Heaven's Fall Blank moon ◆ysja5Nyqn6
07.5/ interlude『甲賀のアサシン(弐)』
「――――――――」
遠雷の如く響き渡ったその音に、もう一人のアサシンは、彼らの戦いが終わったこと悟った。
結果はおそらく、ランサーの勝利。赤黒のアサシンは間違いなく強敵ではあるが、蘇生能力を持つあのバーサーカーが加勢したと仮定すれば、おかしな話ではない。
となれば、自分が今成すべきことは一つだけ。
マスターの下へと早急に帰還し、【C-6】で起きている戦闘への対処および、自身の天敵であるバーサーカーへの対策を練ることだ。
お互いが万全であると仮定した場合、自分とあのバーサーカーが戦えば、高い確率で自分が敗北する。
アサシンはそう予想を立てていた。
となれば、当然狙うべきは彼のマスターとなる。
だが仮にも相手はサーヴァント。単騎で挑んだところで、そうやすやすとマスターを殺させはしないだろう。
サーヴァントの相手はサーヴァントという図式は、そう簡単には崩れない。
だが、わざわざその図式を崩す必要はないとアサシンは判断していた。
何故なら、サーヴァントの相手がサーヴァントであるように、マスターの相手はマスターがするものだからだ。
そして彼のマスターは、電子ドラックという、ある意味において最悪の切り札を持っている。
そう。彼のマスターの武器は、この冬木市のNPCたちだ。
いかに強力なマスターといえど、数の暴力を覆すことは容易ではない。
自分はただバーサーカーの足止めをしていれば、それだけで勝敗は決するのだ。
問題は、この切り札がルーラーの裁定対象となり得るということだが……。
(そのあたりの問題は、は“ますたぁ”が考えるべきこと。わしは主が命ずるままに戦えばばよい)
結局のところ、サーヴァントはマスターの道具に過ぎない。
サーヴァントの意志や感情を否定するわけではないが、行動方針を決めるのはやはりマスターなのだ。
幸いにして、自身の情報は情報末梢スキルによって消去されているはずだ。バーサーカーたちに自身の能力が知られる可能性は低いだろう。
故にアサシンは、自らが得た情報を己が主に伝えるために、誰にも見つかることなく、夜の街を駆け抜けていった。
【C-6/錯刃大学・遠方/二日目・未明】
【アサシン(甲賀弦之介)@バジリスク ~甲賀忍法帖~】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:忍者刀
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:勝利し、聖杯を得る。
1.HALの戦略に従う。
2.自分が得た情報をマスター(電人HAL)の下へと持ち帰る。
3.狂想のバーサーカー(デッドプール)のことは早急に対処したい。
4.自分たちの脅威となる組は、ルーラーによる抑止が機能するうちに討ち取っておきたい。
5.性行為を行うサーヴァント(鏡子)、ベルク・カッツェへの警戒。
6.戦争を起こす者への嫌悪感と怒り。
[備考]
※紅のランサーたち(岸波白野、エリザベート)と赤黒のアサシンたち(足立透、ニンジャスレイヤー)の戦いの前半戦を確認しました。
※狂想のバーサーカー(デッドプール)と交戦し、その能力を確認しました。またそれにより、狂想のバーサーカーを自身の天敵であると判断しました。
※紅のランサーたちと赤黒のアサシンたちの戦いは、ランサーたちが勝利したと判断しました。
08/ 決着/受け継いだもの
「――――――――」
その決着を、ウェイバーは瓦礫の物陰から観ていた。
その胸にあったのは、大きな驚愕と確かな安堵と、そして自分でもよく解らない感情だった。
警官たちの後を追ってビルへと侵入していたウェイバーが、その場所に辿り着いて最初に見た光景は、警官たちが一瞬で惨殺された瞬間だった。
慌てて瓦礫の陰に隠れ、その隙間から覗いてみた時には、すでに戦いは始まっていた。
―――その戦いは、明らかに人知の及ぶものではなかった。
ランサーは善戦こそしていたが、赤黒い炎を纏ったアサシンの戦闘能力は圧倒的で、一方的に防戦へと押し込まれていた。
その恐ろしさは、たとえバーサーカーと二人で挑んだとしても、アサシンに勝つことなどできないのでは、と思うには十分なほどだった。
故にウェイバーは、ランサーたちは殺されると判断した。同時にアサシンへと立ち向かうことを、早々に諦めた。
彼が決着の時までこの場所にいたのは、バーサーカーがいない今の状態で、アサシンに見つかる危険を冒すことが怖かったからに過ぎない。
下手に物音を発てればアサシンに見つかるかもしれない。だから物陰でじっと身を潜め、息を殺してその戦いを見届けていたのだ。
………だというのに。
岸波白野は、その戦場の真っただ中に居たのだ。
いや、ただ居ただけではない。ランサーへと魔術支援を行い、指示を出すという形で、自らも戦いに参加していた。
岸波白野の魔術師としての能力は、実際のところ三流程度の能力しかないウェイバーから見ても、自分以下だと確信するほどだ。
だというのに、その三流以下でしかない岸波白野はあのアサシンに立ち向かっていて、仮にも天才を自称している自分は、こうしてただ物陰に隠れ怯えている。
そのあまりの落差に、ウェイバーはどうしようもなく になった。
そうして岸波白野は、あの恐ろしいアサシンに勝利した。
自分自身を囮にした、自分にはとても真似できない逆転の一手。
それを見た時、自分は戦うことすらなく、岸波白野に敗北したのだとウェイバーは思った。
たとえ今のバーサーカーではなく、狙い通りにイスカンダルを召喚していたとしても、彼と戦えばきっと自分は負けるだろうと。
そんな風に自失していた、その時だった。
大きくよろめきながらも、アサシンが立ち上がった。
あれほど恐ろしかった気配は、もうほとんど感じられない。もはや戦う力など残っていないはずだ。
だというのにアサシンは、体のふらつきを懸命に堪え、何かしらの武術の構えをとったのだ。
「なんでだよ。あんなになっても、まだ戦うつもりなのかよ……」
敗北を悟り、逃げようとするのならばまだわかる。
だがアサシンは、最早勝負は決したというのに、ランサーへと無謀にも挑もうとしている。
ウェイバーには、彼らが不可能へと挑むその理由が、どうしてもわからなかった……………。
†
―――目の前で立ち上がったアサシンを、岸波白野はまっすぐに見据える。
アサシンからはすでに、あの禍々しい気配は感じ取れない。
そのメンポも「忍」「殺」と刻まれた物に戻っており、瞳も黒色へと戻っている。
ナラクではなく、フジキドと呼ばれる人格へと戻ったのだろう。
……それは同時に、彼の敗北が確定したことを表していた。
ランサーの宝具を受け、その体は満身創痍。もはや満足に戦うことなどできないだろう。
この状況下において、ナラクよりも能力の劣るフジキドに、ランサーに勝てる道理はない。
「……スゥーッ! ハァーッ! ……スゥーッ! ハァーッ!
……ハイクは詠まぬ。何故なら私は、オヌシたちを殺すからだ」
だと言うのに、アサシンは懸命に呼吸を整え、そう口にしながら手刀を構えた。
最後まで諦めなどしない。たとえどれほど追い込まれたとしても、自分は必ず勝つのだと、確かな戦意を見せている。
……あるいは、これが“月の聖杯戦争”であったのならば、彼は敗者とみなされ、ムーンセルによって消されていたかもしれない。
だがこれは“月の聖杯戦争”ではない。“止め”は、自らの手で刺す必要があるのだ。
「……そう。アンコールをご所望ってワケ。
……いいわ、ラストナンバーよ。私の歌で、盛大に逝かせてあげる」
アサシンの言葉にランサーがそう宣告し、槍を床へと突き立てた。
宝具によって、今度こそ決着を付けるつもりなのだろう。
自分は――――
1.止める
>2.止めない
岸波白野には、すでにアサシンと戦う理由は薄れていた。
凛の仇であったナラクは倒した。
たとえナラクがアサシンの別人格だったとしても、フジキドは凛の仇ではない。
自分にとってフジキドは、己のマスターであった子供のために復讐を誓う、優しくも悲しい一人の男だった。
……だが同時に、聖杯を求め戦う敵でもあった。
戦いは避けられない。
凛との約束を守る限り、たとえここで見逃したとしても、いずれ再び戦うことになるのだ。
ならばきっと、ここで完全に決着を付けることこそが、未だに戦意を見せるアサシンへのせめてもの誠意だろう。
――――決着は一瞬だった。
「――――――――」
ランサーがドラゴンの翼を広げ、槍の柄へと飛び乗り、大きく息を吸い込み、
「Wasshoi!」
アサシンが、跳んだ。
愚直にも真正面から、まっすぐにランサーへと挑みかかり、
「“Ah――――――――――――ッッ!!!!”」
ランサーの“竜鳴雷声(うたごえ)”が鳴り響く。
放たれた衝撃波に瓦礫が粉砕され、粉塵となって舞い上がる。
自分たちへと向かってきたアサシンは、その粉塵に紛れ、そして姿を消した。
粉塵が晴れた時には、アサシンの姿はすでにどこにも見当たらなかった。
それはマスターである足立も同様だ。
死体が残る間もなく瓦礫とともに吹き飛ばされたのか、あるいは――――。
……いずれにせよ、戦いはこれで終わった。
だがこの決着は、決して岸波白野の勝利などではない。
何故なら、凛を守れなかった時点で、自分たちはすでに敗北していたのだから。
こうしてアサシンを倒したことで、自分はようやく、そのことを認めることができたのだ。
左手を持ち上げ、鋭い痛みを放つ手首を診る。
そこには焼け付いたかのように、碧く輝く刻印が刻まれていた。
――――あの瞬間。
足立透によってランサーの一撃が妨害された時、自分は死を覚悟した。
あの状況から挽回する術は、岸波白野には存在しなかった。
それを覆したのは、あの凛の声と、彼女の魔術だった。
いかなる理由・方法によってかはわからないが、自分は最後の最後で、凛に助けられたのだ。
この刻印はその証。
遠坂凛が岸波白野とともに在るという、確かな証明だ。
そしてそれこそが、誰一人と知り得ることのなかった、遠坂凛がカタチを保っていられた理由だった。
アサシン―――ナラク・ニンジャの正体。
それは、ニンジャの犠牲になった人々の怨念の集合体だ。
当然その中には、ナラク・ニンジャ自身に殺された者たちも含まれる。
であれば、ナラク・ニンジャに直接殺された遠坂凛がその一部にならないはずがなく、
そして器である肉体ごと魂喰いされたことによって、遠坂凛はムーンセルによる消去を免れ、自らのカタチを保ったままその一部となっていたのだ。
そしてそれは、遠坂凛の魂に一つの変異を齎していた。
一時的にでもナラク・ニンジャの一部となっていたことで、彼女の魂はニンジャソウルと似た性質を帯びるようになっていたのだ。
その結果、そして遠坂凛の魂を取り込み、その令呪を受け取った岸波白野は、同時に彼女の魔術刻印も継承することとなった。
その証明が、岸波白野が最後に使用したコードキャストだ。
血縁者以外には行えぬはずの魔術刻印の継承、それによる魔術行使。
あのコードキャストはいわば、岸波白野(ウィザード)用に調整された、遠坂凛のユニーク・ジツのようなものだったのだ。
だからと言って、岸波白野がニンジャとなったわけではない。
遠坂凛の魂が似た性質を帯びたというだけで、ニンジャソウルとなったわけではないのだから、それは当然だ。
ただ単に、遠坂凛の構成情報(たましい)を得たことによって、継承した魔術刻印による魔術行使が可能になっただけに過ぎないのだ。
岸波白野がそのことを知ることはない。
全ては終わってしまったことだ。知る意味もない。
ただ遠坂凛に助けられたという事実だけが、岸波白野にとっての真実だった。
痛みを残す左手を握り締め、そこに残る重みを確かめる。
凛は確かにここにいる。ならば立ち止まっている暇はない。
この聖杯戦争を勝ち残る。それが彼女と交わした、最後の約束だからだ。
……けれど。
今だけはほんの少しだけ、立ち上がるための時間が欲しかった。
「……………………」
少しして、自分たちへと近づいてくる足音に顔を上げる。
見ればそこには、いつの間にかウェイバーの姿があった。
来てくれたのか、と彼へと声をかけた。
「岸波………………。
……その……わるい。何の力にもなれなくて」
気まずそうにそう口にしたウェイバーに、そんなことはないと返す。
来てくれたという事実だけで、十分に嬉しいのだと。
だがウェイバーは、ますます気まずそうな顔をするだけだった。
「そ、それよりバーサーカーはどうしたんだよ!
僕がここに来る羽目になったのも、元はと言えばあいつが―――!」
「ん? ウェイバーたん、俺ちゃんのこと呼んだ?」
「うわぁっ!? ば、バーサーカー!?」
ウェイバーが何かを誤魔化すようにバーサーカーのことを口にした途端、いつの間にか現れたバーサーカーがそれに応じた。
さすが狂戦士というべきか。その神出鬼没さ・自由奔放さは、そう簡単には予測ができなさそうだ。
「お前、今までどこほっつき歩いてたんだよ! 岸波のところに向かったんじゃなかったのか!?」
「その通りだけど? 俺ちゃんもちゃんとアサシンと戦ってたんだぜ?」
「バレバレの嘘を吐くなよ! お前どこにもいなかったじゃないか!」
「いやホントだって。俺ちゃん結構善戦したんだぜ? 相性も良かったしな」
「ならどんな風に戦ったのか言ってみろよ! ここで、今すぐ、詳細に!」
「いや、それを言っちまうのはあいつのスキル的にどうかなぁと俺ちゃんは思うのよ。だから内緒」
「ふざけるな! やっぱりサボってたんじゃないかこの馬鹿!
おい岸波! お前も何か言ってやれよ……って岸波? どうしたんだよ」
バーサーカーの口にした言葉を反芻する。
彼はアサシンと戦った、と言っていた。だが実際にアサシンと戦ったのは自分たちだけ。
この矛盾を解明することは―――可能だ。
「どういう意味だよ、それ。
っていうか、バーサーカーの言うことを信じるのかよ、おまえ」
ウェイバーの言葉に頷く。
一応ではあるが、狂人と呼ばれる人間は見知っている。
彼らは決して言葉が理解できないのではない。
ただ単純に、彼らはモノの捉え方・考え方が、自分たちとは異なっているだけなのだ。
そしてこの聖杯戦争では、一つのクラスが重複することなど珍しくはない。
つまりバーサーカーの言葉が真実だとすれば、ここにはもう一人、アサシンが存在していたことになるのだ。
「な! アサシンがもう一騎だって、それ本当かよ!?
あ、いや、でも、それなら魔力の方はどうしたんだよ。いままでは僕から容赦なく魔力を持って行ってたじゃないか、おまえ」
だがバーサーカーのことを信用しきれていないウェイバーは、それでもとバーサーカーへ問い返す。
これまでバーサーカーは、戦闘の度に自分から多量の魔力を供給させていた。
そして現在の魔力残量はもはや枯渇寸前だ。この上からバーサーカーの魔力消費まで負担したのなら、こうして会話する余裕などないはずだ。
だが今回、自身の魔力が持っていかれたような感覚はなかった。それはいったい、どういう意味なのか。
「そりゃお前、俺ちゃんが自前の魔力だけで戦ったからに決まってんじゃん。
ウェイバーたんの魔力がカラッポだったから、俺ちゃん今回は自重したんだぜ。
あ、それともウェイバーたんってば、やっぱり市長目指すつもりだったの? それならそうと言ってよ。俺ちゃんもがっつり協力するからさ!」
「目指してないっつーの! て言うかなんなんだよ、その市長ってのは!」
これまでの戦闘において、バーサーカーがウェイバーの魔力を多量消費していたのは、自身の思うが儘に戦うためだった。
バーサーカーは、一撃で勝負を決めるような宝具は持っていない。だがそれを補うだけの多彩な武装がある。
二丁拳銃、二振りの日本刀に始まり、サブマシンガン、バズーカ、手榴弾、プラスチック爆弾、果てはライフゲージやスパコンゲージと呼ばれる異質なものまで。
それらの武器と強力な再生・蘇生能力を駆使することによって、バーサーカーは他のサーヴァントとも渡り合えるのだ。
しかし蘇生能力の行使はもちろん、銃火器の弾薬などの補填には、やはり魔力が必要となる。
すなわちバーサーカーの保有する魔力が減るということは、そのまま攻撃の手段、手数が減少することに繋がるのだ。
故にバーサーカーは、可能な限り自身の魔力の消耗を避け、ウェイバーの魔力を優先的に使っていたのだ。
それこそが己が勝利するための最善の手だと、正しく理解しているが故に。
……もっとも、そのためにウェイバーに掛かる負担が考慮されているかと言われれば、大きく疑問が残るのだが。
「ったく。何にしても、この場所から速く移動しよう。
今このビルは今NPCたちの注目の的になってるから、いつまでも留まってるのはまずい」
「あらそう。いいじゃないそれ。民衆の視線を集めるのはアイドルの醍醐味よ?」
「そうそう。ヒーローもガキンチョの声援を受けて戦うもんだしな。注目されてなんぼだろ」
「だからふざけるなって! そもそもランサーが派手に戦い過ぎなんだよ!
注目が集まってるってことは、それこそ他のサーヴァントが襲ってくるかもしれないってことだぞ!
今襲撃を受けたら絶対負けるぞ! なんだったら賭けてもいいレベルだ!」
確かにウェイバーの言う通り、自分たちは消耗しきっている。これ以上の連戦は危険だ。
聖杯戦争に勝ち残るためにも、今はここを撤退し、休息する必要がある。
明日……いや、すでに日付は変わっているだろうから、今日一日を休息に当てれば、十分に回復できるだろう。
だから戦いを再開するのは明後日以降だ。それまでは休息と情報収集に当てるとしよう。
「わかったらさっさと僕の家に帰るぞ。今度こそ寄り道なんてしないからな」
ウェイバーはそう言って歩き出そうとして、
「へ、うわぁ!?」
唐突にバーサーカーに担ぎ上げられた。
「いきなり何すんだよおまえ!」
「いや帰るのは構わねぇけどよ。このまま普通にビルを出たら注目の的だぜ、俺ちゃんたち」
「…………あ」
「私はそれでも構わないけど、あなたは困るんでしょう」
「う、うるさい! それくらいちゃんと気づいてたさ!」
そう声を荒げるウェイバーたちの様子を眺めながら、エリザの下へと向かう。
……その前に、最後にもう一度だけ、アサシンたちがいた場所へと振り返った。
自分たちはアサシンを倒した。
だが、あれでアサシンが死んだという確信を、どうしてか持つことができなかった。
消滅の瞬間を見届けていないからか、あるいは別の理由からか……。
いずれにせよ、もしアサシンが生きていたならば、きっとまた戦うことになるような、そんな気がしてならなかった。
「子ブタ、早く行きましょう。さすがに少し疲れたから、シャワーを浴びてバスに入りたいわ」
その声に頷き、今度こそエリザの下へと向かう。
どうやらウェイバーたちは先に向かったようだ。ビルの屋上を飛んで移動する彼らの姿が見える。
それに遅れまいと、行きと同様エリザへと抱き付くと、彼女はドラゴンの翼を広げ、夜空へと向け飛翔した。
こうして戦いは終った。
失ったものはあまりにも多く、得たものはなにもない。
岸波白野たちは人知れず、勝者の存在しない戦場を後にした。
――――頭上には白髏のような眩(くら)い月。
杯のような輪郭が、しめやかに、蜜を注がれる時を待っているかのようだった。
【C-5/双葉商事ビル周辺/二日目・未明】
【岸波白野@Fate/EXTRA CCC】
[状態]:ダメージ(微小/軽い打ち身、左手に噛み傷、火傷)、疲労(中)、魔力消費(大)
[令呪]:残り三画
[装備]:アゾット剣、魔術刻印、破戒の警策、アトラスの悪魔
[道具]:携帯端末機、各種礼装
[所持金] 普通の学生程度
[思考・状況]
基本行動方針1:「 」(CCC本編での自分のサーヴァント)の記憶を取り戻したい。
基本行動方針2:遠坂凛との約束を果たすため、聖杯戦争に勝ち残る。
0.凛………………ありがとう。
1.休息するために、ウェイバーの自宅へ。
2.今日一日は休息と情報収集に当て、戦闘はなるべく避ける。
3.ウェイバー陣営と一時的に協力。
4.『NPCを操るアサシン』を探すかどうか……?
5.狙撃とライダー(鏡子)、『NPCを操るアサシン』を警戒。
6.アサシン(ニンジャスレイヤー)はまだ生きていて、そしてまた戦うことになりそうな気がする。
7.聖杯戦争を見極める。
8.自分は、あのアーチャーを知っている───?
[備考]
※“月の聖杯戦争”で入手した礼装を、データとして所有しています。
ただし、礼装は同時に二つまでしか装備できず、また強力なコードキャストは発動に時間を要します。
しかし、一部の礼装(想念礼装他)はデータが破損しており、使用できません(データが修復される可能性はあります)。
礼装一覧>h ttp://www49.atwiki.jp/fateextraccc/pages/17.html
※遠坂凛の魂を取り込み、魔術刻印を継承しました。
それにより、コードキャスト《call_gandor(32); 》が使用可能になりました。
《call_gandor(32); 》は一工程(シングルアクション)=(8); と同程度の速度で発動可能です。
※遠坂凛の記憶の一部と同調しました。遠坂凛の魂を取り込んだことで、さらに深く同調する可能性があります。
※エリザベートとある程度まで、遠坂凛と最後までいたしました。その事に罪悪感に似た感情を懐いています。
※ルーラー(ジャンヌ)、バーサーカー(デッドプール)、アサシン(ニンジャスレイヤー)のパラメーターを確認済み。
※アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による攻撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。
※アーチャー(エミヤ)が行った「剣を矢として放つ攻撃」、およびランサーから聞いたアーチャーの特徴に、どこか既視感を感じています。
しかしこれにより「 」がアーチャー(無銘)だと決まったわけではありません。
※『NPCを扇動し、暴徒化させる能力を持ったアサシン』(ベルク・カッツェ)についての情報を聞きました。
【ランサー(エリザベート・バートリー)@Fate/EXTRA CCC】
[状態]:ダメージ(大)、魔力消費(大)、疲労(中)
[装備]:監獄城チェイテ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:岸波白野に協力し、少しでも贖罪を。
0.さすがに少し疲れたから、シャワーを浴びてバスに入りたいわ。
1.とりあえず、ウェイバーの自宅へと向かう。
2.岸波白野とともに休息をとる。
3.アサシン(ニンジャスレイヤー/ナラク・ニンジャ)は許さない。
[備考]
※アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による襲撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。
※カフェテラスのサンドイッチを食したことにより、インスピレーションが湧きました。彼女の手料理に何か変化がある……かもしれません。
【ウェイバー・ベルベット@Fate/zero】
[状態]:魔力消費(極大)、疲労(小)、心労(大)、自分でも理解できない感情
[令呪]:残り二画
[装備]:デッドプール手作りバット
[道具]:仕事道具
[所持金]:通勤に困らない程度
[思考・状況]
基本行動方針:現状把握を優先したい
0.僕は…………。
1.休憩の為に、今度こそ家に戻る。
2.バーサーカーの対応を最優先でどうにかするが、これ以上令呪を使用するのは……。
3.バーサーカーはやっぱり理解できない。
4.岸波白野に負けた気がする。
[備考]
※勤務先の英会話教室は月海原学園の近くにあります。
※シャア・アズナブルの名前はTVか新聞のどちらかで知っていたようです。
※バーサーカー(デッドプール)の情報により、シャアがマスターだと聞かされましたが半信半疑です。
※一日目の授業を欠勤しました。他のNPCが代わりに授業を行いました。
※ランサー(エリザベート)、アサシン(ニンジャスレイヤー)の能力の一部(パラメータ、一部のスキル)について把握しています。
※アサシン(ベルク・カッツェ)の外見と能力をニンジャスレイヤーから聞きました。
※バーサーカーから『モンスターを倒せば魔力が回復する』と聞きましたが半信半疑です。
※放送を聞き逃しました。
【バーサーカー(デッドプール)@X-MEN】
[状態]:魔力消費(極大)
[装備]:日本刀×2、銃火器数点、ライフゲージとスパコンゲージ、その他いろいろ
[道具]:???
[思考・状況]
基本行動方針: 一応優勝狙いなんだけどウェイバーたんがなぁー。
0.たやん真正面から倒すとか、はくのんやるなぁ。俺ちゃんも負けてらんねー!
1.一通り暴れられてとりあえず満足。次もっと派手に暴れるために、今は一応回復に努めるつもり。
2.アサシン(甲賀弦之介)のことは、スキル的に何となく秘密にしておく。
3.あれ? そういやなんか忘れてる気がするけどなんだっけ?
[備考]
※真玉橋孝一組、シャア・アズナブル組、野原しんのすけ組を把握しました。
※『機動戦士ガンダム』のファンらしいですが、真相は不明です。嘘の可能性も。
※作中特定の人物を示唆するような発言をしましたが実際に知っているかどうかは不明です。
※放送を聞き逃しました。
※情報末梢スキルにより、アサシン(甲賀弦之介)に関する情報が消失したことになりました。
これにより、バーサーカーはアサシンに関する記憶を覚えていません………たぶん。
09/ Backyard of Ark
「「グググ……おのれ、ランサー=サンめ。よもやこのワシに、あのような屈辱を味あわせてくれようとは。
これもフジキドよ、オヌシがあのような脆弱な小童に肩入れしたのがそもそもの原因ぞ!」」
ニンジャスレイヤーは己の内から、憎悪に満ちた皺枯れた声を感じ取った。
彼のニューロンの邪悪な同居人、ナラク・ニンジャの声だ。コワイ!
だがニンジャスレイヤーはその声に応じることなく、アグラ・メディテーションのイメージを保ったまま微動だにしない。
「「オヌシが始めからワシに体を預けていれば、このようなブザマは晒さなかったのだ!
聞いておるのか、フジキドよ!」」
「……黙れ、オバケめ。ランサー=サンたちが私を追ってきたのは、貴様があの娘を殺したからだ。インガオホーだ。
加えて、真のカラテを見せてやると豪語しておきながらあの体たらく。己より弱き者をアンブッシュすることが、貴様の言う真のカラテなのか、ナラクよ?
そのような行い、貴様が侮蔑するレッサーニンジャの所業と何が違う」
「「ググググ………」」
ニンジャスレイヤーの言葉に、ナラクは言い返すことができない。
何故なら、如何にニンジャスレイヤーのカラテが弱りきっていたとはいえ、ナラクにとってランサーたちをスレイすることは容易いことだった筈だからだ。
それほどまでに、ランサーとナラクのカラテには差が開いていた。開いていながら、サーヴァントの弱点であるマスターを狙い、そして敗北したのだ。
ミヤモト・マサシの残したコトワザの一つに「調子に乗っている奴から負ける」というものがあるが、ナラクの敗北は実際それの表れだった。
「ナラクよ、オヌシは考え違いをしている。このイクサは私のイクサだ。私はオヌシの欲望ではなく、私の目的を果たすのだ!
オヌシの意志などいらぬ! いるのはオヌシの力だけだ! 消えろ、オバケめ!」
「「グヌウッ………」」
ナラクは悔しげな声を発しながら、ニューロンの奥底へと沈んだ。
今のニンジャスレイヤーの体を支配することは出来ぬと判断したのだ。
だがニンジャスレイヤーの肉体か精神が衰弱すれば、ナラクは再び暴れだすだろう。
ナラクは諦めることなど知らぬオバケなのだから。
そうして静寂を取り戻したニュートンの内で、ニンジャスレイヤーはイマジナリー・カラテを再開した。
相手は先ほど己が敗北した相手、ランサーとそのマスターだ。
同じ相手に二度敗北せぬよう、イメージトレーニングを行っているのだ。
………だが、その成果はどうにも芳しくなかった。
(やはり、白野=サンが最大の難敵だ。あの者の出す指示を超える手をイメージできぬ)
相手がランサー一人であれば、現時点でもすでに問題なくスレイできるだろう。
ニンジャスレイヤーのジュー・ジツはすでにランサーの攻撃に完全適応している。負ける要素はほとんどない。
だがそこに岸波白野が加わった途端、ランサーの動きがほとんど予測できなくなるのだ。
ミヤモト・マサシの残したコトワザの一つに「強い軍師がいると二倍は有利」というものがあるが、岸波白野の指示は実際それの表れだった。
加えて岸波白野には、コードキャストによる支援もある。
ランサーと岸波白野を同時に相手にする限り、ニンジャスレイヤーの勝ち目は実際低いのだ。
実際ナラクでさえ敗れたのだ。ニンジャスレイヤーが一人で戦う限り、それは変わるまい。
(ならば、足立=サンの力を借りるか?)
そこでニンジャスレイヤーは、現マスターである足立のことを考える。
彼らを倒そうとするのであれば、ニンジャスレイヤーもまた、協力者の存在が必要だった。
何故なら、岸波白野自身の戦闘能力は実際低いからだ。ロクに動けぬ足立に翻弄されるほどに。
つまり、ニンジャスレイヤーがランサーの相手を、足立が岸波白野の相手をすれば、それだけで勝率は跳ね上がる。
………だが、あの足立が素直に力を貸してくれるとは、ニンジャスレイヤーにはとても思えなかった。
加えて足立は重傷を負い、大きく消耗している。今の状態のままでは、たとえ協力を得たとしても彼らに勝つことは困難だろう。
だからと言って、他に協力者を探す、というのも難しい。何故ならナラクの存在により、またもあの娘のように殺してしまうかもしれないからだ。
ニンジャスレイヤーにとって協力者の存在を得ることは、強敵を殺すことよりも実際困難なことだった。
(………協力者、か)
ニンジャスレイヤーはふと、生前のことを思い返していた。
ナンシー・リー、タカギ・ガンドー、シルバーキー、センセイやユカノ、サブロ老人など、思い返せば自分は、あまりにも多くの人々に助けられてきていた。
彼らの存在がなければ、ソウカイヤやザイバツ、アマクダリなどのニンジャとの戦いを生き残り、復讐を果たすことなどできなかっただろう。
それを思えば、たった一人で戦っていた自分が、深い絆で結ばれた彼らに敗れたのは必定だったのだろう。
(ならば、今ランサー=サンたちを相手にイマジナリー・カラテを行うのは無意味か)
まったく効果がないというわけではないだろうが、現状では時間を浪費するだけになりかねない。
そもそもニンジャスレイヤーの最優先目的はしんのすけを殺したアサシンのスレイだ。いずれランサーたちと再び戦うとしても、それは今ではない。
それに「急いだヒキャクがカロウシした」というコトワザもある。
今はただ、いずれ来るだろうその時のために備えよう。
そう結論したニンジャスレイヤーは、己がニューロンの内からしめやかに浮かび上がっていったのだった。
001010101011011000111101
そうして現実へと意識を戻したニンジャスレイヤーの視界には、あまりにも異質的光景が広がっていた。
赤黒く彩られた無限の地平。そこに広がる実際見覚えのある瓦礫の街。
禍々しいアトモスフィアの空は0と1の数列が埋め尽くし、月と入れ替わったように浮遊し自転する黄金立方体。
その黄金立方体によって、ニンジャスレイヤーはこの場所を電子コトダマ空間だと判断していた。
……いやそもそも、この聖杯戦争の舞台となっている冬木市自体が、方舟によって作られた仮想世界だ。
またコトダマ空間には、極稀にではあるが、何らかの要因によって意識ではなく肉体そのものが入り込む場合もある。
そして『ゴルフェの木片』によって聖杯戦争に参加したマスターの中は、その肉体ごと招き入れられた者がいるとも聞く。
この二点もまた、この聖杯戦争の舞台とコトダマ空間が同一ないし類似したものであるという証明だ。
つまりあの冬木市はコトダマ空間の一部であり、この場所はその虚構が剥がれた、いわばバックグラウンドのような場所なのだろう。
……問題は、ランサーによって倒されたはずのニンジャスレイヤーが、何故この場所にいるのか、ということだが。
その答えは彼の現マスター、足立透が握っていた。
「ん……ふが……?」
「気が付いたか、足立=サン」
この場所へと移動した影響だろう。気を失っていた足立へと向けて、ニンジャスレイヤーは声をかける。
「はえ……? おまえ、っていうか、ここは……テレビの、中?」
「知っているのか足立=サン」
「まあね。たぶん、聖杯戦争に呼ばれたマスターの中では、僕が一番詳しいんじゃないかな? このマヨナカテレビについてはさ」
自分に頼るニンジャスレイヤーという構図に、足立は若干調子づいて説明を始めた。
もっとも、自分が説明しなくても、このサーヴァントは勝手に調査を始めただろうとも思ってもたが。
同時に足立は、この世界に来ることになった経緯――気を失う直前のことも思い出していた。
―――あの瞬間。
ランサーの宝具が放たれ、ニンジャスレイヤーが跳躍した時、足立は己が生存を諦めた。
自分たちは満身創痍。対してランサーたちは大きく消耗こそしているが、まだ戦う余裕は残っている。
加えですでに、止めの一撃が放たれている。
生き残る方法など、どこにもなかった。……“それ”を、足立が偶然見つけなければ。
足立が偶然見つけたもの。それは一台の大型テレビだった。
おそらく、会議室辺りにでも設置されていたのだろう。運よく破壊を免れたそのテレビが、足立の視界に飛び込んできたのだ。
その瞬間足立は、ソーマト・リコールめいて自身がこうなった原因、ひいては聖杯戦争に参加する直前のことを思い出していた。
すなわち、マヨナカテレビの噂と、それによって自覚した自身の能力、そしてテレビの中の世界を。
そして足立の右手には、たった一画だけ残された令呪。
それを自覚した瞬間、足立は生への執着を取り戻し、令呪へと命じていた。
“自分を連れて、テレビの中へと逃げこめ”と。
結果、ニンジャスレイヤーは強制方向転換。足立を連れてテレビの中――つまりこの世界へと飛び込んだのだ。
「要するに、ここは見たくもない真実――人々の意志が反映される世界ってこと。
まあもっとも、ベースとなってる冬木市やそこの住人が作り物な以上、どこまで同じかは知らないけどね」
そうして足立は、ニンジャスレイヤーへの説明を終わらせた。
ニンジャスレイヤーはその説明をかみ砕き、自分なりに解釈していく。
「ふむ……では、どうすればこの世界から出られるかわかるか、足立=サン」
「さあ。テレビでも探して、それに入ればいいんじゃないの?
っていうか、なんでわざわざ出ていく必要があるのさ。ここに居ればひとまずは安全だろ? テレビを出入りできるのは僕だけなんだし」
「私の目的はアサシン=サンをスレイすることだ。このままここに居ても、その目的は果たせぬ。
……それに――――イヤーッ!」
「ウワーッ!?」
ニンジャスレイヤーの突然のケリ・キック!
唐突に攻撃に晒された足立は、狼狽することしかできない……!
だがニンジャスレイヤーのその一撃は、自分を狙ったものではないことに、足立はすぐに気付いた。
ニンジャスレイヤーがキックを放った先で、立方体じみた怪物が消滅していくのが見えたからだ。
「そ、そいついったいなんだよ。シャドウじゃないみたいだけど」
「おそらく保守プログラムの一種だ。方舟は私たちがこの空間にいることを好まないようだ」
加えて、ここがニンジャスレイヤーの知るコトダマ空間と同一だとすれば、インクィジターが現れる可能性もある。
そうなってしまえば、消耗しきった今の自分たちでは成す術なくスレイされるだろう。
「………は。なんだ、結局は聖杯戦争で勝ち残らないと生き残れないってわけか。ほんと、世の中クソだな」
「愚痴を言う余裕があるのなら備えよ。急ぎ、この空間から脱出する」
「はいはい、わかりましたよっと」
ニンジャスレイヤーの冷徹な指示に、足立は適当な返事をしながらペルソナを出現させる。
現れたマガツイザナギの体からは、岸波白野との戦いの時に生じていたノイズは見えない。
気を失っている間に、少しは回復したということだろう。通常戦闘を行う分には問題はなさそうだった。
「ではいくぞ。しっかり掴まっていよ」
ニンジャスレイヤーは足立を背負うと、しめやかに瓦礫の街を駆け出した。
「うわっととと……! もうちょっと優しく走ってよ、こっちは怪我人だよ?」
足立は慌ててニンジャスレイヤーへとしがみつく。両膝と違い、両腕は無事だ。しがみつくことに問題はない。
「……………………」
そうして瓦礫の街を駆け抜けながらも、ニンジャスレイヤーの脳裏にはある疑問が浮かんでいた。
電子コトダマ空間は、最初にログインしたハッカーによってリアリティ定義情報が構築される。
マヨナカテレビは、テレビの中に入ってきた人物の心や無意識の影響を受けてその形を変える。
……であれば、この空間のリアリティ定義情報はいったい誰が構築したものなのか。
当然ニンジャスレイヤーではない。そして足立のものでもない。
何故ならこの空間……瓦礫の街は、聖杯戦争の舞台となっている冬木市がベースとなって構築されていたからだ。
ならばこの空間を構築した存在は、いったい何者なのか――――。
(……現状その者について考えることは無意味。
今は一刻も早く、このコトダマ空間から脱出すべし!)
「Wasshoi!」
ニンジャスレイヤーは己が疑問を振り払い、瓦礫の街を駆け抜ける。
全てはアサシン――ベルク・カッツェへの復讐を遂げ、しんのすけを蘇らせるため。
其は黒よりも暗い影。ネオサイタマの死神に安息の時間など訪れない。
走れ! ニンジャスレイヤー! カラダニキヲツケテネ!
【?-?/電子コトダマ空間・禍津冬木市/二日目・未明】
【アサシン(ニンジャスレイヤー)@ニンジャスレイヤー】
[状態]:魔力消耗(極大)、ダメージ(極大、戦闘続行)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:しんのすけを弔うためにアサシン=サン(ベルク・カッツェ)殺すべし。聖杯の力でしんのすけを生き返らせる。
その後聖杯とムーンセルをスレイする!
0.アサシン(ベルク・カッツェ)=サン殺すべし!
1.聖杯を手に入れるためにすべてのニンジャ(サーヴァント)をスレイする。
2.このコトダマ空間らしき場所から脱出する。
3.ベルク・カッツェに関する情報を入手する。
4.誰か協力者を得る? しかし………
5.ナラクに乗っ取られ邪悪な存在になればセプクする。
[備考]
※放送を聞き逃しています。
※ウェイバーから借りていたNPCの携帯電話を破壊しました。
※足立透と再契約しました。
※ナラクに身体を乗っ取られ、マスターやNPCを無意味に殺すような戦いをしたら自害するつもりです。
※現在自分がいる場所を、電子コトダマ空間のようなものであると考えています。
【足立透@ペルソナ4 THE ANIMATION】
[状態]:魔力消費(大)、両膝破壊、身体の至る所に裂傷(応急処置済み)
[令呪]:なし
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:刑事としての給金(総額は不明。買い物によりそれなりに消費)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れる。死にたくない。
0.結局聖杯戦争で勝たないといけないのかよ……
1.とりあえず、テレビの中から脱出する。
[備考]
※アサシン(ニンジャスレイヤー)と再契約しました。
※足立の携帯電話は【C-5】の森林公園に隠されました。警察から安否確認の電話がありました。
※現在自分がいる場所を、テレビの中の世界のようなものであると考えています。
◇
●
そうして彼らは、脇目もふらず瓦礫の街を駆け抜けていった。
瓦礫の街には、侵入者を排除せんとするエネミーが徘徊している。
彼らが無事この空間から脱出できるかは、ブッタのみぞ知ることだ。
………この空間が如何なるモノで、どのような意味を持つのか。それはまだ語ることができない。
だが、彼らがもう少し注意深く空を見上げていたならば気づいていただろう。
空に浮遊し自転する黄金立方体、その背後に浮かぶ、深い孔の如き黒い月を――――――。
[全体の備考]
※【C-5】双葉商事ビル屋上が、ランサーとアサシンの戦闘により破壊・崩落しました。
その影響により、ビルの屋上に置いてあった数日分の食糧、防寒具、寝袋、トレンチコートとハンチング帽も失われました。
またビルの周辺のいたる所も、両者の戦闘行動により破壊されています。
さらにランサーの宝具により、周囲に大音量が響き渡りました。
※アサシン(ニンジャスレイヤー)と足立透が、足立透の能力及び令呪によって謎の空間に侵入しました。
この空間が正確にどのような場所であるのか、また脱出が可能であるかは、現時点では不明です。
なおこの空間内には、侵入者を排除する保守プログラム――エネミーが徘徊しています。
最終更新:2015年06月20日 09:52