ほんの少しの休息 ◆OSPfO9RMfA



「チャカが盗まれた?」
「し、しーっ!! アニキ、声がでかいですぜ!!」
「声がでかいのはお前の方だ」

 人気のない路地裏で、二人のヤクザが会話していた。
 藤村組の傘下の、無名に等しい組の、弟分と兄貴分だ。

「チャカの手入れが終わった後、誰かに背後からポカリと殴られて……俺、どうしたらいいんすかね……」
「そりゃまぁ、まずはケジメだよな。これぐらいで済めば良い方か?」
「そっすよね……トホホ」

 兄貴分は左手の小指の方から二本指を立てる。ガックリと項垂れる弟分を見て、兄貴分は溜息をつく。可愛い弟分であり、その可愛さが余っての指導不足だとすれば、自身のミスだ。

「まぁ、取り返せたらお涙貰えねぇか、上の方には俺が陳情しとく。俺の管理不届きでもあるからよ」
「あ、アニキィ……アニキィ!! うおぉぉぉんっ」

 兄貴分の器の大きさに、弟分は男泣きする。兄貴分は背を叩いて慰める。

「泣くな泣くな。報告がてらそいつを探しに行くぞ。キッチリ落とし前つけねぇとな。で、盗まれたのは預けていた俺のチャカと、お前のチャカだけか?」
「へい……手提げ式の金庫ごと盗まれました……」

 二人は事務所に向かって歩きながら会話する。
 弟分が言うには、拳銃の手入れをし、手提げ式金庫に入れた後に、何者かに背後から殴られて金庫ごと盗まれたという話だ。
 補充の弾丸は大きな共同金庫に保管してある。そちらの方は無事ということらしい。

「手入れの最中に盗まれなかったのは不幸中の幸いだが、だから手提げ式の金庫はやめとけって言ったんだ。あんなのドリルとか万力とか使えば壊れちまうからな――ん?」

 兄貴分は路上の草むらに何かが投げ捨てられているのを目敏く発見する。
 近づいて草むらをかき分けると、手提げ式金庫が目に映る。弟分が管理していた手提げ金庫と同じ型だ。こじ開けられており、中身は空のようだ。

「あ、あーーーーー!! こんなところに!」
「……」

 兄貴分のヤクザは違和感と、何とも言い難い不安を感じた。
 確かに“ドリルとか万力とか使えば金庫をこじ開けられる”と兄貴分自身も言った。
 だが、“容易に”とは欠片も思ってはいない。
 誰にも見つからないような安全な場所まで持っていき、そこで時間を掛けて金庫破りをするのが普通だと思っていた。

 ――こんなに短時間で金庫を破り、こんな路上に捨てた?
 ――まるで“この場で金庫を破って投げ捨てました”と言わんばかりに?

 背後で騒ぐ弟分を無視し、慎重にじっくりと金庫を探る。
 そして、ある事実に気付き、凍り付く。

「――指は諦めた方が良いかもしれねぇな」
「え、アニキ、それはどういう――」

 弟分は怪訝そうに兄貴分に尋ね――彼も理解して凍り付く。

「これは、腕どころか命までもってかれねぇ……」

 金庫には“まるで純粋な握力でこじ開けた”ような指先の跡が、くっきりと残っていた――






 天河食堂に戻ったテンカワ・アキトは一息付いた。

 首尾は上々だった。
 ヤクザの事務所から拳銃の入った手提げ式金庫を盗み、人気のないところでバーサーカーのガッツにこじ開けさせた。中身さえ奪えば後は用はない。金庫を捨てて、即座にその場から立ち去った。

 予定では大型金庫の方を狙うつもりだったが、たまたまヤクザが拳銃を手入れし、手提げ式金庫に保管する様子を見て標的を変えた。
 彼を気絶させ、手提げ金庫ごと頂戴した寸法だ。


 アキトにとって『方舟』内の拳銃は旧時代の物である為、弾丸の規格が分からない。
 ようは“同じ形の弾丸”を探せばいい話だが、盗み先でじっくりと選ぶ時間はない。アキトは人体実験の影響で、味覚ほどではないが、視覚にも異常がある。“同じ形か見分ける”のは一苦労でもあった。かといって、目についたもの全部というのもかさばってしまう。
 そんなアキトにとって“マガジンに弾が入った状態”と言うのは、非常に都合が良かった。

 盗んだ拳銃は二丁。

 CZ75B、残弾16発。
 以前より使っていた拳銃と同種のものだ。手入れ直後だった為、マガジンに弾が最大まで入った状態で保管されていた。

 デザートイーグル、残弾8発。
 弾丸は44マグナム弾であり、CZ75Bよりも威力が出る。だが、キレイのような銃弾を避けたり弾いたりするような超人には効果はないだろう。勿論、サーヴァント相手にも無力だ。そして常人であればCZ75Bで十分。その為、『相手が薄い壁などに隠れた場合に有効』と言ったニッチなメリットしかない。余り拘らず、CZ75Bと同じように使う方が良いだろう。

 無駄撃ちはできないが、これだけあれば当座は十分だろう。


 次に、美遊・エーデルフェルトから奪った二つの品を見る。

 カレイドステッキ・マジカルサファイア。
 ただの幼女用の玩具にしか見えない。触れてみると、プラスチックとも鉄ともセラミックとも思えない、不思議な材質だった。

「……」

 それ以上のことは、アキトには分からなかった。
 アキトは魔術師ではないし、異世界の品物だ。分からないのも仕方ない。
 カレイドステッキには自我がある。だが、ガッツに踏まれた際に壊れたのか、雌伏しているのか、ただの無機物にしか感じられない。

 それでも、これを取り上げた時の美遊の態度から、これが大事な物だと言うことは分かる。戦闘中にも手にしたことから、おそらく戦闘に有利になるアイテムなのだろう。

 そして、クラスカード・セイバー。
 同じく材質不明のカード。剣士の姿が描かれている。

「……」

 やはり、それ以上のことは分からない。
 これも取り上げた時の美遊の態度から大事な物だと言うことは分かるのだが、用途も使用方法もわからない。

 溜息をつくと、デザートイーグルと一緒に部屋にあった背負い袋の中に放り込んだ。






 アキトは固形栄養食品とRockyを口に含み、栄養ドリンクで胃に流し込む。

 食事とは、生きるための作業だ。
 その作業を、如何に安全に、如何に効率よく、そして楽しませるのが料理だ。

 アキトにとって――今のアキトにとっては、食事はただの作業でしかない。味も分からぬそれを、黙々と食べ続けた。

「眠る。バーサーカー、見張りを頼む」

 アキトは食事を終えるとベットに潜り込んだ。
 キレイ・セイバーとの戦闘は、戦闘時間が短かったからか、大して魔力は消費していない。だが、美遊・バーサーカーとの戦闘では結構な魔力の消費を感じた。
 連戦は命に関わるだろう。休めるときに休んだ方がいい。

 そういえば、美遊との約束を思い出す。確か港に0時だったか。
 目覚ましのアラームを23時に設定すると、アキトは眠りに落ちていった。




【B-9/天河食堂/一日目 夜間】

【テンカワ・アキト@劇場版 機動戦艦ナデシコ-The prince of darkness-】
[状態]魔力消費(中)、左腕刺し傷(治療済み)、左腿刺し傷(治療済み)、胸部打撲、強い憎しみ、心労(大)、睡眠中
[令呪]残り三画
[装備]CZ75B(銃弾残り9発)、CZ75B(銃弾残り16発)
[道具]チューリップクリスタル1つ、背負い袋(デザートイーグル(銃弾残り8発)、カレイドステッキ・マジカルサファイア、クラスカード・セイバー)
[所持金]貧困
[思考・状況]
基本行動方針:誰がなんと言おうとも、優勝する。
0.夜に備えて眠る。
1.次はなんとしても勝つために夜に向けて備えるが、慎重に行動。長期戦を考え、不利と判断したら即座に撤退。
2.五感の異常及び目立つ全身のナノマシンの発光を隠す黒衣も含め、戦うのはできれば夜にしたいが、キレイなどに居場所を察されることも視野に入れる。
3.できるだけ早苗やアンデルセンとの同盟は維持。同盟を組める相手がいるならば、組みたい。自分達だけで、全てを殺せるといった慢心はなくす。
4.早苗に関しては……知らん。勝手にしてくれ。
5.気が向いたら0時に港へ向かい、美遊と決着を着けてもいい。
[備考]
※セイバー(オルステッド)のパラメーターを確認済み。宝具『魔王、山を往く(ブライオン)』を目視済み。
※演算ユニットの存在を確認済み。この聖杯戦争に限り、ボソンジャンプは非ジャンパーを巻き込むことがなく、ランダムジャンプも起きない。
 ただし霊体化した自分のサーヴァントだけ同行させることが可能。実体化している時は置いてけぼりになる。
※ボソンジャンプの制限に関する話から、時間を操る敵の存在を警戒。
※割り当てられた家である小さな食堂はNPC時代から休業中。
※寒河江春紀とはNPC時代から会ったら軽く雑談する程度の仲でした。
※D-9墓地にミスマル・ユリカの墓があります。
※アンデルセン、早苗陣営と同盟を組みました。詳しい内容は後続にお任せします。
※クラスカードは使用できませんが、所持していると魔力の自然回復がほんの僅かだけ早くなります。

【バーサーカー(ガッツ)@ベルセルク】
[状態]ダメージ(小)
[装備]『ドラゴンころし』『狂戦士の甲冑』
[道具]義手砲。連射式ボウガン。投げナイフ。炸裂弾。
[所持金]無し。
[思考・状況]
基本行動方針:戦う。
1.戦う。



BACK NEXT
124:interval 投下順 126:俺とお前はよく似てる/少年よ我に帰れ
124:interval 時系列順 126:俺とお前はよく似てる/少年よ我に帰れ

BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT
105:サツバツ・ナイト・バイ・ナイト テンカワ・アキト&バーサーカー(ガッツ 129:犯行(反攻)