。お前の話は理解している。
 しかし、今の私はあいにくと交渉する気がない」

すべての話を受け止めたうえで、狭間はそう返す。
理由はそもそも話す気がない。というだけで。
どうしようもない話だが、交渉とは得てしてそういうものだ。
いかにロジカルに話そうとも、結局は相手の気分次第なのだから。

学校、月海原学園。
どうやらあの場所でも戦っている輩はいるようだが、そんな奴らは勝手につぶしあっておけばいい。
そう思ったからこそ、狭間は交渉を打ち切り、そしてシオンも放っておくことにした。

「いくぞ、ライダー」

そうして会話を打ち切って、狭間は立ち上がる。
それ以上話す気はなかった。
食事を始めてまだ十分程度。まだ来ていない料理もあったが、そんなことはどうでもいい。

ライダーは眼鏡を上げつつ、こちらについてくる。
彼女の方は「じゃあね」と最後にシオンらに言い残したが、狭間は何も言わなった。

「いいの?」
「何がだ」
「だってまだあの娘との話、始まったばかりじゃない。
 それに聞いた限りそう悪い話じゃなさそうだったし」
「私が聞くに値しない。そう思った以上、貴重な時間を使う気になれなかった。それだけだ」

そう言いながら彼はファミレスを出ていく。
既に夜も深まっているというのに、騒ぎ立てる若者たちの声がひどく不快だった。
なしくずし的にこのような場にやってきたが、本当は1秒たりともこの場にはいたくなかった。

「――学校、いきたくないの?」
「…………」

狭間はライダーの言葉を無視する。
答えるまでもないと思ったからだ。






その時、冬木市の別の場所で、とある事件が起こっていた。
それは聖杯戦争にまつわるものであったが、
彼らとは直接的には関係のない事件であり、今後ともその因果が重なることはないだろう。

しかし、その犯人の逃げた場所が問題であった。





「あーら、随分あっさり退散しちまったなァ」

去っていくライダー陣営を見ながら、アーチャーはそうこぼした。
はぁ、とシオンは息を吐く。
とりつく島もない、とはこのことか。

努めて冷静に交渉を進めるつもりだったが、まだ入り口の時点で彼らには打ち切られてしまった。

「飯にはついてきたのに、話が始まった途端やる気をなくすってのも妙な話だぜ。
 いやまぁ、サーヴァントの方は妙ってレベルじゃねえんだが」
「……もしかすると、厭だったのかもしれません」
「んー厭?」

狭間の態度を思い出しながら、シオンは言う。

「狭間偉出夫。月海原学園2年E組在籍。学力検査では全答案で百点満点を叩きだし、IQ診断は256。学園創立以来の秀才として期待される……」

出会い頭に述べた彼のパーソナルデータを復唱する。
データは事実として、その情報には別の続きがあった。
それも、あまり良い形でない噂だ。

「彼は学校のことが厭だった」

集団の中にパワーバランスを崩すような飛びぬけた天才が現れてしまえばどうなるのか。
どのような態度を取られ、どのような視線に晒されるのか。
シオンは知っている。
あの押しつぶすような、重く、苦しい空気の場所を。

「とにかく彼を学園での戦いに引き込むのは難しそうですね」
「はーん、まぁ仕方ねえぜ。敵に回らなかっただけで良しとするしかねえ」

アーチャーはそう言って、残されたパスタをフォークでぐるぐる巻きにしている。

「しっかしどうするよ、マスター。
 明日にあのサーヴァントを討つってのは本気だろ?」
「ええ、できれば可能な限り速やかにあの敵は討たなければなりません。
 あれは難敵だ。ギリギリ補足できている今のうちに、どうにかしなくては」

そう語りつつ、彼女は思う。
目の前に残された料理の数々と、去っていたあの陣営。
決裂はしたが、戦闘にはならなかった。
それはいい、それはいいが……

「……食い逃げされましたね」

これから寝床探しをしないといけないのに、無駄な出費をしてしまった。
交渉/Talkを断られた挙句、金銭を取られてしまうとは――



[C-6 /南部/二日目 未明]

【シオン・エルトナム・アトラシア@MELTY BLOOD】
[状態]アーチャーとエーテライトで接続。色替えエーテライトで令呪を隠蔽
[令呪]残り三画
[装備] エーテライト、バレルレプリカ
[道具] ボストンバッグ(学園制服、日用必需品、防災用具)
[所持金]豊富(ただし研究費で大分浪費中) カードと現金で所持
[思考・状況]
基本行動方針:方舟の調査。その可能性/危険性を見極める。並行して吸血鬼化の治療法を模索する。
0.……
1.明日、学園のサーヴァントを打倒する
2.これからの拠点を探す。
3.情報整理を継続。コードキャストを完成させる。
4.方舟の内部調査。中枢系との接触手段を探す。
5.学園に潜むサーヴァントたちを警戒。銀"のランサーと"蟲"のキャスター、アンノウンを要警戒。
6.展開次第では接触してきた教師と連絡を取ることも考える。
[備考]
※月見原学園ではエジプトからの留学生という設定。
※アーチャーの単独行動スキルを使用中でも、エーテライトで繋がっていれば情報のやり取りは可能です。
※マップ外は「無限の距離」による概念防壁(404光年)が敷かれています。通常の手段での脱出はまず不可能でしょう。
 シオンは優勝者にのみ許される中枢に通じる通路があると予測しています。
※「サティポロジァビートルの腸三万匹分」を仕入れました。研究目的ということで一応は怪しまれてないようです。
※セイバー(オルステッド)及びキャスター(シアン)、ランサー(セルべリア)、ランサー(杏子)、ライダー(鏡子)のステータスを確認しました。
※キャスター(シアン)に差し込んだエーテライトが気付かれていないことを知りました。
※「サティポロジァビートルの腸」に至り得る情報を可能な限り抹消しました。
※黒髪の若い教師(NPC、ヴォルデモートが洗脳済み)の連絡先を入手しました。現時点ではマスターだと考えています。
 これに伴いケイネスへの疑心が僅かながら低下しています。
※キャスター(シアン)とランサー(セルベリア)が同盟を組んでいる可能性が高いと推測しています。
※分割思考を使用し、キャスター(ヴォルデモート)が『真名を秘匿するスキル、ないし宝具』を持っていると知りました。
 それ以上の考察をしようとすると、分割思考に多大な負荷がかかります。
※狭間についての情報は学園での伝聞程度です。


【アーチャー(ジョセフ・ジョースター )@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]シオンとエーテライトに接続。疲労困憊。射精。
[装備]現代風の服、シオンからのお小遣い
[道具]
[思考・状況]
基本行動方針:「シオンは守る」「方舟を調査する」、「両方」やらなくっちゃあならないってのが「サーヴァント」のつらいところだぜ。
1.学園、行くかねぇ
2.裏で動く連中の牽制に、学園では表だって動く。
3.夜の新都で情報収集。でもちょっとぐらいハメ外しちゃってもイイよね?
4.エーテライトはもう勘弁しちくり~! でも今回は助かった……。
[備考]
※予選日から街中を遊び歩いています。NPC達とも直に交流し情報を得ているようです。
※暁美ほむら(名前は知らない)が校門をくぐる際の不審な動きを目撃しました。
※黒髪の若い教師(NPC、ヴォルデモートが洗脳済み)を確認。現時点ではマスターだと考えています。







シオンの申し出を退けた狭間は、明日以降の聖杯戦争に備えて情報収集を行っていた。

本来ならば、次なる獲物を狩るべく街を徘徊する心積もりだった。
しかし、彼はどこか胸にもやを抱えたまま、無言で自室に帰ってきた。
そして端末を起動し、今日の情報を一気にまとめていく。

――学校、いきたくないの?

ライダーの言葉が脳裏を過る。
行くものか、と狭間は胸中でこぼす。
聖杯戦争など関係なしに、魔神皇であるこの身があのような場所に縛られる義理などない。

――あの学園に巣くう、大きな影のことを

シオンの切迫した表情を思い出す。
勝手につぶし合っていろ、と狭間は吐き捨てる。
そう思いつつ、なぜ自分がこうも心が乱れているのか、理解できていなかった

「……ふうん」

ライダーは霊体化したまま姿を見せない。
だが、小さく声は聞こえた。
それでも話しかけてはこない。その事実がまた、腹立たしい。

白い校舎、色あせた廊下の景色、同じ服と同じ顔で塗り固められた生徒たち……

靄が心の中でぐるぐると渦巻いている。
狭間は舌打ちをする。こうして取り乱していること自体、狭間は誰にも見せたくなかった。

苛立ちに囚われた彼は、黙々と端末の前で作業をする。

「……これは」

――そこで、気づいた。

電脳上で巻き起こっている、一つの異変に。



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