クラスメイト ◆MQZCGutBfo



これまで方針に強く異を唱えることをしてこなかった杏子が、
初めて自分の意志らしきものをはっきりと示した。

それに、杏子の話に出た”かっちゃん”はやはり気になる。

この戦争を引き起こした奴かどうか……は何とも言えないが、
仮に聖杯を望むサーヴァント――いや普通はそうらしいが――だった場合、
れんげの脱出に賛成することはまずないだろう。

そうでなくともれんげを放って出歩いているサーヴァントだ。
脱出の方法が見つかったとしても、それを止めるために敵対する可能性は極めて高い。
その時のために、正体なり弱点なりを握っておいた方が良いだろう。


『……そーだな。分かった。
 ここの検索施設を使ってみよう』
『へぇ? ……おし、そうこなくちゃな!』

杏子が気合いの乗った返事をした。
あたしは頷くと、学校の校門の方へと歩き始めた。

やはり学校から来る人数の方が多く、向かう人はまばらだ。
前を歩くサラリーマン、自転車に乗った主婦、それに同じように定時制クラスなのだろう、
私服やらバラバラの制服やらの同じくらいの年代の人達が歩いていた。

『で、どうやって中に入るんだい?』
『んー。こういう時は正面突破さ』

と杏子に答えていたら、前方から見知った顔がやってくる。
紫髪のポニーテールの少女。

『げっ、あれは武智乙哉……か?』
『なんだ、知り合いか?』
『ああ……前に話した黒組の参加者、しかも快楽殺人者さ。
 黒組の中でも特に危険人物だ、マスターかどうか確認したい。
 こっちから接触してみようと思うんだけど、どうだ? 本人だったらどうせこっちもバレる』
『ああ、異論はないさ。……むしろ賛成だよ』

そして、ちょうど武智がやってくる。




長い髪をなびかせて、軽やかに階段を駆け降りていく。
途中通り過ぎる少女達から、また明日ね~という言葉を投げられては返して行く。
昇降口で靴に履き替え、高等部校舎から外へと無事『脱出』する。

んー!と片手を上げて伸びをして。校門へと歩き始める。
中等部との分かれ道まで来たところで、立ち止まって中等部の校舎を眺める。
サイレンを鳴らしながら、ようやく消防車がやってきたようだ。


「…………何か貰っておけば良かったかな」


いつも気に入った娘だけを殺し。
その娘から生前に貰えた遺物は大切に保管していた。

―――ま、だからジジイの刑事に目をつけられたんだろうケド。


暁美ほむらの遺物は何もなく。
携帯電話のアドレス帳だけが、自分にとってほむらの存在を示すモノとなった。

携帯電話にそっと触れ。
視線を戻し、校門へと再び歩みを進める。


自分と同じように要領よく立ちまわった子達が早々に校門を出ている。
あたしも校門で立っている若い先生に挨拶し、混雑が始まる前に校門を出ることが出来た。
早速相方に念話を飛ばす。

『アサシン、無事校門出たよ~』
『そうか、何よりだ。こちらももうじき着く。南のバス停の方角へ向かってきてくれ』
『りょうかい~』

校門を右手側に出て、そのまま生徒の群れに紛れて進んで行くと。
逆方向から歩いてくる、白いスーツの男性が見えた。

「あっ!おとー……」

手を振るため腕を上げようとし。
その後ろから歩いてくる赤い髪の女子高生が目に入り、上げようとした腕を止める。

『っ!おとーさん、そのまま止まらず真っ直ぐ進んで!』
『だから止めろと……何かあったのか?』
『ん、あたしの”向こう”での知り合いが居た。
 NPCかもしれないけど、念のため。
 校門過ぎて最初の信号付近の右手側に喫茶店があるから、そこで待ってて』
『分かった。危険な場合は躊躇せず令呪で呼べ』
『了解』


そう念話で話しているうちに、アサシンとすれ違う。
こちらも向こうも目を合わせず他人の振り。
アサシンに”隠蔽”や”気配遮断”がある限り、彼女がもしマスターだったとしても分からないはず。

そして、赤い髪の女が近づいてくる。

名前は―――寒河江春紀。
『黒組』の参加者。暗殺者だ。

つまりはあたしと同じ『ヒトゴロシ』ってこと。
すれ違えば、動きや雰囲気で恐らく本物かどうか分かる。


「―――よっ。『久しぶり』、でいいのか?」

その寒河江春紀が、すれ違う前に声をかけてきた。

NPC時代の交友範囲には存在していない。
そもそも黒組メンバーはあたしが把握している限り、近いクラスには誰もいなかった。


「……えーと? 誰だっけ。んー思い出せない。人違いだったりしないかな?」

あたしは首を傾げて答えてみる。

「あれ、武智……じゃないのか?」
「確かにあたしは武智だけど……ごめん、ちょっと覚えてないや。
 どこかで会ったっけ?」
「そっかー。いや、ごめんごめん、知らないんならいいんだ」

彼女は頭をかきながら謝った。

「そう……? いいならいいかな。それじゃ、失礼しますね~」
「ああ、引きとめて済まなかった」

ぺこりと頭を下げ、バス停の方角に向かって歩き始める。
彼女と擦れ違い、ちらりと後ろを見る。

―――すると、彼女はこちらへ何かを投げる仕草をした。


……ってこんな場所で投擲!?
咄嗟に鞄で着弾先をガードする。

―――が、何も着弾しない。

「とと、こいつは投げちゃいけないんだったな」

彼女の手にはチョコの棒。
完全に投げる体制だったが、放していないようだ。

「―――なんだ。やっぱ久しぶりじゃないか、武智」

こちらを見てニヤリと笑う寒河江春紀。
笑いながらこちらに近づいてきた。

「あは。やだなー。ここで殺られたいの? 春紀ちゃん」
「はは、ごめんごめん」

彼女は顔をあたしの顔の横に近付けると。

「…………中は? まだ続いてるのか」
「さー? 気になるなら今から見てきたら、遅刻魔さん」
「ちぇっ、つれないねえ」

肩を竦めて態勢を戻すと、彼女は校門の方を向いた。
鞄を肩に背負い、こちらを振り返る。

「……じゃあ、またな」
「うん、また」

笑顔で手を振って見送る。

―――相手のサーヴァントの気配は、残念ながら分からない。


『……アサシン』
『む』
『こっちはひとまず無事。
 相手はマスター、寒河江春紀。サーヴァントは分からず。
 こっちも向こうにマスターだと認識されてる。アサシンのことは分かっていない……と思う。
 この人通りの多さなら仕掛けてこないタイプだとは思うけど、ちょっと遠回りしてそっちに合流するね』
『了解だ。警戒を怠らないようにな』

あたしは彼女が校門まで行ったのを確認すると、
南の道から遠回りをしてアサシンが待つ喫茶店へと向かった。




『……どうする、追うかい?』

杏子が武智を尾行するか聞いてくる。
アイツがマスターだと分かった以上、枕を高くしては眠れなくなりそうだけど。

『んー……いや、今のタイミングを逃すと中に入れなくなりそうだ。
 他の施設に行くのも時間的に厳しそうだし。学校を優先しよう』

校門に向かって歩を進めながら返答する。

『帰りに武智に待ち伏せされる可能性はあるけど、日も落ちてるだろうし。
 悪いけど帰りはまたあたしを抱えて、別の方向からここを脱出してくれるかい?』
『ああ、お安い御用さ』

杏子に背後を警戒してもらいつつ、校門まで辿り着いた。
校門には定時制のクラス担任の先生が立っていた。

「ちわーっす、先生」
「おお、寒河江か。
 折角来て貰ったのに済まないが、ちょっと校舎で事故があってな。今日は休校になった。
 明日はまあ授業はあるだろうが、正式にどうなるかは連絡網とメールで情報を通達する」

既知の情報だったが、正式に連絡を受けたわけではなかったので知らぬふりをした。

「事故……って何があったんです?」
「ああ、何でも中等部の理科室付近で爆発事故があったみたいでな。
 それで、世間は今事件も多いし物騒なので、今日は念のため全員帰らせることになったんだ」

先生は下校する生徒達に、気をつけて帰りなさい、と声をかけ。

「なるほど。……で、先生。相談なんだけどさ、ウチの校舎は無事だったりする?
 明日の授業の教材、全部置いてあるから取ってきたいんだけど」
「……あのなあ。だから毎日持って帰れといつも言ってるだろう。だいたい寒河江は普段から……」
「ごめんっ。明日は順番的に当たる日なんだよ。ささっと取ってくるから、見逃して!」

両手をパシンと合わせて拝む。

「ったく、仕方ないなあ……。消防士さん達が作業してるから、邪魔したりするんじゃないぞ」
「了解、ありがとっ、先生!」

先生にお礼を言って、集団下校の波をかいくぐり、
ささっと校門から中へと入る。


『……こりゃあ、魔界だな』

中に入った途端、杏子が呟く。

『魔界?』
『ああ、そこかしこに魔力の残滓を感じる。しかも、それぞれから感じる魔力パターンが全然統一されてない。
 実体化しないとよくは分かんないけど、学園に多数の魔力持ちが居た可能性がある』
『うへー』

消防車が中等部校舎の前に止まっていた。
そして路上は隊員と帰宅する生徒の集団でごった返していた。
あたしは人目に付きにくいルートで、自分の教室まで進むことにした。


『……ん、ちょいストップ』
『うん?』

校舎裏を通った時に、杏子が停止を促した。
辺りに人影はなく。
すると杏子は霊体化を解いて、私服姿でその場に出現した。

「……罠か?」
「いや……ちょっと待っててくれるかい」

杏子はそう言うと、左手に宝玉を出現させた。
目を閉じて集中しているように見える。

周りを見ても、雑草が多く生えているくらいで、
特に闘争があった痕跡などもないように見える。

「―――OK、もういいよ」
「何があったんだ?」

杏子が肩を竦める。

「いや。…………昔、借りを残しちまった奴がいてね。
 あたしの我儘で、そいつとの約束を破っちまった。
 もしどこかで会えたらラーメンくらい奢ってやろうと思ってたんだ。
 で、そいつの魔力パターンに似た形跡をここらで感じた気がしたんだけど。
 ……もう、完全に消えちまったみたいだな」
「……そうか」

その金はどうするんだよ、という突っ込みを出来るような雰囲気ではなかったので、
敢えて突っ込まなかった。

「その人は、友達だったのか?」
「どーかな。まあ、共闘関係って感じかな。
 ……そーいやアンタは? さっきの紫髪の女とはどういう関係だい?
 まさかあいつもお友達で殺せません、なんて言うんじゃないよな」

なんてことを言ってきた。

「それこそまさか、さ。
 アイツは友達なんかじゃなく」

あたしは、肩を竦めてこう言った。




人通りが多い道を通り、遠回りして喫茶店の前に到着した。
まあ、今から学校に侵入する人間が、サーヴァントなしでこちらの跡をつけるとは考えにくいけど、念のため。

階段を上がって、ビルの二階にある喫茶店へと入る。

普段は帰宅前の高校生を多く見かけるが、
今日はほとんど客の姿はなく、静かな雰囲気になっていた。

店内を見回し、窓側の席に座るアサシンを見つけた。

「お待たせ、おとーさん」
「…………まあ、無事で何よりだ」

ため息をつき、持っていた白いコーヒーカップを皿に置いた。
伺いにきたウェイターさんに同じコーヒーを注文する。


ようやく合流できたあたし達は、言葉と念話を交えて情報整理を行った。


あたしが学校で得た情報の主なものは。
  • 暁美ほむらがマスター兼サーヴァントだったこと。
  • 暁美ほむらが脱落したこと。
  • 暁美ほむら以外に学園内にマスターがいること。
  • 寒河江春紀がマスターであること。


アサシンが得た情報の主なものは。
  • 魔術師トオサカトキオミと双剣を使うサーヴァントと交戦したこと。
  • トオサカトキオミが搬入業者のNPCに暗示を使い学園の情報収集をしていること。
  • 『変装能力を持ったサーヴァント』によるジナコ=カリギリを装った暴行が行われたこと(推定)
  • 可憐な女性を抱えた青い甲冑のサーヴァントとぶつかりそうになったこと。


『んー……。情報を纏めると。
 アサシンが実体化してると、”隠蔽”や”気配遮断”があっても見つかる可能性けっこーあるってことだね』

ブッとコーヒーを吐くアサシン。
けほけほとむせている。
ちょっと可愛い。


「い、いや……どちらのケースも本当に偶然なのだ。
 そうそうあるもんじゃあない」

手にコーヒーがかかったのか、腕時計を外しておしぼりで手を拭いている。

『それに寺の方角へ逃げた青いサーヴァントは特に要注意だ。正面からでは私ではまず勝てない。
 襲うならマスターの方だ。これは確実と言っていい』

そう言うと、アサシンはフフ、と思い出し笑いをした。
ちょっとキモい。

『つまり、我々がとりうる行動の選択肢は三つだな。
 一つは、青い甲冑のサーヴァントの拠点の可能性がある、B-1付近にある寺へ調査に行くこと。
 もう一つは、暁美ほむらを襲撃した相手、もしくは寒河江春紀を学園出口で待ち伏せ、尾行しその拠点を暴くこと。
 最後の一つは、闘争を避け帰宅するか、だな』
「ふむふむ」

アサシンは拭き終わったおしぼりを綺麗に折り畳んだ。

『私としては第一案を推したい。これは唯一掴んでいる敵拠点情報であり、
 我々の得意戦法である夜襲を仕掛けるためにも情報は必須、これが最良であると言っていい』
『うーん……。
 あたしとしては、やっぱりほむらちゃんを殺した相手を探してみたいかな。
 あの状況なら、多少なりとも相手にダメージは与えてるだろうし、
 血の匂いや不自然な怪我がある学園の人が出てきたら見つけやすいし』

明日になってしまえば、その手掛かりは消えてしまう可能性が高いと言っていい。
あたしも届いたコーヒーを一口飲む。

『ん。それと合流したら同盟についても話す予定だったけど……まあ、ほむらちゃん死んじゃったしね』
『ああ。当面は無しで良いだろう。
 ……そういえば先程の赤毛の女は? まさかあの女も友人だなんて言うんじゃあないだろうな?」
「ふふ、まっさか~」

笑いながら、携帯電話の猫の顔のストラップを見て、こう言った。


  クラスメイト
「「競争相手だよ」」


【C-3 /月海原学園近くの喫茶店/一日目 夕方】

【武智乙哉@悪魔のリドル】
[状態]:健康
[令呪]:残り3画
[装備]:月海原学園の制服、通学鞄、指ぬきグローブ
[道具]:勉強道具、ハサミ一本(いずれも通学鞄に収納)、携帯電話
[所持金]:普通の学生程度(少なくとも通学には困らない)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を勝ち取って「シリアルキラー保険」を獲得する。
1.行動三案(1.寺の調査、2.ほむら襲撃犯/春紀の出待ちと尾行、3.帰宅)の決定。
2.『友達』を倒した相手を探したい。
3.他のマスターに怪しまれるのを避ける為、いつも通り月海原学園に通う。
4.寒河江春紀を警戒。
5.有事の際にはアサシンと念話で連絡を取る。
6.可憐な女性を切り刻みたい。
[備考]
※B-6南西の小さなマンションの1階で一人暮らしをしています。ハサミ用の腰ポーチは家に置いています。
※バイトと仕送りによって生計を立てています。
※月海原学園への通学手段としてバスを利用しています。
※トオサカトキオミ(衛宮切嗣)の刺客を把握。アサシンが交戦したことも把握。
※暁美ほむらと連絡先を交換しています。
※寒河江春紀をマスターであると認識しました。

【アサシン(吉良吉影)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、聖の手への性的興奮
[装備]:なし
[道具]:レジから盗んだ金の残り(残りごく僅か)
[思考・状況]
基本行動方針:平穏な生活を取り戻すべく、聖杯を勝ち取る。
1.行動三案(1.寺の調査、2.ほむら襲撃犯/春紀の出待ちと尾行、3.帰宅)の決定。
2.甲冑のサーヴァントのマスターの手を頂きたい。そのために情報収集を続けよう。
3.B-4への干渉は避ける。
4.女性の美しい手を切り取りたい。
[備考]
※魂喰い実行済み(NPC数名)です。無作為に魂喰いした為『手』は収穫していません。
※保有スキル「隠蔽」の効果によって実体化中でもNPC程度の魔力しか感知されません。
※B-6のスーパーのレジから少額ですが現金を抜き取りました。
※スーパーで配送依頼した食品を受け取っています。日持ちする食品を選んだようですが、中身はお任せします。
※切嗣がNPCに暗示をかけ月海原学園に向かわせているのを目撃し、暗示の内容を盗み聞きました。
 そのため切嗣のことをトオサカトキオミという魔術師だと思っています。
※衛宮切嗣&アーチャーと交戦、干将・莫邪の外観及び投影による複数使用を視認しました。
 切嗣は戦闘に参加しなかったため、ひょっとするとまだ正体秘匿スキルは切嗣に機能するかもしれません。
※B-10で発生した『ジナコ=カリギリ』の事件は変装したサーヴァントによる社会的攻撃と推測しました。
 本物のジナコ=カリギリが存在しており、アーカードはそのサーヴァントではないかと予想しています。
※聖白蓮の手に狙いを定めました。
 進行方向から彼等の向かう先は寺(命蓮寺)ではないかと考えていますが、根拠はないので確信はしていません。
※サーヴァントなので爪が伸びることはありませんが、いつか『手』への欲求が我慢できなくなるかもしれません。
 ですが、今はまだ大丈夫なようです。
※寒河江春紀をマスターであると認識しました。




あたし達は無事定時制校舎に到着した。

―――月海原学園は初等部、中等部、高等部、定時制それぞれの校舎と、
その真ん中にある中央校舎が、一階の渡り廊下と二階の連絡通路で繋がっていた。
中央校舎には教員室や食堂などの施設があり、図書室もそこにあった。

定時制校舎は休校のためか、人の気配がなく。
校舎に入ると杏子は再び実体化し、先程と同じように宝玉で探査を始めた。

「んー……この校舎には魔術的な仕掛けはなさそうだね」
「了解、ありがと」

頷き、慎重に歩を進め、
あたしのクラスがある二階へと階段を上っていく。

「なあ……」
「ん?」
「さっきさ、聖書がどうのって言ってたじゃないか。
 ひとつだけ、聞いてもいいかな?」
「なんだい、聖書に興味でも持ったかい」

あたしは、携帯のストラップをじゃらじゃらと取り出し、木製の十字架を見つめる。

「……聖書だと、人が犯した罪、って。どういう扱いなのかな」

先に進む杏子はこちらをチラ、と見て。

「……死、だよ」
「死、か」
「『罪の支払う報酬は死である』ってな。
 だからあたしはここにいるのさ。罪の報い、ってね」


『死ねないよ、簡単には。……生きてるってことは、赦されてるってことだから』


もう一度、晴ちゃんの言葉が頭によぎる。
十字架の隣にある、猫の顔のストラップを見つめる。

「…………」
「あたしはさ、大切な人達を死に追いやって。
 友達になりたかった奴も、この手で殺したんだ。
 ……だからこうして、何度も死って罰を受けてるんだろうさ」
「…………そう、か」


階段を上りきり、廊下を歩く。

「………………アイツと再会したことで、再認識したんだ。
 あたしは、あの武智と一緒さ。
 あいつは快楽のため。あたしはか……金のため。
 もう何人もさ。
 理由は違っても、結果は変わらない」
「……それで、罪を償うため、諸共の自爆を狙った、ってわけかい?」

クラスに到着し、ドアを横に開いて教室の中へ入る。

「さあ。聖書なんて読んだことないし。
 ただ、自然にそうしてたんだ」
「そうか」

あたしは、自分のロッカーから、明日使う教材のひとつを取り出し、鞄に入れる。
別に予習するわけではないが、これで途中先生に誰何されても理由付けにはなる。

「……ほれ」

杏子が、チョコビを開けてひとつ放り投げてきた。

「……ん」

キャッチして、そのまま口へと放りこむ。
チョコの甘さとビスケットの食感がマッチして、とても美味しく感じた。

「美味いだろ」
「……ああ」

杏子は夕日の映る窓を見ながら、頭を掻く。

「あー、なんだ。
 勝てば、その美味いモンも食べ放題なんだぜ。
 生きるのは大変かもしんねーけどよ」

どうやら、励ましているらしい。
なんだかその不器用さに、プッと吹き出した。

「あ、てめ!」
「ぷっ……あっはっは」
「ったく。あたしはちゃんとしたシスターじゃねーんだよ。
 いきなり懺悔とか無茶ぶりするんじゃねーよ!」
「あっはっは…………。
 ……………………ありがとな」
「うるせーよ!」


【C-3 /月海原学園定時制校舎/一日目 夕方】

【寒河江春紀@悪魔のリドル】
[状態]健康、満腹
[令呪]残り3画
[装備]ガントレット&ナックルガード、仕込みワイヤー付きシュシュ
[道具]携帯電話(木片ストラップ付き)、マニキュア、Rocky、うんまい棒、ケーキ、ペットボトル(水道水)
   筆記用具、れんちょん作の絵(春紀の似顔絵、カッツェ・アーカード・ジョンスの人物画)
[所持金]貧困レベル
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く。一人ずつ着実に落としていく。
1.検索施設を利用する。れんげのサーヴァント、ロボのサーヴァントの優先順で調査する。
2.武智乙哉への警戒。
3.時機を見てホシノ・ルリ、宮内れんげと連絡を取り合流する。
4.学校脱出時は杏子の力を借りて夜陰に紛れる。
5.杏子の過去を知りたい。
6.食料調達をする。
7.れんげのサーヴァントへの疑念。
8.聖書、か。
[備考]
※ライダー(キリコ・キュービィー)のパラメーター及び宝具『棺たる鉄騎兵(スコープドッグ)』を確認済。ホシノ・ルリをマスターだと認識しました。
※テンカワ・アキトとはNPC時代から会ったら軽く雑談する程度の仲でした。
※春紀の住むアパートは天河食堂の横です。
※定時制の高校(月海原学園定時制校舎)に通っています。
※昼はB-10のケーキ屋でバイトをしています。アサシン(カッツェ)の襲撃により当分の開業はありません。
※ジナコ(カッツェ)が起こした事件を把握しました。事件は罠と判断し、無視するつもりです。
※ジョンスとアーチャー(アーカード)の情報を入手しました。
 ただし本名は把握していません。二人に戦意がないと判断しています。
 ジョンス・アーカードの外見を宮内れんげの絵によって確認しています。
※アサシン(カッツェ)の情報を入手しました。
 尻尾や変身能力などれんげの知る限りの能力を把握しています。
 変身前のカッツェの外見を宮内れんげの絵によって確認しています。
※ホシノ・ルリ・ライダー組と共闘関係を結び、携帯電話番号を交換しました。
※武智乙哉をマスターと認識しました。

【ランサー(佐倉杏子)@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康、魔力貯蓄(中)
[装備]ソウルジェムの指輪
[道具]Rocky、ポテチ、チョコビ、ペットボトル(中身は水、半分ほど消費)、ケーキ、れんちょん作の絵(杏子の似顔絵)
[思考・状況]
基本行動方針:寒河江春紀を守りつつ、色々たべものを食う。
1.春紀の護衛。まあ、勝たせてやりたい。
2.図書館での調査。罠を警戒。
3.ライダー(キリコ)と共闘しつつ、弱点を探る。
4.食料調達をする。
5.妹、か……。
6.れんげのサーヴァントへの疑念。
7.ほむらは逝ったか……。
[備考]
※ジナコ(カッツェ)が起こした事件を把握しました。
※ジョンスとアーチャー(アーカード)の情報を入手しました。
 ただし本名は把握していません。二人に戦意がないと判断しています。
 ジョンス・アーカードの外見を宮内れんげの絵によって確認しています。
※アサシン(カッツェ)の情報を入手しました。
 尻尾や変身能力などれんげの知る限りの能力を把握しています。
 変身前のカッツェの外見を宮内れんげの絵によって確認しています。
※れんげの証言から彼女とそのサーヴァントの存在に違和感を覚えています。
 れんげをルーラーがどのように判断しているかは後の書き手様に任せます。
※れんげやNPCの存在、ルーラーの対応から聖杯戦争は本来起こるはずのないものだったのではないかと仮説を立てました。
 ただし本人も半信半疑であり、あまり本気でそう主張するつもりはありません。
※武智乙哉をマスターと認識しました。




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最終更新:2015年07月09日 22:43