サツバツ・ナイト・バイ・ナイト ◆fhD3y9RNl2
コマ送りのように見ている映像が切り替わる。夢を見ている、とテンカワ・アキトは自覚していた。
フィルムの中でしか見たことがない光景。見えているだけで、聞こえない。音声の抜け落ちた映像を眺めている。
切り替わる視界では常に、剣と鎧を身につけた男たちが殺しあっている。
中世、機械など発達していない時代。原始的な武器を手に、血みどろの戦いが繰り返される。
夢の中で、アキトは一人の剣士になっていた。
長大な剣を振るい、たった一人で雲霞の如く押し寄せる敵兵に突っ込んでは、血の花を咲かせている。
常に一人。誰にも心を許さず、誰の下にも就かず、一人戦場を渡り歩く。
剣士にとって、戦いは日常だった。息をするように剣を振るい、敵を殺す。
剣士の中にあるのは、決して誰にも屈しないという闘志と、世界とはこういうものなのだという諦念だった。
やがて、転機が訪れる。
剣士は敗北した。相手は屈強な兵士ではない。女と見紛う端正な顔立ちをした若い男だ。
剣士はその男と共に行くことになったようだ。屈託なく笑う男に手を差し出され、剣士はその手を掴もうと自らも手を伸ばし――映像が切り替わる。
僅かな間隙の中、唐突に理解する。これはアキトではない誰かの記憶だ。
誰かが過去を思い出しているのを、アキトが盗み見しているだけだ。その誰かの正体は、考えるまでもない。
中世らしき世界観、襲い来る男たち、手の中にある大剣。
剣士とはつまり、バーサーカー。アキトのサーヴァントである、ガッツの記憶だ。
マスターとサーヴァントを結ぶ霊的な繋がりを通じて、アキトに流れ込んできている。
映像が切り替わる。
ガッツは仲間を得たようだ。彼の周りには大勢の人間がいる。
器用で気の良い若者。寡黙な巨漢。反りの合わない中年の男。未熟な新兵。
中でも一際輝いて見えるのが、黒髪で褐色の肌の女と、金髪の美しい男。
金髪の男には見覚えがある。つい先ほどの映像でガッツを打ち負かしていたあの剣士だ。
この二人はガッツの中で特別に大きな位置を占めていると、一時的にガッツと記憶を共有するアキトにはわかる。
女は、ガッツが愛した人なのだろう。アキトにとってのユリカと同じだ。
男は、ガッツが信じた友なのだろう。彼の下に来て、ガッツはようやく安息を得た。
彼らと肩を並べて、ガッツは様々な戦場を駆け抜けていく。
そのとき、ガッツの中に闘志は変わらずあれど諦念はなくなっていた。
アキトにもわかる。このときガッツは満たされていたのだろう。
孤独に生きてきた魂が、初めて安らぎを得た。共に行きる仲間を、帰るべき場所を見つけたのだ。
映像が切り替わる。
夢だとわかっているのに、アキトは呻き声をあげた。映し出された光景は地獄だ。
どことも知れない真っ暗闇な空間で、醜悪な形をした化け物が人間を喰らっている。
抵抗する者もいた。剣で切りつけ、矢を放ち、必死に足掻く。化け物たちはそんな人間たちを嘲笑うかのように殺戮を続けている。
目の間で、寡黙な巨漢が真っ二つに裂けた。ガッツは剣を手にして斬りかかっていく。
ガッツの中で怒りと憎しみが膨れ上がっていくのを感じる。
それでもガッツは女のと、友の名を繰り返し叫び、進んでいく。
余りにも唐突な状況の変化にアキトも戸惑っていた。眼前で繰り広げられる殺戮は、人間が成し得るものではない。
何か超常的な現象が起きている。ガッツにも、もちろんアキトにも測りきれない何かが。
やがてアキト=ガッツの前に、終局が訪れる。
化け物に押さえ付けられ、身動きできないガッツの眼前で。
愛した女が。
信じた友に。
ガッツの視界が、片方閉じる。
■■■■■――――――――――――――!!!!
▲ ▼ ▲
「……ッ!?」
アキトはベンチから跳び起きた。
慌てて周囲を見回す。少し前に訪れた廃教会の近くだ。
休む前とほとんど変わらない。変わったことと言えば、やや日が落ちてきたことと、全身が冷たい汗に濡れていたことだ。
傍らにはバーサーカー、ガッツがいた。見張りを頼んでいたが、何故か実体化して戦闘態勢に移行している。
何かあったのか、と言いかけて止める。ガッツはアキトの変化に反応して実体化しただけだ。
アキトの心臓は戦闘時と変わらないほど激しく脈打っている。
深く息を吸い、体調を省みる。眠ったことでいくらか体は軽くなった。
体の問題ではない。夢の中、圧倒的な憎悪の叫びを聞いたせいで、アキトの精神が悲鳴をあげたのだ。
あの夢を思い返す。映像が次々と切り替わり、また音声もなかったのでいまいち何があったか正確には把握できていない。
尋常ならざる体験をしたことはわかるが、何があったかと言葉にすることは難しい。
しかし一つ、これだけははっきりとわかったことがある。
最後の映像が映し出された瞬間、アキトは猛烈な衝撃に押し流された。覚醒したのもそのショックのためだ。
あの衝撃は、ガッツが抱く憎悪そのものに他ならない。ガッツはあのとき全てを失ったのだ。それも、信じていた友の手で。
愛した女を目の前で奪われた。その無力感、怒り、憎悪が、アキトにそれ以上の傍観を許さなかった。
「……済まないな」
言葉を解さないバーサーカーに夢の内容を尋ねる訳にはいかない。
意図して見ようとした訳ではないが、アキトはガッツという存在の根幹を成す部分に触れてしまったのだ。
いかにマスターとはいえ、おいそれと踏み入って良い領域ではない。
ガッツと共に戦うと決めた以上、そこは尊重しなくてはならない。
しかし、あれがガッツの戦う理由だとするならば、やはりアキトがガッツを召喚できたことには理由があったのだ。
アキトがユリカを奪われたように、ガッツも愛した女を奪われていた。
取り戻そうと足掻いている。復讐を成すために駆けている。
改めて確信する。このバーサーカーはひどく己と近しい存在であり、だからこそ巡りあったのだ。
「そろそろ日が沈む。とりあえず拠点に戻るぞ、バーサーカー」
アキトは立ち上がり、バーサーカーに霊体化を促す。
休息はもう十分取れた。夜になれば色々と動かなければならない。
アンデルセンや早苗のことは一先ず置いておく。しばらく彼らとぶつかることはない以上、後回しだ。
近くに停めていたバイクを回収し、山を降りる。
人気のない田園地帯を突っ切ろうとしたところで、ガッツが突然実体化してアキトの前に立ち塞がった。
「バーサーカー?」
否、立ち塞がったのではない。
ガッツはアキトを守るために実体化したのだ。となれば当然、敵がいるということだ
「■■■■■■――!」
ガッツが即座に抜き放った大剣が、アキトを狙って飛来する刃を叩き落とした。
アキトがバイクから飛び降りた直後、落雷のように影が飛び込んでくる。
「こいつはっ……!」
「■■■■■■■■■■■■――!」
現れたのは、二本の角を生やした白い仮面の怪人だった。
紛れもなくサーヴァント。さらに理性なき獣の如き咆哮からして、ガッツと同じバーサーカーに相違ない。
漆黒の甲冑に身を包んだガッツを黒のバーサーカーとすれば、この怪人はさしずめ白のバーサーカー。
白のバーサーカー――黒崎一護は、空中で自らの獲物を掴み取ると、ガッツが振り上げようとした大剣へと着地した。
頭を狙って振り下ろされた一護の剣を避けるため、ガッツがとっさに首を傾けた。肩に刀が叩きつけられる。
「■■■■■■――!?」
「バーサーカーッ!」
ガッツの大剣と比べ、一護の刀は一般的な大きさだ。しかしそこに込められた力は人智を超越していた。
ガッツの苦悶がパスを通じてアキトにも流れ込んで来る。甲冑を砕くことこそなかったものの、踏ん張ったガッツの両脚が沈み、硬いコンクリの道路に大きな亀裂が刻まれた。
一護が追撃せんと刀を振り上げた一瞬の隙に、ガッツの左手首が折れ曲がり、義手に内蔵された大砲が火を吹いた。
砲弾は至近距離で炸裂、刀を保持する一護の手首から先を吹き飛ばした。
――やれ、バーサーカー!
今こそ好機とアキトが檄を飛ばす。
ガッツが体当りして一護から距離を取り、自由になった大剣を一護へと突き刺した。
霊核の位置する心臓を串刺しにし、百舌の早贄のように持ち上げる。そのまま大剣を旋回させ、地面へと打ち下ろした。
次の瞬間、朦々と立ち込める土煙の中から飛び出してきた白い掌がガッツの頭部を掴む。
「■■■■■■■■■■■■――!」
一撃を放った直後のガッツにはとっさの反撃が不可能だった。
片手一本でガッツの巨体が持ち上げられ、先ほどとは逆に地面へと叩き付けられた。
煙幕の中から飛び出してきた一護の姿を見て、アキトは瞳を細める。
大砲で吹き飛ばされた手には既に掌が形成され、貫いた胴体は周囲の肉が盛り上がってギチギチと空白を埋めていく。
サーヴァントが持つ回復力ではない、異常な速度の再生能力。スキルか宝具か、どちらにせよ厄介極まりない。
ガッツの頭部を破砕せんと一護が足を振り上げる。その眼前に、伏したままのガッツが放り投げた炸裂弾が浮いてきた。
爆破の衝撃にのけぞった一護の足をガッツが掴み、立ち上がると同時に振り回した。
十分に遠心力をつけて手を離す。一護の体はボールのように地面と平行に飛んでいき、電柱をなぎ倒した。
「……手強いな」
立ち上がったガッツがダメージを癒すために、アキトから魔力を持っていく。
軽い立ち眩みを意志の力で押し殺し、アキトはこちらもゆらりと立ち上がった一護を睨んだ。
白面の怪人の向こうには、いつの間にか小さな少女が現れていた。
人の域を遥かに超えた次元の戦いを前に、その視線は小揺るぎもしていない。
刃のように細められた少女の眼から感じ取れるのは、燃え上がるような戦意だ。いま、アキトを満たしているものと全く同じ。
マスター同士が視認し合ったことで、少女もひとまずバーサーカーを下がらせ、正面からアキトと対峙する。
「貴方に恨みはありません。私のことを恨んでくれて構いません」
少女は初手から対話を拒否する。
ここで何としてもアキトを倒す、それ以外に興味はないという張り詰めた声。
アキトは、自分の半分の年月も生きてはいない少女の宣誓を前にして――獰猛に笑う。
「……フッ」
これでいい――こうでなくては。これでこそ殺し合いだ。
所詮は、敵なのだ。一時的に手を組んだとて、そいつがどういう人間であっても、いずれは殺す相手だ。
だから、これでいい。幼い少女だとか、身体に障害がある男だとかは関係ない。
一度戦場に立った以上、全力を以って打ち破る他に道はないのだ。
アキトの脳裏から、ともに暮らした少女の思い出や、先ほどアキトに啖呵を切った女の言葉が消えていく。
獲物を狩る猟犬の思考に切り替えていく。
「奇遇だな。俺も君に対して、恨みはないよ」
「けれど」
「ああ、けれどだ」
「聖杯を目指すなら――取るべき手段は一つ」
「違いない。悪いけど、君の命運は此処で鎖す」
言葉を交わすのはここまでだ。
名前も知らない。素性も知らない。敵であることだけわかればそれでいい。
アキトと少女――美遊・エーデルフェルトは、傍らに侍るサーヴァントへと同時に命令を下した。
「叩き潰せ、バーサーカー!」
「行って、バーサーカー!」
二人の距離の中心で、黒と白のバーサーカーは激突した。
ガッツが振り下ろした大剣のすぐ傍を白い影が通り抜ける。敏捷性で勝る一護が紙一重でガッツの攻撃を回避し、反撃の黒刀を放つ。
しかし今度はガッツもその速度を織り込んでいる。左に一歩踏み込み、背中に沿うように刀身を寝かせて持ち上げる。
幅広の刀身は即席の盾にもなる。鋼と鋼が打ち鳴らす火花が眩しくアキトの視界を灼いた。
一護の連撃を凌ぎ、一呼吸の間を得たガッツが黒い竜巻となって旋回。回転の勢いを載せた大剣が一護の頭部を跳ね飛ばす。
「まだッ!」
「■■■■■■■■■■■■――!」
美遊が握り締める杖が発光し、少女の小さな体から魔力が燐光となって溢れた。
失われた一護の頭部が一瞬にして復帰。刹那の遅滞もなくガッツへと前進する。
バックステップ、しかし一護はそれ以上の速度でガッツの背後へと回り込み、強烈な一撃を浴びせかけた。
ガッツが前方に転がりながら衝撃を逃し、血を吐き捨てる。斬撃は甲冑に阻まれているのに、それでもなおこれだけのダメージが突き抜けてくる。
「■■■■■■――!」
怒りに燃えるガッツが即座に反撃。
抜く手も見せないスローイングナイフ。黒刀が閃き、大半が迎撃されるも潜り抜けた数本が一護の仮面に突き立った。
続いて雪崩のように落ちてきた大剣が一護の片腕を切断、さらに宙に舞った黒刀を打つことで大きく弾き飛ばす。
武器を失った相手へ一気に攻め込もうとしたガッツだが、隻腕の一護が猛烈な勢いで突進してきた。
鋭く尖った二本の角がガッツの隻眼を狙う。首を振って回避。顕になった首元へ、一護が噛み付いた。
「■■■■■■■■■■■■――!」
「■■■■■■――!?」
鋭く生えそろった刃のような歯が噛み合わされる寸前、ガッツは全力で膝を蹴り上げた。
一護の胸元に砲弾を超える威力の膝蹴りが決まり、骨を圧し折り内蔵を潰し、一護を宙に浮き上がらせる。
少しばかり首周りの肉を食い千切られたが、頸動脈まで届いてはない。
ガッツは溢れ出る出血を抑えもせず、怒りのままにドラゴンころしを繰り出した。
頭を吹き飛ばしても、胸を貫いても死なない。ならば細切れになるまで切り刻むだけだ。
荒れ狂うガッツの剣は、一護の頭、右腕、左足を、次々に切り飛ばした。
とどめとばかりに胴体を薙ぎ払おうとしたところで、一護の反撃が間に合う。
一護が掲げた左手に向かって黒刀が独りでに動き出す。その間にはガッツの体。黒刀はガッツの首を背後から刎ねんと閃く。
「後ろだ、バーサーカー!」
直撃すれば致命傷になりかねない。そう直感したアキトは、攻撃の最中だったバーサーカーへと警告を飛ばす。
ガッツは腕を小刻みに動かして振りかぶっていた大剣の剣先を操作、向かってくる黒刀へと打ち合わせた。
甲高い金属音は迎撃の成功を意味する。
が、当然それは眼前の一護に対して隙を見せることになり、瞬時に再生を終えていた一護の拳がガッツの頬を打ち抜いた。
連打、連打、連打。ピンボールのようにガッツの頭部が揺れる。
掬い上げるようなアッパーカット。しかしガッツは、殴られながらも自分も拳を握り締め、一護の腹へと突き刺していた。
素早く手を引き抜く。追撃しようとした一護の腹が爆ぜる。ガッツが拳の中に握り込んでいた炸裂弾だ。
行動の枕を抑えられ、一護の足が止まる。ガッツはその一瞬の機を逃さず、ドラゴンころしを掴み直して後退した。
「■■■■、■■――」
「■■■■■■■■■■■■――」
荒く息を吐くガッツに魔力を流してダメージを癒やしながら、アキトは戦況を見定める。
ガッツはダメージを受けたが、甲冑が破られた訳ではないので、戦闘続行には何の支障もない。
しかし――このままでは、いずれ押し切られる。
敵のバーサーカーは、いくら傷つこうともほぼ一瞬で再生を終えるのだ。
ガッツは甲冑のおかげで受けるダメージが小さい。敵はダメージそのものをキャンセルできる。どちらが有利なのかは言うまでもない。
再生を無視して一撃で白いバーサーカーを消し去れるような大威力の宝具は、ガッツにはない。
高いステータスと曇らぬ剣の技量で正面から斬り伏せるのが黒のバーサーカー、ガッツのスタイルだ。この敵は噛み合わないにも程がある。
アキトは視線を巡らし、バーサーカーのマスターたる美遊を睨んだ。
バーサーカー同士の息も吐かせぬ戦闘を目の当たりにしても、少女に動揺はない。
既に何度かの戦いを経験しているか、あるいは元々戦いの人生を送っているのか。
何にせよ一つ確かなのは、美遊がアキトとは比較にもならない超一級の魔術師であるだろうということだ。
ガッツが受けた打撲や衝撃を回復させるだけでもアキトは軽い疲労を感じている。
だがあの少女は、バーサーカーの失われた手足や頭を再生させるという無茶を繰り返しているはずなのに、全く堪えた様子がない。
保有する魔力がそれほど潤沢なのだろうか。時折り光るあの杖に何か秘密がありそうだとアキトは睨むが、どういった原理なのかはわかるはずもない。
「……退くぞ、バーサーカー!」
アキトの判断は迅速だった。
バイクを捨て、バーサーカーの腕に掴まって一気に市街地へと離脱する。
どうやらあの白いバーサーカーには遠距離用の攻撃はない。
黒刀を投擲したり、離れた位置から引き寄せることはできても、アーチャーのような本職の武器ではない。
それならばガッツが容易く対処できる。一度距離を離してしまえば、市街地まで追ってくることはないだろう。
ガッツとアキトは沈みゆく太陽へ向かって跳躍した。太陽光を背にした目眩まし、状況判断。
美遊は地上からそれを見上げ――
「逃がさないで、バーサーカー!」
命令する。
バーサーカーは、マスターからの命令を受け、再生を終えた体を撓ませこちらも跳躍した。
上空に逃れたアキトへと、一直線に一護が発射された。
「追ってくるだと!?」
実はこのとき、美遊の方もそれほど余裕があった訳ではない。
黒崎一護の強みは全体的に高いステータスと超速再生だ。その際使用される美遊の魔力も適宜補充されるので、通常の負傷を癒やすだけなら枯渇する心配はない。
では何が問題なのかというと、ガッツの剣だ。
竜をも撃ち殺せる剣という触れ込みで造られたこの剣は、その実ただの鉄の塊でしかない。
その鉄塊を斬魔刀と呼べる大業物まで鍛え上げたのは、他ならぬガッツ自身。幾千幾万幾億の妖魔を斬った大剣は、いつしか魔性のモノを滅する性質を帯びていた。
英雄たちが振るう宝剣宝刀のような絢爛さはない。ただひたすらに魔を斬滅することに特化した、世界にただ一振りの剣だ。
これは、サーヴァント同士の戦いではさほどの有利には働かない。
何故なら英雄とは大半が人の中から生まれたる超越戦士であり、魔の性質を持つ者は皆無ではないが希少だからだ。
「■■■■■■■■■■■■――!」
そして、黒崎一護は――現在の黒崎一護は、希少な方のカテゴリに属する。
死神の敵である悪霊、虚(ホロウ)。一護はいま、その力を身に纏って戦っている。
虚は絶大な力を一護に与えるが、同時に理性と記憶を奪う。そして――悪霊の属性、つまりは魔性をも身に纏わせる。
ガッツの剣は、一護の力の源である虚には抜群の効果を発揮する。
高い水準にあるはずの一護の耐久力を突破し、容易く手足を切り飛ばすのがそれだ。
さらに悪いことに、ガッツは一護と比較して遥かに対人戦の経験を積んでいる。
無論、強敵との戦いという意味ではガッツは一護に及ばないだろう。一護が戦ってきたのは強大な力を有する虚、死神、破面と言った次元が違う面々だ。
しかし、純粋な意味での人間同士の戦いの場数という意味では、生まれた時から戦場にあったガッツには、一護は到底及ばない。
ガッツはその鍛え上げた対人間の技を、無窮の武練というスキルの恩恵で狂化していても問題なく行使することができる。
さらに、致命傷を受けない限りは戦闘能力を翳らせない戦闘続行スキルも光る。これがためにガッツは攻撃を受けている最中でも反撃が可能となる。
剣と剣とを打ち合わせる戦いでは、この経験の差が越えられない壁となり、あと一手を詰め切れない。
「あなた達は、ここで、倒す!」
ガッツにとって一護は相性が悪いように、一護にとってもガッツは相性が悪い相手なのだ。
だからこそ、逃がさない。逃げたということはすなわち、相手もこの状況を不利に感じているということだ。
そしていま、ガッツはアキトを抱えている。もはや先程のような剣撃戦はできはしない。
美遊は一護に命じる寸前、魔術で周辺の探知を行っていた。
この付近に人間の反応はない。多少バーサーカーから離れても襲われる心配はない。
故に、バーサーカーを行かせる。まずは一つ、この手に確かな勝利をつかむために。
美遊はこのとき、勝利を確信していた。
そして照り返す夕日に隠され、気付かなかった。
ガッツに支えられるアキトが、向かってくる一護と、そのずっと下にいる美遊を見て、
「チェックメイトだ」
笑っていたことに。
▲ ▼ ▲
黒崎一護が跳躍した。
わずか数秒後には、一護の黒刀が黒のバーサーカーを、彼が守るマスターごと一刀両断にするはずだ。
そう思っていた。なのに。
「ぁぐっ……!?」
美遊の視界が回転した。
夕焼けの空を見つめていたはずなのに、目の前には壁があった。
壁ではない。コンクリートだ。美遊はいま、地面に頭を押し付けられていた。
「なっ……サファイア、なにぎぃ、ああっ!」
「どうやら成功したようだ」
背後――ぞっとするほど近くで、男の声がした。
ステッキを持っていた腕が捻り上げられ、背後からその男に押し倒されているのだ。
「バーサーカー、その玩具を押さえていろ。壊すなよ」
何が何だかわからなかった。
押さえ付けられた姿勢から無理やり空を覗く。そこには美遊のバーサーカーしかいない。
消えた黒いバーサーカーとそのマスターは、一瞬にして美遊の背後へ現れていた。
一護がこちらに向かってくる。マスターに危害を加えた害敵を誅戮せんと、怒りの咆哮を上げて。
「バー、」
「奴を止めろ。死にたくないのなら」
美遊を遮ったのは、顔のすぐ傍で跳ねた鋭い音。
続いて目の前にぬっと突き出されたのは、先端から煙を吹く黒い筒――拳銃だった。
その拳銃の先を、首に押し当てられる。ジュッと肉が焼ける音がした。
「あうっ!」
「次は外さない。奴を止めろ」
魔術とは根本的に異なる科学の産物。引き金を引けば誰でも使える、お手軽な武器。
普段ならひどく現実味のないそれは、首に押し当てられた熱が偽物ではないと確信させる。
キリリ――と、引き金を絞る音が聞こえた。
手元にはカレイドサファイアがない。バーサーカーは落ちてくる。男は引き金を引き絞る。
数秒後には発射される。バーサーカーは間に合わない。一護には、美遊を避けて男だけ殺すような精密な動作は不可能だ。
「やめて、バーサーカー!」
美遊は、恐怖に負けた。
その結果、どうなるかもわかっていた。
それでも、目前の死を回避することで頭がいっぱいになった。
「■■■■■■、■■■■■■――!!」
マスターの命令を受けた白のバーサーカーが戸惑ったように身じろぎする。
理性がないとはいえ、わかるのだろう。このまま攻撃すれば、敵のマスターごと己のマスターも殺してしまう。
接近して引き剥がそうにも、敵のマスターの横で大剣を構える黒のバーサーカーがそれを許さない。
黒崎一護には為す術がない。タイミングを合わせて繰り出されたガッツの剣を何とか防ぎ、大地に降り立つ。
一護の前にはガッツが立ち塞がり、その後ろで美遊はアキトに組み敷かれていた。
美遊の命は完全に、アキトによって掌握されてしまった。
「では、話をしようか。君の名前は?」
「くっ……」
「聞こえなかったか。名前を聞いているんだ」
アキトが力を強める。腕の関節を逆に取られた美遊に、突き刺すような痛みが加えられる。
「あぐぅぅっ!」
「君の、名前を、教えてくれ」
美遊の後頭部に銃口が押し当てられた。
コツ、コツと催促するように小突かれる。
一護が飛び出そうとしたが、アキトはこの銃をちらつかせて牽制を行っていた。
どれだけ一護が強力であっても、ガッツを突破して一瞬でアキトを殺すのは不可能だ。
例外はただ一つ、美遊の持つ令呪のみ。令呪を解放すれば、一護は瞬時に美遊の傍に現れ、アキトの首を跳ね飛ばすだろう。
「令呪を使えば殺す」
しかし美遊がその思考に至る前に、男が先回りした。
「理解してくれ。俺はいま、君を殺す気はない。しかし君が令呪を使ってまで抵抗するのならそうせざるを得ない」
いまは、殺す気がない。
その言葉を聞き、美遊の思考にブレーキが掛かる。
この男は何かを美遊に求めている。殺すことが狙いではない。
バーサーカーは動かせず、カレイドサファイアも美遊の手元を離れた。残るはクラスカードのみだ。
この状況を好転させるには令呪を使うほかないが、警告した以上、美遊が令呪を使おうとすれば男は即座に引き金を引いて美遊の頭を撃ち抜くだろう。
そうすれば、死ぬ。何も果たせず、ただの脱落者として終わる。
必死に頭を回転させ、何とかして状況を打開するため美遊は声を絞り出した。
「……ぅ、何が……目的なの」
「まず、名前だ」
「……美遊・エーデルフェルト」
「美遊と呼ばせてもらう。俺はテ……いや、ガイだ」
男の言いなりになるのは屈辱だった。だが今はこうするしかない。
アキトはガイと名乗った。それが偽名だと美遊が知ることはない。
「では美遊。状況はわかっているな。これは聖杯戦争で、俺達はマスターだ。故に、俺は君を殺さなくてはならない」
「……っ」
「だが、君が俺の言うことを聞いてくれるのならば、見逃してもいい」
アキトの言葉は、美遊を生存に導くものではあった。
しかし嬉しくはない。見逃す代わりに何かをしろというなら、それはとてつもなく困難なことであるのは間違いない。
「覚悟はできているようだな。幼くとも聖杯戦争に参加しているのだから当然か……では、要件を言おう。
美遊・エーデルフェルト、令呪を使ってバーサーカーをB-4に向かわせろ。そしてそこにいるサーヴァントを殺せ」
果たしてそれは、予想通りだった。
アキトの要求はとても二つ返事で了承できるものではない。
B-4と言えば、正午の通達の際、ルーラーが直々に警告をした場所だ。
当然そこにはサーヴァントがいるだろう。それもルーラーが危険視するほどの恐るべき相手が。
そんなやつを、殺せ。アキトはそう、美遊に突きつけてきたのだ。
「そんなこと、できる訳っ」
「ならここで死ぬか? どちらでもいいぞ、俺は」
ゴリッ、と銃口が押し付けられる。依然として美遊の命はアキトに握られたままだ。
もしこの要求を断れば、アキトは躊躇いなく引き金を引くだろう。そして美遊は惨たらしく死ぬ。
バーサーカーは即座にアキトへ襲いかかるだろうが、ガッツに阻まれる。そして、自らの魔力を使い尽くして消える。
何も成せず、何も取り戻せず、何も残せず。唯一無二の友にも、二度と会えなくなる。犬死にでしかない。
「くっ……う、ううぅ……!」
「泣くのはいいが、早く決めてくれ。そろそろ君のバーサーカーが痺れを切らしそうだ」
美遊は一護を見た。この場にいるただ一人の美遊の守護者。アキトの要求に従うということは、彼を危険に晒すということでもある。
それでもいいのだろうか。今ここで、相打ちを覚悟でこの男に一矢報いるべきではないのか。
そう問いかけようとした美遊を、強烈な意志を込めた一護の視線が貫く。
決して諦めるな、生きることから逃げるなと、一護は叫んでいる。
理性なきバーサーカーでありながら、美遊の生存が第一だと。
そのためならどれほどの苦痛でも背負ってやると、その視線に乗せて一護は美遊を促していた。
生きるためには――いま、屈辱を食うしか、ない。
「……ごめん、バーサーカー」
「■■■■■■■■■■■■――!」
美遊の謝罪をかき消すように白のバーサーカーが吠える。
やがて美遊は、血を吐くようなか細い声でささやく。
「令呪を以って命じる……バーサーカー、B-4にいるサーヴァントを……殺して」
強制されたものであれ、意に沿わぬものであれ、マスター本人の意志の元に発動された令呪は効果を発揮する。
美遊の手から令呪が一画かき消され、黒崎一護へと宿る。
しかし彼は立ち去らない。美遊の安全を確かめるまで、令呪の強制力に抗ってこの場に留まり続ける。
「……放して、ください。このままじゃ、バーサーカーが行けません」
「いいだろう」
アキトは素直に美遊を解放する。しかしガッツは横に控えさせたままだ。
もし美遊が態度を翻し、二画目の令呪で一画目の命令を解除して襲いかかってきたときに備えている。
しかし、その心配は杞憂だった。数秒の間美遊と見つめ合った一護は、夕焼け空へと跳躍していった。
アキトの要求通りB-4に向かったのだろう。残された美遊はアキトを睨みつける。
「これで満足ですか」
「ああ、上出来だ。約束通り君は見逃そう」
ああいった命令をさせた以上、この場でアキトが美遊を殺すことはできない。
美遊が死ねばバーサーカーも消える。それでは令呪を使わせた意味が無い。
「……絶対に許さない。あなたは必ず、私達が殺します」
「口だけは達者だな。だが君にできるか?」
アキトは薄く笑い、懐から一枚のカードを取り出した。
それは紛れもなく、美遊が所持していたカード。セイバーのクラスカードだ。
美遊は慌ててポケットを探る。ない。押し倒された時にスリ取られていた。
「か……返して!」
「駄目だ。君は幼いが、魔術師としては侮れない。これと……その杖のおかげかどうかは知らないが、奪っておくに越したことはないからな」
ガッツが足をどける。そこにはカレイドサファイアがあった。
サーヴァントに踏みつけられて破損したのか、サファイアは何も喋らない。
「サファイア!」
「この杖とカードは預かっておく。返して欲しいのなら……そうだな、今日の0時に港に来い。
俺と君がお互い生き残っていたなら、その時こそ決着を着けよう」
アキトは転倒していたバイクを引き起こし、跨る。
今日の0時――遅すぎる。
小学生である美遊が出歩くには不自然な時間だし、なによりステッキがなければ美遊は自分の魔力しか使用できない。
魔力消費が甚大なバーサーカーの、彼の戦力を支える要である超速再生が封じられてしまう。
もちろんアキトはそれをわかって言っていた。
見逃すという約束は守った。であればこれ以上の譲歩は必要ない。手強いとわかっている敵ならなおさらのこと。
「待って! サファイアとカードを返して!」
「じゃあな、美遊・エーデルフェルト。再会できることを祈っているよ」
美遊の懇願を聞かず、ガッツを霊体化させたアキトは走り去っていく。
走って追うが、当然追いつける訳はない。
もちろん、令呪を使えば一護を呼び戻して追撃できる。が、無限の魔力供給がない今の美遊では一護の力を発揮しきれない。
さらにその選択は、切り札たる『天地呑み込む虚無の閃光(セロ)』を完全に破棄することと同義だ。
一度きりとはいえおそらくほぼ全てのサーヴァントを消滅せしめる最強最大の力を、使わずして失ってしまう。
宝具を使えない、先ほどの戦闘の二の舞いとなれば、やがて一護はガッツに押し切られ、今度こそ敗北するだろう。
これから美遊はどうすればいいのだろうか。
もう一画の令呪で一護に課せられた命令を解除するか。
それとも身を隠し、一護の生還を信じて待つか。
あるいは一護の後を追って西へ向かうか。
「これが……聖杯戦争。これが……殺しあうってこと……」
今の美遊は、その選択肢すら考えられない。
たった一度の敗戦。しかしその戦果は惨憺たるものだった。
令呪を一画使用させられ、激戦が予想される火薬庫のまっただ中へとバーサーカーを差し向けることになった。
クラスカードとカレイドサファイアは奪われ、美遊自身の力は削がれたも同然。
アレクサンド・アンデルセン、そしてホシノ・ルリは、本気で美遊を敵とは認識していなかった。
だがアキトは違う。彼は美遊を己と同等以上の敵と見定め、持てる全ての力を使って叩き潰そうとしてきた。
その結果がこれだ。命があるだけでも儲けもの、などと言ってはいられない。これ以上ないほどに完全な敗北。
打ちひしがれた美遊は、誰もいなくなった戦場に一人膝をつく。
沈みゆく夕日のように、美遊の未来もまた、暗黒に閉ざされたのだ。
【C-9/田園地帯/一日目 夕方】
【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]魔力消費(小)、ポニーテール 、他者に対しての過剰な不信感、神父への恐怖感
[令呪]残り二画
[装備]普段着、伊達メガネ他目立たないレベルの変装
[道具]バッグ(衣類、非常食一式)
[所持金] 300万円程(現金少々、残りはクレジットカードで)
[思考・状況]
基本行動方針:『方舟の聖杯』を求める。
1.(呆然)
2.ルヴィア邸、海月原学園、孤児院には行かない。
3.自身が聖杯であるという事実は何としても隠し通す。
[備考]
※アンデルセン陣営を危険と判断しました。
※ライダー、バーサーカーのパラメータを確認しました。
※テンカワ・アキトの名前を「ガイ」だと認識しています。
【C-8/市街地/一日目 夕方】
【バーサーカー(黒崎一護)@BLEACH】
[状態]健康、激しい怒り
[装備]斬魄刀
[道具]不明
[所持金]無し
[思考・状況]
基本行動方針:美遊を守る
1.令呪・《B-4に存在するサーヴァントを殺す》
2.1.を果たし速やかに美遊の元へ戻る
[備考]
※エミヤの霊圧を認識しました
▲ ▼ ▲
「うまくいった、か……」
バイクを走らせながら、アキトは先程の戦闘を思い返す。
あのとき、アキトは本気で逃げるつもりだった。事実、一護が追ってこなければそのまま逃走していただろう。
しかし美遊が功を焦ってバーサーカーを自分から離したとき、アキトは勝機を見出した。
切ったカードは、虎の子のボソンジャンプ。
ガッツを霊体化させ、自身のボソンジャンプに巻き込んで美遊の背後にジャンプアウトする。
憎きカレン・オルテンシアから得た情報が決め手になったのは皮肉な話だ。
だが結果的に、アキトは勝利しただけでなく、聖杯戦争をさらにかき回すであろう一手を打つことができた。
バーサーカーを戦力として利用する以上、現時点でアキトは美遊を殺害できない。
アキトもこれ以上押しては美遊とバーサーカーが暴発しかねないと判断し、美遊を拘束したりはせずそのまま解放することにした。
仮に美遊の自由を奪ったとして、気絶した小学生など抱えていては社会的立場が一瞬で崩壊する。
無用なリスクを背負うよりは、アキトとガッツにダメージのない形で美遊と一護を利用し尽くす。これが最善だ。
「チューリップクリスタルは残り一つ。見合う成果はあった、な」
美遊と手を組む案は、論外だった。
少女のサーヴァントはバーサーカー、アキトと同じ。しかしその能力は恐らくガッツを上回っているだろう。
今回はボソンジャンプでマスターを押さえたため切り抜けられたが、同じ手はもう通じまい。
つまり美遊は生かしておけば必ず禍根になる。しかし虎の子のCCを一つ消費させられたのだ、ただ殺害するだけでは収支が釣り合わない。
よって、アキトは同盟より利用を選んだ。現在、同盟者は二人いる。当面はこれ以上は必要ない。
制御のきかないバーサーカーなど爆弾と同義だ。サーヴァント同士が激突する戦場に放り込めば、もたらされる破壊は倍どころではすまない。
美遊のバーサーカーは殊更に強力である。正面戦闘ではガッツすら上回るのだから、他のサーヴァントに対しても決して見劣りはすまい。
白のバーサーカーの介入は、必ずや西の戦場に大きな亀裂を走らせるだろう。
その結果B-4にいるサーヴァントが脱落するならそれで良し、返り討ちにされてもそれもまた良しだ。
どっちに転んだところでB-4のサーヴァントの消耗は免れないだろう。
策の恩恵を受け取れるのはまだ先の話かもしれないが、アキトはひとまずの戦果に満足し、家路へと急ぐ。
一つの戦いを切り抜けたからといって、これで休める訳ではない。
武器の調達、夜間戦闘、そして戦利品の杖とカードの処遇。やることはいくらでもある。
特にカードが拾い物だ。使い方はさっぱり分からないが、懐に入れているだけでほんの僅かではあるが魔力の回復速度が早まったように感じる。
折を見てこのカードの正式な使用方法を調べる必要があるだろう。図書館で調べられればいいのだが。
「ガッツ、よくやってくれた。しばらく休んでいろ、すぐにまたお前の出番が来る」
己のサーヴァントを労う。
返事はないが、不思議とアキトは確かな頼もしさを感じていた。
理由は、あの夢を見たからだろうか。
思えばガッツは狂戦士のクラスという割には、アキトの判断に強く逆らってはいない。
ひとたび戦場に出れば指揮官の命に従う。それが戦場に生きる兵士の不文律である。
マスターとサーヴァントという関係で結ばれている以上、ガッツがアキトに従うのはさほど不思議ではないのかもしれない。
だが――
(それだけでは、ないのかもしれない)
根拠のない空想の域を出ない。
それでも、言葉なくとも通じ合ったことを手応えは嘘ではない。
一人であり一人ではない影は、疾風のように走り去っていった。
そして夜が来る。
闘争の夜が。
殺伐たる漆黒の復讐者たちが、舞い踊る夜が。
【B-9/市街地/一日目 夕方】
【テンカワ・アキト@劇場版 機動戦艦ナデシコ-The prince of darkness-】
[状態]魔力消費(中)、左腕刺し傷(治療済み)、左腿刺し傷(治療済み)、胸部打撲、強い憎しみ、心労(大)
[令呪]残り三画
[装備]CZ75B(銃弾残り9発)
[道具]チューリップクリスタル1つ 、春紀からもらったRocky、カレイドサファイア、クラスカード・セイバー
[所持金]貧困
[思考・状況]
基本行動方針:誰がなんと言おうとも、優勝する。
1.次はなんとしても勝つために夜に向けて備えるが、慎重に行動。長期戦を考え、不利と判断したら即座に撤退。
2.下見したヤクザの事務所などから銃弾や武器を入手しておきたい。
3.五感の以上及び目立つ全身のナノマシンの発光を隠す黒衣も含め、戦うのはできれば夜にしたいが、キレイなどに居場所を察されることも視野に入れる。
4.できるだけ早苗やアンデルセンとの同盟は維持。同盟を組める相手がいるならば、組みたい。自分達だけで、全てを殺せるといった慢心はなくす。
5.早苗に関しては……知らん。勝手にしてくれ。
6.気が向いたら0時に港へ向かい、美遊と決着を着けてもいい。
[備考]
※セイバー(オルステッド)のパラメーターを確認済み。宝具『魔王、山を往く(ブライオン)』を目視済み。
※演算ユニットの存在を確認済み。この聖杯戦争に限り、ボソンジャンプは非ジャンパーを巻き込むことがなく、ランダムジャンプも起きない。
ただし霊体化した自分のサーヴァントだけ同行させることが可能。実体化している時は置いてけぼりになる。
※ボソンジャンプの制限に関する話から、時間を操る敵の存在を警戒。
※割り当てられた家である小さな食堂はNPC時代から休業中。
※寒河江春紀とはNPC時代から会ったら軽く雑談する程度の仲でした。
※D-9墓地にミスマル・ユリカの墓があります。
※アンデルセン、早苗陣営と同盟を組みました。詳しい内容は後続にお任せします。
※クラスカードは使用できませんが、所持していると魔力の自然回復がほんの僅かだけ早くなります。
【バーサーカー(ガッツ)@ベルセルク】
[状態]ダメージ(小)
[装備]『ドラゴンころし』『狂戦士の甲冑』
[道具]義手砲。連射式ボウガン。投げナイフ。炸裂弾。
[所持金]無し。
[思考・状況]
基本行動方針:戦う。
1.戦う。
最終更新:2015年01月14日 21:37