ライク・トイ・ソルジャーズ ◆QjbMWR4Umk


Step by step, heart to heart, left right left

We all fall down


一歩一歩、呼吸を合わせて、左右左

皆力尽きる


Step by step, heart to heart, left right left

We all fall down like toy soldiers

Bit by bit, torn apart, we never win

But the battle wages on for toy soldiers


一歩一歩、呼吸を合わせて、左右左

皆倒れていくんだ、おもちゃの兵隊の様に

少しずつ、引き裂かれて、絶対に勝つことはない

でも争いからは逃げられない、おもちゃの兵隊たち


◆◆◆


「――――会おう。ただし会談の場はこちらで用意する。それで良ければ会うと伝えてくれ」
「うん、りょーかい」

シャアはライダーとの会談を受けることにした。
シュレディンガー准尉にその旨を伝え、場所を用意してからライダーの部屋に電話を入れると言っておく。
准尉は通信のためにしばらく沈黙、そしてライダーとの念話の結果を伝えてきた。
結果は、イエス。

「ではこれから私たちは、ライダーのいるホテルへ向かう。30分もかからないだろう」
「はーい。僕はライダーにしばらくそこで待ってるように伝えればいいんだね?」
「うむ、よろしく頼む」
「わかったよ、じゃねー」

シュレディンガー准尉は笑顔をで手を振りながら、何の前触れもなく消失した。
部屋に残されたのはシャアと、そのサーヴァントたる雷の二人だけになった。

「マスター……」
「心配かね、雷?」
「うん……あのね、私、ライダーの正体がちょっとだけわかったかもしれない……」
「なんだと?」
「あの、シュレディンガー准尉って子の左腕にね、見覚えのある腕章が付いてたのよ」
「腕章……」

そういえば、そんなものを付けていた。
シャアは記憶を掘り起こす。
確か、デザインは白地に赤のライン。そして中央に――

「鉤十字の紋章……」
「そうよ」
「君はそれを知っているというのだな、雷」
「うん、私の艦としての存在があった歴史と、ちょうど同時期にその紋章があったわ」

そこまできて、シャアもだいたいの見当がついてきた。
特使としてやってきたシュレディンガー。
いかにもドイツ・オーストリア系の名前を持つ彼は、ライダーのサーヴァントだという。
その事実も鉤十字の紋章との関連性を裏付ける。
鉤十字・ドイツオーストリア・雷と同じ二十世紀に存在した、英霊になる程の人物。

「まあ、いい。どのみち会ってみないことには正確な正体も分からん。もしもし……」
『はい冬木ハイアットホテルです』

シャアは携帯電話を取り出し、講演会が開かれる予定のホテルへ連絡をとる。
そこの一室を貸りて、ライダーとの会談の場とするつもりであった。
幸い部屋は空いており、シャアは問題なく会談の場をキープすることができた。
あとは現地入りしてから、フロントを通じてライダーの滞在する部屋に連絡を入れ、こちらに来てもらえばいい。

「では行こうか、雷。もし万が一、ライダーが実力行使に出てくるようなら、君がだけが頼りだ」
「う、うん、任せて! 何ならもーっと私に頼っていいのよ!」
「ああ。私を守ってくれよ」


◆◆◆


冬木ハイアットホテル、スイートルーム。
シャアたちは預かり知らぬことだが、ライダーのいた部屋とは別。
そこの斜向かいに位置する部屋だ。
部屋の調度は落ち着いた暖色系のもので統一されている。
そして家具や、花瓶の置かれたテーブル、ソファなどは、いかにもといった高級感を醸し出している。
その部屋で、シャア・アズナブルと雷は、来るべき訪問者を待ち構えていた。

コン、コン。

ノックの音。
雷がドアの前に出ながら、己のマスターを見る。
それにシャアは肯き、ドアを開けるように指示した。
雷はロックを外し、室内へ来客を招き入れる。
かくしてシャアとの会話を望んだライダーのサーヴァントが姿を現す。

「やあ――」

軽く右手を上げて挨拶したその男は、メガネをかけた小太りの男だった。
白のコートとマフラーに、同じく白のスーツとシャツ。ネクタイだけが黒。
一見すると鈍重な、普段はデスクワークに従事する肥満男性というイメージを抱く。
しかしシャアと雷は、その動作の端々にただならぬ雰囲気を感じとっていた。
先ほどの会釈にしてもそうだ。
何気なく挙げた右手は、指の先に至るまで緩みなくピンと伸ばされていた。
その指先がヒュパッ――と空気を切るような、そんな動作だった。

「面倒をかけてすまないな。私としてもいきなり未知の敵の懐に飛び込むのは、いささか躊躇われたものでね。
 会談の申し出を受ける代わりに、こちらで場所を手配させてもらった」
「構わんよ。受けてもらえれば、私としては念話でも最低限の要望を叶えてもらった形になるのだから」

シャアは部屋の中央にあるソファに座っており、ライダーはそこに向かい合う形で着席する。
アーチャー雷は、マスターのすぐ横に立ったまま待機。
ライダーが万が一、仕掛けてくるようであれば、身を呈してでもシャアを守る構えだ。

「そこだ。ライダー、なぜ貴方は私達との会談を望んだのか」
「もちろん君たちと語り合いたいからだよアズナブル氏。そしてそのサーヴァントたるアーチャーの少女」

ライダーはその目を細め、ひと組の主従を睨めつける。
シャアはその視線に不吉なプレッシャーを感知し、秀麗な眉目を曇らせた。

「……私達は初対面だが、何を語り合おうというのかな」
「戦争だよ、戦争。我々は聖杯『戦争』の参加者なのだ。ならば戦争について語り合おうではないか」
「これから合流予定の、君のマスターを抜きでそれについて話すのは、二度手間というものではないかね?」
「ああ……勘違いさせてすまない。言い方が少しまずかったな。聖杯戦争については我がマスターを交えてくれ。
 私が、君たちと、語りたいのは戦争についてだ。戦争についての問答だよ」
「戦争だと?」
「そうだ。君たちとであれば充実した議論が可能であると、私は考えているよ」

ライダーの言を受けて、シャアはそれを訝しんだ。
戦争?
聖杯戦争についてではなく?
ライダーの真意は何だ。
まず、そこを確かめなければならない。

「我々が、戦争を語ることができるような人間だと?」
「そうとも。最初から見込んではいたが、こうして直接会えて確信した。君たちからは――紛う事なき戦争の匂いがする」
「……」
「私は戦争の英霊だ。故にそういうモノが解るのだ。君たちも多少はそういう感覚があるのではないかな」

シャアはそれを否定できない。
最初にライダーの姿と挙動を見た時に、まさしくその感覚によって引っかかりを覚えたからだ。
その肥満体に不釣り合いなキビキビとした一挙一動。
それは軍人の動きだ。
そして今、ライダーは自身を戦争の英霊と言った。

「ヒトラー」
「ん……?」
「ヒトラー、ナチス、第三帝国の、戦争の英霊か」
「…………なるほど。私の正体に当たりをつけたか」
「砂漠の狐ロンメルか? それとも撃墜王ルーデル? 電撃戦のマンシュタイン?」
「はははははは、そんなご大層な方々ではないよ。たしかに私はナチスだが、所詮は少佐どまりだった男さ」

少佐。
また一つ手がかりになる情報が生まれた。
もっともそれを鵜呑みにできる保証などは無いが。

「彼らほどではないが……まあ私もヨーロッパ全土に鉄火と戮殺の嵐を巻き起こした悪名高きナチスの一員というわけだ。
 どうやら英霊の末席に加えられる程度のことはやったようだよ」
「……悪名であろうと名を残せば英霊というわけか」
「そうさ。神話や英雄譚において、名高き英雄たちがやった事と何も変わるまい。私は殺したぞ。
 殺して、殺され、殺して、殺され、殺して、殺しまくった。戦争とは、つまりそういうことだろう」

ライダーは喜悦を隠そうともしない。
その眼光はまるで満月を写したようにギラギラと輝いている。
ここでシャアは悟った。
この男は戦争を楽しんでいると。
シャアが――いやシャアだけではない。
アムロ・レイ、カミーユ・ビダンら、シャアとかつて敵対、または共に戦ったニュータイプ達も嫌悪するであろう人種だ。
命を食い尽くす男だ。
そんな男と戦争について何を語れというのか。
シャアはこの時点で、ライダーとの会談を早めに切り上げようと考えていた。

「お気に召さないようだな、フロイライン(お嬢さん)」
「えっ……」
「アーチャー」
「あ、あの、ごめんなさいマスター……」
「……いや、構わん。君の率直な感覚に対しては、私も同意するものだよ」

ライダーは唐突に矛先を変えてきた。
シャア自身は心中に抱いた嫌悪を表に出さぬようにしていたが、雷はそう上手くいかなかったらしい。
となれば、シャアも上辺を繕ったところで仕方ない。
ここは正直に行く他ないだろう。

「見ての通りだ、ライダー。私達は割と気の合うほうでね。アーチャーが好む物を、私も好む傾向にある。
 その逆も然りだ。貴方のような戦争を愉しむ者を、私達はどうにも好きになれそうもない」
「だが君たちも戦争の中で殺してきたのだろう? 敵を切り裂き、突き刺し、銃を向け、引き金を引いた兵士ではないのかね?」
「そうせざるを得ない事もある。戦争を行う事と、戦争を忌避する事は矛盾するものではない。
 それが解らないというのであれば、貴方に戦争の英霊を名乗る資格などありはしない……!」

ライダーは沈黙。
重苦しい空気が室内を包む。
シャアはライダーを見た。
沈黙したままではあるが、プレッシャーは増している。
月下の餓狼のような、ギラギラとした眼光も輝きを増しているようだ。

「ふふ……」

始めに漏れたのは愉悦の笑み。

「ははは………………ははははははははははははははははははは!!!!」

哄笑。
パン、パン、パンと手を叩いてライダーは笑った。

「結構、結構、いや結構! 良い、実に良いマスターだ。その通りだよアズナブル氏。
 戦争において敵兵を打倒し、だがその一方で戦争を忌避する兵士。それもまた戦争だ」
「……お気に召したようで何よりだ」
「ふふん。それほどまでに戦争を知るのであれば、君たちも理解しているだろう? この聖杯戦争が歪んだ形の戦争であることに」

歪んだ形の戦争。
ライダーがそう言った意味をシャアは考える。
戦争とは何か。
それが歪んでいるとはどういった意味なのか。

「ルーラーの事を言っているのか」
「流石に話が早い。そうだ、そもそも戦争に裁定者などいない。戦争を裁くのはいつだって勝者なのだ」
「だが実際に裁定者は存在し、ルールを破った者にペナルティを課している。先程の放送を聞いていないわけではあるまい」
「手ぬるい。何故、罰則を直接行使しないのか。それができないというのであれば、奴らは何のために居るのだ」

ライダーの言うことにも一理ある。
何事も最初が肝心だ。見せしめの意味でペナルティを厳しくすることが、今後の抑止力に繋がる。
それをしない理由は何だ。
そもそも聖杯戦争そのものが、何のために行われているのだ。

「アズナブル氏……私は戦争が好きだ。そしてアーチャー……私は戦争が好きだ。私は、戦争が、大好きだ」

ライダーは突如、圧倒的なプレッシャーと熱量を込めて語り始めた。
地の底から湧き出るマグマのような言葉。
まさに、戦争の為に迷いなく全てを捧げることのできる彼だけが放てる言葉。

「殲滅戦が好きだ。
 電撃戦が好きだ。
 打撃戦が好きだ。
 防衛戦が好きだ。
 包囲戦が好きだ。
 突破戦が好きだ。
 退却戦が好きだ。
 掃討戦が好きだ。
 撤退戦が好きだ。
 平原で街道で、
 塹壕で草原で、
 凍土で砂漠で、
 海上で空中で、
 泥中で湿原で、
 宇宙空間で魔術結界で、
 数多の世界で行われる、ありとあらゆる戦争行動が大好きだ。
 だが強いて言えばひとつ、気に食わないモノがある」

ライダーはこの会談が始まってから、ずっと口の端を歪めたような薄笑いを崩すことはなかった。
そんな彼が笑いを消し、そしてこれだけは変わらない餓狼の眼光を、まっすぐにシャアへと向けている。


「自らが背負うべき戦争の引き金を他人に弾かれることだ」


ライダーは目を見開き、狂気の眼光を満月のように輝かせ、演説のジェスチャーのように右手を掲げる。
ズパッ――と、空気を裂く音が聞こえた気がした。

「私は私だ。こっち/わたし は あっち/あなた と違う。
 この世の闘争の全ては、それが全てだ。人間がこの世に生まれてからな。
 そして君たちも、私とは違うと思っている。無論ルーラーとも」
「……だが、我々は一緒くたにされ、聖杯戦争に放り込まれている」
「そうとも、それもまた戦争だ。兵士が何を考えていようと、より巨大な枠組みに囚われ、戦いを強制される。
 まるで玩具の兵隊だ。右、左、右、左と歩を進め、打ち倒されるためだけに刃と火の嵐に身を晒し、倒れていく」
「それが嫌なら全てを捨てて逃げるか――」
「それも叶わぬなら――自らの意思で敵を定め、その手で引き金を弾くのさ」

――もっとも私の敵を決めるのは私のマスターだがね。
と、肩をすくめながらライダーは付け足した。

「貴方のようなサーヴァントにマスターとして認められているということは、なかなかの人物なのだろうな」
「面白い人間であることは保証しよう。丁度そろそろ時間だ」

時計の針はまもなく17時を過ぎようとしている。
若干の余裕はあるが、そろそろ講演会のホスト役であるシャアは色々な下準備に入らなければならない。
ライダーもマスターの元へ戻って報告し、話し合う時間を考慮すれば、この辺りが切り上げ時と言えた。

「多忙な中で時間を割いてもらったことを感謝する、アズナブル氏。また今度は私のマスターを交えて話すとしよう」
「私も、この聖杯戦争そのものについて思考している主従と出会えたのは僥倖と考えているよ」

その言葉に、来たときと同じく、ヒュパッ――と会釈を返し、そしてライダーは実体化したままドアから出て行った。
部屋にはシャアと雷の二人。
ライダーが去ってしばらくしてから、二人して大きく溜息をつく。

「……少し疲れたな。雷、お茶を入れてくれないか」
「マスター……大丈夫?」
「大丈夫さ。間もなくまた会うことになるのだからな。そのために今は少し寛いでおきたい」
「わかったわ。美味しいお茶を淹れるから、マスターは座ってゆっくりしてて」
「ああ……」

ソファに体を預け、窓の外の夕焼けを見やる。
赤く染まった美しい夕日だ。
雷がお茶を淹れて戻ってくるほんの僅か一時だけ、シャアは静かに瞼を閉じた。


◆◆◆


Step by step, heart to heart, left right left

We all fall down


一歩一歩、呼吸を合わせて、左右左

皆力尽きる


Step by step, heart to heart, left right left

We all fall down like toy soldiers

Bit by bit, torn apart, we never win

But the battle wages on for toy soldiers


一歩一歩、呼吸を合わせて、左右左

皆倒れていくんだ、おもちゃの兵隊の様に

少しずつ、引き裂かれて、絶対に勝つことはない

でも争いからは逃げられない、おもちゃの兵隊たち


◆◆◆



【C-6/冬木ハイアットホテル/一日目 夕方】

【シャア・アズナブル@機動戦士ガンダム 逆襲のシャア】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:無し
[道具]:シャア専用オーリスカスタム(防弾加工)
[所持金]:父の莫大な遺産あり。
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争によって人類の行方を見極める。参考として自分より未来人のマスターがいるのなら会ってみたい。

1.後援会の人間との会合に行き、少佐のマスターと会う。
2.赤のバーサーカー(デッドプール)を危険視。
3.サーヴァント同士の戦闘での、力不足を痛感。
4.ミカサが気になる。
[備考]
※ミカサをマスターであると認識しました。
※バーサーカー(デッドプール)、『戦鬼の徒(ヴォアウルフ)』(シュレディンガー准尉)、ライダー(少佐)のパラメーターを確認しました。
※目立つ存在のため色々噂になっているようです。
※少佐をナチスの英霊と推測しています。

【アーチャー(雷)@艦隊これくしょん】
[状態]:健康、魔力充実(中)
[装備]:12.7cm連装砲
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに全てを捧げる。
1.シャア・アズナブルを守る。
2.バーサーカー(デッドプール)を危険視。
[備考]
※バーサーカー(デッドプール)、『戦鬼の徒(ヴォアウルフ)』(シュレディンガー准尉)、ライダー(少佐)の姿を確認しました。




【ライダー(少佐)@HELLSING】
[状態]魔力消費(大)
[装備]拳銃
[道具]不明
[所持金]莫大(ただし、そのほとんどは『最後の大隊(ミレニアム)』の飛行船の中)
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯と戦争する。
1.マスターを交えたシャア候補との交渉に備える。自身としては少女(雷)の方に興味あり。
2.通神帯による情報収集も続ける。
※アーカードが『方舟』の中に居る可能性が高いと思っています。
※正純より『アーカードとの交戦は必ず回避せよ』と命じられています。令呪のような強制性はありませんが、遵守するつもりです。




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108:ゼア・イズ・ア・ライト 投下順 110:標的を斬る
108:ゼア・イズ・ア・ライト 時系列順 110:標的を斬る

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082:最初の使者 ライダー(少佐 119:会談場の決意者
シャア・アズナブル&アーチャー(