運命の幕開け ◆wd6lXpjSKY



 此処は暗い暗い闇の中。
 気が付くと深い闇の中にポツリと座っている感覚だった。
 でも周りに人がいる感覚はずっとある、余計に気持ち悪く感じてしまう。
 誰なのだろうか。「彼」「彼女」「少年」「少女」――その景色は多種多様。

 ふぅ、風が冷たく肌を撫でていく。
 風を体感すると思考が追い付く前に景色が明るくなり周りが見える。
 此処は屋内ではなく外、それも空気は淀み大地は荒れている殺風景で無慈悲な此処。
 他の人も驚いていた……何人かは悟った表情や顔色一つ変えない人もいるようだ。


 頭に透き通るように声が響き全員が視線を一つにする。
 解りやすく台座のような物の上に男性が立っており見下ろしていた。
 その男性は髪が長めで顔に刺青のような物が入っており目の辺りに何か付けているのが特徴的だ。
 マイクや拡声器は使用していないが声は自然な程耳に残りまるで脳内に響いてくる感じがする。

「お前達は運命を信じるか?」

 男性はその場にいる人々全員に問を投げる。
「運命を信じるか」。詩人が好みそうな憧れや理想を刺激する台詞だ。
 実際に考えてみる、運命とやらを。
 今までの人生に奇跡は大小問わず存在はしていた、それを偶然と取るか必然と取るか。
 何にせよ価値観は人によって大きく異る、問いを投げても返却される解は全て同一にはならない。


 自分には自分なりの答えがある。
 状況が全く掴めないが質問に答えるのは自然で当たり前。
「彼」「彼女」は男性に答えを伝えようと口を動かす。
 この時点で口の動きが人によって全く異なる、そもそも男性に声は届くのだろうか。
 届くには届くのだが声を発する人々全員を聞き分けられるとは思えない。

 そうでもないようだ。
『声が出せないのだ』。口は動かせても『発声が出来ない』。
 多くの人々が困惑する中男性はその顔をニヤつかせていた。



 見下すようにニヤつく男性、不信感が高まってしまう。
 そもそも何故こんな荒野のような所に居るのか、謎が在る。
 目が覚めたら。そんなお伽話のような感覚は現実のようで夢の世界ではない。
 声を送ってきた男性ならば何か知っている、そんな気がしてならないしそのような素振りを見せる。

「俺の名前は天戯弥勒……一つよろしく頼む」

 男性は名乗る――あまぎみろく、と。
 確かに彼の名前を気にしている人もいたが問題は其処ではない。

「言いたいことは分かる。お前達は『選ばれた』」

 天戯弥勒は言葉を紡ぎ続ける。
 全てを見透かしているようで説明してやる、上から人を見下しているニュアンスで彼は言う。
 選ばれたと言われても心当たりはない。何人か思い当たる節があるような表情をするが。

「これは聖杯戦争だ。勝ち残った者には願いを叶える権利が得られる……人生に因果を持たせる」


 天戯弥勒が言った言葉は解りやすい、理解出来るかどうかは考えない。
 人には夢が存在するのが大半であり一度はその夢を目指して走り続ける。
 夢や目標、それぞれ大小多種多様だが誇れるものであり生きる原動力にもなる。
 壁に当たり諦める者も現れれば実現する者もいる、運命のように。
 天戯弥勒はその『夢や願いといった憧れ』を叶える権利を与える、そう言った。

「だが勝ち残らなければ聖杯は真意を見せない……つまり『殺し合え、最後の一人になるまで』」


 暗転。
 美味い話には裏があるとは正にこの事か……彼はその手を非道に染めろと言い放つ。
 殺害と言う概念は抱くことはあれど実行するには人として一定の線引を誤らなければ出来ない。
 彼はそれを楽々飛び越える発言、非道を促しているのだ。


「脱落と言った方が聞こえは良いかもしれないな。お前らにはサーヴァントと対になってこの世界を生き抜いてもらう」

 脱落。
 実際に命を落とすかどうかは解らないがこの方が言われる通り聞こえは幾分かマシだ。
 サーヴァントと呼ばれるモノに心当たりはない……在る者もいるらしく反応はこれも多種多様。
 辞書で当て嵌めるならば『召使』……相棒やパートナーと表せばいいのか。


「意味を理解していない者もいるが解っている者もいる……『選ばれた奴』には『共通点』がある」

 どうやら理解していない事が仲間外れ、と言う事ではないようだ。
 選ばれた件に関しては全く持って謎なのが本音であり解を求めていた。



 様々な人が集められている中での共通点。
 外見的な特徴では無い事は分かるが何が正解なのか。
 顔見知りでも無ければ同じ国籍でも無いのは確定的。


「『願い』だ――全員『願い』を持っている」


 霧が掛かっていた心はこの一言で『覚された』。
 夢、憧れ、願い、目標、願望――「僕」「私」にそれは存在している。
「俺」「自分」には叶えたい願いが在る、叶えなければならない夢がある。

「これで全員理解したな? ならば『最後の一人になるまでその手を汚せ』」

 この非日常の出来事は運命にどのような影響を与えるのか。
 それは必然か偶然か、捉えるのは各々の価値観に委ねられた。
 見たこともない世界、聞いたこともない争い、訪れない奇跡。
 何の因果が束ねられたかは不明、しかし平等の手段が与えられたのは現実。

「解らないことも在るかもしれないが目覚めれば解るはずだ。
 近くにいるサーヴァントや他のマスターに聞けばいい、無論敵同士の可能性も高いがな。
 最悪の場合は俺を探し出し直接聞きにくればいい……忘れていた事が一つあった。
 聖杯は願望を叶える器だと思えばいい、それだけだ」


 彼が言うには目が覚めれば全てが解る、つまり起きたら情報がインプットされているのだろうか。
 そして覚める、再び意識が闇の中に吸い込まれるのも確定的だ。
 闇に光が射した時が全ての幕開けになる……それまで束の間の休息と捉えるべきか。


「再び会える事を期待している――人殺し」


 天戯弥勒のこの一言を最後に意識は再び闇の深い底まで吸い込まれていく。
 願いを叶える戦争、それが聖杯戦争だ。
 戦争を体感した者もいれば聞いたことしか無い者もいる。
 彼らが何十の螺旋にも絡み合って紡ぐ戦争は世界に何を刻むのか。


 長くて短い一つの戦争が幕を開けた――。




 主催
【天戯弥勒@PSYREN -サイレン-】


【備考】
  • 舞台はPSYRENの世界と位置づけします。
(原作のような荒れた未来ではなく一般的な世界と変わりません、ただ『別の時空』と考えてください。)
  • NPCも存在しており、その世界の建造物などは各参加者版権作品の物も存在しているかもしれません。
  • マスターは巻き込まれた人もいれば意図的に参加した者もいます。
(共通点は願いが在ることです)
  • マスターとサーヴァントは初めて出逢うかもしれませんし既に召喚してからある程度時間が過ぎている可能性もあります。
(登場話で好みのシチュエーションをお選びください)
  • 開始時間は深夜辺りをお願いします。