私ではなく、オレが殺す ◆/D9m1nBjFU


「以上が貴方が気絶している間に起こった出来事だ。
黒衣のバーサーカーはこちらに来ていないところを見ると別の目的地に向かったのだろうよ」
「……そうか。よく凌いでくれた、アーチャー」



日の落ちかけた夕刻。
多少休息を挟んだ今、切嗣はジョンス・リーとの戦闘で気絶してからこれまで起こった出来事を自分のサーヴァントに説明させていた。

「まさか、この序盤から反則的な再生力を持つサーヴァント二騎と続けて交戦する羽目になるとは思わなかったよ。
やはり二十八、合計五十六ものマスターとサーヴァントがいては余分な戦闘を避けるにも限度があるらしい」
「…確かにな、この序盤からここまでの消耗を負うことまでは想定できていなかった。
犬も歩けば棒に当たるとはまさにこのことだな」

元々楽観的に考えていたわけではなかったが、それでも細心の注意を払っていればそうそう戦闘に陥ることはないと思っていた。
だがその考えは間違っていた。(切嗣から見て)イレギュラーな参加者の多いこの戦争ではこれまでの切嗣の思考様式が通用しない。
わかっていたことだが敵を殺し尽くすよりも前に、この聖杯戦争に上手く適応できなければ生き残れないだろう。
とすると、今までは不要だと思っていたが他のマスターが抱く価値観を知るためにもそろそろ対外交渉も視野に入れるべきなのだろうか。



「まあいい。アーチャー、そろそろB-4に何らかの動きがある頃だろう。
適切な場所に陣取って偵察しろ。ただし絶対にこちらからは仕掛けるな。
漁夫の利を狙うにも消耗した今の僕らではリスクが大きすぎる」
「了解した。マスターはもうしばらく身体を休めておくといい」


だが今は目の前にある課題を一つずつこなすのが先決だろう。
まず一つはルーラーの通達にあったB-4の情勢を確認すること。
多くの陣営の思惑が入り乱れるこの状況下では少しでも多くの情報が欲しい。
同じ理由で暗示をかけたNPCからの成果報告も早めに受け取りたい。
が、そちらは自分の体調をもう少し回復させてからの方が良い。
街を歩けば何時敵マスターに出くわさないとも限らないのだから。





  ◆   ◆   ◆





エミヤはB-4を監視するため新都エリアを越えB-6へと進入していた。
鷹の目を持つエミヤでも戦場になるかもしれないエリアを仔細に偵察しようと思えば新都からでは遠すぎる。
無論切嗣から大きく離れることになるがサーヴァントの脚力を以ってすればそう時間をかけずに戻ることは可能だ。
それに切嗣ならそうすぐに発見されるようなヘマはすまいという信頼もあった。



「さて、一口にB-4と言っても狭くはない範囲だが……」


手頃な高層ビルに飛び移り、偵察を始めようとした時、その異変は起こった。
B-4から発せられる、二つ分離れたエリアからでも知覚できる巨大な魔力。
マンションを突き破り、崩壊させながら現れる巨大なサーヴァント。
一目見ただけでわかる。あれこそは魔を総べる王、大魔王バーンの秘中の秘、最後の姿たる鬼眼王―――!



「これはまた、凄まじい大物が潜んでいたものだな」


通達にあった違反を犯した者とは間違いなくあの大魔王バーンだろう。
大魔王ほどの超級サーヴァントを支えようと思えば違反を犯してでも魔力を集めるしかあるまい。
自分達があれと関わらずに済んだのは間違いなく幸運なことだ。

とはいえいつまでも感嘆してばかりでもいられない。
あのマンション付近には確認できるだけで数体のサーヴァントが存在している。
鬼眼王との戦となればまず間違いなく手の内を隠したままではいられないだろう。
つまり、多くのサーヴァントの真名を知るまたとない絶好の機会だ。

さて、バーンを除けば現在確認できるサーヴァントの数は五。
どこかエミヤの知る「彼女」に近い雰囲気を持つ旗を持った少女。
つい先ほど交戦したばかりの黒衣のバーサーカー。
遠目からでもわかるほど存在の薄くなっている赤黒い忍装束の男。
今朝方一戦交えた竜の尾を持つランサーの少女。
そして刀を背負い銃を持った赤黒の全身タイツのサーヴァント。

マスター、ないしそれらしき人間は四人。
旗を持つサーヴァントの傍らにいる修道女らしき少女。
吹っ飛ばされたところを全身タイツのサーヴァントに助けられた黒髪の青年。
今朝方的確な判断を見せた学生服の少年。
そして少年に抱えられた――――――ツインテールの幼い少女。


(…………まさか)


その容貌と意志の強さを感じさせる眼差しに覚えがありすぎるほどあった。
エミヤシロウが衛宮士郎だった頃の恩人であり魔術の師、遠坂凛。
まさか、あの幼い少女があの凛だというのか。
有り得ない、などと断言することはできない。何故ならエミヤのマスターは全盛期の衛宮切嗣だ。
であればエミヤが知るよりも幼い時代の遠坂凛がいたとして何の不思議があろうか。

狼狽しかけた自身を自覚し、すぐに戒めた。
あれが遠坂凛だとしても、エミヤがやるべき事は何も変わらない。
衛宮切嗣のサーヴァント、アーチャーとして為すべき事を為さなければ。



遠目からも目視できるほどの膨大な魔力を放つバーンが戦闘態勢に入りかけた時、旗を持った少女が制止をかけた。
その場の全員に対して何かを説き、バーンも何もせず成り行きを見守っている。
あの様子からすると旗を持った少女がルーラーで、修道女が監督役というところか。


「なるほど、この聖杯戦争のルーラーはそういうスタンスか」

宝具を行使しただけであれほどの破壊を撒き散らすバーンだ。ルーラーのスタンス次第ではそれだけで排除されてもおかしくはない。
しかしそうしないということは、あのルーラーは聖杯戦争への介入を必要最小限に留めようとしているということだ。
期せずしてルーラー陣営の方針を一方的に知ることができた事実は小さくない。

ルーラーが篭手を外し紋様が刻まれた素肌を翳して見せた。
間違いない、あれこそサーヴァントを律する令呪。
しかしサーヴァントにしか効果を発揮しない令呪のみでは裁定者としては片手落ち。
とすればルーラーもしくは監督役はマスターへも何らかの直接的なペナルティを与える手段を有していると考えられる。
安直に想像するならマスターから強制的に令呪を強奪する術だろうか。



やがて黒衣のバーサーカーはその場を離脱し、残る全員が臨戦態勢に入る。
直後にルーラーの腕から輝きが放たれ、膨大な魔力がバーンとバーサーカー以外の全サーヴァントを包み込んだ。
その場に集ったサーヴァントへのブーストを以ってバーンへの間接的なペナルティとするつもりか。

それから始まった戦いは、予想通り熾烈を極めた。
何せ相手は疑似的な神霊にまで存在を昇華させた鬼眼王。その暴威は筆舌に尽くし難い。
忍装束のサーヴァントやタイツのサーヴァントの手裏剣をものともせず体表のみで攻撃を弾き返す。
唯一、竜のランサーの強力な魔声らしき攻撃のみが有効な手立てとなっているようだった。

「………」

いくつか腑に落ちない点がある。
忍装束のサーヴァントの存在が絶えず弱まり続けている。マスターを失っているようだ。
マスター不在でありながらあれほど動けるとは本来の地力の高さが窺い知れるというものだが、それなら何故逃げない。
それにもう一つ、凛がランサーのマスターの手を握ったままサーヴァントへ指示する様子を一切見せない。
サーヴァントを失っているのならすぐに消去されているはずだ。そうならないということは何らかの方法でルールの穴を突いたのか?
それにしても、自分には関係ないとわかっていてもああしてランサーのマスターと仲睦まじい様子を見ていると正体のわからない感情がこみ上げてくる。


戦況は次第にバーン有利へと傾いていく。
タイツのサーヴァントが踏みつぶされ忍装束のサーヴァントの体術もまるで意味を為さない。
唯一有効な攻撃手段を持つランサーが狙われた直後、復活したタイツのサーヴァントがバーンを攻撃し事なきを得た。
タイツのサーヴァントは何やら格闘ゲームの体力バーのようなものを持ち出しバーンに猛攻を仕掛けたがやはりさしたる効果はない。
この状況はやはり手詰まりか。「彼女」なら聖剣の一撃でバーンを薙ぎ払うこともできたかもしれないが。



いよいよ弱体化を極めた忍装束のサーヴァントは戦力外と見做されたかタイツのサーヴァントとランサーが主軸となって戦いを進めていく。
ややあって忍装束のサーヴァントが凛と距離を詰め何事か会話した後頭を下げた。
そしてしばらく後、再契約が行われたのか忍装束のサーヴァントの存在濃度が一気に回復した。
その際エミヤは凛の唇の動きを見逃さなかった。忍装束のサーヴァントは恐らくアサシンだ。
あの状況で自らの象徴たる剣や槍などを具現化させないところや軽業に秀でた動きも併せればほぼ確定といって良い。


高い適性を持つマスターを得たことでアサシンの力は飛躍的に増した。
さらに宝具を開帳したか魔力の質も変化した。アサシンの宝具はステータス向上に関わるものだったのだろう。
宝具を解放したアサシンの体術は対人宝具に近しいレベルの威力があるらしい。
バーンへ与えるダメージが目に見えて増大しているのがわかる。
さらに全身タイツのサーヴァントが仕掛けた爆弾が爆ぜバーンの巨体を支えていた地面が崩落した。

今こそ好機、と言わんばかりにアサシンと全身タイツのサーヴァントの一斉射撃でバーンの右腕を削っていく。
業を煮やしたバーンがガードを上げた次の瞬間、アサシンがより強力な手裏剣を投じるが振り下ろした拳であっさりと掻き消された。
当たり前だ、疑似神霊ともいえるバーンと強力とはいえ宝具ですらない手裏剣とでは存在の位階が違いすぎる。


反撃の蹴りを受けそうになったアサシンだが全身タイツのサーヴァントが投げたゲージのようなものが先に命中し吹き飛ばされた。
これによりバーンの狙いは外れ、その顔はエミヤにも見て取れるほど紅潮していっている。
明らかにアサシンと全身タイツのサーヴァントの目論見に乗せられている。



数えきれないほどの攻撃を浴び脆くなった一点目掛けランサーが疾風のように飛び込む。
それと全く同時に放たれたランサーのマスターの令呪によってランサーは更なるブーストを得た。
まさかこれほどサーヴァントと息を合わせられるマスターが存在するとは。

再び解放されたランサーの魔声。槍はサブウェポンなのだろうか。
装甲の内側、体内に届く振動波をまともに受けたバーンが苦悶の絶叫を上げた。
好機と見たかアサシンが力を溜め弱ったバーンへ突撃を仕掛けようとしていた。

だが、バーンの底力はこの程度で尽きることはなく敢えて左腕で右腕を切り落としこれ以上のダメージを防いだ。
切り落とした右腕はランサーと全身タイツのサーヴァント目掛けて蹴り、二人を諸共に吹き飛ばした。
そして盤石の態勢で飛び蹴りを仕掛けたアサシンを拳で返り討ちにした。
アサシンは凛とランサーのマスターの下へ吹き飛ばされた。
吹き飛び方とぐったりとした様子から意識を飛ばされたらしい。
さらに主力であったランサーは魔力を消耗したか膝をつき、全身タイツのサーヴァント単騎では最初からバーンの相手にはならない。




万策尽きたか、と思えたその時アサシンが不意に凛の首筋に手を伸ばした。
その動きにエミヤは対処が遅れた。アサシンのあらゆる挙動が彼の予想を裏切っていたからだ。
明らかに意識を失っていたはずにも関わらず、目の前のバーンではなく凛に矛先を向けたことも。
首筋を掴んだだけで急激に魔力を収奪していることも、再契約から十分と経たずに現界の楔たるマスターを裏切ったことも。
エミヤの虚を突き初動を遅れさせるには十分すぎた。



「………!!」



偵察を第一としていたエミヤは無手の状態で戦況を見守っていた。
ここから戦場へ一矢を撃ち込むにはまず弓と矢を投影し、狙いを定め引き絞る所作が必要だ。
それに対しアサシン、ナラクの魂喰いは極めて迅速だった。そもそもが銃を持つデッドプールがすぐ近くにいたにも関わらず阻止できなかったのだ。
アーチャーとはいえエリア二つ分も離れた場所にいるエミヤが割り込める隙など存在するはずがなかった。
もっとも割り込めた場合、遠距離から一方的に攻撃を撃ち込む介入者として多くのチームに敵視されていただろうが。
弓と矢を出現させた時点で既に事は終わり、遠坂凛は魔力の粒子となり消え去っていた。



それから始まったのはアサシンの独壇場だった。
先ほどよりも尚強大な魔力を漲らせ独力でバーンに挑んだ。
信じがたいことに放たれる手裏剣は黒い炎に包まれバーンの分厚い皮膚を破った。
さらに怒り狂ったバーンの反撃を悉く躱し痛撃を加えていく。まるで別人のような動きだ。
バーンの拳を受けても先ほど以上の頑強さがあるのか耐え抜き、赤黒い鎖をバーンの身体に突き刺し自身も一気にそこに取りついた。
魔力で鋭利な刃のついた指輪を形成すると瞬時に百近い拳を繰り出しバーンの表皮を削っていく。
たまらずバーンが掌を叩きつけようとするも紙一重で躱され再び射出した鎖がバーンの体内から一人の人間を引きずり出した。

アサシンはバーンのマスターである可能性が高い男を抱え、ランサーと全身タイツのサーヴァントを利用しバーンから距離を取る。
しばらくしてバーンがアサシンに追いついた瞬間、赤い光が走りバーンの巨体が停止した。
対照的にアサシンはますます力が漲っているように見えた。
令呪で契約サーヴァントを変更させたのだろう。ここに勝敗は決した。

決まりきった結果を敢えて語る必要は無い。
マスターをも失った大魔王はアサシンの手によって屈辱的な消滅を迎えた。
アサシンは消耗したランサーと全身タイツのサーヴァントにも襲い掛かろうとしたが、何故か途中で思い止まったらしく新たなマスターを連れて闇へ消えて行った。
それを見届けたエミヤはマスターである切嗣と念話を繋いだ。

『マスター、やはりB-4で大きな戦闘があった。
通達で警告されていたと思われるサーヴァントの脱落を確認した他、かなりの情報を得られたよ』
『そうか。ならこちらに合流しつつ、詳細を話してくれ。
やるべき事は多く、時間の余裕はあまりないからな』
『了解した』





  ◆   ◆   ◆





「…報告は以上だ、マスター」
「わかった、ひとまずは情報を整理しよう。まずはルーラー陣営についてだ」

切嗣のいるビルに戻ってくるまでの間にエミヤはB-4の戦闘の結果の多くを話していた。
そして最後の顛末までを話し終えた今必要なのは得た情報を整理し次に繋げることだった。
何しろ今後の方針に影響しかねない要素がいくつもある。

「ルーラーが持つ特権の一つが令呪であることが確実なものとなった。
また、ルーラーは極力自らが聖杯戦争に手を出すことを避ける主義なのだろう。
鬼眼王バーンが齎す破壊を承知しながら戦闘を許したことがその証左だ」
「つまり、ルーラーは当初考えていたほど厳罰主義者ではない、ということか」
「その認識で間違いあるまい。だが裁定者ならサーヴァントだけでなくマスターにもペナルティを与える何らかの方法は持っているだろう。
ルール違反を犯すなら細心の注意を払っておくに越したことはない」

既に一画令呪を使ってしまった切嗣にとってルーラーの令呪はいっそう脅威となった。
やはり目をつけられるような真似は慎まねばなるまい。
万一自害命令など出されてはもはや抵抗することもできないのだから。

「次にB-4に集まったサーヴァントについてだ。
黒衣のバーサーカーはすぐにその場を立ち去ったのでひとまず置いておこう。
全身を赤黒いタイツで覆った銃や爆薬を使うサーヴァントは武器の特徴から近現代の英霊と考えられる。
また妙な形状の棒を武器にする他高い再生能力も備えているようだ」
「こうも再生能力の高いサーヴァントばかり参戦するとはな」
「案ずるなマスター。既に対抗策はいくつか考えてある。
自然ならざる再生力を武器とするならそれを封じてしまえば良い。
幸い私はそういった不死殺しに向いた武器をいくつか持ち合わせている」

英霊エミヤの固有結界「無限の剣製」には千を超える武具が貯蔵されている。
彼の剣の丘には強力な概念武装も当然存在しており、不死性を持つ者に有効なものもある。
事前に能力さえわかっていればそういった武器を取り出して対処することができる。
というより、エミヤはそうしなければ勝ち残れないサーヴァントなのだ。

「次に今朝にも戦った竜のランサー。こちらは声、音波を武器として攻撃する手段を有しているようだ。
外見と併せて判断すると竜の血ないし因子の恩恵によるものと考えるのが妥当だ」
「だとすれば、有効なのは竜殺しの概念武装か。アーチャー、持っているか?」
「無論だ。しかしマスターの方の戦術眼と判断力は脅威だ。
貴方ならそう遅れは取らないだろうが十分に注意しておいた方が良い。万が一も有り得る」
「お前がそこまで言うほどか。わかった、大いに警戒しておこう」

ランサー自身に関する情報は大分出揃ったが厄介なのはマスターの少年だ。
こちらの思いもよらぬ一手を指し込む可能性は否定できるものではない。

「そういえば、途中でアサシンと契約し裏切られて脱落したマスターがいるという話だったな。どう見る?」
「…………あの少女のマスターは竜のランサーと何らかの形で契約を結んでいたのかもしれん。
あの状況で自分のサーヴァントを呼ばぬ理由がないし、サーヴァントが脱落していて生き残れるならそれぐらいしか方法はないだろうな」
「なるほどな。方舟の定めたルールにも穴はあるというわけか。まあそれは後で考えれば良いことだ。
現状僕らにとって最大の問題は裏切りを行ったアサシンの方だ」

そう、今の切嗣とエミヤにとって最も巨大な障害がアサシン(ニンジャスレイヤー)だった。
本来直接的な戦闘を苦手とするアサシンでありながら規格外の戦闘能力を誇っている。
地力の低さを戦術・戦略でカバーする彼らにとっては天敵にも等しい。


「ああ、好条件が重なったとはいえ鬼眼王を討ち取る実力に恐らく単独行動のスキルも持ち合わせている。
何より強力なマスターに乗り換えるための裏切りに何の躊躇も持たず、裏切りを達成するための演技力もあると見える」


切嗣とエミヤは得られた情報からニンジャスレイヤーが置かれていた状況を以下のように推察した。
まず前提としてB-4での戦闘が始まる以前の時点でマスターを最低一人以上失っており、単独行動状態にあった。
また、大魔王バーンとそのマスターについて知っており、元々再契約を狙っていた。事前にランサー主従らを抱き込んでいたことも考えられる。
しかし鬼眼王に予想以上に苦戦したためバーンのマスター(足立)に乗り換えるまでの繋ぎとして少女のマスター(凛)と一時再契約した。
その後「再契約した直後の戦闘中に裏切るはずがない」という心理を巧みに利用し抵抗を許さず魔力を絞り取り少女のマスター(凛)を殺害。
この手際の良さを鑑みると気絶したかに見えたのも、断定はできないが演技であった可能性がある。
そして奥の手と思われる宝具を解放するとバーンのマスターを攫い再契約しバーンを排除した。
切嗣をして戦慄を覚えるほどの手段の選ばなさ、狡猾さと拙速さである。

「わかっているとは思うがマスター、奴を利用できるなどとは考えていないだろうな?」
「まさか。確かに僕は組むなら手段を選ばず合理性を持った者の方が良いと思っている。
だが限度というものがある。話に聞く限りアサシンはあまりにも裏切りに対して躊躇がなさすぎる。
同盟を組もうにも最低限の信用さえ置けないサーヴァントなんて論外だ」
「ならば良い。あのアサシンは反骨の相のスキルを持っている可能性もあるからな。
それでも雑魚なら泳がせておく手もあるのだろうが、奴はあまりにも強力で有能に過ぎる」
「そのようだな。ここは一度方針を転換してアサシンの排除を最優先にする。
それから、向こうがお前の監視に気づいたということは?」
「それはあるまい。何しろ全員の意識が鬼眼王に向いていたからな。
予め監視を予想することはできても私の姿を確認することは不可能だ」

切嗣は自身が暗殺者であるからこそ地力の高さを備えた同位の存在が如何に脅威的かが理解できる。
音もなく近づきサーヴァントの守護すら圧殺するアサシンなど悪夢でしかない。
死徒かもしれないサーヴァントを超えて優先するべきターゲットだ。



「最大の問題は奴の単独行動能力だ。あのアサシンに対してはマスター殺しが有効な攻撃ではあっても決定打になり得ない。
無論マスターを捜索しておくに越したことはないが、最終的にはアサシン自身を確実に葬る必要がある」
「アーチャー、お前はあのアサシンに勝てるか?」
「残念ながら私一人では厳しいな。奴をマスター不在の状態に追い込んでようやく互角かそれ以下というところだろうよ。
狙撃できる状況ならその限りではないが相手がアサシンとあっては探し出すことさえ困難だ。
こうなると、打つ手は非常に限られる」

エミヤが何を言わんとしているかは切嗣にもわかる。
ニンジャスレイヤーを確実に葬るためには他のマスターを巻き込んでの包囲戦を仕掛けるしかない。
幸いにも「次々とマスターを乗り換える強力なアサシンの排除」という他のマスターも無視できない大義名分がある。
この情報を拡散するだけでもアサシンを孤立させる可能性が上がるのだからむしろやらない理由がない。
それにB-4の情報を入手したのがまさか自分達だけということはあるまい。他の陣営も何らかの手段で戦場を覗き見た可能性は極めて高い。
つまり「アサシン(ニンジャスレイヤー)が脅威である」という認識は他の多くのマスターと共有できるということだ。

「やはり、同盟ないし休戦協定を結ぶしかないか。
だが今はまずNPCからの成果報告を受けておこう。予定より遅くなったが急げば間に合うだろう」
「承知した、確かに情報が十分に揃わないまま動くのは危険すぎる。
だが気をつけてくれ、夜になれば好戦的なマスターも活発に動き出すことは間違いない」



(アサシン、貴様は勝つために、少なくとも戦術的には正しい行動を取った。
凛を殺したのだとしても切嗣のサーヴァントであるオレにそれを咎める資格はない。
だが、お前はたった一つだけ大きなミスを犯した)

エミヤはアサシンの行動が合理的な判断の下行われたものであることを悟っていた。
凛がルールの穴を突いてサーヴァント不在でも生き残れる状況下にあるのならいずれ使い捨てにされるという懸念を抱いたとしてもおかしいことは何もない。
そうなる前に魔力を奪うだけ奪い殺すのは一見して完璧で無駄のない戦略に思える。
が、一つだけ大きな穴がある。

(それは衆目の目が集まりやすいあの場、あの瞬間に裏切りを働き大魔王を手ずから討ち取ったことだ。
そんなサーヴァントが第三者の目にどう映るかなど自明の理。
不特定多数の人間に恐れられ、信用されず、目の敵にされることが聖杯戦争でどれだけ命取りになるか理解できているか?
我道、理不尽を良しとし傍若無人に振る舞う輩は必ず大衆の定めた道理によって裁かれるんだよ)

それはかつて正義の味方になることを夢見たとある愚か者が辿った末路でもある。
人の道から外れた行為を周りの目も憚らずに行うのはそれだけ潜在的なリスクが高いのだ。
マスターの鞍替えは決して禁じられた行為ではないが、奨励されてもいないのだ。

(恨むなら自らの拙速さを恨むが良い。お前が作った瑕疵は遠慮なく突かせてもらう)

顔には決して出さぬよう内心でのみアサシンへの罵倒を吐き捨てる。
元よりエミヤに遠坂凛を救う手立てなどなかった。何故なら彼は衛宮切嗣のサーヴァントだからだ。
半ば偶然に凛と再契約しただけのアサシンに恨みをぶつけるのは筋違いだと了解しているし納得もしている。
しかしそれを理解していてなお、無力な自分自身への怒りだけは収めるのに今しばらくの時間が必要だった。

【C-8(北)/ビル応接室/一日目 夜間】

【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]毛細血管断裂(中)、腹部にダメージ(中)、魔力消費(小)
[令呪]残り二角
[装備]キャリコ、コンテンダー、起源弾
[道具]地図(借り物)
[所持金]豊富、ただし今所持しているのは資材調達に必要な分+α
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取り、恒久的な平和の実現を
1.暗示をかけたNPCに連絡を取り、報告を受ける。
2.アサシン(ニンジャスレイヤー)打倒に向け他のマスターに同盟、休戦を打診する。またこの際アサシン(ニンジャスレイヤー)の悪評を広めておく。
3. 使えそうなNPC、および資材の確保のため街を探索する。
4.好戦的なマスター、サーヴァントには注意を払っておく
[備考]
※この街のNPCの幾人かは既に洗脳済みであり、特に学園には多くいると判断しています。
※NPCを操り戦闘に参加させた場合、逆にNPCを操った側にペナルティが課せられるのではないかと考えています。
※この聖杯戦争での役割は『休暇中のフリーランスの傭兵』となっています。
※搬入業者3人に暗示をかけ月海原学園に向かわせました。昼食を学園でとりつつ、情報収集を行うでしょう。暗示を受けた3人は遠坂時臣という名を聞くと催眠状態になり質問に正直に答えます。
※今まで得た情報を基に、アサシン(吉良)とランサー(エリザ)について図書館で調べました。しかし真名まではたどり着いていません。
※アーチャー(エミヤシロウ)については候補となる英霊をかなり絞り込みました。その中には無銘(の基になった人)も居ます。
※アーチャー(アーカード)のパラメーターを確認しました。
※アーカードを死徒ではないかと推測しています。
そして、そのことにより本人すら気づいていない小さな焦りを感じています。
今のところはニンジャスレイヤーへの危機感で鎮静化しているようです。

【アーチャー(エミヤシロウ)@Fate/Stay night】
[状態]身体の右から左に掛けて裂傷(大)、右腕負傷(小)、右肩負傷(小)、左足と脇腹に銃創(小)、疲労(中)、魔力消費(中)
[装備]実体化した時のための普段着(家主から失敬してきた)
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:切嗣の方針に従い、聖杯が汚れていた場合破壊を
1.切嗣に従いアサシン(ニンジャスレイヤー)を確実に倒す。
2.出来れば切嗣とエミヤシロウの関係を知られたくない。
[備考]
※岸波白野、ランサー(エリザ)を視認しました。
※エリザについては竜の血が入っているのではないか、と推測しました。B-4での戦闘を見てその考えを強めました。
※『殺意の女王(キラークイーン)』が触れて爆弾化したものを解析すればそうと判別できます。ただしアーチャーが直接触れなければわかりません。
※身体の裂傷以外は霊体化して魔力供給を受けていれば比較的早く完治します
※バーサーカー(黒崎一護)の仮面の奥を一瞬目撃しました。
※B-4での戦闘(鬼眼王バーン出現以降)とその顛末を目撃しました。
※アサシン(ニンジャスレイヤー)について単独行動、反骨の相のスキルを持っているのではないかと推測しています。
またマスターの殺害が決定打にはならないと認識しています。

[共通備考]
※C-7にある民家を拠点にしました。
※家主であるNPCには、親戚として居候していると暗示をかけています。
※吉良吉影の姿と宝具『殺意の女王(キラークイーン)』の外観のみ確認しました。宝具は触れたものを爆弾にする効果で、恐らくアサシンだろうと推察していますが、吉良がマスターでキラークイーンがサーヴァントだと勘違い。ただし吉良の振る舞いには強い疑念をもっています。


※黒崎一護を『仮面をつけた』『黒刀の斬魄刀を所持する』『死神』と認識しました。
※ルリ、キリコ、美遊についての認識については後続の書き手にお任せします。
※レンタカーは図書館付近の駐車場に停車してあります。


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